認知症カフェという場があります。
全国各地に広がりを見せる認知症カフェについて、名前を聞いたことがあっても具体的にどのような場所なのかご存じでない方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、認知症カフェに興味がある方やこれから始めたい方に向けて、その目的やカフェで行われていることなどについて詳しく解説していきます。
ぜひ参考にしてください。
認知症カフェとは
認知症カフェとは、認知症の方やそのご家族、地域住民、介護職員など誰もが集える場所です。気軽に悩み相談や世間話などができるコミュニケーションの場として全国各地で運営されています。オレンジカフェなど別の名称で呼ばれることもあります。認知症カフェは元々アルツハイマーカフェとして1997年にオランダで発祥し、そこから世界に広がっていきました。日本では認知症施策の一環として2012年から推進されており、2015年の新オレンジプラン(※)にて全市町村での設置を目指すという目標が示されました。2020年度の調査では47都道府県1,518市町村にて、7,737カフェが運営されていることが発表されています。出典:認知症カフェ実施|厚生労働省 (※)新オレンジプランとは、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らすことができる社会の実現を目指すために掲げられた国の施策です。 認知症カフェの概要
カフェの開催日時は各カフェによって異なりますが、概ね月に1~2回開催されることが多いようです。なかには週1回などの頻度で開催されているところもあります。
主な運営主体は介護事業者やNPO法人、地域包括支援センターなどで、通所介護施設や公民館などの施設、カフェや個人宅を活用して開催されています。
1回の開催時間は2時間程度で、出入りは自由。
参加費用は平均100円~200円です。
お茶やお菓子を食べながら世間話を楽しんだり、専門家に相談をしたりと、基本的には個々に好きな時間を過ごします。
認知症カフェの目的・役割
厚生労働省の新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)では認知症カフェについて次のように示されています。
認知症の人の介護者の負担を軽減するため、(一部省略)認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有し、お互いを理解し合う認知症カフェ等の設置を推進する。
引用:新オレンジプラン|厚生労働省 さらに認知症カフェのあり方として「7つの要素」と「10の特徴」が提示されていますので、併せて見ていきましょう。◆認知症カフェの7つの要素
1. 認知症の人が、病気であることを意識せずに過ごせる
2. 認知症の人にとって、自分の役割がある
3. 認知症の人と家族が社会とつながることができる
4. 認知症の人と家族にとって、自分の弱みを知ってもらえていて、かつそれを受け入れてもらえる
5. 認知症の人とその家族が一緒に参加でき、それ以外の人が 参加・交流できる
6. どんな人も自分のペースに合わせて参加できる
7. 「人」がつながることを可能にするしくみがある
1. 認知症の人とその家族が安心して過ごせる場
2. 認知症の人とその家族がいつでも気軽に相談できる場
3. 認知症の人とその家族が自分たちの思いを吐き出せる場
4. 本人と家族の暮らしのリズム、関係性を崩さずに利用できる場
5. 認知症の人と家族の思いや希望が社会に発信される場
6. 一般住民が認知症の人やその家族と出会う場
7. 一般の地域住民が認知症のことや認知症ケアについて知る場
8. 専門職が本人や家族と平面で出会い、本人家族の別の側面を発見する場
9. 運営スタッフにとって、必要とされていること、やりがいを感じる場
10. 地域住民にとって「自分が認知症になった時」に安心して利用できる 場を知り、相互扶助の輪を形成できる場
出典:認知症カフェのあり方と運営に関する調査研究事業報告書このように認知症カフェは、認知症の人やそのご家族が地域住民や認知症の専門家らとの交流を通じて、情報共有や相互理解を深めるための場として設置・運営されています。そして介護をするご家族の支援、初期の認知症の人の支援の場としても大きな役割を担います。また地域住民が認知症を正しく理解して受け入れるためのアプローチの場としても機能します。認知症カフェが各地域で浸透することで「認知症になっても安心して暮らせる地域」
を目指します。 認知症カフェで行われること
認知症カフェで行われていることはさまざまで、バラエティに富んでいます。
