COPDを知っていますか?
突然ですが、英語はお得意ですか?COPD(Chronic obstructive pulmonary disease)ってどういうものだか、ご存知でしょうか。
日本語では、厚生労働省が「慢性閉塞性肺疾患」と名付けました。かつては、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。
実は、別の名称が検討され候補に挙がっていたそうです。その名は、「たばこ病」です。実にわかりやすい。でも、いかにも大人の事情で不採用になった感じがしますね。現在この病気をわかりやすく説明するために、「たばこ病」という名称は、慢性閉塞性肺疾患の別名として利用されています。
世界的にも大きな問題になっている疾患
慢性閉塞性肺疾患は、有害物質を長期にわたって吸い込むことで、肺に炎症が起こり、それに伴ってさまざまな問題が起こってくる疾患です。有害物質は、大気汚染や、ある種の職業では有毒ガスや微粒子が原因になります。しかし、これらは少数です。大多数は、煙草のけむりが原因です。喫煙者の15~20%が、罹患しているといわれています。ですから、煙草を吸うことによって起こる生活習慣病とも言えます。
しかし、決して軽い疾患ではありません。日本では、40歳以上の人口の9%近く、約530万人が患者と推定されています。なぜ、推定かといいますと、大多数の方は未受診、未診断、未治療だからです。
日本の死亡原因では9位です。実はこの疾患は、低年齢からの喫煙習慣がある発展途上国に多く、WHOの予想では2030年に世界死亡原因の第3位になるとされています。
慢性閉塞性肺疾患って、どんな状態?
この疾患では、まず、咳・痰が多くなります。そして、気管支が細くなり、呼吸のための空気が入りづらくなります。ぜんそくで苦しいという状態をご存知ですか?あれはまさに、気管支が狭まって呼吸が困難になった状態ですから、同じような状態です。
このような状態を放置しておくと、症状は悪化し、肺の中の組織にまでダメージが及びます。肺の中の細かい組織である「肺胞」という小さな袋が壊れてしまいます。この状態が「肺気腫」です。
このダメージは、肺の呼吸の時の酸素取り込みや二酸化炭素の排出機能を低下させます。呼吸機能が低下すると、歩行や階段の上り下りなど、体を動かした時にすぐ息が切れるようになります。
慢性的に咳や痰が出たり、ふつうの呼吸時にもゼイゼイとのどが鳴ったりするようになります。さらに悪化すると、発作的に呼吸困難を起こしたりするようになります。
呼吸だけの症状にはとどまりません。呼吸器の炎症は広がって、全身性の炎症になる場合があります。炎症というのは、さまざまな体のトラブルの原因になります。筋力の低下や骨粗しょう症を招くこともあります。筋力の低下や呼吸の不調は体重の減少を引き起こす場合もあります。心疾患につながることもあるのです。
高齢者ほど危険な疾患
年齢がそれほど高くない時は、体は無理がききます。こういった症状も、押さえられていることもあります。しかし、壊れた肺組織は、例え治療を始めても元に戻ることはないのです。
くり返しお伝えしますが、この疾患の別名は「たばこ病」です。高齢になると、加齢のため呼吸器の機能が低下したり、肺機能がダメージを受けたりする場合は、多くなります。それでも、喫煙者の慢性閉塞性肺疾患発症リスクは、非喫煙者の6倍です。
喫煙者の15~20%が、罹患しているといわれていますが、高齢者の喫煙者に限ると、なんと50%が罹患しています。
呼吸器が弱いと肺炎のリスクも高まります。肺炎が死亡原因の上位であることは、みなさんよくご存じと思います。
ニコチンとお別れをして、新しい楽しみを
人はなぜ、たばこを吸うのでしょう。喫煙者は、気持ちが落ち着く、頭がすっきりするとよくおっしゃいます。しかし、それは幻想です。実際は、血管が収縮して血の流れは悪くなり、肺は有害物質によってダメージを蓄積しています。いろいろな理由をつけても、実は、ただ、たばこが吸いたいだけ、ニコチンに依存しているのです。
人間は大変デリケート、常に何かに依存しないと生きづらいのです。そんなよりどころは、必要です。しかし、たばこは、健康を害し、将来の生活の質を損なうもので、介護リスクを高めます。
高齢者の方が喫煙者なら一度、その事実に向き合って、少しずつでも煙草の本数を減らすよう、相談してみては如何でしょうか?
※掲載情報は公開日あるいは2023年04月09日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。