更新日:2023年04月13日
公開日:2021年02月09日
「看取る」というと、病院での看取りや自宅での看取りが一般的かもしれませんが、最近では高齢者施設での看取り介護が増えてきています。
介護職員のなかには、突然の看取りの機会に不安を感じている方もいるのではないでしょうか?
本コラムでは看取り介護とは何か、どのような介護が必要なのか、施設での内容を中心に解説していきます。
ぜひ参考にしてください。
看取りとは、「近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること」。
(※全国老人福祉施設協議会 看取り介護実践フォーラムにて)
無理な延命治療をせずに、高齢者が自然に亡くなられる過程を見守るケアをするのが看取りです。
看取り介護と同じような考え方として、「ターミナルケア」というものがあります。
これは終末期医療と訳されることが多いです。
人生の最終段階においては、「死にゆく最期まで延命治療を続ける」のか「延命治療は行わずに穏やかな死を迎えられるよう見守る」のかという選択が必要になりますが、ターミナルケアも看取り介護も後者にあたります。
できるだけ利用者(患者)の苦痛を和らげ、その人の尊厳を守り、無理な延命治療は行わないという方針において共通している両者ですが、違いもあります。
それは医療ケアを行うかどうかという点です。
看取り介護は、日常的なケアが中心です。
清拭や褥瘡のケア、体位変換など、身体的・精神的苦痛を緩和する介護を行なっていきます。
一方ターミナルケアでは、上記のような介護に加えて、医師の判断に基づいた点滴や酸素吸入などの医療ケアを重点的に行います。
現在の日本で、看取りの場所として最も多いのは病院です。およそ8割近くを占めます。
そして、後の2割が自宅や介護施設での看取りです。
病院、自宅、介護施設、それぞれの看取りついて見ていきましょう。
◆病院での看取り
全体の約8割近くの方が、人生の最期を病院で迎えています。
病院での看取りは多くの場合、点滴などの医療ケアを実施するターミナルケアの対応となるでしょう。
医師の指示に基づき、苦痛を緩和するための医療処置がとられます。
また患者のご家族には、必要に応じて医師からの病状説明などを行います。
◆在宅での看取り
在宅での看取りは、ご家族、医師や看護師、ホームヘルパー等の連携が大切になります。ケアマネージャーも大きく関わることになるでしょう。
死を迎えるにあたって、多くの方が在宅での最期を希望されますが、実際に在宅で最期を迎えられる方は約13%です。
今少しずつ在宅医療の体制が整備されていますが、実際には「家族に負担をかけたくない」という本人の思いや、「独り身で頼れる親族がいない」といった課題もあり、在宅での看取りは簡単なことではありません。
◆介護施設での看取り
ここ数年は介護施設での看取りが増加傾向にあります。
医療での回復が見込めず、在宅介護もできないといった場合などに、介護施設で最期を迎えたいという方が多くおられます。
特に介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は比較的、要介護度の高い方が入居され終の住処ともいわれています。
特養で働く職員は、利用者の看取り介護を行い、死に立ち会うことも珍しくないでしょう。
高齢者施設の数は年々増加しています。
今後、団塊の世代が平均寿命を迎える2040年頃にかけて療養病床が不足していくことを考えると、高齢者施設での看取り介護はますます増加していくことが予想されます。
介護施設での看取り介護では主にどのようなケアを行うのでしょうか。
看取り介護の内容をお伝えします。
看取り介護には段階があります。
入所から逝去されるまでが介護の期間になりますが、その期間は一般的に
適応期 ↓ 安定期 ↓ 不安定・低下期 ↓ 看取り期 |
という経過をたどります。
入所時点での看取り介護計画がその通りに実行されるとは限りません。
利用者の状態やご家族の意向に合わせて、適宜変更しながら看取り介護を進めていく必要があります。
参照:特別養護老人ホームにおける看取りの推進と医療│厚生労働省
まずは利用者に対して必要な支援についてです。
◆身体的ケア
・バイタルサインの確認
・居室の環境整備
・清拭(入浴)・褥瘡ケア
・口腔ケア
・排泄ケア
