更新日:2023年03月14日
公開日:2023年02月22日
家族に急に介護が必要になった人がいて介護用品の手配をしたいけれど、介護保険についての知識がないので何から始めればよいのかわからず困っている人はいませんか?
この記事では、介護用品や福祉用具をレンタル・購入する際の費用から手続きの仕方まで詳しく解説します。
介護に使う道具について検索すると、「介護用品」「福祉用具」と2種類の言葉が出てきますが、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
表にまとめてみました。
意味 | 法律による定義 | 介護保険の適用 | 主な道具 | |
介護用品 | ・介護に必要な物品や機器全般 | ・なし | ・なし | ・移動に用いる車椅子、杖、スロープなど・入浴に用いる椅子、浴室用のリフトなど ・排泄に用いる紙おむつ、尿器など・食事に用いる介護用食器など・就寝時に用いる介護ベッドなど ・着脱がしやすい介護衣料など・その他日用品 |
福祉用具 | ・要介護者等の日常生活の便宜を図るための用具および要介護者等の機能訓練のための用具 | ・1993年に制定された「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」の第2条において「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具をいう。」と定義づけられている | ・あり | ・介護保険法で指定されている品目 |
介護用品と福祉用具は共にレンタルや購入をして、介護を必要とする人の生活の質
(QOL)の向上を目的として使用されるのは一緒です。
しかし福祉用具はさまざまな介護用品の中から要介護者の日常生活動作(ADL)の改善が見込めると法律で認められた品目が指定され、介護保険の適用を受けることができるという点で介護用品と異なります。
介護用品は介護を支援すること、福祉用具は日常生活動作(ADL)の改善を目的として使うもので、介護用品の中に福祉用具が含まれることを覚えておきましょう。
参考:e-GOV法令検索「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」
介護用品と福祉用具の違いについてご理解いただいたところで、まずは介護保険が適用される福祉用具のレンタルと購入についてご紹介します。
介護保険を利用してレンタルできる福祉用具は次の13種目です。
種目 | 概要 | レンタルできる要介護度 |
車椅子 | ・自走用標準型車椅子 ・普通型電動車椅子 ・介助用標準型車椅子 | ・要介護2以上 |
車椅子付属品 | ・クッション、電動補助装置などで車椅子と一体的に使用できるものに限る | ・要介護2以上 |
特殊寝台 | ・サイドレールがあるものか取り付けられるもので、次のどれかの機能があるもの ①背部または脚部の傾斜角度が調整できる ②床板の高さが無段階で調整できる | ・要介護2以上 |
特殊寝台付属品 | ・マットレス、サイドレールなどで特殊寝台と一体的に使用できるものに限る | ・要介護2以上 |
床ずれ防止用具 | ・送風装置か空気圧調整装置を備えた空気マット ・水などで減圧による体圧分散効果のある全身用マット | ・要介護2以上 |
体位変換器 | ・空気パッドなどを身体の下に入れることにより利用者の体位交換をしやすくするもので、体位保持だけを目的とするものを除く | ・要介護2以上 |
手すり | ・取り付ける際に工事をしなくてもよいものに限る | ・要支援1以上 |
スロープ | ・段差解消を目的とするもので、取り付ける際に工事をしなくてもよいものに限る | ・要支援1以上 |
歩行器 | ・歩くのが難しい人の歩行機能を補うもので移動時に体重を支えられ、次のどれかに該当するもの ①車輪があるものの場合身体の前と左右を囲む取っ手があるもの ②足が4本ある場合手と腕で保持して移動できるもの | ・要支援1以上 |
歩行補助つえ | ・松葉杖 ・カナディアン・クラッチ ・ロフストランド・クラッチ ・プラットホームクラッチ ・多点杖 | ・要支援1以上 |
認知症老人徘徊感知機器 | ・認知症の人が屋外に出ようとした時センサーで感知し家族や隣人などに知らせるもの | ・要介護2以上 |
