家族が要介護認定を受けて要介護3という結果が通知されたけれど、もらえるお金がどのくらいなのかわからず困っている人はいませんか?
この記事では要介護3でもらえるお金の目安から要介護3の人の生活の現状、介護サービスの利用実態まで詳しく解説します。
要介護3とは?
厚生労働省のホームページでは、要介護3は「要介護認定等基準時間が70分以上90分未満またはこれに相当すると認められる状態」と定義づけられています。しかし要介護認定を受けて要介護3との認定を受けた人は現状どのくらいいて、身体の状態はどのようなものなのでしょうか。要介護3の人の数と身体の状態の目安にわけてそれぞれご紹介します。参考:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」 要介護3と認定を受けている人の数
内閣府が2022年に発表した「令和4年版高齢社会白書」によると2009年から2019までの間に、要介護3と認定を受けた人の数は次のように推移しています。
| 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
要介護3 | 68万8千人 | 67万5千人 | 69万8千人 | 72万2千人 | 74万5千人 | 77万1千人 | 79万1千人 | 81万4千人 | 83万4千人 | 84万9千人 | 86万2千人 |
要支援2 | 63万1千人 | 64万7千人 | 68万8千人 | 74万4千人 | 78万2千人 | 81万8千人 | 83万9千人 | 84万9千人 | 86万1千人 | 90万5千人 | 92万4千人 |
要支援1 | 59万1千人 | 65万2千人 | 67万8千人 | 75万1千人 | 80万7千人 | 85万9千人 | 87万7千人 | 87万9千人 | 86万6千人 | 91万5千人 | 92万2千人 |
要介護3と認定を受けた人の数は要支援1・2の人と比較すると、毎年1万人~2万人程度と緩やかな増加を続けてきており、ここ10年では合計で18万人程度増えているのがわかります。2020年の日本の平均寿命が男性81.56年(前年比+0.15年)、女性87.71年(前年比+0.26年)と延びてきており、一方で2019年の健康寿命も男性が72.68年、女性が75.38年と延びてきているのが背景にあると言えるでしょう。参考:内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」 要介護3の人の身体の状態
厚生労働省のホームページでは、要介護状態についてはおおむね次のような状態像が考えられるとしています。
要介護度 | 状態像 |
要介護3 | 要介護2の状態と比較して、日常生活動作と手段的日常生活動作の両方の観点から著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要となる状態 |
要介護2 | 要介護1の状態に加え、日常生活動作についても部分的な介護が必要となる状態 |
要介護1 | 要支援状態から、手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、部分的な介護が必要となる状態 |
日常生活動作(ADL)とは日常生活を送る上で最低限必要な動作のことで、起床・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容などの動作を指します。一方、手段的日常生活動作(IADL)とは日常生活動作では捉えられない応用的な動作のことで、電話の使用、買い物、家事、移動、外出、服薬の管理、金銭の管理などの動作を指すのです。要介護3では日常生活動作と手段的日常生活動作両方の能力が低下するため、これらのことを行うのにはほぼ介護が必要になるということです。参考:厚生労働省「参考(3) 介護保険制度における要介護認定の仕組み」 自宅で生活する要介護3の人の現状とは?
自宅で生活を送る要介護3の人の現状とはどのようなものなのでしょうか。
世帯の状況、介護が必要となった原因、要介護3の人が自宅にいる場合の介護時間の3つの観点からご紹介します。
単独世帯や夫婦のみの世帯もある
2019年に行われた「国民生活基礎調査」で要介護者のいる世帯の世帯構造別に見た現在の要介護度の構成割合を調べた所、次のような結果が出ました。
現在の要介護度 | 総数 | 単独世帯 | 核家族世帯 | 夫婦のみの世帯 | 三世代世帯 |
総数 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
要支援1 | 14.7% | 21.5% | 13.4% | 14.6% | 9.5% |
要支援2 | 16.3% | 19.8% | 16.1% | 16.1% | 11.8% |
要介護1 | 19.8% | 20.4% | 17.7% | 19.0% | 22.9% |
要介護2 | 20.7% | 16.9% | 20.7% | 22.1% | 23.2% |
要介護3 | 12.2% | 9.0% | 12.0% | 10.0% | 17.9% |
要介護4 | 7.5% | 5.9% | 8.1% | 7.6% | 6.6% |
要介護5 | 6.1% | 3.5% | 8.7% | 7.9% | 5.9% |
要介護3で日常生活動作と手段的日常生活動作が低下し、全面的に介護が必要な状態にもかかわらず自宅で1人暮らしをしている人が9.0%、また老老介護となる夫婦のみの世帯が10.0%もいるのが目を惹きます。
要介護度が上がるにつれてこれらの割合は徐々に低下してはいるものの、今後介護難民が増加すれば、要介護3でも1人暮らしや老老介護を強いられる人の数も増えるでしょう。
要介護3の人が介護が必要となった原因
2019年に行われた「国民生活基礎調査」で要介護3の人における介護が必要となった原因について調べた所、次のような結果でした。
| 第1位 | 第2位 | 第3位 |
要介護3 | 認知症(27.0%) | 脳血管疾患(脳卒中)(24.1%) | 骨折・転倒(12.1%) |
このことから脳血管疾患や骨折・転倒により身体の自由がきかなかったり、認知症で日常生活に不自由があったりしても自宅で介護を受ける人もいるのがわかります。
要介護3の人が自宅にいる場合の介護時間
2019年に行われた「国民生活基礎調査」において、要介護3の人が自宅にいる場合の介護時間について調べた所、次のような結果が出ました。
| ほとんど終日 | 半日程度 | 2~3時間程度 | 必要な時に手を貸す程度 |
要介護3 | 32.5% | 17.6% | 13.1% | 27.7% |
介護3の人がもらえるお金とは?
