バーセルインデックスとは?評価方法から介護への活かし方まで詳しく解説

更新日:2023年03月14日

公開日:2023年02月24日

杖をついた男性の人形とADLの文字

最近自分の勤務している高齢者施設でバーセルインデックスの数値を介護に活かす取り組みが始まったけれど、具体的にどのようなことをすればよいのかイメージがわかず困っている人はいませんか?

この記事では、バーセルインデックス評価方法から具体的な介護への活かし方まで詳しく解説します。

バーセルインデックスとは?

介護のスタッフや患者のミニチュア人形

バーセルインデックスとはADL(日常生活動作)が自立していない高齢者、障がい者、患者に対し、現在のADLを数値化して客観的に計る評価方法です。

1955年にアメリカの理学療法士であるバーセル氏によって提唱され、現在では国際的なADLの評価手法として日本だけではなく、さまざまな国で用いられるようになりました。

 英語表記のBarthel Indexの頭文字から「 BI 」と略されることもあるでしょう。

 バーセルインデックスには次のような特徴があります。

●シンプルであまり時間をかけずに評価できるため、実用的で介護の現場にも取り入れやすい
●BADL(Basic Activities of Daily Living=基本的な日常生活動作)の評価はできるがIADL(Instrumental Activities of Daily Living=手段的日常生活動作のことでBADLより複雑で応用的な動作や判断が求められる)の評価はできない
●できるADL(その人が意識してできる最大限の日常生活動作)を評価する

これらの特徴から、バーセルインデックスの評価が満点だったとしても、問題なく日常生活を送れるとは言えません。

しかしバーセルインデックスを用いることで本人はもちろん、家族や介護の現場で働く人から見てもADL(日常生活動作)がどの程度回復したのかがわかりやすくなるのが大きなメリットだと言えるでしょう。

バーセルインデックスが注目される背景

医師と患者のミニチュア人形とグラフ用紙

介護の現場においてバーセルインデックスが注目される背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

 2つご紹介します。

科学的介護の推進

日本では2021年度より科学的な裏付けに基づいた介護である、科学的介護を推進するようになりました。

 科学的介護を推進するためには、科学的に妥当なデータを介護の現場から収集して蓄積し、分析をしなければなりません。

 そのために導入されたのが、科学的介護導入システム(LIFE)です。

 LIFEに介護サービスを利用する人の現在の状態や、介護施設・介護サービス事業所で行っいるケアの計画・内容を一定の様式で入力し、インターネットを通じて厚生労働省に送信すると、折り返し分析結果が介護施設や介護サービス事業所に届くため、それを基に介護の現場では科学的介護を実践することができるという仕組みです。

 LIFEの必須入力項目にはバーセルインデックスも含まれるため、科学的介護をするために必要なデータとしてバーセルインデックスが注目されるようになったのです。

 参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」

2021年の介護報酬改訂

科学的介護を推進するため、2021年の介護報酬改訂においてはLIFEの活用も要件とした加算が新しく設けられることとなりました。

 例として、介護施設が受けられるLIFEの活用も要件とした加算は次の通りです。

 科学的介護推進体制加算個別機能訓練加算ADL維持等加算リハビリテーションマネジメント計画書情報加算理学療法、作業療法および言語聴覚療法に係る加算褥瘡マネジメント加算褥瘡対策指導管理排泄支援加算自立支援促進加算かかりつけ医連携薬剤調整加算薬剤管理指導栄養マネジメント強化加算口腔衛生管理加算タイトル
介護老人福祉施設     
地域密着型介護老人福祉施設 入所者生活介護     
介護老人保健施設     内容
介護医療院     

また、介護サービス事業所が受けられるLIFEの活用も要件とした加算は次の通りです。

 科学的介護推進体制加算個別機能訓練加算ADL維持等加算リハビリテーションマネジメント加算褥瘡マネジメント加算排泄支援加算栄養アセスメント加算口腔機能向上加算
通所介護   
地域密着型通所介護   
認知症対応型通所介護(予防を含む)   
特定施設入居者生活介護(予防を含む)     
地域密着型特定施設入居者生活介護     
認知症対応型共同生活介護(予防を含む)       
小規模多機能型居宅介護(予防を含む)        
看護小規模多機能型居宅介護   
通所リハビリテーション(予防含む)    
訪問リハビリテーション       

