産休・育休制度は法で定められている労働者の権利です。
妊娠・出産しても今の仕事を続けたいとお考えの方が取得できる、産休・育休制度や各種給付金について詳しく解説します。
出産予定のある方は積極的に活用していきましょう。
介護職の方ももちろん制度を利用できます。ぜひ参考にしてください。
産休・育休制度とは
産休・育休制度は子どもの出産・育児をするにあたって取得できる制度で、日本の法律で定められている権利で、雇用形態、勤続年数に関わらず取得できます。
「子供を産んでからも今の職場で働き続けたい」と考える方が産休・育休を取得しています。
産休
産休には産前休業と産後休業があります。 ◆産前休業
出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)からの休暇で、請求すれば取得できます。 ◆産後休業
出産の翌日から8週間は、原則就業できません。これは法律で決められています。しかし産後6週間後に、本人が請求して医師が認めた場合には早期に復帰できます。 産前・産後休業は、出産するすべての女性が取得可能です。 育休
育休とは育児休業のことで、育児介護休業法で定められている制度です。 1歳未満の子どもを育てる労働者(男女不問)は、会社に申し出ると子どもが1歳になるまでの間で希望する期間、育児のための休業を取得できます。育休を取る1ヶ月前までの申請が必要で、取得するには一定の要件を満たしていなければなりません。 ■育休取得のための要件
・同一勤務先で1年以上働いている・子どもの1歳の誕生日以降も引き続き同じ勤務先で雇用される見込みがある・子どもが2歳になる前々日までに、契約期間の満了や契約更新されないことが決まっていない また、週の所定労働日数が2日以下の方や、日雇いの方は育休を取得できません。 いつからいつまで?産休・育休で休める期間
先ほど少しお伝えしましたが、産休・育休を使っていつからいつまで休めるのかは下記の通りです。 産休は出産予定の6週間前(産前休業:42日)から出産日の8週間後(産後休業:56日)までの計14週
(98日
)です。 育休も取得する方は、そこから引き続き育児休業となります。育休は子どもが1歳を迎えるまで取得できますが、希望によって短期間にすることも可能です。産休・育休あわせて約1年3ヶ月ほど
の休暇を取得できます。(※育休延長なしの場合) 育休の延長
育休の取得期間は原則子どもが1歳を迎えるまでの希望期間とされていますが、職場復帰が困難な事情がある場合に期間延長を認められることがあります。 例えば保育園の空きがなく待機児童となってしまう場合や、配偶者の病気・死亡と言った事情がある場合です。 平成29年の法改正により、事前申請で最大2年間の育児休業を取得できる
ようになりました。 産休・育休でもらえるお金
出産・育児をするにあたって、支給される給付金があるので確認しておきましょう。
■出産手当金
出産のために会社を休業し、給与支給がない場合に、健康保険から支給される手当金。支給額は1日あたり標準報酬日額の3分の2相当の金額となっています。 ◆対象者◆出産日より42日前(双子以上は出産日98日前)から出産翌日の56日後まで
の期間に休業した健康保険加入者 ■出産育児一時金
出産は疾病ではないため、保険適用外となり高額な医療費を全額自己負担しなければなりません。その出産費用の補助となるように健康保険から給付金が支給されています。それが出産育児一時金です。支給金額は通常、赤ちゃん1人につき42万円。双子以上の場合は出産した赤ちゃんの人数分の金額が支給されます。 ◆対象者◆健康保険加入者もしくは配偶者の健康保険の被扶養者で、妊娠4か月(85日)以上
経過した出産予定の者 ■育児休業給付金
育休取得者に国から支給される給付金で、産休(産後休業)が終了した翌日から子どもが1歳を迎える前日まで支給されます。育休を延長する場合は、育児休業給付金の支給期間も延長可能です。(条件あり、別途申請が必要) ◆対象者◆1歳未満の子どもがいる雇用保険の被保険者。なお、育休取得日から過去2年間で就業日が11日以上の月が12ヵ月以上
あること(一部例外あり)と、休業中に職場から賃金の80%以上を支払われていない
、かつ対象の期間中の休業日数が毎月20日以上
であることも条件となります。 産休・育休のメリット・デメリット
産休・育休はぜひとも利用していただきたい制度ですが、メリットだけでなく人によってはデメリットもあります。
産休・育休のメリット
◆メリット◆
・産後も同じ職場へ復帰することができる
・各種給付金を受け取れる
・子育ての時間を確保できる
・体調、生活リズムを整えられる
産後で体力が落ちている状態から、ゆっくりと生活リズムを整えていくことができます。育児と仕事の両立は本当に大変。子どもとの時間をしっかりと確保でき、家事や育児に専念できる
というのが何よりのメリットではないでしょうか。 産休・育休のデメリット
◆デメリット◆
・人間関係が気まずくなる可能性がある
・勤務体系が変化し(時短、夜勤なしなど)収入が減る
・所属や役職が変わる可能性がある
産休・育休を取得すると、主に復職後に苦労するというデメリット
が生じるでしょう。職場復帰をしても、子どもが熱を出して欠勤や早退せざるを得ない状況は頻繁に起こります。出産・育児に対する理解がない職場の場合は、復職後に働きづらくなる可能性があるでしょう。また休んでいた分、現場の勘を取り戻すのに多少の時間がかかるかもしれません。不安な方は休業中にしっかりと勉強してから復職することをおすすめします。 <あわせて読みたい!>コラム「ブランクがある介護士の復帰ガイド! 準備から志望動機の書き方まで」 介護業界の産休・育休の現状
