更新日:2023年03月31日
公開日:2021年09月02日
認定介護福祉士養成研修は、認定介護福祉士になるにあたって受講が義務付けられている研修です。
本コラムでは、その認定介護福祉士養成研修について解説しています。
・どのような内容の研修なのか
・費用はいくらかかるのか
・学習期間はどのくらい必要か
などの疑問にお応えしていきますので、受講をお考えの方はぜひ参考にしてください。
まずは認定介護福祉士資格について簡単にご説明します。
認定介護福祉士は「介護福祉士のキャリアアップ資格」として、2015年に新設されました。
一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構という法人が認定している民間資格で、
心身の状況に応じた介護等を行う者であって、
居住・施設系サービスを問わず、多様な利用者・生活環境、サービス提供形態等に対応して、
より質の高い介護実践を前提とした介護サービスマネジメント、介護と医療の連携強化、地域包括ケア等に対応するための考え方や知識、技術、実践力等を認定介護福祉士養成研修で修得した者
と定義されています。
認定介護福祉士に求められる主な役割は次の3つです。
<認定介護福祉士の役割>
1. チームリーダーに対する教育指導を行い、利用者の多様なニーズに対応できる介護職チーム形成し、高度な知識・技術で利用者の生活の質を向上させる役割
2. 地域包括ケアを推進するため、医師、看護師、リハビリテーション職など他職種との連携・協働を図る役割
3. 地域の施設・事業所、ボランティア、介護職員などに助言・指導を行い、地域の介護力を高める役割
<さらに詳しい内容はこちら>
コラム「詳しく解説!認定介護福祉士ってなに?」
介護福祉士資格の場合は国家試験に合格しなければ取得できませんが、認定介護福祉士は養成研修を修了することで取得できる資格です。
では資格取得のハードルが低いのかというと、そうではありません。
認定介護福祉士になるには、
1. 介護福祉士資格を持ち、介護福祉士としての実務経験が5年以上あること
2. 認定介護福祉士養成研修にて600時間の講義を受講していること
の2点を満たしている必要があり、資格取得には長期間を要することがわかります。
そして認定介護福祉士養成研修はI類とII類に分かれており、それぞれに受講要件や学習内容が異なります。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
●養成研修 I類のねらい
・介護福祉士養成課程では学ばない新たな知識の修得(医療、リハビリ、福祉用具と住環境、認知症、心理・社会的支援など)
・他職種との連携・協働など、認定介護福祉士としての十分な介護実践力を完成
・介護職の小チーム(ユニット等、5~10名のチーム)リーダーへの指導に必要な知識の修得
●受講要件
<必須>
・介護福祉士として5年以上の実務経験 (科目によっては実務経験を問わない場合あり)
・現任研修100時間以上の受講歴と、レポート提出または試験
<推奨>
・介護職のリーダー実務経験(ユニットリーダー、サービス提供責任者など)を有すること
・居宅、施設系サービス双方において生活支援の経験をもつこと
●カリキュラム
Ⅰ類 | |||
---|---|---|---|
領域名 | 科目名 | 単位 | 時間 |
認定介護福祉士養成研修導入 | 認定介護福祉士概論 | 1 | 15 |
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅰ | 2 | 30 |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅱ | 2 | 30 | |
リハビリテーションに関する領域 | 生活支援のための運動学 | 2 | 10 |
生活支援のためのリハビリテーションの知識 | 20 | ||
自立に向けた生活をするための支援の実践 | 2 | 30 | |
福祉用具と住環境に関する領域 | 福祉用具と住環境 | 2 | 30 |
認知症に関する領域 | 認知症のある人への生活支援・連携 | 2 | 30 |
心理・社会的支援の領域 | 心理的支援の知識技術 | 2 | 30 |
地域生活の継続と家族支援 | 2 | 30 | |
生活支援・介護過程に関する領域 | 認定介護福祉士としての介護実践の視点 | 2 | 30 |
個別介護計画作成と記録の演習 | 2 | 30 | |
自職場事例を用いた演習 | 1 | 30 | |
Ⅰ類 計 | 345時間 |
●養成研修 II類のねらい
・根拠に基づく自立に向けた介護実践の指導力の獲得
・認定介護福祉士に必要な基本的知識に基づいた応用力を養成
・サービス管理に必要なツールの整理、業務改善
・地域の介護力を高める力を獲得
●受講要件
<必須>
・認定介護福祉士養成研修Ⅰ類を修了
・介護職のリーダー実務経験(ユニットリーダー、サービス提供責任者など)を有すること
<推奨>
・居宅、施設系サービス双方において生活支援の経験をもつこと
●カリキュラム
II類 | |||
---|---|---|---|
領域名 | 科目名 | 単位 | 時間 |
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅲ | 2 | 30 |
心理・社会的支援の領域 | 地域に対するプログラムの企画 | 2 | 30 |
マネジメントに関する領域 | 介護サービスの特性と求められるリーダーシップ、人的資源の管理 | 1 | 15 |
チームマネジメント | 2 | 30 | |
介護業務の標準化と質の管理 | 2 | 30 | |
法令理解と組織運営 | 1 | 15 | |
介護分野の人材育成と学習支援 | 1 | 15 | |
自立に向けた介護実践の指導領域 | 応用的生活支援の展開と指導 | 2 | 60 |
地域における介護実践の展開 | 2 | 30 | |
Ⅱ類 計 | 255時間 | ||