これらの加算を受けるためには、LIFEでマニュアルに従いバーセルインデックスに基づいて評価したADLを入力する必要があります。

 このようにLIFEを活用し、科学的介護を行った介護施設や介護サービス事業所に対しては介護報酬が加算されるため、その指標として用いられるバーセルインデックスが注目されているというわけです。

 参考:厚生労働省「ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)利活用の手引き」

バーセルインデックスの評価方法

男性スタッフを話をする高齢男性

科学的介護情報システム(LIFE)におけるバーセルインデックス評価方法とはどのようなものなのでしょうか。

科学的介護情報システム(LIFE)におけるバーセルインデックスは10項目あり、各項目を0点、5点、10点、15点の4種類の点数で評価します。

 各項目別に割り振られている点数と評価内容を表にまとめてみました。

 0点5点10点15点
食事全介助部分介助自立
移乗全介助部分介助最小限の介助自立
整容部分介助または全介助自立
トイレ動作全介助部分介助自立
入浴部分介助または全介助自立
移動自立・部分介助・車いす使用以外車いす使用部分介助自立
階段昇降全介助部分介助自立
更衣自立・部分介助以外部分介助自立
排便コントロール全介助部分介助自立
排尿コントロール全介助部分介助自立

バーセルインデックスでは項目ごとに自立と見なされる点数は異なり、5点~15点と幅があるのが特徴的だと言えるでしょう。

どの項目でも、評価される本人が少しでも介助や見守りがないと動作を安全に行えない場合は自立とは評価されません。

実際に評価を行う時の参考となるよう、厚生労働省のホームページに掲載されている「ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)の手引き」には点数ごとの動作の例がいくつか記載してあります。

しかし初めてバーセルインデックスを用いてADLの評価を行う人にとっては、言葉のみの説明では理解しにくい可能性もあるため、厚生労働省のYouTubeチャンネルで配信されている、「バーセルインデックス(BI)の評価方法について」の動画に目を通しておくのが望ましいでしょう。

動画においては、項目別にどのような介助を必要とした場合に部分介助や全介助と見なすのかを、実際の身体の動きを見て確認することができるため、より評価をする際のイメージがつかみやすくなっています。

評価は3ヵ月に1回程度を目安として、生活環境や身体状況の変化があった時には都度評価を行うようにしましょう。

バーセルインデックスの評価を行うことができる人について、介護保険最新情報Vol.965に次のように記されています。

・バーセルインデックスの評価方法についての研修を受けた人
・厚生労働省が作成予定のバーセルインデックスに関するマニュアルや動画を用いて評価方法を学習した人

また介護施設や介護サービス事業所では、バーセルインデックスによる評価を行う職員を理学療法士、作業療法士、言語聴覚士から指導を受ける研修に定期的に参加させたり、初めて評価をする職員には理学療法士を同席させたりして、評価の質を管理する必要があるとしています。

参考:厚生労働省「ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)利活用の手引き」
参考:厚生労働省「介護保険最新情報掲載ページ」
参考:厚生労働省「Barthel Index(BI)の測定について」
参考:YouTubeチャンネル 厚生労働省「バーセルインデックス(BI)の評価方法について」

バーセルインデックスの活用事例

ストレッチをする女性スタッフと患者さん

バーセルインデックスでADLを評価してLIFEに入力をした後、具体的にどのようにそれらの数値を介護の現場で活用していったらよいのでしょうか。

参考となる事例を3つご紹介します。

施設全体のケア改善に用いる

厚生労働省のホームページに掲載されている「ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システムの利活用に関する事例集」では、社会福祉法人鈴鹿福祉会 特別養護老人ホーム 鈴鹿グリーンホームでADLに着目してケアを改善した事例が紹介されています。

鈴鹿グリーンホームでは、「平均要介護度」「平均年齢」「障がいを持つ高齢者の日常生活自立度」「認知症高齢者の日常生活自立度」について2021年10月の利用者の方々の平均値を算出し、LIFEで送られてきた分析結果の「全国平均」の値との比較を行った所、次のような結果が出たことから、重度の利用者がやや多い傾向であることを把握しました。

