更新日:2022年10月18日
公開日:2022年10月17日
介護職として働き続けるのが辛いので、転職を考えているけれど介護職しか経験がないので一歩足を踏み出せないという人はいませんか?
この記事では介護から転職した人の現状から、転職するにあたって必要な事前準備まで詳しく解説します。
2021年10月に株式会社ビズヒッツが介護から転職した経験のある人191人を対象に行ったアンケート調査によると、「介護職から異業種への転職は順調だったか」という質問に対し「順調だった」と回答した人が24.6%、「まあ順調だった」と回答した人が40.3%でした。
また「介護職から転職してよかったと思うか」という質問に対して「思う」と回答した人が49.8%、「まあ思う」と回答した人が39.8%だったのです。
このことから介護から転職する際の現状として、6割程度の人が介護から異業種に転職する場合でも順調に転職でき、9割程度の人が転職してよかったと感じている現状がうかがえます。
そして介護職から異業種への転職理由について「体調・体力面の不安」と回答した人が67人、「収入アップのため」と回答した人が45人、「労働時間への不満」と回答した人が33人でした。
このことから介護職からの転職理由として年齢や性別に関係なく体力面での不安が多く、次いで収入面での不満が多いという現状がわかります。
参考:Biz Hits「介護職から異職種への転職理由ランキング!経験を活かせる仕事5選も紹介【191人アンケート調査】」
介護職から離れたいと感じているのに、介護から転職できないと考えてしまうのはどのような理由があってのことなのでしょうか。
3つご紹介します。
2019年に内閣府が13才から29才までの男女10,000人を対象に行った「子ども・若者の意識に関する調査」では「いまの自分自身に満足している」という設問に対し次のような結果が出ました。
年齢 | あてはまる | どちらかといえばあてはまる | どちらかといえばあてはまらない | あてはまらない |
20才~24才(2,884人) | 9.4% | 30.9% | 35.6% | 24.0% |
25才~29才(3,093人) | 8.2% | 30.0% | 36.6% | 25.2% |
20代の人の約6割は今の自分自身に満足できていないということがわかります。
また「自分は役に立たないと強く感じる」という設問に対し次のような結果が出ました。
年齢 | あてはまる | どちらかといえばあてはまる | どちらかといえばあてはまらない | あてはまらない |
20才~24才(2,884人) | 19.2% | 35.6% | 32.0% | 13.1% |
25才~29才(3,093人) | 16.4% | 33.4% | 35.0% | 15.2% |
20代の人の約5割は自分は役に立たないと強く感じていることがわかります。
自分自身の欠点も含めて肯定的、好意的に受け入れることのできる力を心理学の用語で自己肯定感と言いますが、この調査の結果から現在の20代においては自己肯定感の低い人が半数を占めていると言えるでしょう。
このことから自己肯定感が低い人の場合介護職から離れたいと思っても、自分は役に立たないと感じているため介護から転職できないと考えてしまう可能性があります。
参考:内閣府「子ども・若者の意識に関する調査(令和元年度)」
ポータブルスキルとはその職種における専門性以外に、異業種に転職しても役に立つスキルのことを指します。
ポータブルスキルには次の9つの要素があります。
要素 | 概要 | |
仕事の仕方についてのポータブルスキル | 現状把握 | 仕事で取り組まなければならない課題やテーマを設定するために行う情報収集、分析のスキル |
課題設定 | 事業、商品、組織、仕事の進め方などにおいて課題を設定するスキル | |
計画立案 | 担当する業務や課題を遂行するために具体的な計画を立てる際のスキル | |
課題遂行 | 課題を遂行するためのスケジュール管理、周囲の人との調整、業務を進める上での障害の排除、プレッシャーを乗り越えるスキル | |
状況への対応 | 想定外の出来事への対応や責任の取り方のスキル | |
人との関わり方についてのポータブルスキル | 社内対応 | 経営層・上司・関係部署が納得感を持つコミュニケーションや支持を得るためのスキル |
社外対応 | 顧客・社外パートナーなどが納得感を持つコミュニケーションや利害調整・合意形成のためのスキル | |
上司対応 | 上司への報告や課題改善に関する意見の伝え方のスキル | |
部下マネジメント | チームメンバーの動機づけや育成、持ち味を活かした業務割り当てのスキル |