I類 II類 合計 | 600時間 |
I類、Ⅱ類ともに、新しい知識を体系的に学ぶだけでなく、事例検討・研究、ケースレポートの提出、演習などを積み重ねて、学んだ知識を現場で実践できるようなカリキュラムとなっています。
ではここからは研修の申し込み方法や費用など、受講のための詳細をお伝えしていきます。
認定介護福祉士養成研修を実施するのは、認定介護福祉士認証・認定機構による認証を受けた団体です。
日本介護福祉士会を中心に、職能団体、事業者団体、都道府県研修機関や大学などで実施されています。
養成研修の申し込み方法は実施団体によって異なります。
まずはお住まいの地域に実施団体があるかどうかを確認してください。
都道府県の介護福祉士会や社会福祉法人、あるいは日本介護福祉士会に問い合わせてみることをおすすめします。
実施団体であればホームページに情報を掲載していることが多いので、まずはインターネットで検索してみてもよいでしょう。
前にも触れましたが、養成研修の受講要件は、
・介護福祉士資格を持ち、介護福祉士としての実務経験が5年以上あること
・現任研修100時間以上の受講歴があり、レポート提出または試験を終えていること
です。
なお研修の実施団体によっては、上記条件に加えて、介護福祉士ファーストステップ研修の受講が必要となる場合があります。
その場合は一部の研修やレポート提出が免除となることがあります。
研修受講にかかる費用も実施団体によって異なりますが、相場としては50~60万円程度です。
例えば、研修を実施している長野県介護福祉士会では、
会員 357,000円(税込)
非会員 609,000円(税込)
の費用がかかるとされています。
出典:長野県介護福祉士会 平成31年度 認定介護福祉士養成研修
このように介護福祉士会の会員か非会員かによっても大幅に費用が異なりますが、いずれにせよ決して安い金額ではありません。
地域によっては補助金制度を設けているところもあるようです。
また一部の介護施設や事業所では団体受講を実施していたり、資格取得支援サポートが適用される場合がありますので、ぜひ職場にも一度制度を確認してみることをおすすめします。
学習期間は実施団体の研修開催日程にもよりますが、I類、II類合わせて600時間以上のカリキュラムを履修する必要があることから、少なくとも1年以上はかかると想定されます。
おおむね、1年半~2年程度の予定でスケジュールを組んでいるところが多いでしょう。
また研修を受講するまでに介護福祉士として5年の実務が必要であったり、100時間以上の研修や課題提出などが求められることを含めれば、学習期間は相当なものになり、資格取得のハードルは高いといえるでしょう。
認定介護福祉士と名乗るには、認定介護福祉士認証・認定機構による認定を受けなければなりません。
養成研修を修了すれば、自動的に認定介護福祉士になるわけではないのでご注意ください。
まずは認定を受けるために、研修修了後に「認定の申請」を行ってください。
その申請を受けた認定委員会が書類審査を行います。
無事に審査が通れば認定介護福祉士として認定される流れとなります。
<認定の申請要件>
・介護福祉士資格を有すること
・認定介護福祉士養成研修として認証された研修を修了していること
上記の要件を満たしていれば、認定介護福祉士認証・認定機構に認定申請を行うことが可能です。
認定介護福祉士資格は、5年ごとに更新手続きが必要です。
また更新するには、次の要件を満たしていなければなりません。
<更新の要件>
・認定介護福祉士の更新に必要とされる実務経験(※1)において2年以上の従業期間かつ180日以上の従事日数があること
・現任研修や介護福祉に関する研修の講師活動などによって取得できるポイント(※2)を20ポイント以上取得していること
(※1)実務経験の範囲について
認定介護福祉士の更新に必要とされる実務経験等の範囲等
(※2)取得できるポイントについて
現任研修又は介護福祉に関する研修における講師等の活動を実施することにより取得できるポイント表
認定介護福祉士養成研修を受講すると、次のようなメリットがあります。
・キャリアアップにつながる
・より高度な介護技術と実践力が身につく
・リーダーへの教育・指導、人材育成ができる
・多職種・多機関と連携・協働する力がつく
・地域と関わり、地域づくりに貢献できる
介護福祉士の上位資格に位置付けられる認定介護福祉士は、「高度な専門知識・技術を持ち、より質の高い介護サービスを提供できる介護福祉士」という証明となります。
また介護技術だけでなく、人材育成やチームビルディングの実践力が身につけられます。
将来的に介護事業所のリーダーや管理職につきたいという方にとっても役立つ研修になるでしょう。
このように、高度な知識・技術が身につくとともに、職場での昇進や転職活動に有利になる可能性があり、介護福祉士のキャリア形成に活かせる資格と考えられます。
デメリットは、ずばり、資格取得の費用と学習期間がかかることです。
もちろんその分、介護の専門的な分野について時間をかけて学ぶことができる研修ではあるのですが、確実にキャリアアップ、給料アップができる資格かというと、そうとは限りません。
特に給料アップに関しての明確なデータはなく、昇給は職場によるものと考えておきましょう。
「今よりも質の高い介護サービスを提供できるようになりたい」
「深い知識を身につけたい」
といった自身の研鑽のために受講されることをおすすめします。
認定介護福祉士養成研修について解説しました。
まだ比較的新しい資格のため、今後受講者が増えていけば、明確なキャリアパスや給料アップの仕組みが整備されていくことも考えられます。
研修の受講を迷われている方は、
「何のために認定介護福祉士養成研修を受講するのか」
「自分にとって50万円近くの費用、2年程度の学習期間を投じても受講する意義があるのか」
という点をしっかりと検討し判断されるとよいかと思います。
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