バイタルサインが難しそうと思っている介護職はいませんか。
バイタルサインを理解するためには測定項目や測定方法、基準値などの覚えることがたくさんあります。
今回は経験の浅い介護職の方が介護現場ですぐに使えるように、バイタルサインを測定する目的から項目、基準値などをわかりやすく解説します。
異常な数値が出た場合の対処方法も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
バイタルサインとは
バイタルサインは英語で書くと「vital sign」で、直訳すると「生命兆候」や「生きているしるし」です。介護施設や病院では利用者様・患者の状況や緊急性を判断する数値として使用されています。一般的にバイタルサインの測定項目は以下の4項目です。● 脈拍数● 呼吸数● 体温● 血圧参照:国立療養所高松病院 在宅療養技術指導マニュアル また、上記の4項目に意識レベルや尿量、酸素飽和度を加える場合もあります。利用者様の中には言葉での表現が難しい方や体調が急に悪化しやすい方がいます。利用者様の状態を瞬時に客観的に把握するためにも、バイタルサインとその測定方法の理解がとても重要です。 バイタルサインを測定する目的
バイタルサインを測定する目的は以下の二つです。
● 健康状態の把握
● 健康状態の推移
利用者様のバイタルサインを調べることで、測定時点での健康状態を把握できます。
測定結果が基準値ではなく異常値の場合、すぐに適切な医療処置をすることで生命を維持することもできるでしょう。
また、数週間や数ヵ月間、数年間の測定値の推移を確認すれば、中・長期間の健康状態の推移を把握できます。
測定値が悪化しているようなら治療が必要になります。薬物療法ではなく運動療法で対応できる場合は介護職の出番です。
ケアプランの方針もありますが、散歩の時間を増やしたり体操の回数を増やしたりなど、日頃の活動での対応も十分可能です。
バイタルサインの測定方法
バイタルサインを測定するためには測定方法を把握することも重要ですが、事前準備や利用者への声かけなどに心がけることも重要です。
事前準備が大事
バイタルサインの測定は事前準備が重要です。
体温計や血圧計などの機材を忘れては測定ができません。
また、全員の測定データを覚えられないため記入用紙の準備も必要です。
ほかの介助や作業と同時並行では正確な測定ができないため、仕事の割り振りも必要になってくるでしょう。
くれぐれも介助や作業のついでにバイタルサインの測定をすることはやめてください。
利用者への声かけを忘れない
測定の際は利用者様へしっかり声かけをしましょう。
「測定しますよ」といったと同時に、いきなり測定することはやめてください。
「測定してもよろしいですか?」と声をかけ、利用者様の反応を待ってから測定することが重要です。
また、重度の認知症や難病で、声を出したり反応したりできない利用者様に対しても同様です。
声を出したり反応したりできなくても声は届いています。
声をかけて利用者様の目をみて、一呼吸おいてから測定してください。
バイタルサインごとに気をつけるポイントとは
バイタルサインは日々の変化を追う必要があるため、毎日決まった時間に測定してください。また、以下の場合は測定値に影響が出るため、それぞれ30~60分安静にしてから測定します。● 運動直後● 入浴後● 食後● 精神的緊張参照:国立療養所高松病院 在宅療養技術指導マニュアル 測定項目ごとに気をつけるポイントは以下のとおりです。参照:「最新 介護福祉士養成講座15 医療的ケア」中央法規脈拍数橈骨動脈や上腕動脈に第2〜4指の3本の指を当てて測定します。なお、脈拍数が100回以上/1分間の状態を頻脈、脈のリズムが一定ではなく乱れる状態を不整脈といいます。呼吸数呼吸は吸う・吐くを1回として数えていきます。意識すると利用者様の呼吸が早くなったり遅くなったりするため、呼吸の測定を意識させないことが重要です。脈拍の測定と同時に行うことも一つの方法といえます。体温体温はわきの下に前から斜め上に向けて体温計の先端を当て、上腕をおろしてわきを閉じた状態で測定します。もし、脇が汗で濡れているようであれば、拭き取ってから測定してください。血圧血圧は自動血圧測定器で測定します。動脈を圧迫するマシンシェットの端を肘関節から1~2cmの位置にして、中指の延長線上にエア管の接続部がくるように巻きます。マシンシェットを巻く強さは指が2〜3本入る程度です。 記録もれがないようにする
測定結果を忘れずに記録してください。
施設によっては記録用紙への記入のほかに、介護記録システムへ入力する場合もあります。
どちらの場合も記録がもれてしまうと再測定しなければなりません。
その場合、前述のように毎日決まった時間での測定にはならず、日々の測定結果との比較が難しくなってしまいます。
記録までがバイタルサインの測定であることを認識して取り組んでください。
バイタルサインごとの基準値とは
バイタルサインに基準値はありますが、個人差の把握も同じぐらい重要です。
基準値の解説
バイタルサインの基準値は以下のとおりです。● 脈拍数:60~80回/分● 呼吸数:12~18回/分● 体温:36.0~36.9℃● 血圧:最大・収縮期血圧120~129、最小・拡張期血圧80~84参照:「最新 介護福祉士養成講座15 医療的ケア」中央法規なお、バイタルサインの基準値は参考にする資料によって多少の差があります。 個人差の把握が大事
バイタルサインの測定では利用者様一人ひとりの平常時の数値を把握することが重要です。
なぜなら、健康な状態でも基準値外の数値の方もいるからです。
平常時で体温が36℃未満や脈拍数が60回未満の方も珍しくはありません。
そのため、バイタルサインの基準値の把握とともに、平常時の利用者様一人ひとりの測定結果を把握することが重要なのです。
もし異常な数値が出たらどう対応するのか
バイタルサインを測定し、もし異常な数値が出たらどのように対応したらよいのでしょうか。
慌てないためにも対応方法を確認していきましょう。
対応する前に・・・測定方法は正しいか
異常値が出たら同僚や看護師と連携して対応しなければなりませんが、その前に測定方法が正しいかもう一度確認してください。
測定方法が間違っていて異常値が出ることもあるからです。
機器の使い方だけではなく、前述のように食後すぐや緊張している状態では測定値に影響が出ます。
異常値が出たときこそ落ち着いて行動しましょう。
異常値が出たら看護師と連携して素早い対応を!
正しい測定方法で異常値が出たのなら同僚や看護師と連携して対応してください。
一人で対応しようとすると間違って対応する可能性があります。特に医療職である看護師への連絡は早めにしましょう。
医師が常勤している施設でも同様です。
また、場合によっては通院をしなければなりません。その際も同僚や看護師と連携した対応が重要になってきます。
場合によってはすぐに救急車を呼ぶ!
呼吸困難や顔の片方がゆがむ、ふらついて立てないなどの場合は119番に通報しましょう。そのときも一人で対応しようとしないで、同僚と連携して以下のように役割を分担し対応してください。● 119番通報● 看護師を呼ぶ● 応急手当(心肺蘇生など)● AEDの運搬● 救急隊の誘導(門扉や玄関扉の開錠含む)参照:神戸市消防局 高齢者福祉施設における救急要請ガイドライン 慌てるときほど冷静に行動するように努めましょう。 バイタルサインを理解して介護スキルを向上させよう!
介護職にとってバイタルサインは理解しなければならないものです。バイタルサインそのもののだけではなく、目的や測定方法、基準値などの理解も重要です。もし、異常な測定値が出たら慌てずに落ち着いて行動しましょう。看護師との連携や状況次第では救急搬送が必要です。バイタルサインを理解することで、一段階上の介護職へステップアップできますよ。※掲載情報は公開日あるいは2023年01月19日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。