ヤングケアラーとは?家族を介護する子どもの支援を考える

更新日:2023年03月14日

公開日:2023年02月24日

車いすの女性と男の子

介護職や相談職が日々の業務でヤングケアラーがいることに気づかれるのではないでしょうか。
利用者様のお孫さんやお子さんと接したときに、「ヤングケアラーかな?」と思う感覚はとても重要です。
ただ、介護職や相談職がヤングケアラー問題を解決するために、何をすればよいかわからないと悩んでいるかもしれません。
今回は介護職や相談職が対応できるように、ヤングケアラーの概要やいる理由、解決するための対応方法などについて解説します。

ヤングケアラーとは?

膝を抱えている子供

まずはヤングケアラーの定義や人数などについて解説します。

参照:厚生労働省 ヤングケアラーについて 
参照:三菱YFJリサーチ&コンサルティング ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月 

ヤングケアラーの定義はない!?

ヤングケアラーは法令上の定義はありませんが(令和4年12月現在)、本来大人がする家事や家族の世話などをつねにしている子どもをヤングケアラーと言います。
「ケア」という言葉から高齢者の介護をイメージしがちですが、以下に該当する場合もヤングケアラーと言われています。

●   家族の代わりに幼いきょうだいを世話すること
●   アルコールやギャンブルなどの問題を抱える家族の対応
●   病気の家族の代わりに家事をすること

なお、都道府県によってはヤングケアラーを定義している条例があり、地方自治体レベルで対策が活発化しています。

中学校2年生のクラスには約2人のヤングケアラーがいる

令和2年度にヤングケアラーの実態調査が行われました。
同調査の中学2年生へのアンケートで、「世話をしている家族の有無」の質問に対して、「いる」と回答した生徒が全体の5.7%いました。
つまり、40人学級で約二人の学生がヤングケアラーと言えます。
この割合が多いと感じるか少ないと感じるかは、個人によって異なるかもしれません。
しかし、決して無視してよい状況ではないでしょう。

ヤングケアラーが抱える問題とは

ヤングケアラーは様々な悩みを抱えています。
同実態調査では「世話をしている家族がいる」と回答した中学2年生に、さらに質問をしています。
注目するべき質問と回答、回答の割合は以下のとおりです。

●   「世話をしている頻度」の質問
 「ほぼ毎日」:45.1%
 「週に3~5日」:17.9%
●   「平日1日あたりに世話に費やす時間」の質問
 「7時間以上」:11.6%
 「3~7時間未満」:11.6%
●   「世話をしているために、やりたいけれどできていないこと」の質問
 「宿題をする時間や勉強する時間が取れない」:16.0%
 「睡眠が十分に取れない」:8.5%

上記の回答から日常生活だけではなく、学校生活にも影響が出ていることがわかります。
祖父母の介護やきょうだいの世話などの経験が、その後の人生によい影響をもたらすこともあるでしょう。
しかし、学生として本分に影響が出ている状況はやはり見過ごせない状況です。

ヤングケアラーがいる理由

話を聞く女子生徒

ヤングケアラーがいる理由は様々です。
ここでは、理由や解決できない原因などを解説します。

参照:三菱YFJリサーチ&コンサルティング ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書 令和3年3月 

ひとり親家庭 や高齢化人口などの増加が理由かも・・・

ヤングケアラーがいる理由としては高齢者人口や共働き世帯などの増加が考えられます。
ヤングケアラーの実態調査で、「世話をしている家族」が「いる」と回答した生徒は、「いない」と回答した生徒よりも「ひとり親家庭」や「三世代家庭」などが多い状況でした。
本来大人がするべき祖父母の介護やきょうだいの世話を、生徒がしなければならない環境的要因が家庭にあることがわかります。

縦割り行政の弊害か

縦割り行政の弊害も無視できません。
なぜなら、ヤングケアラー問題が様々な要因を抱えているためです。
例えば、祖父母の介護をしているヤングケアラーの問題を解決しようとすると、以下のような様々な問題に対応しなければなりません。

