更新日:2023年04月10日
公開日:2020年06月11日
介護職は、利用者を抱えて移動させたり中腰姿勢での作業が多いことから、腰痛に悩まされている介護職員は少なくありません。なかには、腰痛が悪化したことで仕事を続けられなくなる方もいるほど。そこで、まだ腰痛になっていない介護職初心者の方や最近腰がしんどくなり始めた方のために、腰痛を予防するための方法についてご紹介したいと思います。
では、さっそく見ていきましょう。
腰痛を予防する方法を見る前に、介護職に腰痛持ちの方が多い原因について見ていきましょう。介護職はなぜ腰痛になりやすいのかというと、利用者を抱きかかえたり無理な姿勢で作業したり、腰に負担がかかる仕事内容が多いからです。そのため腰の筋肉疲労が蓄積しやすくなり、腰痛を引き起こしてしまいます。
介護職のどんな姿勢や動作が腰に負担がかかるのか下記にまとめてみました。
【腰に負担がかかりやすい姿勢と動作】
(1)前かがみ・中腰
おむつ交換、体位交換、シーツ交換などの際に多い姿勢。
(2)腰の捻り・無理な姿勢
食事介助、入浴介助などの際にすることが多い動作。
(3)長時間同じ体勢
入浴介助などで腰に負担のかかる姿勢を長時間する。
(4 )持ち上げる
起き上がり、移乗介助などで利用者を持ち上げる際の動作。
(5)長時間の立ち仕事
休憩時間が少なく、立っていることが多い。
以上の5つの姿勢や動作が介護職で腰痛持ちが多い原因となります。
しかし、介護の仕事をするうえで上記の作業や姿勢は避けられないものばかりですよね。
介護職の仕事内容のうち、特に腰痛が起こりやすい作業は次の5つです。
【特に腰痛が起こりやすい作業】
●入浴介助
●移乗介助
●トイレ介助
●おむつ交換
●体位交換
どの作業も上記で挙げた“腰に負担がかかる姿勢”が含まれています。そのため、介護職で働く方は腰痛になるリスクが高くなってしまいます。
長時間同じ姿勢で作業をしていて、急に動きを変えようとする際はとくに腰を痛めやすく危険です。また、筋肉に疲労がたまると慢性的な痛みを感じるようになってしまいます。
さらに、長期的に腰へ負担をかけ続けると、何気ない動作でぎっくり腰を引き起こしてしまう原因にもなります。腰痛は一度なってしまうとなかなか治らないため、腰痛にならないように予防することがとても大切です。
では、どのように予防すればよいのでしょうか?予防のポイントについて見ていきましょう。
介護職は、どうしても腰痛になる危険がある作業や姿勢が多い仕事ですので、痛みがない時ほど予防をすることがとても大切です。
とくに、まだ腰痛になっていない方は腰痛を予防する3つのポイントと対策をおさえておきましょう。
腰痛を予防するポイント1つ目は、介助する際の姿勢を改善することです。適切な介護技術を身につけて、腰への負担を最小限にすることがとても重要となります。
まずは「腰を曲げたまま重い荷物を持ち上げる」「無理な体勢での動作」「同じ姿勢を長時間続ける」といったことを避けてください。
力任せの介護は、余計な体力が必要になるだけではなく姿勢の崩れから腰への負担が大きくなることがほとんどです。正しい体勢で介助するためにもボディメカニクスなどの技術を身につけることをおすすめします。
また、介助の前に声かけをして利用者自身の動きを引き出すことも腰への負担を軽減させることに繋がります。介助をする際に、なにも言わずいきなり身体を動かそうとすると、利用者がびっくりして無意識のうちに抵抗してしまい余計な力が必要になってしまいます。そうならないためにも「横向きに身体を動かしますね」「せーので立ち上がるのをお手伝いしますね」など、これからの動きやタイミングを伝えることで本人の協力を得られるので、介助に必要な力が少なくですみます。
[ポイント]
〇正しい姿勢を保つ
〇ボディメカニクスの技術を身につける
〇介助前の声かけ
[対策]
◇床に置いてある重い荷物など持ち上げる際は、荷物を身体の近くに寄せてからしゃがんで足の力を意識して持ち上げる。
◇腰より下での作業は、めんどくさがらずに膝を曲げてしゃがむ。(靴着脱の介助など)
◇体位交換は無理にベッド脇から手を伸ばして作業せず、片膝をベッドの上について正しい姿勢で作業をおこなう。
