多くの潜在介護福祉士が!復職しない理由や復職支援制度などを解説

更新日:2023年03月14日

公開日:2023年02月22日

履歴書と男性の人形

介護福祉士資格を保有する方の中で介護職以外の仕事をしている方がいるでしょう。介護職に就こうとしても、雇用条件があわずに他の仕事をしている方が多いようです。しかし介護福祉士の多くが「どんな介護福祉士になりたいか」と憧れてこの資格を取得したはずです。雇用条件さえあえば介護職に復職したい方が多いのではないでしょうか。この介護福祉士資格を保有しながら、介護職以外の仕事に就いている方の悩みを解決するのが、潜在介護福祉士における議論です。今回は潜在介護福祉士の概要や復職しない理由や復職支援プログラムなどについて解説します。

介護福祉士が介護の仕事をしていない!

品出しをする男性

まずは潜在介護福祉士の概要や割合について解説します。

潜在介護福祉士とは

潜在介護福祉士とは、介護福祉士資格を保有していながら介護や福祉などの分野で仕事をしていない方と、一般的には言われています。介護福祉士の有資格者が介護や福祉などの分野に、何らかの理由で就職・再就職しなかったことが推測できます。ただ、介護福祉士資格を取得するためには、「介護福祉士実務者研修+実務経験3年」といった受験要件を満たしたうえで、資格試験に合格しなければなりません。そのため、介護福祉士の有資格者は、介護・福祉の専門的な知識とスキルを保有していると言えます。潜在介護福祉士のままではそれらの知識とスキルが活かせないばかりか、常に求人広告を出し人材不足に悩んでいる介護・福祉業界にとっても大きな損失なのです。

約2割の潜在介護福祉士がいる!

社会福祉振興・試験センターの調査によると、介護福祉士の有資格の約2割が潜在介護福祉士でした。内訳は以下のとおりです。

●    福祉・介護・医療以外の分野の仕事をしている方:7.0%
●    仕事をしていない方:13.8%

約2割の介護福祉士の有資格者が、介護や福祉などの分野で仕事をしていない状況が読み取れます。また、「仕事をしていない方」の回答が13.8%と多いと感じるかもしれませんが、介護福祉士の有資格者の8割以上が女性です。専業主婦として出産・子育てに専念していることも考えられます。子育てをしている女性が働きやすい職場にすることで、「仕事をしていない方:13.8%」の割合が下がるかもしれません。国や介護・福祉業界は潜在介護福祉士が約2割もいる状況に対する早急の対策が必要です。

参照:公益財団法人社会福祉振興・試験センター 社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士 就労状況調査(令和2年度)結果報告書 

介護職に復職しない理由とは

考える青年たち

社会福祉振興・試験センターの調査によると、「福祉・介護・医療分野に再就業する際に最も重視すること」という質問に対する上位3位までの回答は以下のとおりです。

1.給与や賃金の水準:24.8%
2.職場の雰囲気や人間関係:20.8%
3.勤務形態が選べる:13.9%

参照:公益財団法人社会福祉振興・試験センター 社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士 就労状況調査(令和2年度)結果報告書 

このデータをもとに、潜在介護福祉士が介護職に復職しにくい理由について考えていきます。

給与の低さが・・・

一つ目の理由は給与の低さです。介護・福祉業界は以前から「給与が低い」や「低賃金」と揶揄されてきました。この給与の低さが、潜在介護福祉士の介護・福祉業界への就職や再就職の原因になっているのです。また、「給与や賃金の水準」の男女別の回答は以下のとおりです。

●    男性:45.7%
●    女性:20.4%

給与の低さでは女性よりも男性のほうが、就職や再就職のネックとなっていることがわかります。介護・福祉業界の給与水準を向上させることで、潜在介護福祉士を減らせるでしょう。

ストレスが原因なのかも

二つ目の理由はストレスと言えるかもしれません。20.8%の回答を集めた「職場の雰囲気や人間関係」からストレスが原因と読み取れます。また、介護・福祉業界では通所事業所にはありませんが、入所施設には早番や夜勤などの変則勤務があります。この変則勤務という不規則な勤務形態で体調を崩す方が多くいることも事実です。「勤務形態が選べる」が13.9%の回答を集めたことから、変則勤務がストレスの原因になっていて復職ができないでいると推測できます。ストレスを少なくする職場づくりが潜在介護福祉士を減らす近道なのかもしれません。

「復職しない理由」を解決して介護職に復職する!

笑顔の青年たち

「復職しない理由」が解決できれば介護職に就職・再就職する潜在介護福祉士が多くいるのではないでしょうか。ここでは、潜在介護福祉士の「復職しない理由」を解決し、「復職できる理由」が存在することを解説します。

介護職員処遇改善加算で給与は上昇中!

