更新日:2023年01月31日
公開日:2023年01月25日
福祉について学び始めてから初めて社会福祉協議会という組織があると知ったけれど、どのような役割を持っているのか、どうすれば就職できるかについてもっと詳しく知りたいという人も少なくないのではないでしょうか。
この記事では社会福祉協議会の事業内容から就職する方法まで詳しく解説します。
社会福祉協議会とは1951年に制定された社会福祉法の第109条~第111条に基づき、民間の社会福祉活動を推進することを目的として設立された非営利団体です。
社会福祉協議会には次の3種類の組織があります。
社会福祉協議会の種類 | 概要 | 設置数 |
市区町村社会福祉協議会 | ・地域の多様な福祉ニーズに応えるのを目的とした活動を行う | ・1825ヵ所 |
都道府県社会福祉協議会 | ・47都道府県での社会福祉の充実を目指した活動を行う ・指定都市(20ヵ所)にも設置され都道府県社会福祉協議会に準じた活動を行う | ・67ヵ所 |
全国社会福祉協議会(全社協) | ・都道府県社会福祉協議会の連合会としての役割を持つ | ・1ヵ所 |
それぞれが独立した組織であり、市区町村社会福祉協議会が都道府県社会福祉協議会を構成し、都道府県社会福祉協議会が全国社会福祉協議会を構成するという組織形態となっているのが特徴的と言えるでしょう。
参考:e-GOV法令検索「社会福祉法」
参考:社会福祉法人 全国社会福祉協議会「全国社会福祉協議会とは」
参考:社会福祉法人 全国社会福祉協議会 地域福祉部「社会福祉協議会の組織・事業・活動について」
社会福祉法人とは社会福祉法の第22条で社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人と定義づけられており、全国に約20,000件あります。
社会福祉事業は第1種と第2種の2つに分類されます。
社会福祉事業の種類 | 規定する法律 | 事業の内容 |
第1種 | 生活保護法 | ・救護施設、更生施設、生計困難者に無料または低額な料金で入所してもらい生活の扶助を行うことを目的とする施設を経営する事業 ・生計困難者に対して助葬を行う事業 |
児童福祉法 | ・乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、障がい児入所施設、情緒障がい児短期治療施設、児童自立支援施設を経営する事業 | |
老人福祉法 | ・養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームを経営する事業 | |
障害者総合支援法 | ・障がい者支援施設を経営する事業 | |
売春防止法 | ・婦人保護施設を経営する事業 | |
生活保護法 | ・授産施設を経営する事業 ・生計困難者に対して無利子または低利で融資を行う事業 | |
第2種 | ー | ・生計困難者に対して、衣食住、日常の生活必需品もしくはこれらにかかる金銭を与え、生活に関する相談を受ける事業 |
生活困窮者自立支援法 | ・認定生活困窮者就労訓練事業 | |
児童福祉法 | ・障がい児通所支援事業、障がい児相談支援事業、児童自立生活援助事業、放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業、小規模住宅型児童養育事業、小規模保育事業、病児保育事業、子育て援助活動支援事業・授産施設、保育所、児童厚生施設、児童家庭支援センターを経営する事業および児童の福祉の増進について相談を受ける事業 | |
認定こども園設置法 | ・幼保連携型認定こども園を経営する事業 | |
母子父子寡婦福祉法 | ・母子家庭日常生活支援事業、父子家庭日常生活支援事業、寡婦日常生活支援事業 ・母子、父子福祉施設を経営する事業 | |
老人福祉法 | ・老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業、老人短期入所事業、小規模多機能型居宅介護事業、認知症対応型老人共同生活援助事業、複合型サービス福祉事業 ・老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、老人福祉センター、老人介護支援センターを経営する事業 | |
障害者総合支援法 | ・障害福祉サービス事業、般相談支援事業、特定相談支援事業、移動支援事業・地域活動支援センターまたは福祉ホームを経営する事業 | |
身体障害者福祉法 | ・身体障害者生活訓練等事業、手話通訳事業、介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業・身体障害者福祉センター、補装具製作施設、盲導犬訓練施設、視聴覚障害者情報提供施設を経営する事業および身体障がい者の更生相談を受ける事業 | |
