何らかの事情で保護者の養育を受けられない子ども達のための施設として、「児童養護施設」があります。
皆さんもニュースなどで耳にしたことがあるかと思います。
本コラムでは児童養護施設とはどういった場所でどのような子ども達がいるのか、どういった職種の人たちが働いているのかなどを解説していきます。
児童養護施設での仕事に興味がある方はぜひ参考にしてください。
児童養護施設とは
児童養護施設とは、保護者のいない児童や問題を抱える児童の養育を行い、彼らの成長と自立を支援するための施設
です。児童福祉法の第41条においては、次のように示されています。
児童養護施設は、保護者のない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。以下この条において同じ。)、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする。
引用:児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号) 児童福祉法というのは子ども達の安全な暮らし、健康的な成長、その他の福祉を保障するための法律です。第一章の総則では、「国や地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と記されており、そのための施設のひとつとして児童養護施設が存在します。 施設の概要
児童養護施設の歴史は古く、昔は孤児院や養護施設といった名前で運営されていました。
1997年の法改正によって児童養護施設という名称になり、現在に至ります。
施設の実施主体は都道府県、指定都市、児童相談所設置市です。
令和2年3月の福祉行政報告例によると、児童養護施設の数は全国に612か所、在籍児童は24,539人(定員31,494人 )と発表されており、そのほとんどが社会福祉法人などの民間企業によって運営されています。
入所児童の平均在籍期間は5.2年。
半数近くの児童が1年未満で退所しますが、およそ15%の児童は10年以上在籍しているという状況です。
役割
児童養護施設の役割は「家庭に代わる子どもたちの家」であることです。
特別ではなく、一般家庭と変わらない普通の暮らしを営みます。
子ども達を養育・支援し、退所後も子ども達に寄り添い続けます。
また子ども達の養育だけではなく地域の子育て支援の拠点として、地域住民の児童の養育に関する相談に応じ、助言・支援を行うという役割もあります。
利用対象者
児童養護施設の利用対象者は、保護者の監護(監督・保護)を受けられない児童や、保護者の元で生活させるのが不適当と児童相談所が判断した1歳以上18歳未満の児童
です。場合によっては20歳まで延長可能です。1歳未満の乳児は乳児院への入所となります。 児童の定義(児童福祉法による) |
乳児 | 満1歳に満たない者 |
幼児 | 満1歳から、小学校就学の始期に達するまでの者 |
少年 | 小学校就学の始期から、満18歳に達するまでの者 |
具体的には・家庭環境不良の児童(両親の離婚、行方不明、心身障害など)・両親が死去した児童・両親に遺棄された児童・親から虐待を受けている児童などが該当します。児童養護施設の在籍児童の内、虐待を受けた児童は65.6%、何らかの障害を持つ児童が36.7%となっており、精神面のケアや専門的なケアを必要とする児童が増加傾向にあります。出典:社会的養護の施設等について|厚生労働省
児童養護施設で行われること
前述しましたが、児童養護施設は家庭に代わる子ども達の家として機能します。
できる限り家庭に近い雰囲気のなかで生活を送れるように配慮されており、何か特別なことが行われるわけではありません。
子ども達は施設で朝食をとって、そこから学校へ通います。学校から帰宅すれば、それぞれが勉強をしたり、趣味を楽しんだりして過ごします。
そして夕食をとって、お風呂に入って就寝するという1日の流れは、他の家庭と大きく変わりません。
なお子ども達の自立した成長を育むための取り組みとして、四季の行事や地域のイベントといったさまざまな活動への参加の機会を設けている所が多いでしょう。
児童養護施設の運営指針
「児童養護施設の運営指針」というものがあります。
施設で暮らし、その後巣立っていく子ども達が、よりよく生きられることを保障するための運営指針です。
基本理念は次の2点。
・子どもの最善の利益のために
・すべての子どもを社会全体で育む
児童養護施設の運営においては、児童の「生きる権利」「守られる権利」「参加する権利」「育つ権利」といった基本的な権利を守ることを第一に支援することが求められます。
また施設に在籍する児童だけでなく、すべての子ども達を社会全体で育むために地域の子育てに関する助言・支援を行なっていきます。
児童養護施設の仕事内容
児童養護施設の主な仕事内容は子ども達の養育・支援です。
子ども達が安心して日常生活を送り、健やかに成長できるようにサポートを行うことが職員の役割です。
具体的には
・食事提供
・生活環境の整備、手助け
・健康管理
・精神面のケア
・保護者との面談
・学校行事への参加
・進路相談
・里親支援
・退所後のフォロー
など、養育・支援といってもその範囲は多岐に渡ります。
専門スキルが必要な業務も多々あるため、児童養護施設にはさまざまな専門職が集まりそれぞれの領域で子ども達をサポートしています。
児童養護施設で必要となる職種
児童養護施設で働く職員は次のような人達です。
◆施設長
運営指揮、管理など施設を統括
◆児童指導員、保育士
保護者に代わって児童を養育し、安定した生活環境を提供
