更新日:2023年04月12日
公開日:2020年11月13日
今回は、介護におけるスーパービジョン(SV)とはどのようなことをするのかについてご紹介していきたいと思います。そもそも、スーパービジョンという言葉を知らない方、また聞いたことはあっても「実際にどのようなことをするのか詳しくは分からない」という方は多いのではないでしょうか?
スーパービジョンは、おもに介護施設の施設長やリーダーなど、職員の教育に関わる方が実施することがほとんどです。
介護施設のリーダーや教育担当になったばかりの方など、これからスーパービジョンを実施しないといけない立場になったという方のために、スーパービジョンの目的から進め方までまとめてみました。さっそく見ていきましょう。
介護におけるスーパービジョンとは、新人の介護職員(スーパーバイジー)が担当しているケースについて、施設長やリーダーなどの指導者(スーパーバイザー)に意見を求めること、また教育や指導を受けることをいいます。
たとえば、介護施設で働き始めたとき新人介護職員は右も左も分からないため、施設長から紹介された教育担当者が付くことがほとんどです。
新人介護職員は、業務が始まると分からないことや困ったことがあれば教育担当者に聞いたり相談したりします。教育担当者も「大丈夫?」「困っていることはない?」と声をかけて気にかけます。
この流れをスーパービジョンと呼びます。
上記のように、スーパーバイザーはスーパーバイジーが抱えている問題の理解や指導だけではなく「なにを考え、なにを感じ、なにを学ぼうとしているのか」を汲み取りながら、スーパーバイジーの学びを深めるサポートをおこないます。
スーパーバイザーは、おもに施設長や教育担当者などがその役割を担いますが、介護職のなかでスーパーバイザーの役割を求められる資格があります。
その資格が「主任ケアマネージャー(主任介護支援専門員)」です。
平成18年にできた主任ケアマネージャー資格は、その役割の一つに「他の介護支援専門員に対する助言・指導」が掲げられています。スーパーバイザーとして介護業界で働きたい方は、主任ケアマネージャー資格の取得を目指すとよいでしょう。
◎主任ケアマネージャー(主任介護支援専門員)について詳しく知りたい方は以下のコラムをチェックしてみて!
「主任介護支援専門員ってどんな資格?」
◎スーパーバイザーについて詳しく知りたい方は以下のコラムを読んでみてください!
「介護職でスーパーバイザーになれる!?介護業界での役割とは?」
スーパービジョンをおこなう目的は、スーパーバイジーが業務を全うするために「必要なこと」を身につけてもらうこと。
つまりスーパーバイジーが介護職員である場合、スーパーバイザーから仕事の指導やアドバイスをもらい介護職員としてサービスの質や技術の向上、そしてトラブルへの対処能力を上げることが目的です。
スーパーバイジーにとって“必要なこと” は、勤務している施設の種類や個人の背景、担当しているケース内容によって変化します。そのため、さまざまな状況を理解しアドバイスや指導をするスーパーバイザーには豊富な経験が必要となります。
スーパービジョンには、以下の5つの種類があります。
・個人スーパービジョン
・集団(グループ)スーパービジョン
・ピアスーパービジョン
・ライブスーパービジョン
・セルフスーパービジョン
それぞれのスーパービジョンの特徴や利点、欠点などについて詳しく見ていきましょう。
個別スーパービジョンとは、個人、個別でスーパービジョンをおこないます。
スーパーバイザーとスーパーバイジーは一対一の面談という形でおこなうため、さまざまな問題についてゆっくり時間をかけてスーパービジョンをおこなうことが可能です。
個別スーパービジョンは、他に人がいないためより深い問題を解決できるという利点がある一方で、双方の信頼関係が成り立っていないと問題解決に至らないという欠点もあります。
グループスーパービジョンとは、一人のスーパーバイザーと複数人のスーパーバイジーでグループ形式のスーパービジョンをおこないます。
グループスーパービジョンの利点は、複数人でおこなうことで様々な価値観や意見に触れることができ、スーパーバイジーの視野を広げられるという点です。しかし、個人スーパービジョンに比べると一人ひとりと向き合う時間が少なくなってしまう点はグループスーパービジョンの欠点といえます。
ピアスーパービジョンとは、上下関係の生じない仲間や同僚同士の間でおこなうスーパービジョンのことです。ピアスーパービジョンは、基本的にスーパーバイジー同士でおこなうため、それぞれがスーパーバイザーもしくはスーパーバイジーの役割を担います。ピアスーパービジョンは気心が知れた仲間とおこなうため、他のスーパービジョンよりもリラックスでき話しやすいという利点があります。しかし、立場が同じ同僚や仲間とおこなうため経験をもとにしたアドバイスなどが少ないという点はピアスーパービジョンの欠点です。
ライブスーパービジョンは、スーパーバイジーが働いている場面にスーパーバイザーが同席し、その場でアドバイスや指導をおこなうことです。実際に利用者と接しながらスーパービジョンをおこないます。
ライブスーパービジョンでは、実践場面で起きていることを中心にスーパービジョンをおこなうため、質問や困っていることに対しての返答や必要としているアドバイスをすぐにすることができるという点が利点です。
反対に欠点を挙げるとするならば、スーパーバイジーが緊張してしまうと普段の力を発揮しにくくなってしまうということです。