知的障害者福祉法 | ・知的障がい者の更生相談を受ける事業 | |
ー | ・生計困難者のために、無料または低額な料金で簡易住宅を貸し付け、または宿泊所その他の施設を利用させる事業 | |
ー | ・生計困難者のために、無料または低額な料金で診療を行う事業 | |
介護保健法 | ・生計困難者に対して、無料または低額な費用で介護老人保健施設を利用させる事業 | |
ー | ・隣保事業(福祉的配慮を必要とする地域の住民に対し無料または低額な料金で福祉サービスを提供する事業) | |
ー | ・福祉サービス利用援助事業 | |
ー | 第1種社会福祉事業と第 2種社会福祉事業の事業に関する連絡または助成を行う事業 |
社会福祉法人は、生活における課題や福祉へのニーズを持つ人たちの生活をさまざまな事業を通して支えているのが特徴的だと言えるでしょう。
社会福祉協議会も社会福祉法人も社会福祉法に基づいて設立されている非営利団体ですが、役割に大きな違いがあるとわかります。
参考:e-GOV法令検索「社会福祉法」
参考:全国社会福祉法人経営者協議会「社会福祉法人てなに?」
市役所は市の行政事務を扱う機関で、住民の福祉に関する事務を取り扱う福祉課、健康福祉課、福祉保健課などの部署が存在しますが、社会福祉協議会のように福祉のことだけを行っているわけではないという違いがあります。
また市役所は地方公務員の1つなので、働くには各地方自治体が行う市役所職員採用試験に合格する必要があるのも覚えておきましょう。
全国社会福祉協議会では2020年2月に、2040年を踏まえた活動の方向を示した「全社協 福祉ビジョン2020」を新たに策定し、地域共生社会と、SDGsの中の「誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会」の実現という2つの方向性を基に「ともに生きる豊かな地域社会」の実現を目指すこととしました。
このことも踏まえて、社会福祉協議会が地域の福祉に関する課題解決のためにどのような事業を行っているのかを見ていきましょう。
社会福祉協議会では、住民が参加できる地域福祉活動や地域作りの推進を次のような形で行っています。
活動の種類 | 概要 |
交流の場や居場所作り | ・地域を拠点に住民とボランティアが協力して行う仲間作り活動 ・高齢者、障がい者、子育て中の人、引きこもりの人など多様な人の居場所作り |
見守り活動 | ・高齢者や障がい者に対して近隣の住民が見守りや援助を行う ・電気・ガス・水道事業者、新聞販売店、生協、地域の商店などと連携した活動も行う |
住民主体の生活支援サービス | ・日常生活での助け合い活動で心理的な抵抗をなくすため低額だが有償で行われる ・配食サービス、移動サービス、清掃や草取り、電球交換、小規模修繕などを行う |
当事者組織の立ち上げや支援 | ・似た境遇を持つ人同士が相互援助活動を行う ・ひとり親家庭の会、家族介護者の集い、ひきこもりの家族会、障害者の当事者グループなど |
住民の活動拠点作り | ・専任スタッフやボランティアが常駐する活動拠点作り |
地域福祉を推進する住民組織の支援 | ・地域ごとの生活課題を解決する活動に取り組む組織作り |
地域福祉活動計画作り | ・地域住民や団体の福祉活動計画作り |
どの活動も地域住民を主体とし、地域ごとに異なる課題を解決するために行われていることがわかります。
また福祉ビジョン2020においても、さらに地域共生社会への理解を広げ、参加を促進する取り組みが行われることとなっているのです。
社会福祉協議会では相談支援や権利擁護の活動を次のような形で行っています。
活動の種類 | 概要 |
福祉総合相談・専門相談 | ・相談の一次窓口となり適切な支援機関を紹介する ・弁護士や司法書士などが相談を受ける場合もある |
生活福祉基金貸付事業 | ・低所得者、高齢者、障がい者を経済的に支援し在宅福祉と社会参加を目的とした貸付制度で、都道府県社会福祉協議会が実施主体、市区町村社会福祉協議会が窓口になる |
日常生活自立支援事業 | ・認知症の高齢者、知的障がい者、精神障がい者などが地域で自立した生活ができるよう、契約に基づき福祉サービスの利用や日常的な金銭管理の援助を行う |
権利擁護センター・法人後見 | ・成年後見制度の利用相談や市民後見人の育成、支援を行う ・法人後見を受任し身上保護や財産管理をする |
生活困窮者自立支援 | ・自立相談支援事業、家計改善支援事業、就労準備支援事業などを行う ・小口資金貸付、フードバンク事業を行う |
