更新日:2023年04月11日
公開日:2020年06月15日
介護の現場で利用者がお薬を飲むときに手助けすることを「服薬介助」といいます。
これは一歩間違えると利用者の命にも関わってくるたいへん責任のある仕事です。
そこで本コラムではみなさんが服薬介助をするときに参考になるよう、服薬介助の注意点や
ポイントについて解説していきます。
ぜひ仕事に活かしてみてはいかがでしょうか。
はじめに、服薬介助とはそもそもどんな介助なのかというところから詳しく見ていきましょう。
利用者に処方されている薬について「どの薬を」「いつ飲むか」「何回飲むか」という種類やタイミングなどを全て介護士や看護師が把握したうえで利用者の服薬の手助けをすることです。
なぜ服薬介助をしなければならないのかというところですが、高齢者になると複数の薬を管理して飲まなければいけないことが多く、正しく飲めない場合があるためです。
もし薬を飲み間違えたり勘違いして同じ薬を同時に飲んでしまうことがあると、逆効果を引き起こす恐れがあるので介助をおこないます。
介助と言っても自力で飲める方は見守るだけで、確実に飲めているかを確認するだけのことが多いでしょう。
介護士が必ず服薬介助できるとは限りません。
それはなぜなのか、ここから服薬介助についてさらに詳しく深堀りしていきましょう。
一言で服薬を介助するといっても様々なケースがあり、なかには介護士がしてはならない服薬介助もあります。
それは以下のことに当たるケースです。
■高齢者の容態が安定していないとき
■薬による副作用のリスクや薬の量を調節したりと医師や看護師が経過観察をおこなわなければならないとき
■誤嚥のリスクがある方など医療的な知識が伴う介助をしなければならないとき
共通して言えることは、体調が急変するおそれのある方に関しては医者や看護師が対応しなければいけないということです。
また、3つのケースに当てはまらなくても、利用者の状態に変化がある場合は先にかかりつけの医師や看護師に相談しておくと事故のリスクも減らすことができるでしょう。
続いて、服薬介助において注意することを1つずつご紹介していきます。
服薬介助は次の5つに注意しましょう。
ベッド上での介助であればリクライニング機能を使い、背もたれの角度を30度~90度に調整するか横向きに姿勢を変えましょう。
背もたれがフラットなままであると気管や肺に水分が入り込んでむせてしまったり、酷い場合は誤嚥を引き起こしてしまいます。
また、可能であればイスや車イスに移乗し体が起きた状態で介助することをおすすめします。
イスや車イスの場合は以下のように姿勢を正しましょう。
・足を床にしっかりとつけ、やや前傾の姿勢になるようにあごを引く
・車いすの場合も、フットレストから足を下ろして床にしっかりつけ、やや前傾の姿勢になるようにあごを引く
あごが上がってしまうと飲み込みにくいため、あごを引くことで飲み込みやすく誤嚥を防ぎます。
薬を服用するにあたり必要な水分は基本的に「水」とされていますが、なかでも飲みやすくすると言われているのが「ぬるま湯」です。しかし、どうしても水に抵抗がある場合はお茶も可能です。
お茶で飲む場合は、カフェインの少ない麦茶や玄米茶が良いでしょう。
また、ジュースで薬を服用すると薬の効果が半減したり副作用を引き起こす可能性があるため絶対に避けましょう。
服用する薬の種類が多いと、飲むタイミングや個数が変わることがあるため管理が難しくなります。
飲み間違いが起こらないためにも、介護士が薬の種類や数をしっかりと確認したうえで、利用者に正しく服用してもらいましょう。
薬の飲み間違いや飲み忘れることを「誤薬」といいますが、その誤薬を防ぐための方法として利用者が服用する一回分の薬を一包化したり、服薬ボックスを作ることもおススメします。
薬を口に入れたがうまく飲み込めずに口の中に残ってしまうというケースもあり得ます。
なかには口に残っているのを忘れて吐き出してしまったり、その薬で誤嚥することも。
そのため、確実に飲み込めているかを口をあけてもらうことで確認することが大切です。
また、うまく飲み込めない原因として誤嚥を引き起こしている可能性もあるので、かかりつけの医師や看護師に相談しましょう。
高齢者が服薬をすると体調により副作用が起こる可能性があるので、薬を服用した後は体に変化がないか様子を見ましょう。
もし体に変化が現れたら、体を安静な状態にしてかかりつけの医師や看護師に報告するなどの対応をしましょう。
この5つの注意点をしっかりおさえておくことで事故を未然に回避できるでしょう。
次に、認知症の方の服薬介助をする際の注意点について見ていきます。
認知症になると「忘れる」「拒否する」などの症状が出てきます。