●平均要介護度は4.02で全国平均より0.06高い
●平均年齢は88.3才
●障がいを持つ高齢者の日常生活自立度は全国平均より2%低い
●認知症高齢者の日常生活自立度は全国平均より24%高い

またバーセルインデックスの評価も全国平均との比較を行い、次の表のような結果が出ました。

評価項目評価内容全国平均鈴鹿グリーンホーム全国平均ー鈴鹿グリーンホームの値
食事全介助29%25%4%
一部介助30%42%-12%
自立41%31%10%
椅子とベッドの間の移乗全介助42%27%15%
座れるが移れない21%19%2%
見守りが必要24%36%-12%
自立13%17%-4%
整容全介助52%35%17%
一部介助31%27%4%
自立17%38%-21%
トイレ動作全介助55%47%8%
一部介助36%44%-8%
自立9%9%0%
排便コントロール全介助59%43%16%
一部介助31%34%-3%
自立10%23%-13%
排尿コントロール全介助59%55%4%
一部介助30%40%-10%
自立10%5%5%

そして鈴鹿グリーンホームのバーセルインデックスの評価からは、次のような傾向が読み取れたのです。

●多くの項目で「全介助」の人の割合が全国平均より低い
●排便と排尿のコントロールを比較すると全国平均はほぼ同じ数値だがホームでは異なる
●合計点は0~25点の人が少なく、55~75点の人が多い

鈴鹿グリーンホームではこの傾向から排泄ケアの見直しをすることとし、バーセルインデックスの数値と排泄方法(おむつ・トイレ・パッド交換など)で利用者様を分類します。

この分類から排泄ケアの見直しができるのは、排泄が「全介助」で、「食事」「椅子とベッドの間の移乗」「整容」の点数が比較的高い人ではないかと考察し、ご本人と話し合いの上排泄ケアの方法を見直すことにしたのです。

バーセルインデックスの数値を現場で分析し、ケアの質を向上させた好事例だと言えるでしょう。

 参考:厚生労働省「ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)の利活用に関する事例集」

レクリエーションの効果測定に用いる

介護老人保健施設のプライムケア桃花林では、長期入所の利用者3名を対象とし2014年10月~12月の間、週2~3回、午後のおやつの時間の後に玉送り、パタパタゲーム、紅白玉入れ、テーブルバレーなどのレクリエーションを日替わりで実施しました。

そして開始時、1ヵ月後、2ヵ月後にバーセルインデックスを用いて評価を行った所、3名のうち1名は1ヵ月後、2名は2ヵ月後にバーセルインデックスの数値が5点上昇し、ADLの改善が見られたのです。

レクリエーションの効果は見える化しにくいですが、バーセルインデックスを用いることでADLがどの程度改善したのかを把握できた好事例だと言えるでしょう。

参考:介護老人保健施設 プライムケア桃花林 鈴木 典子「レクリエーションによる日常生活機能及び意欲の変化」

睡眠の改善に用いる

ベネッセスタイルケアとユニ・チャーム株式会社は2018年6月~2019年2月の間に施設入居者549名を対象に夜間における定時パッド交換の回数を見直し、バーセルインデックスを用いてADLにどのような変化があるのかを研究しました。

その結果ADLが改善した人は23.5%にも上り、夜しっかりと眠り日中にすっきりと覚醒することが日中の活動にも良い効果をもたらすことがわかったのです。

 参考:介護アンテナ「夜間のおむつ交換回数を見直し睡眠状態の改善を図った『夜間ぐっすり排泄ケア』」

まとめ

男女のミニチュア人形とハートマーク

バーセルインデックスとはADL(日常生活動作)が自立していない高齢者、障がい者、患者に対し、現在のADLを数値化して客観的に計る評価方法で、日本では科学的介護を行うための1つの指標として用いられています。

ぜひバーセルインデックスの数値を適切に活用し、介護の現場におけるケアの改善に取り組んでみてください。

※掲載情報は公開日あるいは2023年03月14日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

あなたにあなたにピッタリの求人をご紹介! 求人を紹介してもらう