更新日:2020年12月25日
公開日:2019年12月05日
学校や研修で移乗介助の基礎は学んだものの、いざ利用者さんの介助に入ると全然上手くできないという経験はありませんか?
実際の現場では、教科書通りにやってもなかなか思うようにいかない事ばかりです。
「でも利用者さんには迷惑はかけられないし、先輩にも聞きづらい・・・」
そこで訪問介護歴10年のベテラン介護士の監修のもと、
“驚くほどラクになる!明日から早速活用できる移乗介助のコツ” をご紹介します!
まずは基本的な事のおさらいからです。
基本的ですがとても大事なボディメカニクスの原理。 普段からちゃんと活用できていますか?
ボディメカニクスとは、骨格や筋肉、関節の相互関係を活用した身体力学のことです。
このボディメカニクスの原理を用いれば、余分な力を使わずに介助ができ、腰痛や労力の負担を抑えることができます。
重量は同じだけれど大きさが違うものが2つあるとします。
例えば重さ3kgのゴルフバッグと同じく3kgの野球ボールを移動させたいとき、支える面積の小さい野球ボールのほうが力が分散されないので移動させやすいはずです。
移乗介助においてもこの原理を活用し、腕を胸の上で組み、足を立てるなどできる限り体をコンパクトにさせることで移乗させやすくなります。
物を持つ時、人は自然と対象物の近くで持とうとします。なぜなら対象物が遠いほど重心が不安定になり重たいと感じてしまうからです。
利用者さんとの距離が離れていると重心がぐらつきうまく移乗できないだけでなく、腕や腰に負荷がかかり腰痛を引き起こしてしまいます。
利用者さんに密着し、互いの重心を近づけることで、利用者さんの体重を足や背中、腕といった広範囲の筋肉で支えることができ、余分な力を使わず体への負担も最小限に抑えることができます。
支持基底面とは、体重を支えるために必要な床面積の事で、左のオレンジ色の部分です。この部分を広くとり、重心を下げると介助する際の安定感が増します。
足を大きく開くと左右の動きが安定しますが、前後の動きには少し不安定。そこで足を大きく開くだけでなく前後にも開くことで左右・前後どの方位も安定感がアップします。
ねじった態勢で移乗を行うと、姿勢が不安定になり本来の力が出せないばかりではなく腰に負担がかかってしまいます。
移乗介助を行う際は、足の向きや位置を工夫し、肩と腰が平行を保つ姿勢を意識しましょう。 車椅子からベッドに移乗させる際は、左の写真のように車椅子とベッドのちょうど中間あたりを向くことで稼動領域が狭くなり、無理な体勢になるのを防ぐことができます。
「密着しすぎると利用者さんが不快な思いをするかもしれない」と遠慮がちに介助をしていると重心が離れてうまく介助できません。
ボディメカニクスの基本原理をしっかりと抑えるだけでもスムーズに介助できるようになりますし、何より安心安全でかつ自身の負担軽減にも繋がります。
基本を振り返ったところで次は移乗介助のコツ・ポイントについてご紹介していきます。
・利用者さんの体格が大きくてふらついてしまう
・腰が痛くなる
・腕がつらい
・上手く起き上がらせられない
ベッドから車椅子での移乗介助でこのような事に困っていませんか?
基本にちょっとしたコツをプラスするだけで、移乗介助は驚くほど簡単にできるようになります。
右半身麻痺の利用者さんの設定で移乗介助のコツ・ポイントを解説していきます。
利用者さんに今から車椅子に移るという事を改めてお伝えします。
「1.2.3で車椅子に移りますね」と動くタイミングをしっかりとお伝えしましょう。
利用者さんも持っている力で協力してくれますので、移乗介助が格段にしやすくなります。
右手を利用者さんの脇の下から回し、利用者さんは麻痺のない左手を介助者の肩に回し、介助者にしっかりと持ってもらいます。
自身の肩に体重を乗せながら前かがみになるよう利用者さんにお伝えします。掛け声とともに介助者は腰を引きながら(落としながら)車椅子に移乗させます。なぜ利用者さんに前かがみになってもらうのか。
それは、利用者さんの体重が分散されるからです。
持ち上げた場合は利用者さんの全体重が介助者の腰や腕に負荷としてのしかかってしまいます。
利用者さんが前かがみになることで、利用者さんが麻痺のない足に力をいれやすくなり、介助者の力+利用者さんの持っている力が合わさり、スムーズに移乗できるのです。
利用者さんがうまく前かがみになれないときは、介助者の腰をできるだけ低くしてみてください。前かがみの姿勢がしやすくなります。
いかがでしょうか?
ちょっとしたコツですが、移乗がしやすくなり介助者への負担も大幅に軽減されるはずです。
画像だけでは分かりづらいので、ぜひ動画で流れをマスターしてみてください。
ここがポイント!