日常生活はもちろん服薬介助の際にも関わってくる問題ですので、しっかりと注意点を理解しておきましょう。
「もう飲んでますよ」と否定すると逆効果となり意地をはるようになります。
認知症の場合、自分が思っていることが事実であるためその時はそのままを受け止めましょう。
対策としてはラムネやサプリメントなど、見た目が薬に似ている治療に影響のない「疑似薬」を飲んでもらったり、薬のことから他に興味のあることに話を反らしてみるという方法もいいかもしれません。
服薬が必要でも認知症がある場合、自分には病気はないと思い込んでいたり、その薬に毒を入れられているのではないかと不安になることから、服薬を拒否する方も。
薬の味が苦手だという場合は、カプセルにしてもらったり、小児用のシロップに変更できる場合もあります。
また、ラムネやサプリメントなど利用者の薬によく似た疑似薬を用意し、介護士もその場で一緒に飲むようにすると安心して飲んでもらえることも。
それでも拒否が続く際は、どうしても服薬が必要な場合に限り、医師の判断や指示のもと食べ物に混ぜて服用してもらうことも可能です。
いずれにせよ自身だけで対応するのではなく、他の職員や医療機関、家族と連携していくことが大切になります。
次に、服薬介助におけるコツやポイントについて1つずつ解説していきます。
【錠剤・カプセル、粉薬・顆粒薬】
錠剤やカプセルを飲ませるときは、1つずつ舌の上に乗せます。
粉薬や顆粒剤の量が多いときや、飲み込む力が弱いときはオブラートに包んで何回かに分けて服用してもらいましょう。
また、「服用ゼリー」などの服薬専用のゼリーに包んで飲み込みやすくするなども効果的です。
舌下剤の場合、唾液で溶かして吸収させる薬なので、かみ砕いたり飲み込んだりしないように注意しましょう。
液体の場合、容器を振って中身を均一にしてから、コップや吸い飲みで少しずつ飲んでもらいます。
■薬を一包化にする
薬の種類が多いときは、前もって1度に服用する薬を一袋にまとめておくと包装から取り出す手間も省け、飲み間違いが減るでしょう。
常駐の看護師がいればその看護師に、いなければ調剤薬局などでセットしてもらうことを推奨します。
利用者の名前や服用時間が記載され少し費用がかかることもあるので、利用者や家族に相談してみましょう。
■薬の取り違えを防止する
利用者の名前と薬袋に書かれた名前が一致していることを必ず確認して、他の利用者の薬と取り違えないようにしましょう。
複数人の介助をしていても、薬袋は1回に1人分だけを扱うことを意識しておけば正確に介助できるでしょう。
■お薬カレンダーやお薬ボックスで管理する
お薬カレンダーとはカレンダーのように日付が書かれている透明なウォールポケットで、
お薬ボックスはボックス内が仕切られており、飲む薬を日付や時間で区切って整理できます。こうすることで飲むタイミングが一目でわかるので飲み忘れを防ぐことができます。
飲み薬がない場合は、「薬なし」という紙やカードを入れておくと分かりやすいでしょう。
続いて、実際に服薬介助するときの一連の流れについて見ていきましょう。
服薬介助は下記のような流れでおこなっていきましょう。
利用者の様子を伺い、姿勢を確認します。
↓
事前にお薬カレンダーやボックスに用意した利用者の薬とぬるま湯を用意して利用者の元へ。
↓
薬の名前と顔が一致していることを確認(できればその場で名前を声に出して言うと良い)します。
例えば「○○さんお昼のお薬をお持ちしました」など。
こうすることで利用者と自分でダブルチェックができ、間違いを防げます。
自立している方はそのまま渡して見守り、障害のある方は口に投入するなどの介助します。
↓
ぬるま湯で飲んでもらいます。普段むせこみがある方はとろみをつけた水で対応をしましょう。
↓
飲んだ後は飲み込めたかどうかを確認するため口の中を見せてもらいましょう。
↓
薬を飲んだことを忘れないように記録表などにチェックします。
以上の流れは基本的な流れとなります。
施設によって方法は変わりますので、ご自身が働く施設に合わせて介助しましょう。
服薬介助について解説してきました。
高齢者は歳を重ねるごとにつれ1度に数種類もの薬を飲むことが増え、介助が必要になる場合があります。また、薬の影響が体に出やすくなります。
薬の飲み方や使い方を一歩間違えると命に関わることもあるので、服薬介助をする場合は意識を高くもって真剣に取り組んでいきましょう。
利用者へ薬を持っていくところから飲み込むまでしっかり確認し、その後の様子も細かく見ていくまでが服薬介助です。
施設のルールを守り、細心の注意をはらいながら安全に介助をしていきましょう。
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