移動用リフト(つり具の部分を除く) | ・床走行式、固定式、据置式のどれかである ・身体をつり上げ体重を支えることのできる構造を持つ ・自力での移動が困難な人の移動を補助できる ・取り付ける時に住宅改修を必要としない | ・要介護2以上 |
自動排泄処理装置 | ・排泄物が自動で吸引でき、排泄物の経路が分割できる ・要介護者や介護者が簡単に使える ・交換可能な部品を除く | ・要介護4以上 |
要介護者の日常生活動作(ADL)には現在どのような支障が生じているのかを考えることで、ニーズに合った福祉用具がレンタルしやすくなります。
また要介護度についてですが、身体の状態などによっては要介護認定における基本調査結果に基づく判断や市町村への申請により、上記の基準以外であっても給付の対象となる場合があることを覚えておきましょう。
参考:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
介護保険を利用することができるものの、福祉用具のレンタルには高額な費用がかかるのではないかと心配している人も少なくないのではないでしょうか。
しかし、2018年より福祉用具についてはレンタル価格の上限設定が行われており、2022年10月現在上限価格が設定されている福祉用具の数は4,058個です。
また厚生労働省のホームページでは、各福祉用具ごとに全国平均のレンタル価格とレンタル価格の上限を公表しているため、かかる費用の相場についてすぐに知ることができます。
これは福祉用具のレンタル価格の適正化を図るために行われており、もし業者が上限価格を超えた価格でレンタルをしようとすると、介護保険給付の対象外となるのです。
介護保険を利用して福祉用具をレンタルする時の自己負担金額はレンタル費用の1割となり、一定以上所得がある人については2割~3割負担となります。
また介護保険については要介護度別に1か月間の支給限度額が決まっているため、他の介護サービスにかかる費用も考慮しながらどの程度福祉用具をレンタルするのかを考える必要があるのを忘れてはいけません。
参考:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
参考:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「どんなサービスがあるの?福祉用具貸与」
介護保険においては福祉用具を必要とする人の身体の状況や要介護度、福祉用具の機能が時間の経過とともに変化することから、その時に応じて適切な福祉用具を利用できるようにするためレンタルでの使用を原則としています。
しかし、次の2つの理由からレンタルになじまない福祉用具は、介護保険を利用して購入ができるようになっているのです。
・他人が使用したものを再利用するのに心理的な抵抗感がある
・使用することで元の形態や品質が変化し再利用できない
介護保険を利用して購入できる福祉用具は次の6種目です。
種目 | 概要 |
腰掛便座 | ・次のどれかに該当するものに限る ①和式トイレの上に置いて腰掛式に変換するもの ②洋式トイレの上に置いて高さを補うもの ③電動式かスプリング式で便座から立ち上がる時に補助してくれるもの ④便座やバケツなどからなり移動可能なもの(居室で利用可能なものに限る) |
自動排泄処理装置の交換可能部品 | ー |
排泄予測支援機器 | ・膀胱内の状態を感知して尿量を推定し、排尿の機会を要介護者や介護者に知らせるもの |
入浴補助用具 | ・座る姿勢を維持したり浴槽への出入りを補助したりするのが目的の道具で、次のどれかに該当するもの ①入浴用椅子 ②浴槽用手すり ③浴槽用椅子 ④入浴台(浴槽への出入りのために浴槽の縁にかけて利用するもの) ⑤浴室内すのこ ⑥浴槽内すのこ ⑦入浴用介助ベルト |
簡易浴槽 | ・空気式や折りたたみ式で簡単に移動でき、取水や排水のために工事をしなくてもよいもの |
移動用リフトのつり具の部分 | ー |
介護保険を利用しての福祉用具の購入は、要支援1~2の人に対しては「特定介護予防福祉用具販売」要介護1~5の人に対しては「特定福祉用具販売」という名称で行われますが、対象となる種目は変わりありません。
参考:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
参考:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「どんなサービスがあるの?福祉用具貸与」