先ほども少し触れたように基本的には自由です。
特別なプログラムは用意されておらず、利用者が主体的に活動するところが多いです。
コーヒーやお菓子などを楽しみながら、認知症の方やそのご家族らがコミュニケーションを図り、情報交換などを行います。
認知症の専門職の方がいるため、介護サービスや認知症治療に関する専門的な相談をすることも可能です。専門家による勉強会や講話が実施されることもあります。
一方で、認知症の進行予防の取り組みとして、音楽イベントやレクリエーションなどさまざまなプログラムを提供するカフェもあり、そのあり方は多様です。
認知症カフェを開設するには
認知症カフェは介護保険サービスではありません。そのため実施運営の明確な基準は設けられておらず、誰もが必要に応じ開催することができます。ただし、始めたいと思ってすぐにできるものではありません。活動場所や運営資金、支援人材の確保など、さまざまな準備が必要です。◆認知症カフェ開設までの流れ
認知症カフェの開催準備は以下のような流れで進めます。 1|カフェの内容を決める
どのようなコンセプトで、何をするかを決めましょう。茶菓や食事を提供する場合には、食品衛生法に基づき飲食店営業などの営業許可が必要なことがあるため必ず保健所に確認してください。2|場所を確保する
カフェの会場を押さえなければなりません。デイサービス、デイケアなど介護・医療関係の施設を活用されることが多いですが、コミュニティセンターや地域の空き施設などを利用するケースもあります。20名程度は収容できる場所が望ましいでしょう。3|スタッフを集める
1回のカフェに平均3名程度のスタッフが配置されます。運営スタッフは市民ボランティアや認知症サポーターが多くを占めていますが、認知症ケアの経験のある専門職が1名以上必要ですので注意しましょう。4|利用可能人数を設定する
会場やスタッフの人数に応じて、利用可能人数を決めましょう。5|開催日時を決める
いつからスタートするのか、開催日時を決めます。またどのくらいの頻度で開催するのか、1回の開催時間を何時間にするのかといったことも決める必要があります。6|補助金を申請する
補助金制度のある自治体は、審査に通れば受給できます。要件は各自治体によって異なりますが、例えば・営利目的ではないこと・地域に事業所や活動拠点がある・認知症の相談・支援を行い、積極的に認知症の啓発活動を実施できる・認知症の方やそのご家族からの相談に対応できる人員を1人以上配置することができる(社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、看護師、作業療法士、介護福祉士など)・月に1回以上、1回2時間以上の開催ができるなどの要件すべてを満たしている必要があります。カフェの運営費は年間100~200万円程かかると見込まれますが、その資金は市町村の補助金や法人の予算、あるいは個人資金でまかなわれていることがほとんどです。利用者の参加費用も運営費にあてられますが微々たるものでしょう。自治体の補助金・助成金制度をぜひ活用しましょう。(詳細は各自治体にお問い合わせください。)7|PRをする
多くの方に利用してもらえるようにPR方法を考えましょう。認知症カフェの課題として多く挙がっているのが、「いかに参加者を確保するか」という点です。これは開催してからの課題でもありますが、まずは認知症カフェを開設するという情報が必要な方々に届くように、地域の広報誌や回覧板などを活用してPRしましょう。これらのプロセスに加え、さらに地域の理解を得ることや地域団体の協力を募ること、運営者同士での定期的なミーティングなども必要となるでしょう。認知症カフェの成功例とは
認知症カフェは運営資金の調達や周知の難しさなど課題が多い一方、成功例として確立されているカフェはそれほど多くなく、どのカフェも試行錯誤しながら運営をしている現状があります。成功の指標としては・長期的に安定してカフェを継続できている・利用者の満足度・地域全体で認知症高齢者への協力体制ができるなどが挙げられます。認知症カフェを成功させるには、仲間を増やしスタッフ一人ひとりの負担が大きくなりすぎないようにすることや、スタッフ間でのミーティングを定期的に行い運営方針などの目線合わせをすることなどが大切になるでしょう。下記は全国各地の認知症カフェの事例集です。ぜひ参考にしてください。認知症カフェの活用と認とも はじめの一歩 事例集|厚生労働省よくわかる! 地域が広がる 認知症カフェ|社会福祉法人東北福祉会 まとめ
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