更新日:2022年12月19日
公開日:2022年12月07日
「介護業界の仕事に興味はあるけど、介護職は自分には・・・」と思っている方はいませんか。一般の方なら入浴・排せつの介助や夜勤に抵抗があるほうが普通でしょう。そのような方におすすめの職種が福祉用具専門相談員です。今回は、高齢者をソフト面ではなくハード面から支える福祉用具専門相談員について、様々な視点から解説しました。介護業界で介護職以外の職種で働きたい方は、ぜひ最後までお読みください。
高齢者をソフト面からサポートするのが介護職員・ケアマネジャーであるのに対して、ハード面からサポートするのが福祉用具専門相談員です。この章では「福祉用具専門相談員と何か」という視点で解説していきます。
福祉用具専門相談員は介護職員やケアマネジャーなどと連携しながら、高齢者の生活を福祉用具でサポートする専門職です。介護保険での福祉用具の利用方法には貸与(レンタル)と販売の2種類があり、その両方で福祉用具専門相談員はかかわっています。そのため、福祉用具貸与と福祉用具販売の事業所では、2名以上の福祉用具専門相談員の勤務が義務づけられています。福祉用具専門相談員になるためには、都道府県知事指定の事業者が実施する指定講習を受講し修了試験での合格が必要です。指定講習については後ほど詳しく解説します。
福祉用具専門相談員は、知識だけではなく制度も熟知している福祉用具のスペシャリストです。高齢者が福祉用具を利用する場合、福祉用具専門相談員は次の流れでサポートしていきます。
1.相談対応:利用する方の状況を踏まえ福祉用具を選定する
2.計画作成:相談内容にもとづいて福祉用具の利用計画を作成する
3.調整・取扱説明:利用する方の状況にあわせて福祉用具を調整・説明する
4.モニタリング:利用する方のもとを訪問し、使用状況の確認や福祉用具の点検などをする
なお、福祉用具を利用する本人ではなく、ケアマネジャーや地域における介護の相談窓口である地域包括支援センターから相談を受けることが一般的です。
福祉用具専門相談員の主な勤務先は福祉用具貸与・販売事業所です。なぜなら、前述のように福祉用具貸与・販売の事業を運営するためには、2名以上の福祉用具専門相談員が必要であるからです。そのため、福祉用具貸与・販売事業所からの求人を頻繁に目にします。そのほかでは、百貨店やホームセンターなどの介護用品コーナーがあります。また、福祉用具と関連が深い住宅改修工事をする住宅会社やリフォーム会社なども勤務先の一つです。
冒頭で述べたように、福祉用具専門相談員になるためには指定講習を受講しなければなりません。また、就職後に困らないようにするためにも、スキルアップやキャリアアップの方法を事前に理解しておきましょう。
福祉用具専門相談員指定講習の時間や形態などは次のとおりです。
● 受講時間:約50時間
● 受講資格:なし
● 受講形態:通学・オンライン
講習は6日間連続や週1回の受講を6週続けるものなどがあります。
また、指定講習の講義内容は次のとおりです。
1.福祉用具と福祉用具専門相談員の役割
2.介護保険制度等に関する基礎知識
3.高齢者と介護・医療に関する基礎知識
4.個別の福祉用具に関する知識・技術
5.福祉用具に係るサービスの仕組みと利用の支援に関する知識
6.福祉用具の利用の支援に関する総合演習
参照:福祉用具専門相談員指定講習における目的、到達目標及び内容の指針
車椅子やリフトなどの福祉用具だけではなく、介護・医療や介護保険制度などについても学べる内容です。
看護・福祉系の国家資格保持者は指定講習を修了していなくても、介護保険の指定福祉用具貸与・販売事業所で福祉用具専門相談員としての業務ができます。福祉用具専門相談員指定講習を受講する必要のない国家資格は次のとおりです。
● 保健師
● 看護師
● 准看護師
● 理学療法士
● 作業療法士
● 社会福祉士
● 介護福祉士
● 義肢装具士
福祉用具専門相談員のスキルアップとして取得をおすすめする資格・検定は次のとおりです。
● 福祉用具プランナー
● 福祉用具選定士
● 福祉住環境コーディネーター検定試験
福祉住環境コーディネーター2級以上の方は、介護保険の住宅改修工事における「住宅改修が必要な理由書」の作成ができます。そのため、介護保険の住宅改修工事をする住宅会社やリフォーム会社への就職が有利になる検定試験です。
また、キャリアアップとしては次の職種が考えられます。
● 福祉用具貸与・販売事業所の管理者
● 会社の役職者
なお、キャリアアップとは異なりますが、福祉用具専門相談員の仕事をきっかけに介護職員に興味を持たれる方もいるでしょう。その場合、福祉用具貸与・販売事業のほかにも、様々な介護事業を幅広く展開している会社なら介護職員への異動もしやすいといえます。
福祉用具専門相談員として就職すると、いったいどれぐらいの給料がもらえるのでしょうか。求人状況や介護職員処遇改善加算も含めて確認しておきましょう。
ハローワークや転職サイトなどをみると、多くの福祉用具専門相談員の求人が確認できます。正社員のほかに契約社員やアルバイトの求人もあるため、勤務日数や勤務時間を調整できる柔軟な働き方が可能です。また、募集年齢は一般的な定年である60歳を表記している求人が多く、求人における年齢制限はほぼありません。なお、福祉用具専門相談員の有資格者の求人は多い傾向があります。無資格の方はアルバイト・パートでの入社後に、福祉用具専門相談員の研修を修了すれば、正社員を目指すことも可能です。
福祉用具専門相談員の正社員の給料は、月給で20万〜26万円、賞与は2〜3.5ヵ月という求人を多くみかけます。27万円以上の月給を支給する会社の求人も珍しくありませんでした。また、前述の福祉住環境コーディネーターや福祉用具プランナーの資格保有者に対して、月数千円の資格手当を支給する会社もあります。資格手当や残業手当などを考えると、一般の介護職員と同じぐらいの給料です。ただ、数値で判断しやすい営業面での評価があるため、営業スキルに自信がある方は昇給や昇進が期待できる職種といえます。
残念ながら福祉用具専門相談員は介護職員処遇改善加算の支給対象ではありません。理由としては、介護職員処遇改善加算は介護職員の給料を改善させるための制度であるからです。正確には福祉用具貸与・販売事業が支給対象外であり、同じように介護職員処遇改善加算の対象外事業には次のような事業があります。
● 訪問看護
● 訪問リハビリテーション
● 居宅介護支援
参照:厚生労働省「介護職員処遇改善加算及び介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」
考え方としては、利用者を直接介護をする職種がいる事業だけを対象にしているといえます。
福祉用具専門相談員は介護職員やケアマネジャーとは異なり、福祉用具というハード面から高齢者をサポートする専門職です。約50時間の指定講習を修了すれば福祉用具専門相談員になれ、正社員の求人がも多くあるためコスパのよい資格といえます。介護職員処遇改善加算の支給対象でありませんが、給料はほかの介護職員と同じぐらいです。介護職員にとって必須の入浴・排せつの介助や夜勤がないため、介護業界に興味のある方にはおすすめの職種といえます。
※掲載情報は公開日あるいは2022年12月19日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。