もしも介護事故が起こったら・・・正しい対応と予防法を解説

更新日:2021年07月01日

公開日:2021年05月31日

介護事故の適切な対応と予防法

介護現場ではどれだけ注意していても、事故が起こってしまう場合があります。

その際、事故を起こした事業所、職員らはどのような対応をとるべきなのでしょうか。
また重大な事故を未然に予防するためにできることは何でしょうか。

本コラムでは介護事故が起きた場合にとるべき対応と予防法について解説します。

介護事故とは

介護事故とは職員の過失による事故だけでなく、利用者本人の不注意や利用者間で起こったことも含まれます。介護事故とは介護現場で発生する事故のことです。

明確な定義はありませんが、ケガの大小・治療の有無にかかわらず利用者に実害があった、あるいは実害が及ぶ可能性があった場合は介護事故となります。

また利用者の所有物を紛失・破損させてしまう物損事故も介護事故に含まれます。 

本コラムでは事故の対象者を利用者のみに限定し、職員のケガ(労災)は介護事故には含めないこととします。

介護現場で起こりやすい事故の種類・事例

平成26年~平成29年の約3年間に厚生労働省 老健局に報告された重大な介護事故276件をまとめた資料があります。
その資料をもとに、どのような介護事故がどういったシチュエーションで起こりやすいのかを解説していきます。
(出典:介護労働安定センター「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業報告書」平成30年)

介護事故ランキング

介護施設内の事故状況分類

上記の調査結果によると、介護施設内で最も多い事故は転倒・転落・滑落で、全体の60%以上を占めています。
次に多いのが、誤嚥・誤飲・むせこみで13%。

その他、
・送迎中の交通事故
・ドアに体を挟まれた
・盗食・異食

などが重大事故につながっているようです。

これらの事故のおよそ9割が入所施設で発生しています。
(残り1割は通所介護と居宅介護支援サービスで発生。)

訪問サービスの事故状況分類

一方、訪問介護で発生している事故は特徴が少し異なります。

訪問介護サービスで起こった重大事故141件の分類を見ると、その半数以上が訪問先での紛失・破損に関する賠償です。
次に多いのが転倒・滑落で23%。

その他、
・来訪時の交通事故
・ペットとのトラブル

などとなっており、人身事故よりも物損事故が多い傾向にあるようです。

転倒・転落・滑落

介護現場で最も多い事故です。

移乗、排泄、入浴などあらゆる介助の場面において転倒の可能性があります。
また見守り中や、少し目を離した隙、他の利用者を見ている時など、介護が手薄になった状況下で多く発生しています。

利用者の大半は1人でバランスをとって立ったり歩いたりすることが困難です。
もしも転倒すると骨折や怪我につながりやすく、そこから合併症で死亡するというケースも少なくありません。
介護職員は、利用者はいつでも転倒の危険性があるということを認識しておく必要があるでしょう。

誤嚥・誤飲・むせこみ

誤嚥・誤飲やむせ込みも、高齢者の死亡の原因となる大きな事故です。
食事介助の際には、食べ物の飲み込みや食べるスピードなどに細心の注意を払わなければなりません。

利用者がむせ込んでしまった場合などには、治まってもすぐに食事を再開せずに看護師に見てもらうなどの配慮が必要です。

利用者の所有物の紛失・破損

訪問介護サービスでは特に、人身事故だけでなく利用者の居宅における建物や家財の損害・破損事故も増えます。

物損事故はたとえケガをしたり命に関わることはなくても重大な事故と捉えなければなりません。
利用者自身だけでなく利用者の大切なものも含めて守ることが介護職員の仕事です。

クレームにつながれば、賠償責任が問われることも理解しておきましょう。

介護事故が発生しやすい場面

介護事故を引き起こしやすいのは次のような場面です。
職員は特に注意しなければなりません。

●移動・移乗

・ベッドから車椅子への移乗介助時の転落

・トイレ、浴室までの移動介助時の転倒

・玄関や外出先での転倒

・立位や座位時の転倒・尻餅

・徘徊による転倒・転落

●食事

・食堂での転倒

・食事中の誤嚥、誤飲

・食事(内容)の提供ミス

・口腔内の火傷

・座位時の転倒・尻餅

・誤薬

●整容

・転倒

・歯磨きや口腔ケアによる受傷

・顔・身体の擦り傷や発赤

●排泄

・方向転換時の転倒

・座位時の転倒・尻餅

・認知症者の排泄物異食

●更衣

・衣服着脱時の転倒・転落

・関節痛、関節損傷

・衣服による擦り傷など

●入浴

・脱衣所での転倒

・移動時の転倒(浴室まで、浴室内)