介護保険を利用して福祉用具を購入する場合、一度全額を支払った後にかかった費用の9割(一定以上所得がある人については8割~7割)が介護保険から払い戻されます。
また、同一年度で購入できるのは10万円までとなるので注意しましょう。
参考:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「どんなサービスがあるの?福祉用具貸与」
介護保険を利用して福祉用具をレンタル、購入するまでの流れは次の通りです。
①要介護認定を受けた利用者が、ケアマネージャーや地域包括支援センターに福祉用具のレンタルや購入について相談する
②ケアマネージャーが利用者に次の事項を確認した上でケアプランを作成する
・本人の希望
・家族の希望
・心身の機能
・生活動作能力
・医療情報
・環境情報
・家族情報
・その他
③福祉用具専門相談員が利用者の自宅を訪問し、機能や価格の異なる複数の福祉用具について情報提供を行い選定する
④福祉用具専門相談員が福祉用具貸与・販売計画を作成する
⑤福祉用具貸与・販売計画に基づいて福祉用具専門相談員が利用者と家族に説明を行い、同意を得る
⑥福祉用具専門相談員が計画書を利用者とケアマネージャーに交付する
⑦利用者が福祉用具のレンタル・購入を行う
⑧福祉用具をレンタルした場合、福祉用具専門相談員が使用状況に関するモニタリングやメンテナンスを行う
福祉用具専門相談員が作成する福祉用具・販売計画には、利用者の希望や心身の状況、置かれている環境を踏まえて次の3つを記載しなければなりません。
・利用目標
・福祉用具の機種とその機種を選定した理由
・その他関係者で共有しなければならない情報(福祉用具使用時の注意事項など)
また、一度レンタルや購入した福祉用具が身体や状況の変化で使いにくくなった際は、担当のケアマネージャーや福祉用具専門相談員に相談をしましょう。
福祉用具の調整や交換などを行い、利用者が生活しやすくなるようサポートをしてくれます。
介護用品は福祉用具のように介護保険を適用してのレンタルや購入はできません。
しかし、高齢者が要介護状態になることを予防したり、要介護状態となっても地域で生活を続けられるよう支援したりするために行われている、地域支援事業の中の任意事業として「介護用品支給事業」が行われています。
地方自治体によって異なりますが、次のようなものが現品支給されるか、購入の補助を受けることができます。
・紙おむつ
・尿取りパッド
・ドライシャンプー
・洗浄剤
・使い捨て手袋
しかし、2015年に介護用品支給事業の見直しが開始され、現在と同じ形で事業が継続されるのは2024年3月末までとなりました。
今まで地域支援事業の中の任意事業は税と1号保険料を財源とし、国が38.5%、都道府県が19.25%、市町村が19.25%、1号被保険者保険料23%という割合で負担を続けてきました。
しかし2015年の見直しで、今後は事業の位置づけを地域支援事業の「市町村特別給付」や「保健福祉事業」に変更し、財源を1号被保険者保険料100%としてその市町村の保険料を使ってこの事業を行うこととしたのです。
このことから介護用品支給事業の廃止を検討したり、支給要件の見直しを開始したりする地方自治体が増えてきています。
もし介護用品支給事業を利用したいなら、まずは早めに要介護者の住む地方自治体における支給の詳細をホームページなどで確認することをおすすめします。
参考:ケアニューズbyシルバー産業新聞「市町村のおむつ給付 2024年3月まで延長」
参考:ケアニューズbyシルバー産業新聞「市町村おむつ支給継続に苦慮 『任意事業』外れ別途財源確保へ」
介護用品や福祉用具をレンタル・購入する場合、まずは介護用品と福祉用具の違いについて理解し、要介護者の身体や現在置かれている環境に合わせた道具をケアマネージャーや福祉用具専門相談員のアドバイスを聞きながら選ぶのが大切だと言えるでしょう。
この記事も参考に、ぜひ要介護者の日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)向上に役立つ介護用品や福祉用具を選んでみてください。
※掲載情報は公開日あるいは2023年03月14日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。