更新日:2023年04月13日
公開日:2021年03月18日
介護・医療現場では「ヒヤリハット」の取り組みを実施しているところが多くあります。
このヒヤリハットとは一体どのようなものなのでしょうか。
また介護現場におけるヒヤリハットとはどのような事例があるのでしょうか。
本コラムでは
・ヒヤリハットとは何か
・ヒヤリハット報告書に書くこと
・報告書を書くときの注意点
・介護現場のヒヤリハットの事例
といった内容を、わかりやすく解説していきます。
介護現場において、幸い重大な事故や災害にはならなかったものの、もう少しで怪我をするところだったというような場面があります。
例えば「ベッドから車椅子への移乗介助時に、危うく利用者さんを転倒させてしまうところだった」といったシチュエーションです。
このように、もしかすると事故・災害につながったかもしれない「ヒヤッ」「ハッ」とした危ない状況のことを「ヒヤリハット」といいます。
「ハインリッヒの法則」という労働災害の発生比率を分析したものがあります。
その法則よると「重大な事故が1回あった場合、29回の軽傷事故(かすり傷など)、300回の傷害のない事故(物損やヒヤリハットなど)が発生している」といわれています。
ヒヤリハットの事例を集めてしっかりと対策を行えば、労働災害を未然に防ぐことができます。
介護・医療業界、あるいは製造業など多くの職場において、重大な事故を未然に防ぐための取り組みとしてヒヤリハットの報告・共有が行われています。
同じようなヒヤリハットを繰り返さないようにするためにも、職場内での報告・共有・改善が重要になります。
実施する目的はそれだけではありません。
職員一人ひとりがヒヤリハットを意識することで、介護サービスやケアの質の向上が期待できるでしょう。
また利用者やご家族へ事故やヒヤリハットの状況説明が必要になった際、報告書を作成しておくことでスムーズに説明や話し合いを進めることができます。
トラブルから職員を守ることにもつながるのです。
忙しい中で記録を残すことは負担になるかもしれませんが、重要な意味を持ちますので、職場のルールに従って必ず行いましょう。
ヒヤリハットの報告・共有は、各介護事業所の判断で実施されています。
職場によってルールは異なりますが、報告書を作成して提出する方法が一般的で、作成するのはヒヤリハットの体験者です。
ヒヤリハット報告書に書く主な内容は下記の項目です。
・氏名(役職)
・発生日時
・発生場所
・何をしていたときに
・どのような危険を感じたか
・どのような原因が考えられるか
①作業環境の問題
②設備・機器の問題
③作業方法の問題
④体験者自身の問題
・なぜこのようなことが起こったのか
・今後の対策としてできること
報告書に書かれたこれらの内容をもとにヒヤリハットを職場全体に周知し、同じような事例の再発防止対策を講じます。
報告書は、自分以外の人が読んで理解できる内容になっていなければいけません。
基本ルールとして、
以上の点を守ってください。
そして誰もが理解できる報告書を書くために、次の4つのことを意識して書きましょう。
・5W1Hを使う
・箇条書きや短文で簡潔に
・客観的な視点を持つ
・専門用語や難しい言葉を使わない
「5W1H」という言葉は皆さんも耳にしたことがあると思います。
報告・連絡・相談をする際の基本の型で、必要な情報を漏れなく伝えることができます。
When いつ
Where どこで
Who 誰が
What 何を
Why なぜ
How どのように
ヒヤリハットの状況説明でも、この5W1Hに当てはめながら説明をするとわかりやすいでしょう。
できるだけ箇条書き、短文で書くことを心がけましょう。
長文になるほど、読んで内容を理解するのに時間がかかってしまいます。
要点を整理して簡潔に書くことで、必要な情報だけをすぐに理解することができます。
客観的な視点を持って書きましょう。
言い訳や誰かのせいにするような書き方はしないように気をつけてください。
ヒヤリハット報告書は、責任追及のためではなく、起こった事象を正しく知り再発防止に取り組むために行うものです。
したがって、一旦個人の主張は置いておき、まずは客観的に事実を伝えることが大切です。
なおヒヤリハットが起こった背景や原因を推察して書く場合には、事実と見解が区別できるように分けて書くとわかりやすいでしょう。
また「これは書かなくてもいいかな?」と思った些細な内容でも、個人で判断せずに記録を残しておくことをおすすめします。
ヒヤリハットの報告書は行政や利用者のご家族など第三者に開示する場合があります。
職員にしかわからない隠語・略語、難しい専門用語を使って書くことはなるべく控えたほうがよいでしょう。
誰が読んでもわかりやすい表現で書くことを心がけてください。
介護現場で起こるヒヤリハットの事例をいくつかご紹介します。
あなたの職場でも同じようなことが起こってないでしょうか?
参考にしてください。
車椅子を自走している利用者Aさんを、歩行できる利用者Bさんが後ろから押して手伝っていました。
Bさんは認知症があり、一度注意しても目を離せばまた同じことをしようとします。
利用者同士の助け合いは、事故につながる可能性が高く危険です。
車椅子の手助けだけでなく、例えば、食事を食べさせてあげようとすることもあるでしょう。
たとえ利用者らが「大丈夫」と言っても、すぐに止めなければいけません。
このような場合には、必ず職員が付き添うか見守ることを徹底する必要があります。
熱いお湯に長時間浸かるのが好きな利用者さん。
「もうちょっと浸かりたい」「もっと熱いお湯がいい」という希望に従っていたら、その結果のぼせてしまわれ大変でした。
入浴後も気分が悪い状態が続きぐったりとされており、その後1時間ほど涼んで回復されましたが反省です・・・。
入浴時は湯加減に注意が必要です。
特に心臓の持病がある方などはぬるめの温度にするなど特に気を配らなければいけません。
利用者の希望を鵜呑みにせず、必ず様子を伺い、すぐに体調の変化に気づけるようにしましょう。
ベッドから車椅子への移乗介助の時です。
利用者さんの体を支える際に上半身をしっかりと引き寄せられず、また私の足を置く位置も悪かったため不安定な状態になりました。
幸い怪我などはなかったですが、危うく利用者さんの足が車椅子に引っかかって転倒するところでした。
移乗介助は片マヒがある利用者さんの場合には特に注意が必要です。
体を預けてもらえず、うまく動きを取れないこともあります。
職員1人で介助しにくい利用者の方は、無理な体勢のまま行うことは避け、必ず職員2人で介助しましょう。
つい今まで通りのペースで食事介助を行なってしまい、利用者さんから「そんなに急いで食べられない」と注意を受けてしまいました。
その時初めて、利用者さんの飲み込みが前より悪くなっていることに気がつきました。
その後、今までよりもゆっくり少量ずつ口に運ぶようにしたところ問題なく食べてもらえるようになりました。
忙しいからといって急かしたり、早く食べさせようとするのは誤嚥につながる危険性があるので絶対にやめましょう。
また食事形態のチェックも欠かせません。
一口大の食事が飲み込みづらいようであればきざみ食やとろみをつけた食事に変えるなどの対応が必要になります。
利用者さんの食事のペースや飲み込み具合に普段から意識を向けておくことが大切です。
介護現場での事故やアクシデントを100%なくすことはできないと思います。
しかし、日頃からヒヤリハットの取り組みを職場全体で実施することで、大きな事故を未然に防ぐことはできるのではないでしょうか。
今回ご紹介したヒヤリハットの事例はほんの一部でしかありません。
現場では日々さまざまなヒヤリハットが発生しているでしょう。
安全な職場づくりのため、職員一人ひとりが些細な変化・違和感に気づき、ヒヤリハットを積極的に報告・改善していくことが大切です。
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