・椅子ごと後方へ転倒

・浴槽内での沈溺(ちんでき)

・洗体時の擦り傷など

●その他

・利用者同士の感染症の感染事故

・介護職員から利用者への感染事故

・利用者所有物の紛失、破損、水没

・利用者居宅内での家具、家電、物品などの破損
 など 

介護事故の事例

介護事故はよく起こりうるものから、予測を立てづらいケースまであります。

よくある事例では、福祉用具(車椅子や介護ベッド)を介して起こる事故です。
・車椅子のフットペダルに足が固定されておらず、足が車体に引っかかってケガをした
・介護ベッドの高さが適切ではなく、移乗時に転落した

といったようなことが挙げられます。

しかしこのような事前の安全確認で防げる事故ばかりではありません。
利用者同士の接触・交流による事故や、利用者が徘徊して転倒してしまう事故などもあるのです。

下記にはさまざまなシチュエーションでの介護事故の事例が紹介されていますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

<介護事故の事例集>
・福祉用具ヒヤリハット事例集2019| 厚生労働省

・イラストで見る 介護事故事例集~知っていますか? 介護現場の隠れたリスク|介護労働安定センター

介護事故が発生した時の対応

介護事故が発生した時の対応

どれだけ気をつけていても介護事故を100%防ぐことは不可能です。
できる限り事故のリスクを減らすと同時に、介護事故が起こった際のマニュアルを作成し、対応方法を周知しておくこともとても大切になります。

もしも介護現場でアクシデントが発生した場合にはどのような対応をとるべきなのでしょうか。
事業所ごとにルールは違うと思いますが、最低限やらなければならないことを記しておきます。

事業責任者は特に、有事の際に適切な対応ができるよう、この点を理解しておきましょう。

利用者への対応

介護事故が起こった場合、まず真っ先にやるべきことは利用者の安全確保です。

声かけをして状態を確認し、救命措置、病院や必要であれば警察への連絡などを速やかに行ってください。
事故後、迅速かつ適切な対応をとることが、利用者の被害を最小限に抑えることにつながります。

また、事故の当事者、責任者は状況を把握したうえで、利用者に誠意を持って謝罪しなければなりません。

利用者のご家族への対応

利用者へのご家族にも必ず連絡してください。
事故の経緯や利用者の容態、また賠償が必要となる場合にはその手続きに関する説明も必要になります。

ご家族へも速やかに連絡することが求められます。
連絡が遅くなるほどに不信感を与えてしまうため、できるだけ早く対応しなければなりません。

まずは現状で明らかになっていることを整理して一次報告を行うことが大切です。
法的責任にかかわらず、丁寧な説明と事故が発生したことに対する謝罪をしてください。

職員、関係各所への対応

事故の当事者や発見者は、利用者の安全確認後、責任者への状況説明をしなければなりません。
(当事者が怪我を負って対応が難しい場合は除きます。)

責任者は、まず当事者から話を聞き、その後、事故の目撃者や関係者にも話を聞きましょう。
事故の状況を正確に把握し、冷静に分析する必要があります。

そのうえで事故報告書を作成します。
いつ、どこで、誰が、どのような状況で事故が起こったのか、わかっていることを正しく漏れなく記録します。
作成した報告書は市区町村の保険者へ提出が必要になります。

必要に応じて、居宅介護支援事業所や利用者のかかりつけ医など関係各所への報告を行いましょう。
賠償責任保険や傷害保険に加入している場合は、保険会社にも連絡して指示を仰いでください。

また職員へ事故の状況を周知し、注意喚起を必ず行ってください。
介護事故後にやるべきことは、利用者とそのご家族への対応だけではありません。
今後同じような事故を2度と起こさないために原因の究明と改善策を考えることが重要です。

事故の措置が完了次第、必ず再発防止の対策を行いましょう。

<こちらのコラムも参考に>
介護の事故報告書を書く目的、書き方のポイントを解説!

