更新日:2020年06月13日
公開日:2019年06月17日
子育て中に突如起こる肉親や義理の父母の介護の問題、前触れもなく突然降りかかることも多いです。特に最近では、女性の結婚の晩婚化の影響で出産年齢が遅くなり、親の介護と子育てを同時に行う世帯が増加することが予想されています。
ダブルケアとは、子育てと親や親族の介護が同時期に起こってしまう状態のことを言います。女性の晩婚化や兄弟数の低下、親戚との関係の希薄化などが問題となっており、子育て中の家庭にも関わらず、両親や親族の介護を行う家庭が増えてきました。統計によると全国でダブルケアをしている人は25.3万人にもなり、そのほとんどが女性であるとされています。
今までは仕事と子育ての両立や、介護と仕事の両立が社会問題として挙げられてきましたが、今後は仕事と子育て、介護の三本の両立についても考えていく必要性が出てきました。実際問題として仕事・子育て・介護を両立させることは一人では不可能であり、家族の協力やサービスの効率的な利用が不可欠となっています。
ダブルケアになると、時間にますます融通がきかなくなります。子供が小さい間は、子供の行事や病気によって仕事を休まなくてはならないだけでなく、介護状況によっても仕事を休む必要が出てきます。女性の3人に1人、男性では4人に1人がダブルケアによって離職を余儀なくされているそうです。
ダブルケアで最も重くのしかかってくるのが経済的な負担ではないでしょうか。育児費用や介護費用が必要になってくるにもかかわらず、時間に融通がきかず、離職する人が多くみられています。仕事を辞めてしまうことで収入が減り、ますます家計を圧迫していきます。現実的に要介護状態にもよりますが、ダブルケア世帯の育児費用と介護費用にかかるお金は月8万円以上と言われています。
ダブルケアの人口は増えていますが、ダブルケア家庭を支える仕組みや制度はまだ整備されていません。ダブルケアが貧困の一因となっていると言われていますが、具体的な支援方法も確立されていません。
一部の地域では、その地域限定の施策や活動が行われつつありますが、全国的には広まっていません。大阪府堺市では、ダブルケアの支援に向けた活動を開始しました。市内7か所の区役所で、ダブルケアの相談窓口を設置し、育児や介護の研修を受けた保健師や社会福祉士が悩みや相談にのってくれます。相談にのるだけでなく、必要なサービスや介護施設などの紹介も行ってくれます。
ダブルケアの担い手は圧倒的に女性が多く、およそ66%のダブルケア世帯で女性が中心として対応しています。当事者アンケートの上位にあがるのが「精神的負担」で、家族以外になかなか分かってもらえず、ママ友にも子供のこと以外では相談できないと一人で抱え込んでいる人も多くいるそうです。
香川県ではダブルケアを行っている当事者が集まる「ダブルケアカフェ」を開催し、当事者同士で悩みを話したり、専門家のアドバイスを受けることができます。「ダブルケアカフェ」では、当事者同士が抱え込むのではなく、同じ悩みを持つ人とつながれる場を提供し、少しでも当事者の精神的な負担を軽減することを目指しています。
現状では、介護、子ども、女性問題と部署がそれぞれに分かれており、非効率でダブルケアで悩んでいる人が相談しづらい状況になっています。それぞれが単独で行うのではなく、ダブルケア相談窓口を設置するなど、行政の中にも相談しやすい空間を作ることが必要と思います。ダブルケアで困っている人がどこに相談をすればよいか、どういう対策をとればよいかを記したパンフレットを作成することも重要です。
ダブルケアという言葉自体、まだ社会的に認知されておらず、当事者の苦労は知られていません。今後、テレビや新聞等のメディアでダブルケアについて取り上げ、当事者の人が気楽に悩みを打ち明けられるような地域社会となっていくことが必要であると思います。
※掲載情報は公開日あるいは2020年06月13日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。