更新日:2023年03月31日
公開日:2021年07月19日
認知症の高齢者数は年々増えています。
あなたの地域や職場などで、困っている認知症の高齢者を見かけたことはないでしょうか?
本コラムでは、そんな時に役立つ「認知症サポーター」についてご紹介します。
認知症高齢者が身近にいる方や、地域や職場で高齢者と触れ合う機会が多い方に特におすすめしたい制度です。
ぜひ参考にしてください。
認知症サポーターとは、認知症に対する正しい知識を学び、地域に暮らす認知症の人やそのご家族に対してできる範囲で手助けをする人のことです。
2005年、厚生労働省の呼びかけによってこの制度は始まりました。
2021年現在、日本全国で約1300万人の認知症サポーターが活躍しています。
認知症サポーターの役割ですが、サポーターだからといって何か特別なことを行う必要はありません。
認知症の方に対して偏見を持たず、気になることがあればさりげなく見守りながら手助けをすることが求められます。認知症を正しく理解して接するということが、認知症支援においてとても大切なことなのです。
厚生労働省のホームページには「認知症サポーターに期待されること」として次の5つが挙げられています。
<認知症サポーターに期待されること>
1. 認知症に対して正しく理解し、偏見をもたない
2. 認知症の人や家族に対して温かい目で見守る
3. 近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する
4. 地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる
5. まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する
出典:認知症サポーター|厚生労働省
認知症の方の多くは、自身の変化に不安を感じています。初期の場合は特にそうです。
以前は当たり前のようにできたことができなくなり、色々なことを忘れていくことに不安や恥ずかしさを抱え、自信を失っていく方も多くいらっしゃいます。
そのような認知症の症状を正しく理解し、見守り、手助けをしてくれる存在が地域にいるということは、認知症高齢者の方々にとって大きな安心感につながるでしょう。
国がサポーターの養成に注力している背景には、認知症高齢者の増加、そして医療・介護の人材不足があります。
高齢者数の増加に伴い、認知症高齢者の人数も年々増えています。
2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症を患っているのではないかという推計も出ています。
(出典:高齢社会白書|内閣府)
今でさえ人手不足と言われる介護業界。
今後も増加し続ける認知症高齢者を、そのご家族や介護従事者だけでサポートするのは現実的に困難です。
こういった背景から、2005年より厚生労働省の発案で「認知症を知り地域をつくるキャンペーン」がスタートしました。
その取り組みの1つとして、認知症サポーターの養成が推進されています。
では認知症サポーターの方々は具体的にどのような活動を行うのでしょうか?
下記のグラフは、認知症サポーターが実践している活動の調査結果です。
主な活動内容は、
・認知症カフェ(オレンジカフェ)の開催や参加
・見守り
・傾聴
・外出支援
などが挙げられます。
それぞれの地域の特性に合わせて、認知症高齢者と触れ合い、サポートしています。
また警察や消防、銀行、小売店、交通機関といった生活に密接に関わる職業の方々が、認知症サポーターで学んだ知識を活かしながら、それぞれの職域で活躍されています。
出典:認知症サポーターが実践している活動(平成30年度・地域ケア政策ネットワーク調べ)
認知症サポーターになると、「認知症の人を支援する」という意思を示すオレンジリングが配られます。温かみのある柿色には「手助けします」という意味が込められているそうです。
(※オレンジリングの配布は令和2年度までで終了しています。令和3年4月以降は認知症サポーターカードに切り替わっていますが、一部オレンジリングの配布を継続している企業・団体もあります。)
認知症サポーターになるには、自治体や企業・職域団体が実施する「認知症サポーター養成講座」(90分)の受講が必要です。
受講するための要件はなく、約90分の講座を受講することで誰でも認知症サポーターになることができます。
では認知症サポーター養成講座の詳しい内容をご紹介していきます。
◆実施団体
認知症サポーター養成講座の実施主体は都道府県・市町村などの自治体や、全国規模の職域団体などです。
地域住民、職域、学校、広域の団体・企業等の従事者などが受講対象となっています。なお介護職員向けの認知症研修は認知症サポーター養成講座には該当しません。
講師は「キャラバン・メイト養成研修」という講師専門の研修を修了したキャラバン・メイトが行います。認知症介護指導者養成研修修了者など、認知症ケアのエキスパートがキャラバン・メイトを務めることが多いでしょう。