・体位変換
・栄養・水分補給
・身体的苦痛の緩和
・定期的な居室巡回
◆精神的ケア
・コミュニケーション
・スキンシップ
・人権、プライバシーの尊重
・安心できる環境の提供
ターミナルケアを行う場合には、ここに点滴などの医療処置が加わります。
看取り介護の方針が決まったら、居室の温度や明るさに配慮するなど環境整備を行い、利用者ができるだけ安らかに過ごせる環境を作らなければいけません。
定期的な巡回とバイタルチェックで、利用者の些細な変化にすぐに気づけるようにしておきましょう。
それらは記録に残し、何か変化があれば随時ご家族の方にも報告します。
清拭や口腔ケアといった清潔保持にも気を配りましょう。
決して利用者の負担にならないようなケアを心がけてください。
排泄の状態変化(尿便の量・色など)にも注意が必要です。
また身体的苦痛の緩和に努めましょう。
ベッドマットの変更や体位交換などで安楽できるよう調整してください。
死の直前になった場合(危篤時)には、どんな小さな変化でも看護師に報告して記録します。
そして、できるだけ本人のそばにいて声掛け・スキンシップを図りましょう。
聴覚は最期まで保たれます。枕元で手を握り、声をかけあげてください。
ご家族が来られている場合は、ご家族にお願いしてください。
次に、ご家族に対して必要な支援です。
・ご家族の身体・精神面への配慮
・ご家族の希望、心配事への対応
・専門職種・専門機関へ相談できる環境整備
・死後のサポート(グリーフケア)
看取り介護は、利用者だけでなく、そのご家族にも配慮・支援が必要となります。
介護疲れによる精神的負担を抱え、不安定な精神状態であるご家族への配慮は必要不可欠です。
できる限りご家族の希望や心配事を傾聴し、 不安の軽減に努めましょう。
また死後の処置に対する希望の受け入れなども必要となります。
看取り介護は、多くの介護施設で可能です。
特別養護老人ホームや有料老人ホームでの看取りが一般的ではありますが、例えば在宅復帰を目的としている老人保健施設(老健)でもターミナルケアを行うことが可能です。
医師や看護師、専門職と連携し、積極的に看取りを行なっているところもあります。
ただしデイサービスなど通所介護施設での看取りは、ほぼ行なわれていないでしょう。
また入所施設であっても、職員への教育や医療機関との連携が難しいなどの理由で看取りを行なっていない場合もあります。
看取り介護加算というものがあります。
医師、看護師、介護職員が連携して看取りをする場合に算定できます。
加算対象となる施設は
・特別養護老人ホーム
・グループホーム
・有料老人ホーム
などです。
看取り介護加算の算定には以下の条件をすべて満たしていなければいけません。
看取り介護加算の算定条件 |
---|
・常勤看護師を1名以上配置し、看護職員との連携による24時間の連絡体制があること。 |
・看取り指針を定め、随時、本人・家族等に説明し同意を得ていること。 |
・看取りに関する職員研修を実施していること。 |
・医師の医学的知見に基づき、回復の見込みがないと診断された場合であること。 |
・利用者や家族の同意を得て、介護計画を作成されていること。 |
・医師、看護師、介護職員等が協議し、随時、看取りに関する指針の見直しを行うこと。 |
・看取りを行う際に個室または静養室が利用できるよう配慮すること。 |
また別途、ターミナルケア加算というものもあり、訪問介護や老人保健施設、療養型介護老人保健施設などが加算対象となっています。
看取り介護について解説しました。
高齢者施設での看取り介護においては、施設内で行える医療処置が少ないことや、職員の看取りに関する経験や知識が不足しているといった課題もあります。
夜間や急変時の対応に不安を感じている介護職員も少なくないでしょう。
今後も増えていくであろう介護施設での看取り介護。
看取り期の利用者やご家族への対応など、看取りについての理解を深めていくこと、またチームケアの充実が求められています。
利用者やご家族にとってかけがえのない豊かな時間となるように配慮することが何よりも大切です。
そして、利用者を看取る最期まで、人格を持った人として接するということを忘れないようにしましょう。
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