利用者さんの力や遠心力、テコの原理を利用すること!
介助者の負担軽減と事故防止に繋がります!
ベッドから車椅子への移乗介助のポイントは5点!
車椅子からベッドへの移乗介助もベッドから車椅子と同様に、
「利用者さんの体格が大きくてふらついてしまう」
「腰や腕が痛くなる」
「上手くトランスファーできなくて自信がない」
といった悩みを抱える新人介護職員が多いようです。
どうやれば車椅子からベッドへスムーズに移乗できるのか、こちらも手順を追いながらコツ・ポイントをご紹介していきます。
車椅子よりもやや低くなるようベッドの高さを調整します。 ベッドの方が高いと利用者さんを持ち上げないといけないので介助者の腰に利用者さんの体重と重力の負荷がダイレクトにかかります。
乗り移る側を低くする事で重力を上手く利用し、腰に負担をかける事なく 少ない力でも簡単にスライドできます。
移乗する際にまっすぐ上に持ち上げるのではなく、おじぎの姿勢になってもらいながら(上体を少し倒しながら)移乗させると簡単にベッドに移乗させることができます。
また、腕だけの力で移乗させるのではなく、腕、足、腰の筋肉を利用して移乗させると介助者への負担も軽減されます。
利用者さんをベッドに降ろす際は、ゆっくりと降ろすように心がけましょう。
車椅子からベッドへの移乗介助のポイント
ここがポイント
“麻痺のない足で踏ん張ってもらう” 、“おじぎの姿勢”
この2点でベッドへの移乗介助はグンと楽になります。
車椅子からベッドへの移乗介助のポイントをおさらい!ポイントは5点!
ぜひ試してみてくださいね!
“移乗介助中にバランスを崩して利用者さんが床にずり落ちてしまった” こんな経験はありませんか? 床からの移乗介助はとても難易度が高く、自分よりも体格が大きい利用者さんを一人で介助する場合 なかなか上手く起き上がらせる事ができませんよね。
でも実は、振り子の原理を利用すれば一人でも簡単に床から起き上がらせる事ができるんです。 この振り子の原理を使い、片側麻痺の利用者さんを床から起き上がらせるコツ・ポイントをご紹介します。
いかがですか?
一見難しそうですがコツを掴めば誰でも簡単にできるようになります。
ポイントは、以下の2点のみ。
では、画像を使って床からの起き上がらせ方、立ち上がらせ方の流れを見ていきましょう。
利用者さんには麻痺のない足で踏ん張ってもらい、 介助者は利用者さんの軸足とは反対の足で蹴りだします。 介助者一人の力では重くて持ち上げられなくても、 振り子の反動と利用者さんの持っている力を借りることで ラクに立ち上がらせることができます。
床にずり落ちた場合は焦らないことが大切です。
“ 床にずり落ちてしまった!”
そんな時はまずは心を落ち着かせ、ご紹介したコツを思い出して実践してみてください。
あまりにも体格差のある場合は、一人で無理をせず他の介護職員に手伝ってもらいましょう。
「利用者さんとの身長差が20cmあるのでふらつく」など、利用者さんとの体格差で移乗介助が苦手だと感じている女性介護職員さんも多いのではないでしょうか。 体格差があると一人では難しいと思いがちですが、
「利用者さんの体を小さくまとめる」
「利用者さんに密着する」
「支持基底面を広くとる」
などボディメカニクスの基本をしっかりおさえ、ご紹介したポイントを実践すれば、難易度の “高い床からの移乗” も容易にできます。
※女性:154cm 利用者さん:174cm ( 身長差20cm )
ここがポイント!
てこの原理と体をしっかり密着させること!
訪問介護歴10年で培われた移乗介助のコツを動画、画像でご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
ぜひ明日からの介護で実践してみてください。
難しすぎる技術ではないので、きっとすぐに自分のものにできるはずです。
現実は教科書通りにはなかなか上手くいきませんが、失敗を恐れず、自信を持って利用者さんに寄り添うことが成功の鍵です。
成功できる姿をイメージしながらチャレンジしてみてくださいね。
瀬戸 一馬(せと かずま)
18歳の時にボランティアでデイサービスの職員を体験し、楽しさを感じたのが始まり。
訪問介護職員として働く母親にデイサービスの体験を伝えたところ介護の資格取得を勧められる。 19歳の時に介護資格を取得し、知人の紹介で訪問介護事業所へ就職。
訪問介護の1対1の楽しさを感じ、以降10年訪問介護を続けている。
「給料が高い職場に転職したい!」
「資格手当がつく職場に転職したい!」
など、細かいことでも一度お気軽にご相談ください。
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◆移乗介助についてより詳しく知りたい方におすすめのコラム
移乗介助はもう恐くない! ベテラン介護職員が教える移乗介助のポイント
※掲載情報は公開日あるいは2020年12月25日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。