●   介護問題の解決
●   家庭内の問題の解決
●   教育問題の解決

これらのような個々の問題に対する相談窓口はこれまでもありましたが、複合的な問題を一度に解決する相談窓口は行政にはありませんでした。
しかし、令和2(2020)年に埼玉県ケアラー支援条例、令和4(2022)年に北海道ケアラー支援条例が施行されました。
このように地方自治体レベルでのヤングケアラーを含めたケアラー支援が、縦割り行政の弊害を壊せるかもしれません。

参照:埼玉県 ケアラー(介護者等)支援 
   北海道 ケアラー支援に関する道の取組について 

家族内 での対話が必要だが・・・

ヤングケアラー問題は家族内の問題ですが、家族内で解決は難しいのかもしれません。
理由としては家族の介護やきょうだいの世話をすることは当然と認識されているためです。
家の手伝いは当然との認識から、家族の過度な介護や世話も当然と認識しているのでしょう。
問題解決のために家族内で話しあう時間を持つとよいのですが、自分自身がヤングケアラーであると認識している方はごく少数と言われています。
このように家族内の問題であるからこそ表面化しにくく、外部の支援が届きにくいことも、ヤングケアラー問題の解決を難しくしています。

介護職やケアマネがヤングケアラーを救える!?

ポーズをとる女性

ここでは介護職やケアマネジャーがヤングケアラー問題の解決に重要な存在であることや、解決方法などについて解説します。

介護職やケアマネは介護家族の身近な存在

介護職やケアマネジャーは、ヤングケアラーを含めた介護家族の身近な存在です。
なぜなら、介護業務の際に介護家族と接する機会が多いためです。
デイサービスの介護職なら送迎の際に、訪問介護の介護職なら自宅への訪問の際に、介護家族と接し話す機会があるでしょう。
また、ケアマネジャーならアセスメントやモニタリングの際に自宅を訪問する機会があります。
その際に頻繁に対応する家族が本人のお孫さんなら、お孫さんがヤングケアラーであるかもしれません。
介護職やケアマネジャーなら、何気ない会話の中でお孫さんの困りごとがわかるはずです。
つねに介護家族と接している介護職やケアマネジャーであるからこそ、ヤングケアラーを見つけ出せるのです。

介護職やケアマネができることとは

介護保険サービスが適切に提供されていれば、ヤングケアラー問題がおこりにくくなるでしょう。
なぜなら、適切に提供されていないために、ヤングケアラーの負担が大きくなるからです。
「介護職やケアマネジャーがヤングケアラーを見つけても何をするの?」と思われるかもしれません。
しかし、もし介護職が気づいたのであればケアマネジャーに報告できます。
また、ケアマネジャーが気づいたのであれば、ケアプランを変更し適切な介護保険サービスを提供すればよいのです。
つまり、現状制度においても対応できることは多いと言えます。

地域包括支援センターや基幹相談支援センターなどと連携しよう!

ヤングケアラー問題が複雑化し、介護保険制度だけでは解決が難しい場合もあるかもしれません。
解決が難しい場合は、地域包括支援センターや基幹相談支援センターなどと連携して、問題の解決に取り組みましょう。
地域包括支援センターは高齢者の、基幹相談支援センターは障害者の地域の相談窓口です。
両センターとも行政の機関であるため、教育機関との連携もしやすくなるでしょう。
様々な機関と連携し多方面からの取り組めば、ヤングケアラー問題も解決しやすくなるでしょう。

ヤングケアラーを地域の力で支援しよう!

青空の下の大人と幼児

ヤングケアラーは様々な問題を抱えており、解決するための課題も多くあります。
しかし、近年では地方自治体レベルでのヤングケアラー支援が活発です。
さらに、介護職やケアマネジャーならではの解決方法があり、地域包括支援センターや基幹相談支援センターと連携する方法もあります。
ヤングケアラーを地域の力で支援していきましょう。

※掲載情報は公開日あるいは2023年03月14日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

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