サルコペニアとは?原因や介護施設でできる予防方法などを解説

更新日:2023年03月14日

公開日:2023年02月17日

車いすの高齢女性と女性スタッフ

サルコペニアがよくわからないと悩んでいませんか。似たような用語にフレイルやロコモがあるため、余計にわからなくなってしまいます。サルコペニアになっている利用者様も多くいると推測されるため、介護職がはしっかり理解すれば日々の業務に活かせるでしょう。今回はサルコペニアの定義や症状、診断基準だけではなく、介護施設でできるサルコペニアの予防方法について解説します。

サルコペニアとは

カルテを持って話をするスタッフ

80歳以上では3割の男性、半数の女性がサルコペニアに

サルコペニアとは筋肉量や筋力が減少し一定以下になる現象です。筋肉量や筋力が減少することで日常の生活動作がしにくくなるのです。サルコペニアは高齢者に多い現象で、転倒や介護の原因にもなっています。サルコペニアになっている日本人の75歳以上の割合は以下のとおりです。

 男性女性
75~79歳約2割約2割
80歳以上約3割約5割

多くの高齢者がサルコペニアになっているため、介護職はサルコペニアについてしっかり理解するようにしましょう。

参照:独立行政法人東京都県長寿医療センター研究所
<プレスリリース>「日本人高齢者のサルコペニアの有病率、関連因子、 死亡・要介護化リスクを解明」

サルコペニアの原因とは

サルコペニアは、下表のように加齢による一次性(原発性)と、加齢以外の二次性に分類できます。

分類要因
一次性サルコペニア加齢性加齢
二次性サルコペニア活動量に関連安静状態、不活発な生活習慣、体調不良、無重力状態
病態が関与重症臓器不全、炎症性疾患、悪性腫瘍、内分泌疾患
栄養が関与摂食不良、吸収不良、食欲不振

高齢者の一次性サルコペニアをさらに細かく見ていくと、以下のような要因が考えられています。

●身体活動の低下
●たんぱく質の不足
●運動単位の減少

 高齢になり外出や運動の機会が減少し、食が細くなることなどでサルコペニアになるのかもしれません。つまり、たんぱく質を中心にした栄養バランスの取れた食事と、継続的な運動などで防げる可能性が高いと言えます。

参照:一般社団法人日本老年医学会 老年医学update 2015《online版》
3.サルコペニアの診断・病態・治療

サルコペニアの診断基準とは

サルコペニアの診断基準は様々ありますが、日本ではAWGSという診断基準が奨励されています。AWGSの診断基準では以下のどちらかに該当すればサルコペニアと診断されます。

●歩行速度:0.8m/s未満
●握力:男性26kg未満、女性18kg未満

また、サルコペニアになっているか自分自身で確認する方法があります。「指輪っかテスト」と言い、確認方法は以下のとおりです。

1.
両手を使い親指と人差し指で輪っかを作る
2. 輪っかを利き足ではない足のふくらはぎに当てる
3. 輪っかに隙間ができたらサルコペニアの可能性が高い 

もし、「指輪っかテスト」でサルコペニアだと確認できた場合は、医師や介護の専門家への相談をおすすめします。

参照:一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会
サルコペニア診療ガイドライン2017年版のCQとステートメント

フレイルやロコモとの違いは?

サルコペニアと似た用語にフレイルとロコモがあります。3つの用語を簡単に以下のようにまとめました。

●サルコペニア:筋肉量や筋力の減少
●ロコモ:運動器の機能の低下、移動能力の低下
●フレイル:人間の身体的・精神的・社会的な状態の低下。要介護や死の危険性がある

フレイルは身体的だけではなく精神的・社会的な状態も低下することが特徴です。また、身体的な側面で見ると、サルコペニアがロコモになる要因であり、ロコモが身体的なフレイルになる要因と言えます。状態の悪化度合いで表現すると、サルコペニア→ロコモ→フレイルの順に悪くなります。なお、ロコモの正確な表現はロコモティブシンドロームです。

参照:公益財団法人老年病研究所 ロコモとフレイルとサルコペニアを整理しますよ!

サルコペニアの予防方法

ポーズをとる女性スタッフ

サルコペニアを予防するためには、バランスの取れた食事と毎日の運動をしましょう。ここではサルコペニアの予防方法について解説します。

参照:一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会
サルコペニア診療ガイドライン2017年版のCQとステートメント 

バランスのとれた食事が大事!

バランスの取れた食事がサルコペニアの予防には重要です。特にたんぱく質の摂取が重要で、1日につき体重1kgあたり1g以上のたんぱく質の摂取が予防には効果的とされています。体重が40kgと60kgの方の1日に摂取したほうがよいたんぱく質の計算結果は以下のとおりです。

●体重40kg:たんぱく質40g
●体重60kg:たんぱく質60g

一つの食品だけでたんぱく質を摂取しようとすると、栄養のバランスが悪くなるだけではなく、食事がつまらなくなってしまいます。肉類や魚介類、大豆製品、乳製品などの様々な食品からたんぱく質を摂取し、楽しく食事ができるようにしましょう。

運動を毎日継続しよう

毎日の継続的な運動や多くの身体活動はサルコペニアを予防すると言われています。運動と言っても若い人がするような激しい運動をする必要はありません。無理をしないで心地よく疲れる程度の運動で十分です。また、運動ではなくても体を動かす仕事でもよいでしょう。運動や身体活動を定期的に行うことでサルコペニアを予防できる可能性が高まります。

介護施設でできるサルコペニア予防とは

ボールを持ってストレッチする女性スタッフと患者

サルコペニアの予防方法について解説しましたが、ここでは介護施設で気軽にできる運動について解説します。

椅子を使ってスクワットや腿上げ運動をしよう

利用者様の介護施設での運動は、理学療法士や作業療法士などの機能訓練指導員が中心に行っていますが、介護職の支援で行える運動に以下のようなものがあります。

●もも上げ運動:椅子に座った状態で片足ずつゆっくり上げゆっくり下ろす。回数は10回
●空気椅子運動:椅子から立ち上がろうと尻が座面から浮いた状態で10秒間程度制止する。回数は3回

利用者様によっては運動をすることで腰痛や膝痛などを悪化させるリスクもあるため、機能訓練指導員や医師と相談してから行いましょう。

参照:健康長寿ネット サルコペニアに対する運動

まずはウォーキングでサルコペニアを予防しよう

ウォーキングはサルコペニア予防に効果的と言われています。1日20分程度のウォーキングを目安にするとよいでしょう。1日の歩数目標は以下のとおりです。

●65~74歳:7,000歩以上
●75歳以上:5,000歩以上

効果的と言ってもウォーキングだけが目標になるとウォーキング自体がつらくなってしまいます。街や公園など楽しみながら散策するようなイメージですることによって、ご利用者様が楽しくウォーキングに取り組めます。ちなみに、ウォーキングは認知症予防としても効果的です。

参照:健康長寿ネット 高齢者に適したウォーキングとは

サルコペニアを予防して利用者様に元気に過ごしていただこう!

患者の車いすを押す女性スタッフ

多くの高齢者がサルコペニアになっています。サルコペニアを理解しようとすると、医療だけではなく栄養やリハビリについても学ばなければなりません。そのため、介護職はサルコペニアを理解することで、介護の知識・スキルが大きく向上します。この記事を参考にして、サルコペニアの理解を深めてください。

※掲載情報は公開日あるいは2023年03月14日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

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