各種相談支援事業 | ・地域包括支援センター、基幹相談支援センターの活動 ・相談支援機関のネットワーク作りや多職種における勉強会の開催 |
生活に困窮した人への金銭的な援助や、高齢者や障がい者が不利益を被らないための援助など、周囲の人が支援しにくい内容に関する活動も行っているのがわかるでしょう。
市区町村社会福祉協議会では、地域において次のような介護サービスを展開しています。
・居宅介護支援
・訪問介護
・通所介護
・訪問入浴介護
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
・短期入所生活介護
福祉ビジョン2020年においては、さらに進む少子高齢化に向けて介護サービスを支える人材の確保・育成、定着や、サービスの質と効率性の向上を図ることとなっているのです。
社会福祉協議会では、ボランティアや市民活動センターに関する次のような活動を行っています。
・ボランティアに関する相談やマッチング
・ボランティアの養成
・ボランティアグループやNPOの支援
・福祉教育
ボランティアや市民活動において社会福祉協議会は地域の企業や大学などど連携・協働を行っていますが、福祉ビジョン2020においては今後も地域の保健・福祉・医療・教育関係者や企業・NPO法人・ボランティアなどの調整役となり、更に連携・協働を進めるとしているのです。
社会福祉協議会では、災害対応や被災者支援として次のような活動をしています。
・災害ボランティアセンターの設置
・生活支援相談員の派遣
福祉ビジョン2020においても平時から地域住民に被災者支援への理解を求め、災害発生時から復興期の災害福祉支援ネットワークの構築、配慮を要する避難住民への福祉的支援を担う「災害派遣福祉チーム(DWAT)」の組織化など、さまざまな取り組みが計画されているのです。
参考:社会福祉法人 全国社会福祉協議会 地域福祉部「社会福祉協議会の組織・事業・活動について」
参考:社会福祉法人全国社会福祉協議会「全社協 福祉ビジョン2020~ともに生きる豊かな地域社会の実現をめざして~」
社会福祉協議会ではさまざまな事業を展開していますが、そこで働く職員の現状とはどのようなものなのでしょうか。
福祉ビジョン2020年で公表された内容では、市区町村社会福祉協議会についてのデータは次のようなものでした。
項目 | データ |
職員数の合計 | ・13万1,236人 |
正規職員と非正規職員の割合 | ・3:7(正規職員のうち2割は兼務) |
担当する職務ごとの職員の割合 | ・介護保険サービス担当職員 45% ・在宅サービス担当職員 16% |
このことから市区町村社会福祉協議会は正規職員が少なく、また兼務の人が多いのが特徴的だと言えるでしょう。
また都道府県社会福祉協議会のデータは次の通りです。
項目 | データ |
職員数の合計 | 4,185人 |
正規職員の割合 | 45.3% |
非正規職員の割合 | 54.7% |
市区町村社会福祉協議会と比較すると職員数の合計は少なく、正規職員と非正規職員の割合は10%程度異なるのが特徴的だと言えるでしょう。
これらのデータから、社会福祉協議会で働く人は非正規職員の方が多いことと、正規職員でも兼務している人の方が多いことから、正規職員として就職した場合仕事はかなり忙しいと想定できるでしょう。
参考:社会福祉法人全国社会福祉協議会「全社協 福祉ビジョン2020~ともに生きる豊かな地域社会の実現をめざして~」
社会福祉協議会の職員は公務員ではないため、働くためにはそれぞれの社会福祉協議会の職員採用試験に合格する必要があります。
そのため、募集要項や応募資格なども各社会福祉協議会のホームページから確認しなければなりません。
正規職員と非正規職員だけではなく職種ごとに募集をかけている場合が多いので、募集要項にはしっかりと目を通しておきましょう。
また資格基準を設けていることもあるため、次のような福祉系の資格を持っていると応募できる幅が広がります。
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・介護福祉士
・介護支援専門員
・保健師
・看護師
・准看護師
地域の福祉を支えるため、やりがいのある仕事に取り組みたい人は社会福祉協議会に応募してみてはいかがでしょうか。
社会福祉協議会とは社会福祉法に基づき、民間の社会福祉活動を推進することを目的として設立された非営利団体ですが、それぞれの地域の実情に合わせてさまざまな福祉活動を行っています。
この記事も参考にしてさらに社会福祉協議会への理解を深め、採用試験に挑戦してみてください。
※掲載情報は公開日あるいは2023年01月31日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。