介護職しか経験がない人の場合、介護職から一般企業への転職時に持ち運べるポータブルスキルが何もないと思い込むことがあるため、介護から転職できないと感じてしまうのです。
自分の知らない新しいものに対して恐怖心を抱いてしまう心理のことをネオフォビアと言いますが、異業種に関する知識がない場合、新しい環境に対する恐怖心から転職活動に一歩踏み出せないのは自然なことと言えるでしょう。
人間が未知のものや未体験のものに恐怖を感じるということを知ると、介護から転職できないという強い気持ちを少し和らげることができるのではないでしょうか。
介護から転職する前の事前準備として、どのようなことをしておくのが望ましいのでしょうか。
3つご紹介します。
介護から転職する前には、まず介護職からの転職先としてどのような職種があるかについての理解を深めておきましょう。
前の項目でご紹介したネオフォビアを和らげることができるのもそうですが、より自分の将来の選択肢を増やすことができるのもメリットです。
さまざまな職種について理解を深める上でおすすめなのが、厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」です。
トップページから職業を検索する際には、次の8つの項目から自分の興味のある職種にたどりつくことができます。
項目 | 概要 |
適職探索 | 「職業興味検査」「価値観検査」などさまざまな検査の結果から自分に合った職業を探索できる |
テーマ別 | 仕事においてやりたいテーマから数件~20件程度の職業を検索できる |
イメージ検索(地図) | 地図内でオフィス街や官公庁など働きたい場所をクリックすることで自分の興味のある職業にたどりつける |
仕事の性質 | 仕事の性質であてはまることにチェックを入れて検索すると自分に合った職業にたどりつける |
スキル・知識 | 「強みとなるスキル・知識」と「不足しているスキル・知識」を両方入力することで自分に適した職業を検索できる |
免許・資格 | 自分の持っている免許や資格から自分に合った職業を検索できる |
職種カテゴリー | 営業や事務など職種から自分に合った職業を検索できる |
産業別 | 日本標準産業分類別の各産業から自分に合った職業を検索できる |
jobtagは検索方法が多岐に渡るため、職種についておおまかな情報を収集したい人から、転職する業界をある程度絞っている人までさまざまな検索ニーズに対応できるのです。
介護職からの転職先にはどのような職種があるのか知りたい人だけではなく、介護職から営業職、介護職からITのようにある程度業種が絞れている人もまずはjobtagで幅広く情報収集してみることをおすすめします。
自分が介護職には向いていない人だということはわかったけれど、どのような職業なら向いているのかわからないという人もいるでしょう。
jobtagでは自分の適職を知るために、次のようなチェックを行うことができます。
項目 | 概要 |
職業興味検査 | 直感で42問の質問に回答することで職業興味の特徴を知ることができる |
価値観検査 | 60問の質問に回答することで今の自分の仕事における価値観を診断できる |
簡易版職業適性テスト(Gテスト) | 検査A、検査B、検査Cの3種類の検査をすることで、自分の職業適性をグラフで教えてもらえる |
職業能力チェック | 自分の転職したい職と職業能力のレベルを設定するとチェックシートが表示され、自分の職業能力がチェックできる |
自分では気づかなかった興味や能力を知ることで、より満足できる適職への転職につながるのではないでしょうか。
介護職から一般企業への転職時に持ち運べるポータブルスキルがあまりないのではないかと感じている人は、ポータブルスキル見える化ツールで自分のポータブルスキルを客観的に測定してみましょう。
ポータブルスキル見える化ツールでは、自分の状態を数値で入力することで、持っているポータブルスキルを活かせる職務や職位を表示することができます。
自分の強みとなるポータブルスキルを見つけることで、より転職活動に自信を持って臨めるようになるでしょう。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイト「jobtag」
jobtagによる施設介護職員の就業統計データは次の通りです。
項目 | データ |
労働時間 | 163時間 |
年収 | 352.8万円 |
平均年齢 | 43.8才 |
ハローワークでの求人賃金 | 20.2万円 |
有効求人倍率 | 3.25倍 |
これを踏まえて、介護職からの転職先としておすすめの職種を20代・30代・40代の年代別にご紹介します。