◇食事介助は、なるべく向かい側に座り身体を捻らないようにする。
ボディメカニクスとは・・・人間が動作するときに骨や筋肉、関節が相互にどのように作用するかといった力学的関係を活用したもので、最小限の力で身体介助をすることが可能になる技術。介助する側・される側どちらも身体的な負担を軽減することができます。
腰痛を予防する2つ目のポイントは、福祉用具や福祉機器を活用することです。
介助をする際、どうしてもご高齢者を抱き上げなくてはならない場合もあり、介助姿勢の改善だけでは完全に腰痛を防ぐことは難しいのも事実。そのため、介護状況などに合わせた福祉用具や機器を活用することで腰痛を防ぐことができます。とくに訪問介護をおこなっている方の場合は、施設のように福祉用具や機器が備わっていないこともあるため、利用者の自宅環境に合わせてうまく活用しましょう。
[ポイント]
〇自分の力だけではなく福祉用具・機器をうまく活用する
〇利用者の自宅に合わせた福祉用具・機器を選ぶ
[対策]
◇ベッドや車いすなどへの移乗介助の際、スライディングシート・ボードを活用する。
◇電動リフトがあれば使用する。
◇利用者を抱き上げる際は持ち手付き補助ベルトを活用する。
腰痛予防の3つ目のポイントは、しっかりと休息をとり身体のメンテナンスをおこなうことです。介護の仕事は、重労働な作業が多く疲労が蓄積されやすいため、日頃からのメンテナンスが大事になります。筋肉疲労からくる腰痛を防ぐには、しっかりと休息をとり腰や身体の疲労を回復させることが大切です。仕事中はこまめに休憩をとり、身体の疲労を回復させるためにも早めに就寝し十分な睡眠をとることを心がけましょう。
また、身体が硬い方は筋肉が硬いことが多く、とくに腰痛になるリスクが増えてしまいます。そうならないためにも、身体のメンテナンスとしてストレッチや腰痛予防のための運動をすることが必要です。ストレッチは、疲労回復だけではなく身体の柔軟性や身体的・精神的なリラックス効果を得られます。ストレッチをおこなう際は、筋肉を伸ばすことを意識して、ゆっくりと呼吸をしながらおこなうと効果的です。
筋力不足からくる腰痛を予防するためには、腰痛予防の運動がおすすめです。お腹や腰周りの筋肉を強化することで腰にかかる負担を軽減できるようになります。
※腰に痛みがある場合は、医師に相談してください。
[ポイント]
〇しっかりと休息をとる
〇疲労を蓄積させない
〇ストレッチをする
〇筋力を高める
[対策]
◇疲労を蓄積させないために、しっかりと睡眠を取り疲労回復させる。
◇入浴後や就寝前、起床後にはストレッチすることを習慣づける。
◇筋力が少ない方は、筋力アップのために運動や筋トレをおこなう。
「腰痛予防にはストレッチがいいと聞くけれど、本当に効果があるの?」
と思っている方は多いはず。
なかには、ストレッチをしても効果が無かったという方もいるかもしれません。
しかし、ストレッチは腰痛予防に効果があるということは事実。
なぜなら、アスリートの選手などが怪我を予防する目的から練習前後にストレッチをおこなっているように、身体の筋肉をほぐすためには欠かせないからです。
とくに、長時間の同じ姿勢や無理な体制をとることが多い介護職は、筋肉が固まりやすく疲労も蓄積されているため腰痛を引き起こしやすい状態といえます。そのため、介護職の方がストレッチをおこなうことは、腰痛を予防するためにもとても重要です。
ただし、効果があるのは「正しいストレッチ」をおこなった場合に限ります。ストレッチをしても効果を感じれないという方は、自分流でおこない十分に筋肉がほぐれていないことがほとんどです。ストレッチを効果的にするためにも、正しいストレッチ方法を習得しましょう。
正しいストレッチ方法を習得するのにおすすめなのは、整骨院などの先生から教わることです。しかし、わざわざストレッチを教えてもらうために行くのは面倒に感じますよね。
そこでおすすめなのが、整骨院の先生が配信しているストレッチの動画です。最近、SNSなどで自宅で簡単にできるストレッチ動画を配信している整骨院も多いため、正しいストレッチを家に居ながら覚えられます。
もし、腰に痛みがある場合は無理せずに安静にしておきましょう。痛みがなくなってからストレッチをおこなってください。