◆嘱託医、看護師
児童の健康維持、病気を治療
◆栄養士
児童の栄養や食生活をサポート
◆個別対応職員
虐待を受けた児童を個別にサポート、保護者への援助
◆心理療法担当職員
虐待を受けた児童の心理面をサポート
◆家庭支援専門相談員
児童の家庭復帰のサポート、保護者への相談援助
◆里親支援専門相談員
里親委託の推進、里親への研修、相談支援
◆職業指導員
職業選択の相談、就職支援、退所後のアフターケア
◆調理員
食事の提供、食の安全の確保
◆事務員、補助職員
施設の運営面をサポート
それぞれの職員の配置基準は下記の表の通りです。
職員の配置基準 |
施設長
| 1人 |
児童指導員 保育士 | (0〜1歳児 )1.6:1 (2歳児)2:1 (3歳以上の幼児)4:1 (小学生以上)5.5:1
45人以下の施設は更に1人追加
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嘱託医 | |
個別対応職員 | |
家庭支援専門相談員 | |
栄養士 | 40人以下の施設は配置なしも可
|
調理員 | 調理業務を全部委託する場合配置なしも可
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看護師 | 乳児が入所している場合 乳児1.6:1
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心理療法担当職員 | 必要な児童が10人以上いる場合
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職業指導員 | 職業指導を行う場合
|
職員ごとの資格要件
それぞれの職種別に必要となる資格要件を見ていきましょう。
職種 | 資格要件 |
保育士 | 保育士資格
|
児童指導員 | 児童指導員任用資格(下記条件のいずれかを満たしていれば取得可能)
・4年制大学(大学院)で、社会福祉学、心理学、教育学、社会学部のいずれかを卒業している
・小・中・高校等の教員免許、社会福祉士、精神保健福祉士資格のいずれかを保有し、厚生労働大臣または都道府県知事の認定を受けている
・高卒資格を持ち、2年以上障害福祉サービスに従事している
・3年以上障害福祉サービスに従事し、厚生労働大臣または都道府県知事の認定を受けている
|
嘱託医 | 医師免許
|
個別対応職員 | 臨床心理士資格や心理系の大学院の卒業資格が推奨 |
家庭支援専門相談員 | 社会福祉士または精神保健福祉士資格 もしくは児童養護施設にて5年以上の児童養育業務を経験
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栄養士 | 栄養士、管理栄養士資格
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調理員 | 調理師免許
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看護師 | 看護師資格
|
心理療法担当職員 | 大学で心理学を専攻・履修し、個人・集団心理療法の技術を有する者 または同等以上の能力を有すると認められる者
|
職業指導員 | 資格要件なし 児童に職業指導をできるだけの経験や技能が求められる
|
児童養護施設で働くには
児童養護施設で働くには、希望する職種に応じて上記の資格要件を満たしたうえで就職活動を行う必要があります。
なお就職活動においては児童養護施設が公立か私立かによっても違いがあり、公立の児童養護施設を希望する場合はかなりハードルが高くなるため注意が必要です。
というのも、そもそも公立の児童養護施設の数が30ヶ所程度とかなり少なく、非常に狭き門となっています。
また保育士や児童指導員らが公立の児童養護施設で働く場合には上記資格に加えて公務員試験の合格が必要になります。
私立の児童養護施設の場合、採用基準はその施設ごとに異なりますが、採用試験には個別の面接のほか、集団面接や小論文、グループディスカッションなどを取り入れているところが多いでしょう。
求人の探し方
児童養護施設は、その多くは社会福祉法人が運営する民間施設です。民間の児童養護施設の場合は、一般の転職と同じくハローワークや転職サイトを利用するとよいでしょう。また社会福祉士、保育士、看護師などの専門職に特化した転職サイトや転職エージェントを利用するのもおすすめ
です。公立の児童養護施設は、先ほどお伝えしたように公務員試験に合格する必要がありますが、公務員試験に合格しても必ずしも児童養護施設に配属されるわけではありません。児童養護施設専門の採用試験ではないため、希望を出すことはできても福祉関係の別の部署などに配属される可能性もありますので、その点は理解しておきましょう。 児童養護施設の現状・課題
児童養護施設に入所している児童の6割近くが親からの虐待を受けているという現状などから、社会的養護を必要とする児童や、精神科などの医療機関での治療を必要とする児童が年々増えており、児童養護施設に求められる役割は多様化しています。
そういった背景から、児童養護施設の小規模化、里親の支援やファミリーホームの設置など、より家庭的な環境を作っていくことが推進されています。
あわせて、人員配置の充実と、ケアの質の向上を図り、一人ひとりの子ども達により手厚いケアを行っていける環境づくりをどう進めていくかが課題となっています。
まとめ
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