20代の人におすすめなのは、販売士や色彩検定などの資格を取得してアパレルの店員として勤務することです。
アパレルの店員は洋服を中心とした服飾雑貨を販売しますが、店を美しく保ち来店客に適切なアドバイスをすることが求められるため、介護の経験から得た掃除や整理整頓のスキルや、コミュニケーションスキルを活かすことができます。
また早番と遅番の2交代制勤務や土日勤務も、介護業界で働いていた人にとってはなじみやすいのではないでしょうか。
販売士の資格を取得することで、アパレルの店員にとって必要なマーケティングの考え方を学ぶことができ、色彩検定の資格を取得することで洋服や雑貨にとって重要な色についての体系的な知識や配色技法まで詳しく学ぶことができるので、転職前に取得しておくと自信につながるでしょう。
アパレルの店員として働く人の就業統計データは次の通りです。
項目 | データ |
労働時間 | 164時間 |
年収 | 354.8万円 |
平均年齢 | 42.1才 |
ハローワークでの求人賃金 | 22万円 |
有効求人倍率 | 1.69倍 |
介護職から転職することで労働時間や年収が大きく変わるわけではありませんが、早い人でも5年目以降で店長となり昇進や昇給も見込めるため、20代の人にとっては将来を考えた良い転職だと言えるでしょう。
参考:一般社団法人日本販売士協会「資格の取得」
参考:色彩検定「受検案内 合格への道」
30代の人におすすめなのは、医療事務の資格を取得し事務職として病院や診療所に勤務することです。
医療機関における事務職の人は、診療報酬を請求するための書類作成を行ったり、窓口において外来の受付、医療費の請求、入退院の手続きなどを行ったりすることが多いでしょう。
書類作成においては数値の正確性、また窓口業務においては周囲のスタッフとの連携が求められるため、介護職で培われた集中力やコミュニケーション能力を活かせるでしょう。
医療事務の資格は全て民間資格で難易度によって合格率もさまざまなので、自分に適したものを選んで取得するのをおすすめします。
医療事務の資格を取得し、事務員として働く人の就業統計データは次の通りです。
項目 | データ |
労働時間 | 161時間 |
年収 | 439.7万円 |
平均年齢 | 42.9才 |
ハローワークでの求人賃金 | 18.5万円 |
有効求人倍率 | 0.78倍 |
介護から転職することで80万円程度年収が上がるため、ライフステージの変化に合わせてお金が必要になってくる30代の人にとってはメリットの大きい転職先だと言えるでしょう。
40代の人におすすめなのは、福祉用具専門相談員の資格を取得して、福祉用具の貸与サービス・販売を行う事業所の営業職として勤務することです。
利用者やその家族に対して適切な福祉用具の選び方、使い方をアドバイスするのはもちろん、地域包括支援センターやケアマネージャーと信頼関係を築くことを求められるため、今までの介護経験や培われたヒューマンスキルを活かすことができるでしょう。
介護保険制度の下で福祉用具の貸与サービス・販売を行う事業所においては各事業所に2名以上の福祉用具専門相談員を配置しなければなりません。
そのため働きながら資格を取得する必要はありますが、転職はその分しやすくなるでしょう。
福祉用具専門相談員の資格を取得するためには、都道府県の指定する福祉用具専門相談員指定講習を受講し、修了評価の筆記試験を受ける必要があります。
講習会はオンラインでも受けることができるため、時間に余裕のない人はこちらを選択するのもよいのではないでしょうか。
福祉用具専門相談員として働く人の就業統計データは次の通りです。
項目 | データ |
労働時間 | 166時間 |
年収 | 409.7万円 |
平均年齢 | 50.9才 |
ハローワークでの求人賃金 | 23.7万円 |
有効求人倍率 | 4.18倍 |
施設介護職員の就業統計データと比較すると労働時間は少し増えますが、年収が50万円程度増加し、平均年齢も50.9才と高いため、40代の人にとっても新人として馴染みやすい環境と言えるのではないでしょうか。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイト jobtag「福祉用具専門相談員」
介護から転職するのに不安を抱えている人は多いかもしれませんが、実際に転職した人の9割が転職してよかったと感じています。
この記事も参考に情報収集や資格取得といった事前準備をしっかりと行い、自分の希望する転職へとつなげていってください。
※掲載情報は公開日あるいは2022年10月18日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。