更新日:2023年04月13日
公開日:2021年04月01日
拘縮がある方のケアが難しいと感じている介護職員の方も多いと思います。
実は拘縮には種類があり、それぞれに原因や対策、ケア方法などが異なるのです。
これらを正しく理解したうえでケアを行うことが重要となります。
本コラムでは、拘縮を持つ利用者さんの介助をスムーズに、かつ負担をかけることなく行うにはどうすればいいのかお悩みの介護職員さんに向けて
・拘縮の種類
・ケアのポイント
・ポジショニング
・拘縮予防
などについて解説していきます。
拘縮(こうしゅく)は関節の動きが制限されて動かしにくくなってしまう状態のことをいいます。
動かさなくなった関節周りの皮膚や筋肉などの組織に、コラーゲン繊維が蓄積して硬くなってしまうためです。
拘縮で関節可動域が狭くなった部位を今まで通りに動かすことは困難で、無理に動かそうとすると痛みを伴います。
そのため「体を動かすことを苦痛に感じる→動かなくなる→拘縮が進む」という悪循環に陥ります。
まず初めに理解しておきたいポイントとしては、拘縮には種類があるという点です。
◆筋性拘縮
筋肉の衰えや関節が長期間固定されていたことなどによって生じる可動域制限。
怪我や病気などで寝たきり状態になった場合に多くみられ、全身拘縮している傾向にあります。
◆神経性拘縮
神経系の疾患によるマヒや痛みで生じる可動域制限。
脳卒中など脳神経系の病気や事故の後遺症などで多くみられる拘縮です。
既往歴に脳神経疾患があれば、神経性拘縮の可能性が考えられます。
◆皮膚性拘縮
熱傷や炎症などでできた傷痕に引きつられて生じる可動域制限。
瘢痕(はんこん)拘縮。皮膚が弾性を失った状態になります。
◆結合組織性拘縮
皮下軟部組織・靭帯や腱などの結合組織が短縮、癒着することで生じる可動域制限。
生活習慣によって発症する場合や、外傷や術後の修復過程でも起こりうる拘縮です。
◆関節性拘縮
滑膜・関節包・靭帯などが炎症、損傷によって癒着することで生じる可動域制限。
骨折や脱臼などの治療過程でも発症しやすい拘縮です。
拘縮はこれら5つに分類されています。
皮膚性拘縮は皮膚科や形成外科での治療、また結合組織性拘縮や関節性拘縮の場合は整形外科での治療が必要になるでしょう。
また原因が特定できない(特発性)拘縮もあるようです。
拘縮の種類によってとるべき対策や治療方法は異なりますので、この点をしっかり理解しておきましょう。
高齢者の拘縮は加齢によるものや、他にも病気や怪我が原因となって生じるケースが多くみられます。
廃用症候群や運動器症候群(ロコモティブシンドローム)とも深く関係します。
いずれにせよ、それらをきっかけとして寝たきりになったり身体を動かす機会が減ってしまったりすることが最も大きな要因です。
拘縮が生じた際に正しいケアやリハビリを行うことはとても大切ですが、治療が難しい場合もあります。
したがって、拘縮が起こる原因を前もって予防していくことも非常に重要になります。
■コラム「ロコモティブシンドロームを防ごう」
■コラム「安静状態の高齢者をむしばむ廃用症候群とは?」
拘縮が起こりやすいのは、
・手指
・肩
・肘
・股
・膝
・足
などの関節部位です。
これらの拘縮によって、次のような影響が出ます。
■手指
手首が内側に曲がり、手指が伸びなくなります。
主な原因は外傷や神経麻痺によるものです。
物を掴むなどの作業がしづらく、日常生活に支障をきたします。
また爪が手のひらに食い込んで、傷付いたり痛みを伴うこともあります。
事前予防や初期の治療が大切になります。
■肩・肘
肩関節周りの筋肉や腱が癒着して、動きが悪くなります。
疼痛を放置したり、肩関節を酷使したりした場合にも起こります。
腕が上がらなくなり、無理に動かすと痛みます。
衣服の着脱や食事などの動作がしづらくなるでしょう。
また、何もしていなくても痛むこともあります。
■下肢(股・膝・足首)
股関節脱臼や大腿骨骨折、座りっぱなしの生活による活動量の低下などから下肢の拘縮は起こります。
股の拘縮は、衣類やオムツの着脱、入浴がしづらくなるといった支障が出ます。
膝の拘縮は、立つ・座る、歩くなどの基本動作が難しくなります。
靴や靴下の着脱もしづらくなるでしょう。
足首の拘縮は尖足(せんそく)になりやすくなります。
尖足というのは足首の関節や甲が伸び、つま先が下向きのまま戻らなくなった状態のことです。
股・膝・足首、どの拘縮においても歩行しづらくなり、転倒の危険性が高まります。
拘縮がある利用者さんを介助するときに何よりも注意しなければならないことは、「できるだけ痛みを与えないようにする」という点です。
拘縮している部位を動かそうとするとどうしても痛みが伴うため、利用者さんはその痛みに耐えながら介助を受けることになります。
ただし、工夫すれば利用者さんの負担を最小限にすることができるでしょう。