実は介護職の給与の低さは徐々に解消されつつあります。理由としては政府による介護職の給与改善を目的にする処遇改善政策があるからです。近年の処遇改善政策は以下のとおりです。

●    介護職員処遇改善加算:平成24年度から開始。徐々に賃金がアップし令和4年11月現在で月額平均3.7万円の賃金アップ
●    介護職員等特定処遇改善加算:平成元年から開始。経験のある介護福祉士は月額平均8万円の賃金アップ
●    介護職員等ベースアップ等支援加算:令和4年10月から開始。月額平均0.9万円の賃金アップ

参照:厚生労働省 処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後) 

これの処遇改善政策により介護職の賃金が大幅にアップしました。特に介護職員等特定処遇改善加算は月額平均8万円の賃金がアップする内容です。経験やスキルのある職員を対象にした賃金アップの政策であり、介護福祉士も対象のため潜在介護福祉士にとっては大きなチャンスと言えます。

ストレスの少ない介護現場とは

介護職のストレスを回避する方法の一つに、他よりも仕事が比較的楽な介護施設で働く方法があります。仕事が楽な介護施設なら精神的・身体的なストレスをあまり感じずに働けます。「仕事が楽な介護施設なんてない」と思われるかもしれませんが、以下が他よりも仕事が比較的楽だと言われている介護施設です。

●    通所介護・通所リハビリ:夜勤がない、利用者様の介護度が低い
●    訪問介護:在宅の利用者様が対象で介護度が低い、一人で訪問するため職員間のトラブルが少ない

退職の原因がストレスだった方は上記の介護施設への就職・再就職を考えてみてはいかがでしょうか。

介護福祉士資格を活かして介護職以外の仕事に!

身体介護や夜勤業務などの介護職として欠かせない業務にストレスを感じてしまう方は、介護福祉士資格を活かせる介護職以外の職種に就く方法もあります。身体介護や夜勤業務などがないため、仕事でのストレスが少なくなるでしょう。介護福祉士資格を活かせる職種としては、生活相談員や支援相談員があります。支援相談員は介護老人保健施設、生活相談員はその他の介護施設で働き、サービス調整や事務手続きなどが仕事内容です。その他では介護福祉士としての経験や知識を活かして、ケアマネジャーや社会福祉士の資格試験に挑戦するという方法もあります。特にケアマネジャーは、介護福祉士としての実務経験が5年あれば受験資格が得られます。ケアマネジャーにステップアップして介護業界に舞い戻ってもよいのではないでしょうか。

行政の復職支援プログラムを利用しよう!

研修を受ける人々

行政は潜在介護福祉士の問題への対策を行っています。ここでは、大阪府と厚生労働省の事例について解説します。

大阪府の潜在介護福祉士等再就業支援事業

大阪府では「潜在介護福祉士等再就業支援事業」という研修を実施しています。対象者や研修期間、研修内容などは以下のとおりです。

●    対象者:介護分野で実務経験がある介護福祉士・介護福祉士実務者研修修了者・介護職員初任者研修修了者
●    研修期間:3日間
●    研修内容:介護業務の現状、介護の知識・技術の再習得、再就職支援・相談など
●    研修受講料:無料

参照:大阪府 潜在介護福祉士等再就業支援事業 

この研修を受講すれば介護業務の現状や知識・技術の再習得ができるため、介護業務にブランクがある介護福祉士も安心して再就職できますよ。

厚生労働省の再就職準備金貸付事業

厚生労働省が行っている復職支援プログラムは「再就職準備金貸付事業」です。貸付額が最大40万円で2年間介護職として働ければ返還が免除されます。応募対象者は以下のとおりです。

●    介護施設で1年以上の実務経験がある方
●    介護福祉士・介護福祉士実務者研修修了者・介護職員初任者研修修了者
●    介護施設へ介護職として再就職した方

参照:厚生労働省 再就職準備金貸付事業 

貸付金の返還免除制度もあるため、就職資金に困っている方にはおすすめです。

介護福祉士の資格を活かして介護職として復職しよう!

ガッツポーズの介護士さんと車椅子の男性

努力して取得した介護福祉士の資格を活かせていないことは、介護福祉士本人と介護業界双方の損失です。介護職に就職・再就職すれば介護福祉士本人と介護業界双方のメリットになるでしょう。介護職の給与の改善や復職支援プログラムの充実があるため、潜在介護福祉士は介護職に就職・再就職してはいかがでしょうか。

※掲載情報は公開日あるいは2023年03月14日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

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