更新日:2022年09月09日
公開日:2022年08月24日
ケースワーカーとは身体的・精神的・社会的な理由で生活が困難な人に対し、個別にその課題解決を援助する職業のことです。
困難な課題を持つクライアントが、主体的に生活できるよう支援を行うという意味を持つ英語のcaseworkから名付けられました。
ケースワーカーの具体的な仕事内容は次の通りです。
・福祉サービスの利用を申請した人との面接調査
・相談内容や支援状況についての報告書作成
・状況確認のための家庭訪問
・支援プログラムの受給資格確認や利用手続き
・医療や生活についての支援措置や補助の適用について検討
・公的支援措置の関係窓口の紹介
・支援措置の内容や受給額の説明と事務手続きの支援
・公的支援措置の対象となるかどうかの判断材料となる資料の収集・整備
・援助開始後の担当者への引継ぎ
ケースワーカーは生活が困難な人の相談を受けるだけではなく、適切な情報提供を行い、事務手続きや相談窓口への紹介など課題解決まで細やかなサポートを行っているのがわかります。
ケースワーカーは社会福祉に関わる他の仕事と混同されやすいのですが、それぞれの仕事とどのような違いがあるのでしょうか。
5つの仕事についてご紹介します。
ソーシャルワーカーとは身体的・精神的・社会的な理由で生活が困難な人や児童に対し福祉の専門知識を活かして課題解決を援助する職業のことです。
上記の定義だけではケースワーカーとソーシャルワーカーにどのような違いがあるのかわかりにくいので、それぞれの対象者、勤務場所、必要資格を比較し表にまとめてみました。
職業 | 対象者 | 勤務場所 | 必要資格 |
ケースワーカー | 障がい児 高齢者 児童 | ・地方自治体が設置する福祉事務所 | ・社会福祉主事任用資格 ・地方公務員資格 |
ソーシャルワーカー | ・病院の患者(医療ソーシャルワーカー) ・精神科・心療内科の患者(精神科ソーシャルワーカー) ・児童(スクールソーシャルワーカー) ・高齢者 | ・高齢者福祉施設 ・児童福祉施設 ・障がい者施設 ・地方自治体が設置する福祉事務所 ・保健所 ・医療機関 ・福祉サービスを行う民間企業 | ・社会福祉士 ・精神保健福祉士 ・社会福祉主事任用資格 |
この表からソーシャルワーカーの中で社会福祉主事任用資格と地方公務員資格を持ち、地域の福祉事務所で相談援助業務を行う人をケースワーカーと呼んでいることがわかります。
精神保健福祉士とはケースワーカーのような職業の名称ではなく、精神保健福祉士法に基づく名称独占の資格で、取得すると精神科ソーシャルワーカーとして病院や福祉施設、行政施設で働くことができます。
将来ソーシャルワーカーとなり、精神保健を専門分野として相談・援助業務を行いたい人は、精神保健福祉士の資格取得を検討してみましょう。
介護福祉士もケースワーカーのような職業の名称ではなく、社会福祉士及び介護福祉士法に基づく国家資格で、取得すると高齢者福祉施設や障がい者施設などで働くことができます。
将来高齢者や障がい者の介護に携わりたい人は、介護福祉士の資格取得を検討してみましょう。
ケアマネ―ジャーもケースワーカーのような職業の名称ではなく、介護保険法等を根拠にケアマネジメントを実施することのできる公的資格で、取得すると居宅介護支援事業所、高齢者福祉施設、地域包括支援センターなどで働くことができます。
将来高齢者が適切な介護サービスを受けられるようにサポートしたい人は、ケアマネージャーの資格取得を検討してみましょう。
社会福祉士もケースワーカーのような職業の名称ではなく、社会福祉士及び介護福祉士法に基づく国家資格で、取得するとソーシャルワーカーとして児童福祉施設、学校、高齢者福祉施設、医療機関などさまざまな場所で働くことができます。
将来ソーシャルワーカーとなり、幅広く相談・援助業務を行いたい人は社会福祉士の資格取得を検討してみましょう。
ケースワーカーはどのような勤務先で働くことができるのでしょうか。
5つご紹介します。
ケースワーカーの勤務先として一番知られているのが福祉事務所でしょう。
社会福祉主事任用資格と地方公務員資格を取得して一般の行政職として採用され、入職後地域の福祉事務所に配属されます。
福祉事務所では面接担当のケースワーカーと地区を担当するケースワーカーにわかれ、面接担当が課題を整理して支援の種類や方法を判断後、地区担当が具体的な支援の方針を決めてその後のモニタリングや記録の作成などを行うのです。
ケースワーカーは生活保護受給者の相談・援助をするため、市役所で勤務する場合もあります。
地域によって採用人数や年齢制限、試験内容などは異なりますが、各地方自治体の市役所職員の採用試験を受けて合格し、市役所にケースワーカーとして配属されます。
相談・援助業務を市役所の窓口で行うだけではなく、家庭訪問などの実態調査、支援に関する事務作業なども行い、多数の世帯を受け持つのが特徴的だと言えるでしょう。
児童相談所で子供たちの健全な育成に導くための相談・援助業務を行うケースワーカーも存在します。
児童福祉司任用資格と地方公務員資格を取得して採用され、児童相談所にケースワーカーとして配属されます。
養護相談、保健相談、障がい相談、非行相談、育成相談といった業務を行い、2020年に児童相談所が行った児童虐待への対応は20万5,044件と過去最多となりました。
問題を抱える親子に深く関わり、寄り添った対応が求められます。
参考:厚生労働省「令和2年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数」
病院のケースワーカー室や医療相談室などで患者やその家族を対象に相談・援助業務を行うケースワーカーもいます。