産休・育休制度は職種にかかわらず利用できる権利です。
しかし現状ではこれらの制度を利用できていない介護職員が多数いることは事実です。
令和3年度の介護労働実態調査「介護労働者の就業形態と就業意識調査」によると、職場の特徴に関する質問で「仕事と育児・介護との両立を支援する制度を活用できる雰囲気がある」という項目に「はい」と回答したのは31.7%(19,925人中約6,316人)という結果でした。また、「仕事と子育てを両立しながら働き続ける女性が多くいる」という項目にも「はい」の回答者は36.9%(19,925人中約7,352人)でした。約65%の介護従事者が制度はあることを知りながら、暗黙の了解として活用できないと感じている
ようです。出典:令和3年度介護労働実態調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」こういった意見が多い背景には、介護業界の人手不足などがあります。忙しい中で産休や育休を取得するとなれば、他の職員がより忙しくなることは目に見えています。ともすると休暇を取ることで悪者のような扱いを受けてしまうかもしれません。産休や育休を取りたくても、言い出しづらく感じて諦める方も多いのではないでしょうか?実際に同調査の「前職をやめた理由」という問いでは「結婚・出産・育児のため」と回答した人は、全体の16.9%と2番目に多い割合
となっています。さらに男女別で見てみると、女性の回答は20.7%を占めており、最も多い退職理由
となっています。職種別では■訪問介護員・・・21.1%
■サービス提供責任者・・・20.1%
■介護職員・・・15.4%■介護支援専門員・・・11.9%となっており、特に訪問介護職員とサービス提供責任者
の割合は高く、訪問系の職種では最も多い退職理由となっています。このように産休・育休取得は労働者の当然の権利でありながら、介護業界においては利用できる環境が十分に整っていない
というのが現状です。 介護職で育休・産休を取るには
今後出産・育児の予定があり、産休・育休を取得したいと考えている人は、早めから準備を始めましょう。
妊娠が分かったら、いずれにしても働き方や業務内容の変更を余儀なくされるでしょう。
夜勤や力仕事はできるだけ代わってもらった方が安心です。
またつわりなどで体調不良になる可能性もありますし、通院で休むことも増えるかもしれません。
タイミングは個人の判断になりますが、早めに上司に報告することをおすすめします。
なお、今現在妊娠していない方でも、まずは職場の上司に「過去に産休・育休の取得実績があるか」の確認や「取得しても問題ないか」という相談はしてみてもよいでしょう。
妊娠・出産を計画的に考えている場合は、あらかじめ取得したいという旨を伝えておきましょう。
産休・育休制度の整った事業所へ転職もあり
そして「いずれは出産したいと考えているが、今の職場では休暇をお願いできない」という方は、産休・育休制度が整っている事業所への転職を
検討してもよいかもしれません。 介護事業所のなかには率先して出産・育児や介護をする方へのサポート制度を導入しているところもあります。比較的、経営母体の大きな事業所にその傾向があります。職員の人数が多くシフトに融通がきいたり、託児所や保育所を完備していたりと福利厚生が充実している場合が多いのでおすすめです。 ただし育休や給付金制度の利用には勤続年数などの条件があるため、早めの行動をおすすめします。 ここを見よう!求人のチェックポイント
無理なく産休・育休を取得できる求人を探すときは、求人欄に記載されて情報を必ずチェックしましょう。
福利厚生やおすすめポイントの欄に、以下のような内容が書かれているところがおすすめです。
産休・育休取得実績あり(前年取得実績100%)
主婦(主夫)活躍中!
産休・育休の制度はあっても実際に取得できなければ意味がありません。求人欄に「取得実績あり」と書かれているところは、実際に取得できる可能性がグッと上がるでしょう。 また主婦(主夫)活躍中などのと記載のある求人は、出産や育児に理解のある可能性が高いでしょう。同じ境遇の職員がいれば相談事やシフトの変更依頼などもしやすく、子どもがいながらでも働きやすいかもしれません。★介護ワーカーで求人を見てみる まとめ
産休・育休制度について、また介護業界での産休・育休の実態についてお伝えしました。 ■産休・育休のメリット
・産後も同じ職場へ復帰することができる・各種給付金を受け取れる・子育ての時間を確保できる・体調、生活リズムを整えられる ■産休・育休のデメリット
・人間関係が気まずくなる可能性がある・勤務体系が変化し(時短、夜勤なしなど)収入が減る・所属や役職が変わる可能性がある 介護業界では人材不足解消のためにも、雇用条件や福利厚生、労働環境面の改善は重要課題となっています。労働者の権利として利用できる産休・育休制度ですが、他職種と比べて浸透していないというのが現状です。 妊娠・出産しても介護職を続けたいという方は、転職も含めて産休育休を取得する方法をご検討ください。 ママさん介護士が働きやすい職場への転職は介護ワーカーへ!
結婚、出産をしても介護の仕事を無理なく続けられるところで働きたい!でも主婦(主夫)が働きやすい職場をどうやって探せばいいかわからない!そんな方はぜひ、介護ワーカーまでご相談ください!産休・育休制度や福利厚生が整っている事業所の求人や非公開求人も多数!経験豊富な転職アドバイザーが、あなたが無理なく長く働ける職場をご提案いたします。★介護ワーカーに相談する(無料) ※掲載情報は公開日あるいは2023年04月11日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。