介護事故が発生した時の間違った対応

事故が起こった際に、「これだけはやってはいけない」という間違った対応についてもお伝えしておきます。
当然のことと思われるかもしれませんが、下記の2点です。

・事故が起こったことを報告しない
・事故を隠蔽する


これは事業所としても、職員個人としても、あってはならないことです。

事故を報告しない

事故が起こった場合は大小を問わず、必ず報告することを徹底しましょう。
「職員個人で解決し、報告しない」といったことが起きないようにしてください。

事故を起こした(発見した)職員は上長や管理者へ速やかに報告。そしてなるべく早く職場全体への共有も必要です。
職場内の指示系統や連絡ルート、対応方法を明確にし、報告漏れが起こらないようにしましょう。

また先ほども触れましたが、利用者へのご家族や関係各所への報告義務があります。
こちらも早い段階で対応が必要です。

事故を隠蔽する

事故の責任から逃れるため、また評判悪化を避けるために、事故を隠蔽するようなことはあってはなりません。
利用者の安全、利用者のご家族からの信頼を守るうえで、この行為は許されることではありません。

もしも隠蔽の事実が発覚した場合には、営業停止などの重い行政処分が科せられる可能性もあります。
今後同じような事故を起こさないためにも起こった事象を正しく報告し、事故の隠蔽や虚偽報告などは絶対にしないようにしましょう。

介護事故を防ぐためのリスクマネジメント

介護事故を予防するために

介護事故は未然に予防することがとても大切ですが、実際には「防げる事故」と「どうしても防ぎようのない事故」があります。
介護事業所や職員は、この「防げる事故」を起こさないようにする取り組みを考えなければなりません。

介護事故が起こる原因

では防げる事故とはどういった原因から起こっているのでしょうか。
次のようなことが考えられます。

・ルール違反
・人手不足
・用具や設備の不備
・情報共有不足


これらが原因で起こる事故は、ルールや仕組みを改善することで予防できるでしょう。

対策1│ルール・仕組みを見直す

人間であれば必ずミスをするものです。
「事故を起こさないように気をつけて介護する」というのは解決策にはなりません。
「どれだけ注意していても事故を起こしてしまう場合がある」ということを念頭に、できるだけ事故が起きない仕組みづくりを行うことが大切です。

用具や設備の不備は一人ひとりの気づきに頼るのではなく「定期的に一斉点検を行う」などの仕組みを作ります。
ルールを守らない職員が多い場合は、ルールの見直しと周知徹底、ルール違反に対するペナルティを設けるといった対策を講じましょう。

対策2│ヒヤリハット報告を行う

もしかすると事故・災害につながったかもしれない「ヒヤッ」「ハッ」とした危ない状況のことを「ヒヤリハット」といいます。
「重大な事故が1回あった場合、29回の軽傷事故(かすり傷など)、300回の傷害のない事故(物損やヒヤリハットなど)が発生している」といわれます。(ハインリッヒの法則)

日頃からこのヒヤリハットの気づきを集めて報告・共有し、環境を改善していくことで、重大な事故の発生を未然に防ぐことができます。

<詳しくはコチラ>
介護現場のヒヤリハットとは!よくある事例と報告書の書き方を解説!

対策3│事故の状況を分析、原因を究明する

先述した通り、万が一事故が起こった場合には、事故の状況を正しく把握し原因を究明することが重要です。

・なぜこの介護事故は起こったのか
・どうすれば防げたか
・今後どう改善すべきか

ということを必ず検証し、それらをスタッフ全員に共有します。

単なる注意喚起ではなく、同じような事故が起きない仕組みを作ることが大切です。

介護事故が訴訟問題になることもある

介護現場で利用者のケガや死亡事故が起きたら、利用者本人やご家族から損害賠償請求をされる場合があります。
示談で解決できない場合には訴訟問題にまで発展してしまう可能性もあります。

損害賠償請求で重要となる点は、
・事故が発生した原因
・事業所側に過失があるかどうか
・与えた被害

などです。

検証したうえで事業所側に非があるとなれば、職員が罪に問われたり、介護事業所が営業停止となってしまうケースもあります。
事故の状況確認には介護事故報告書が重要な役割を果たしますので、情報開示のためにもきっちりと記録を残しておいてください。

まとめ

利用者に安心して暮らしてもらうため、そして事業所や職員を守るために、日頃から介護事故を未然に防ぐ取り組みを行うことが大切です。
しかしどれだけ気をつけていても、事故を100%防ぐことはできません。

介護事故後の利用者への適切かつ誠意ある対応、そして再発防止の対策を行うことがとても重要になります。
万が一事故が発生した場合に職員一人ひとりが冷静に正しく対応できるよう、マニュアルを用意しておくこともおすすめします。

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