必須ではありませんが社会福祉士の資格を取得して医療ケースワーカー、精神保健福祉士の資格を取得して精神科ケースワーカーとして勤務することが多いでしょう。
入院や通院、医療費、保険の利用方法などの治療段階における相談から退院後の生活で利用する福祉サービスの相談まで、患者ごとに適した制度やサービスについて情報提供し、課題の解決へと導きます。
高齢者福祉施設や障がい者施設などで利用者やその家族を対象に相談・援助業務を行うケースワーカーがいます。
必須ではありませんが社会福祉士の資格を取得し、ケースワーカーを配置している福祉施設に就職して相談業務に携わることとなるでしょう。
利用者や家族との面接、利用者のアセスメント作成、利用実績の調査、家庭訪問などが主な仕事となり、場合によっては介護事務の仕事も行います。
ケースワーカーになるためには、どのような資格を取得すればよいのでしょうか。
3つご紹介します。
2020年4月1日現在、社会福祉主事任用資格は社会福祉法で定められた5つの方法で取得することができます。
①大学等において社会福祉に関する科目を3科目以上修めて卒業した人
②全社協中央福祉学院社会福祉主事資格認定通信過程、日本社会事業大学通信教育科において通信教育を1年受けた人
③指定養成機関で22科目、1500時間の過程を修了した人
④都道府県等の講習会で19科目、279時間の過程を修了した人
⑤社会福祉士、精神保健福祉士等の資格を取得した人
科目などの詳細についても知りたい人は、厚生労働省のホームページで確認してみましょう。
参考:厚生労働省「ページ9:社会福祉主事任用資格の取得方法」
地方公務員資格は、都道府県や市町村などの地方自治体が行う独自の試験に合格すると取得することができます。
試験は一次試験と二次試験の2回行われることが多いのですが、四次試験までのこともあり、地方自治体によっては難易度が高い場合もあることを覚えておくとよいでしょう。
試験の区分は次の3つにわけられます。
・高卒程度の学歴が必要な初級
・短大卒程度の学歴が必要な中級
・大卒程度の学歴が必要な上級
それぞれの区分には年齢制限があり、職種によっては専門の資格が必要な場合があるので、自分が受けたい地方自治体の試験内容については詳細を必ず調べておくことが望ましいでしょう。
児童福祉司は児童福祉法で定められる任用要件を満たすことでなることができます。
児童福祉司の任用要件について表にまとめてみました。
基礎資格 | 実務経験 | 指定講習会の受講 |
大学で心理学、教育学もしくは社会学を専修する学科 またはこれらに相当する課程で単位を修得し、 大学院への入学を認められた人 | 相談援助業務1年 | 不要 |
大学院において、心理学、教育学もしくは 社会学を専攻する研究科、またはこれらに相当する 課程を修めて卒業した人 | 相談援助業務1年 | 不要 |
外国の大学において、心理学、教育学もしくは 社会学を専修する学科またはこれらに相当する 課程を修めて卒業した人 | 相談援助業務1年 | 不要 |
社会福祉士となる資格がある人(未登録者) | ||
外国の大学において、心理学、教育学もしくは社会学を専修する学科 またはこれらに相当する課程を修めて卒業した人 | ー | ー |
社会福祉士となる資格がある人(未登録) | ー | ー |
保健師 | 相談援助業務1年 | 必要 |
助産師 | 相談援助業務1年 | 必要 |
看護師 | 相談援助業務2年 | 必要 |
保育士 | 相談援助業務2年 | 必要 |
教員免許保有者 | 相談援助業務1年 | 必要 |
教員免許保有者(二種) | 相談援助業務1年 | 必要 |
社会福祉主事の資格がある人 | 社会福祉主事として児童相談事業に従事、児童相談所の所員を合計2年 | 不要 |
社会福祉主事の資格がある人 | 児童福祉事業3年 | 不要 |
児童指導員 | 相談援助業務2年 | 必要 |
児童福祉司の資格について詳細を知りたい人は、厚生労働省の参考資料にも目を通してみてください。
参考:厚生労働省「児童福祉司の概要等について」
ケースワーカーとして働く場合、どのようなやりがいや辛いことがあるのでしょうか。
それぞれご紹介します。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」では職業ごとに得やすい満足感を項目別に1~5までの数値で表していますが、ケースワーカーにおいては「奉仕・社会貢献」が3.9、「専門性」が3.7、「自律性」が3.5という結果でした。
このことからケースワーカーがやりがいを感じるのは、専門性を活かした自らの行動で社会貢献につながった時ではないかと考えられます。
「jobtag」では職場環境や仕事の内容などもその頻度を数値化していますが、ケースワーカーにおいては「対面での議論」が4.3、「時間的切迫」が4.1、「仕事上での他者との対立」が3.8という結果でした。
このことからケースワーカーが仕事で辛いと感じるのは、時間のない中で対面で議論をしながら他者との意見調整を行わなければならない場面だというのが伝わってきます。
参考:厚生労働省職業情報サイトjobtag「福祉事務所ケースワーカー」
ケースワーカーは身体的・精神的・社会的な理由で生活が困難な人に対し、個別にその課題解決を援助する職業ですが、福祉事務所・児童相談所・病院・福祉施設などさまざまな活躍の場があり、社会貢献ができるやりがいのある職業だと言えます。
この記事も参考にして、ぜひケースワーカーへの理解を深めてみてください。
※掲載情報は公開日あるいは2022年09月09日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。