◆講座内容
先述したとおり講座は約90分です。
基準となる基本のカリキュラムは以下の通りです。
認知症サポーター養成講座 基本カリキュラム | |
---|---|
基本となる内容 | 標準時間 |
●認知症サポーターキャラバンとは | 15 分 |
●認知症を理解する1 1.認知症とはどういうものか 2.認知症の症状 3.中核症状 症状1|記憶障害 症状2|見当識障害 症状3|理解・判断力の障害 症状4|実行機能障害 症状5|感情表現の変化 4.行動・心理症状(BPSD)とその支援 | 30 分 |
●認知症を理解する2 5.認知症の診断・治療 早期診断、早期治療が大事なわけ 認知症の治療 認知症の経過と専門家との関係 成年後見制度/地域福祉権利擁護事業 6.認知症の予防についての考え方 7.認知症の人と接するときの心がまえ 8.認知症介護をしている人の気持ちを理解する | 30分 |
●認知症サポーターとは ●認知症サポーターのできること | 15分 |
(計90分)
参照:基本カリキュラム
講座は基本的に認知症サポーター養成講座の標準教材をもとに進められますが、開催主体者が独自のリーフレット等を活用して展開してもよいとされていますので、自治体によって一部内容に違いが出る可能性もあります。
◆申し込み方法・費用
受講費用は原則無料です。
企業や職域団体が実施する養成講座は、その企業の従業員が対象となりますので、個人で受講する場合には自治体が開催する講座を受講しましょう。
開催日時などの詳細については各自治体の広報誌やホームページ、もしくは以下の自治体事務局連絡先をご確認の上、お問い合わせください。
自治体事務局 連絡先一覧
認知症サポーターにはステップアップ講座もあります。
地域で活動できる上級者を目指して従来の認知症サポーターからステップアップするための講座で、すでに認知症サポーターとなっている方が対象となります。
認知症サポーターステップアップ講座教材をもとに下記のような内容を学びます。
1 認知症の理解を深める |
---|
●認知症の種類と特徴 1.認知症の種類 2.認知症の進行と症状 |
● 認知症の症状を理解するための脳機能の基礎知識 |
● 認知症の人に現れる症状 原因と対応 認知症の症状が現れる原因 出現する症状のとらえ方・考え方 症状別対応の目安一覧 |
●若年性認知症の理解と支援 1.若年性認知症 2.若年性認知症の人への支援 3.仕事の継続のための対策 4.子どもへの影響と対策 5.若年性認知症の人が利用できるサービスや制度 |
2|認知症の発症リスクを減らす |
● 軽度認知障害(MCI) 1.MCIとは認知症とのグレイゾーン 2.異変の気づきが認知症予防につながる 3.MCIとわかったら |
● 認知症発症リスク 生活習慣病・低栄養・閉じこもり・運動習慣 1.生活習慣病予防 2.低栄養予防と口腔機能の向上 3.閉じこもり防止 4.運動習慣 |
●高齢期の服薬知識 ─認知症薬との関係─ 1.高齢期の薬について知っておきたいこと 2.認知症の治療薬 |
3 認知症サポーターの活動事例 |
自治体によってはゲストを招いたトークイベントを実施したり、グループワークでディスカッションを行ったりと多様な内容で開催されています。
また認知症サポーターの方を対象に、フォローアップ研修を実施している自治体もあります。
ただ受講して終わりではなく学んだ知識を復習し、暮らしの中で活かしていくことが大切です。
地域の誰もが暮らしやすい地域をつくっていくためのボランティア「認知症サポーター」について解説しました。
認知症は誰もがなり得るものです。
あなたのご家族や身近な人が認知症になる可能性もあり、多くの人にとって身近な問題といえるでしょう。
特別な技術がなくても、認知症を正しく理解し偏見を持つことなく接することが、認知症の高齢者にとって何よりの安心感につながるのではないでしょうか。
その第一歩として、誰もが受講できる認知症サポーター養成講座があります。
ぜひあなたも、地域で活躍する認知症サポーターを目指してみませんか?
<認知症ケアに関する資格>
最後に介護職の方向けに、認知症介護に役立つ資格を紹介します。
◆認知症ケア専門士
コラム「認知症ケア専門士」ってどんな資格?取得のメリット・受験方法についてご紹介
◆認知症介護基礎研修
コラム「認知症介護基礎研修ってどんな研修?研修内容や費用など詳しく解説!」
◆認知症介護実践者研修
コラム「認知症ケアに携わるなら取るべき資格!認知症介護実践者研修ってなに?」
◆認知症介護実践リーダー研修
コラム「認知症介護実践リーダー研修 ってどんな資格?」
◆地域包括ケアシステム
コラム「地域包括ケアシステムとはどんな制度?目的や構成要素を簡単に解説します」
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※掲載情報は公開日あるいは2023年03月31日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。