更新日:2023年05月29日
公開日:2021年02月10日
病院や介護施設で働く介護士さんには避けられない話題である「看取り」。
最期を迎える人の心にどう寄り添っていくべきなのか、悩んでいる介護士の方も多いのではないでしょうか?
介護ワーカーを運営するトライトグループでは、令和3年1月14日(木)に「スピリチュアルケア」をテーマにしたオンラインセミナーを開催いたしました。
(※イベントは終了しています)
看護師であり僧侶でもある玉置妙憂さんをお呼びして、
終末期の患者さんの「全人的苦痛」のひとつである「スピリチュアルペイン」に対して、最期を支える専門職としてどう関わっていくべきなのか、看取りの心構えや向き合い方を指南していただきました。
今回はそのイベントレポートをお届けいたします。
2025年には、国民の5人に1人が75歳以上という超高齢社会を迎えると言われています。
高齢化に伴い、病院や介護施設でも看取りについて話をしたり、考える機会が増えているのではないでしょうか。
また、昨今では在宅診療・介護の需要も増えており、
令和2年6月時点での訪問看護ステーション数は11,931件と、10年前から比べると約2倍となっています。
(参考:訪問看護ステーション数調査(全国訪問看護事業協会)
地域包括ケアの時代と言われている中、
「その人が住み慣れた場所で最期を迎える」ということにも、注目が集まっています。
高齢化や在宅診療が進む中、日々病気と闘う方と接する介護士のみなさんにとっても、
最期を迎える人にどう寄り添っていくのかは、今後の課題となってくるのではないでしょうか。
スピリチュアルペインとは、終末期の患者さんに対して着目すべき4つの苦痛である「全人的苦痛」のひとつ。
「身体的苦痛」、「社会的苦痛」、「精神的苦痛」、「スピリチュアルペイン」のうち、最も根源的なものであると言われています。
体が痛くて辛い、働けずに社会との関わりがなくて不安、といった悩みと違い、
「なぜこんなに苦しいのに、生きているんだろう」
「周りに迷惑をかけて、自分には生きている価値がないのではないか」
といった、生きる目的や生への価値について、悩み苦しむことを指します。
たとえば、目の前の患者さんに「どうせ治らない病気なのに、なぜ家族に迷惑をかけてまで生きなければいけないのだろう」と言われたとき、介護士として、あなたならどう返しますか?
同じ境遇ではないのに、「心に寄り添う」とはどうしたら良いのでしょうか。
玉置さんは、「簡単に言えば、お話をお聴きするだけ」と仰っています。
人として向き合い、じっくりと話をすることが、心の痛みをほぐす第一歩なのかもしれませんね。
今回のオンラインセミナーでは、まずはスピリチュアルペインとは何か?から始まりました。
スピリチュアルという言葉が医療・看護の業界に入ってきたのは2000年頃。
WHO(世界保健機関)が「人間の健康とは何か?」という定義を見直す中でスピリチュアルについて触れ、そこから医療・看護の中にスピリチュアルという言葉が入ってきました。
玉置さんは、人は生まれたときからスピリチュアルの小さな箱を持っていて、そのスピリチュアルの箱のふたが開いたとき、魂の声(=スピリチュアルペイン)が聞こえてくると言います。
また、玉置先生が考えるスピリチュアルケアについてもお話ししていただきました。
スピリチュアルケアとは、ケアをする人(自分)の力・ケアをされる人(患者、利用者)の力・場(病院、施設など)の3つの力が合わさって作られた空間や時間の中で、対話が終わって初めて生まれるもの。 スピリチュアルケアを"する"という言葉は本当は存在しておらず、 相手との対話が終わった後、「今日は話を聞いてもらってよかった」と言ってもらえて初めてスピリチュアルケアになる。
玉置先生が自分の力を上げていくための"妙憂の13の戒め"など、ご自身がスピリチュアルケアにどのように向き合っているのかを熱く語っていただきました。
また、玉置さんからは、ケアする自分自身のケアについてもお話しいただきました。
自分のコップが満たされていなければ他者に利(=他利)を与えることはできない。 まずは自分のコップを満たし、満たしたコップから相手にお水をあげること。 自分の利益(=自利)が満たされていれば、相手の反応を気にすることなく与えることができ、与えただけの利益が巡ってくる。その循環が生まれると、コップの水は枯れることなく巡っていきます。
玉置さんは、それを「二利を回す」と仰っていました。
自分の心のケアをすることは、決して悪いことではありません。 まずは自分自身の心のケアをして、豊かな気持ちを持って患者さんや利用者さんに向き合っていきたいですね。
スピリチュアルケアの本質とヒントをいただき、考えていく道筋が少し見えたような気がする。丁寧に対応していきたい。
必ずしも答えが必要ではないことがわかり、聞いてあげるだけでいいのだとわかった。楽になった。自分から語らない方もいるので、探っていけたらと思う。
相手の方に接する時の、自分の気持ちを大切に、その前に自分自身のケアもしっかりしていこうと思えました。
自分の在り方について、見つめ直す良い機会になりました。
など・・・
多くのご意見ご感想をいただき、ありがとうございました。
今回のセミナーは、事前にお申込みいただいた方にURLを共有しWEB上で開催、合計48名の方に全国からご参加いただきました。
2月10日(水)19時30分には、セミナー第5回として、医療福祉に関わる専門職向けに、「災害」×「ローカルキャリア」をテーマにしたオンラインセミナーを開催いたします。
東日本大震災を機に石巻市に移住、理学療法士の資格を持ち障害福祉事業の代表を務める横山翼さんをお呼びし、専門職の働き方について、お話ししていただきます。
ご興味のある方は、是非以下のURLよりお申し込みください。
・参加方法:https://peatix.com/event/1781414
※掲載情報は公開日あるいは2023年05月29日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。