セルフスーパービジョンとは、自分自身で振り返りをおこなうスーパービジョンです。
問題が起きた際、自分自身がスーパーバイザーとなり「出来事・自身の気持ち・自分の行動・その結果」などの状況や記録などを活用して、その時の自分を客観視します。自分自身で行動を確認し自己点検や評価をおこないます。
セルフスーパービジョンの利点は、場所や時間を自分で決められるということです。欠点としてはスーパーバイジーの経験が浅い場合、違う視点から問題を見ることが難しいこと、また問題に対しての助言がしにくいということです。
スーパービジョンをどのように進めていけばよいのか分からないという方のために、スーパービジョンの進め方についてご紹介します。
おもなスーパービジョンの流れとしては以下の(1)~(3)の順に進めていきます
(1)事前準備
(2)スーパービジョンの実施
(3)総評する
個人スーパービジョンの場合で見ていきましょう。
■事前準備:スーパーバイジーに自己診断をしてもらう
まず、スーパーバイジーが現在の自分自身をどのように感じているのか、今どのような状態なのかを自己診断してもらいます。
スーパーバイザーはその自己診断を確認したうえで、スーパービジョンの進め方について考えていきます。
■スーパービジョンの実施
スーパービジョンは「課題を聞き出す」「課題について協議する」「見守り・助言・振り返り」の過程を繰り返してスーパーバイジーの成長に繋げていきます。
スーパーバイジーによるスーパービジョンのプログラム期間は1年を一つの区切りとしており、数ヵ月おきにスーパービジョンを実施し、開始から12ヵ月後に総評をおこないます。
1:課題を聞き出す
スーパーバイジーが抱えている問題はどのようなことなのか、また解決するにはどうすればよいのかなど、成長に繋げられるように解決すべき課題をはっきりさせていきます。
2:課題について協議する
解決すべき課題が明確になったら、その課題について話していきます。
スーパーバイザーは、課題をどのように解決すればよいのかをスーパーバイジーが気付けるように話しを進めていきます。時には、自分の意見を伝えたり指摘したり、励ましたりしながらスーパーバイジーへの理解を深めながら関係を構築していきます。面談の最後に、スーパーバイザーは解決策に繋がる課題をスーパーバイジーに出します。
スーパーバイジーは課題について協議することで、他社の意見や指摘、考えに触れ、自分とは違う視点に気付くことができます。視点が変わることで見えてくる新たな課題の発見や課題を乗り越えるためにどうしたらよいのかを自分で思いつくことができるようになります。
3:見守り・助言・振り返り
スーパーバイザーは、スーパーバイジーの気付きなどをもとに課題をだし、課題への取組みや、実行している過程を観察します。
そして、その課題をもとにスーパービジョンをおこない、スーパーバイジーに振り返りをしてもらい、必要に応じて助言や見守りをおこないます。
■総評する
1年間のスーパービジョンのプログラム終了後、どのような変化が起きたのかを確認していきます。総評し1年間の成果を確認することで、翌年のスーパービジョンに向けたまとめをおこないます。
スーパービジョンをスムーズに実施するポイントについて見ていきましょう。
ポイントは以下の5つです。
POINT1|スーパーバイジーが話しやすい雰囲気をつくる
POINT2|スーパーバイジーに焦点を向ける
POINT3|スーパーバイザーは話しすぎず、適切に意見しスーパーバイジーの不安を和らげる
POINT4|指導とスーパービジョンを混同してはいけない(指導的、指示的、威圧的な態度はNG)
POINT5|スーパーバイジーが納得しているかを意識する
スーパービジョンを円滑に実施するには、スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係が良好であることが大切です。そのためにも、スーパーバイザーはスーパーバイジーが話しやすくなる雰囲気作りを心がけておきましょう。また、スーパーバイザーは事例ではなくスーパーバイジーであるその人に焦点を向け、自分が話しすぎないようにすることが重要です。
スーパービジョンを上手く活用することによって、人材育成はもちろんバーンアウト(燃え尽き症候群)や業務意欲の喪失、マンネリ化を防ぎ離職防止につなげることができると言われています。
スーパービジョンは、介護施設のリーダーや教育担当者がスーパーバイザーとなり実施しますが、同僚同士や先輩後輩との間でもおこなうことは可能です。
スーパービジョンの内容は、これまでも同僚同士や先輩後輩との間でやってきた「相談乗る」ということに似ています。しかし、相談を受ける側のスーパーバイザーが進め方をきちんと理解し実施することで、スーパーバイジーは自分の課題に気付ける力や視点を変えて問題を見る力を身につけることができるようになります。
今後、介護施設などの教育に関わる方だけではなく、後輩がいる介護職員の方も同僚同士などでおこなうピアスーパービジョンから始めてみるのもいいかもしれません。
職場選びや面接に不安な方はぜひ介護ワーカーまでご相談ください。
求人のご提案、履歴書添削、面接同行まで・・・
経験豊富な専任アドバイザーが親身になってお仕事探しをお手伝いします。
<<アドバイザーに相談してみる(無料)>>
※掲載情報は公開日あるいは2023年04月12日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。