<腰のストレッチ>
1. 仰向けで床に横になります
2. 左膝を90度に曲げて右側に倒し腰をねじります
3. 右手で左膝を上から下に軽く押さえます
4. 左肩が浮かないように、顔は左に向けましょう
5. このままゆっくりと呼吸をしながら20秒ほどキープします
6. 反対側も同様に、左右交互に3回ずつおこないましょう
< 背筋のストレッチ>
1. 仰向けで床に横になります。
2. 右膝を両手で抱え込み、顔は少し起こしながら、ゆっくり10~20秒ほどかけて背中を丸めます。(息は止めずに、ゆっくり息を吸って10~20秒ほど吐きながら背中を丸めます)
3. 息を吸いながらゆっくりと元に戻し、左も同じようにストレッチしましょう。
3. 左右交互に5回ほどおこないましょう。
4. 次に、両膝を両手で抱えます。
5. 顔は両膝に近づけるように少し起こし、ゆっくりと背中全体を丸めます。(息は止めずに、ゆっくり息を吸って10~20秒ほど吐きながら背中を丸めます)
6. 息を吸いながらゆっくりと元に戻します。
7. ゆっくりと「丸める・戻す」を5 回ほど繰り返しましょう。
<太もものストレッチ(座ってできる)>
1. 椅子にしっかりと座ります。
2. (1)のとき、足は肩幅くらいに開きましょう。
3. 右足を持ち上げ、右足のふくらはぎを左足の太ももに乗せます。
4. 右手を右足の膝に乗せて、体重をゆっくりと前にかけていきます。(上半身を前に倒していく)
5. 痛みが出ない限界まで倒し、ゆっくりと呼吸をしながら20秒キープします。
6. ゆっくりと戻し、左足も同様におこないましょう。
7. 左右交互に2回おこないましょう。
ストレッチをおこなう際は、決して息は止めずにゆっくりと呼吸することを忘れてないようにしてください。
日頃のストレッチはお風呂上りなど身体が温まっているときにおこなうと、柔軟性が上がり効果が高まります。また、これから動き始める朝のストレッチもおすすめです。起床後のストレッチは身体がほぐれるため、朝からハードな仕事をしている介護職の方にはとくにおすすめです。太もものストレッチは、座ってできるので仕事の休憩中などにもおこなってみてください。
介護の仕事は、どうしても腰痛になりやすい作業や姿勢が多いため、予防をしていても腰痛になってしまうこともあるはず。
そんなときは、無理をせず安静にしておくことが一番大切です。
とはいえ、仕事はあるのでなかなか安静にしておけないのが現実ですよね。そんな方におすすめなアイテムが腰痛対策ベルトやコルセットの着用です。腰痛対策ベルトやコルセットが腰周りの筋肉をサポートしてくれて、痛みが出る姿勢を取らないようになるため腰への負担が軽くなり痛みが和らぎます。
ただし、痛みがないのに日常的に着用すると腰回りの筋力が弱ってしまうため、痛みがある時や重い物を持つときだけなど必要なときに使用しましょう。また、数日たっても痛みが引かない場合は、整形外科を受診し治療を受けることをおすすめします。
<腰痛が出たときの対処方法>
〇安静にする
〇腰痛対策ベルトやコルセットを着用する
〇ストレッチをおこなう(痛みが治まってから)
〇介助姿勢を見直す
介護職にとって、腰痛は職業病ともいえるほど多くの方が悩まされている症状です。
一度腰痛になってしまうと、腰痛になりやすい姿勢が多い仕事内容のため、痛みがなくなるまでには時間がかかってしまうでしょう。
そうならないためにも、まずは腰痛にならないように姿勢の改善や福祉用具の使用、そして疲労を溜め込まないように身体のケアをして予防することが大切です。
もし、痛みがひどい場合は疲労からくる腰痛ではなく他の病気の可能性もあるため、我慢せず早めに受診し医師に診てもらってください。
職場選びや面接に不安な方はぜひ介護ワーカーまでご相談ください。
求人のご提案、履歴書添削、面接同行まで・・・
経験豊富な専任アドバイザーがあなたの介護職デビューをサポートいたします!
<<アドバイザーに相談してみる(無料)>>
※掲載情報は公開日あるいは2023年04月10日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。