更新日:2023年04月09日
公開日:2020年04月16日
よく新聞の下に、「夜中によくトイレに目が覚める方へ」という広告が載っています。最近は、通信販売で「少しくらいの尿漏れなら大丈夫」といううたい文句で、尿失禁対応の下着が売られるようになりました。テレビで、トークがおもしろいことで有名なジャズシンガーが「私も使っています」とほほ笑む、尿失禁用ライナーのCMも初めは驚きましたが、今ではすっかり見慣れましたね。
日本の高齢化が進むにつれ、高齢者に対応した商品開発もずいぶん進みました。ドラッグストアの介護コーナーも、初めはほんの一画にひっそりと置いてあるだけでした。しかし、どんどんと品数が増え、陳列スペースも広がってきています。これから、ますます便利で使いやすい介護関連商品が発売されていくのは、間違いありません。
さて、先述の広告に話を戻しますと、これだけ新聞やテレビで宣伝されているということは、それだけ多くの方が必要としているということです。
尿失禁とは、排泄障害の一種です。排尿障害とも言います。膀胱が十分にまたは、適切に機能しないことで起こります。尿漏れという言い方もあります。
実は、尿失禁は妊娠・出産を経験した女性であれば、多くの方が経験されるものでもあります。妊娠中、肥大した子宮や胎児の重みで膀胱が圧迫されたり、出産後に内臓を支える筋肉の骨盤底筋がゆるんで尿道が圧迫されやすくなったりすることで、長く尿失禁に悩まされることがあります。
妊娠中、トイレに行く回数が多くなったり、走ったりくしゃみをしたりしたら尿漏れしてしまったりと、生活にも不自由なことがあります。一時的な場合が多いですが、中には戻らずに、手術で骨盤底筋を再建する方もいらっしゃいます。
こうした尿失禁は、加齢によって高齢者にも起こります。そして、同じように生活の質にも、大きく影響を与えてしまうのです。
高齢者の場合は、加齢により排泄障害がおこります。これは、体の中の排泄機能の低下によるものです。加齢により、膀胱が萎縮して、中に溜めていられるおしっこの量を減少させます。それで、トイレに行く回数が増えます。
また、膀胱自体が固くなるので、しっかり出しきれずに、おしっこが残ります。それが残尿感につながります。これも、トイレの回数を増やします。
また、膀胱がいっぱいになったという感覚が鈍くなってきます。膀胱の許容量の限界という時に、やっと「トイレに行きたい」という感覚が来て、間に合わなくなることがあります。すると、「間に合わなかったらどうしよう」という恐怖感から、これもまた、トイレに行く回数を増やす原因になります。
では、まめにトイレに行けばいいのではないかという問題ではありません。
まず、生活の質の問題があります。いつもトイレの場所を確認しなくてはならないということは、外出に制限ができてしまいます。長時間の移動はできなくなりますし、大型ショッピングセンターなどは、トイレの数は多いですが、意外にトイレ間の移動距離も長いですし、作りも高齢者には把握しにくいです。トイレが原因で外出しづらくなることは、心身の健康によくありません。
また、トイレの回数が必要以上に増えると、尿道が細菌感染しやすくなり、尿道炎や膀胱炎の原因になります。腎臓の疾患につながることもあるので、こちらの方が問題は深刻です。
では、我慢してトイレの回数を減らしてはどうでしょうか。
高齢者の方で、こういった考えの方は、実は多くいらっしゃいます。トイレに行かなくて済むように、水分をなるべく控えて生活するという方法です。しかし、これは、大変危険な方法です。膀胱炎等は、水分不足で悪化します。そして、水分の不足は、脱水や、心疾患や脳卒中の原因にもなりかねません。
排尿に問題がある場合は、軽くても泌尿器科を受診しましょう。いえ、むしろ軽いうちに病院に行くことが大切です。そして、医師の指導のもと、治療を行いましょう。
単なる加齢による頻尿や残尿感だと思っていたら、重篤な病気が隠れている場合もあります。また、前立腺肥大などが原因の場合は、治療によって排尿障害がかなり改善することも期待できます。
介護職の方は高齢者が排尿に問題があるかも?と感じた場合はすぐに自己判断せず、まずは医師に相談するよう高齢者にすすめましょう。
※掲載情報は公開日あるいは2023年04月09日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。