ポイントは次の3つです。
1.ゆっくりと行う
2.声かけをする
3.触れる位置に気をつける
拘縮している部位を動かすときは必ずゆっくりと行ってください。
縮こまって動かしづらいからといって、強い力を加えたり、勢いをつけて動かしたりすると、利用者さんは激しい痛みを感じてしまうでしょう。
力をかけずに、ゆっくりと優しく動かすことで痛みを緩和することができます。
利用者さんの表情やリアクションも気にかけながら、辛そうであれば無理に行わないようにしてください。
いきなり動かさずに、必ず利用者さんに声かけをしてください。
何も声かけをせずに拘縮のある部分に触れてしまうと、利用者さんの身体は緊張してこわばってしまうでしょう。
筋肉が緊張してしまうと拘縮が余計に悪化したり、思わぬ怪我につながる可能性もあります。
「今から少し足を動かしますね」「もう一度動かしますね」「あと少しですよ」などと状況が伝わるように声かけを行い、利用者さんの緊張を和らげてください。
拘縮のある部位を持つときは、上からではなく下から支えるようにして持つことがポイントです。
その際、指先ではなく手のひらや腕などできるだけ広い面積で支えることで安定します。
また、関節に近い部分を持った方が痛みは和らぎます。
強く握ったりすることのないように注意してください。
先ほど「拘縮が起こらないように予防していくことも重要」とお伝えしました。
拘縮になってしまった場合、治療に時間がかかります。
また拘縮が進んで関節が全く動かなくなってしまうと、手術が必要なケースも出てきます。
そのような事態をなるべく避けるためには、拘縮が起こらないよう、また進行しないように事前に予防することが大切。
「関節可動域訓練」や「動作練習」そして「ポジショニング」などが有効です。
関節可動域訓練とは関節を動かして可動域を確保・維持する訓練で、ストレッチやリラクゼーションなどを行います。
動作練習は、日常生活のなかで各関節をしっかりと動かすように訓練することです。
例えば立ったり座ったりの日常動作、手首などの関節を疼痛のない範囲でゆっくりと動かしていくことなどです。
どちらも理学療法士や作業療法士の指導・付き添いのもと行うのがよいでしょう。
介護職員ができることとしては、ポジショニングがあります。
ポジショニングとは関節拘縮を緩和させるための体位変換です。姿勢を安定させて、体圧が分散されるようにポジションを作ることです。
褥瘡予防や身体機能の活性化、ストレス軽減などにも効果があります。
寝たきりの方であればクッションを頭部、胸部、大腿、下腿の下などに挟み込み、ベッドと身体の接触面積を増やすことで姿勢を安定させます。
手指が拘縮している場合は、専門の反発性のあるボールなどを握ってもらい、指の間が開いている状態を作ったりします。
いずれにせよ、拘縮の部位や度合いなどによって適切なポジショニングは異なります。
また利用者にとっての向き・不向きもありますので、しっかりとアセスメントして行うことが重要になります。
以下の3点はやってはいけないNG行為です。
これまでお伝えしたことの繰り返しになりますが、大切ですのでまとめてお伝えします。
1.同じ姿勢を続ける
同じ姿勢を長時間続けることで、同じ部位に負荷がかかります。
それによって身体がこわばり、むくみや褥瘡などの原因にもなります。
こまめな体位変換を行いましょう。
2.不安定な姿勢
身体の各部位とベッドなどの接地面に隙間があると、姿勢が安定せずに筋肉の一部分に負荷がかかります。
筋緊張が続いて拘縮を助長させてしまいますので、注意してください。
体圧を分散できるようにポジショニングによって安定した姿勢を確保してあげましょう。
3.強引に関節を動かす
動かしづらいからといって強く握ったり、関節から遠い部分を持ってて動かしたりするのはやめましょう。
また強引に押したり引っ張ったりするのもNGです。
利用者さんが苦痛を感じると共に、さらに筋緊張が高まってしまい拘縮悪化の原因となります。
拘縮とは何か、また拘縮がある方を介護するうえで注意すべきことについてお伝えしました。
拘縮は日常の過ごし方次第で、改善することもあれば悪化していくこともあります。
また一度拘縮になってしまうと治療に時間がかかってしまい、完治が難しくもあります。
介護職員ができることとしては、こまめな体位変換やポジショニングをすること。
積極的に日常動作を行なってもらえる環境を作ることで拘縮予防に努めます。
そして拘縮につながる介護になっていないか、常日頃から注意を払いましょう。
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※掲載情報は公開日あるいは2023年04月13日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。