要介護3の人がもらえるお金とは、介護保険サービスを利用した時に支給されるお金のことで、居宅サービスにおいては介護保健法第43条で区分支給限度基準額という上限が定められています。介護保険サービスを利用するためには、市町村に申請を行い要介護認定を受ける必要があります。参考:e-GOV法令検索「介護保険法」 要介護3の人の区分支給限度基準額
要介護3の人がもらえるお金である要介護3の人の区分支給限度基準額と、自己負担金額を表にまとめてみました。
| 区分支給限度基準額 | 自己負担金額が1割 | 自己負担金額が2割 | 自己負担金額が3割 |
要介護3 | 270,480円 | 2万7,048円 | 5万4,096円 | 8万1,144円 |
介護サービスは日常生活に対するサービスなので歯止めが効きにくいこと、同じ要介護度であっても利用者のニーズが多岐に渡ることなどから区分支給限度基準額が設けられました。もし区分支給限度基準額を超えて介護保険サービスを利用した場合、それにかかる費用は全額自己負担となります。また自己負担金額は1割負担、2割負担、3割負担の人がいるため「介護保険負担割合証」で各自確認が必要です。これらのことを踏まえて実際に要介護3の人が受けたい介護サービスに応じてどのくらいもらえるお金があるのかを試算したい場合は、厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索のホームページ内にある「介護サービス概算料金の試算」というツールを使ってみてください。入力する事項は自宅と施設のどちらに住むか、要介護度、受けたいサービスで、サービス名の横にある「?」をクリックするとサービスの説明が出てくるので、初めて使う人でも使いやすいよう配慮されています。試算金額は自己負担金額と介護サービス費用の試算額両方が表示されるため、参考にして介護サービスをどのくらい利用するかを考えてみましょう。参考:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「サービスにかかる利用料」参考:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス概算料金の試算」 区分支給限度基準額が適用されるサービスとされないサービス
前の項目でご紹介した区分支給限度基準額は適用されるサービスとされないサービスがあるため、表にまとめてみました。
区分支給限度基準額が適用されるサービス | 区分支給限度基準額が適用されないサービス |
・訪問介護 ・訪問入浴介護 ・訪問看護 ・訪問リハビリテーション ・通所介護 ・通所リハビリテーション ・福祉用具貸与 ・短期入所生活介護 ・短期入所療養介護 ・特定施設入居者生活介護 ・定期巡回 ・随時対応サービス ・夜間対応型訪問介護 ・認知症対応型通所介護 ・小規模多機能型居宅介護 ・認知症対応型共同生活介護 ・地域密着型特定施設入居者生活介護 ・複合型サービス | ・居宅療養管理指導 ・特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型と短期利用を除く) ・認知症対応型共同生活介護(短期利用を除く) ・地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用を除く) ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 ・施設サービス |
区分支給限度基準額が適用されないサービスについて、その理由は次の2つにわけられます。
サービスの種類 | 理由 |
・特定施設入居者生活介護 ・認知症対応型共同生活介護 ・地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用を除く) ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 ・施設サービス | ・他のサービスを組み合わせて利用する必要がないため ・要介護度別に1日あたりの単位数が決められているため |
・居宅療養管理指導 | ・1ヵ月の提供回数の上限と1回の単位数が決まっているため |
要介護3の人がもらえるお金は、区分支給限度基準額が適用される、されないにかかわらず上限があることを覚えておきましょう。
要介護3の人の介護保険サービスの利用実態
要介護3の人はもらえるお金を利用して、実際介護保険サービスをどのように活用しているのでしょうか。
厚生労働省が2021年に発表した「令和3年度 介護給付費等実態統計」に基づき、居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスでの利用実態を見ていきましょう。
居宅サービスでの利用実態
要介護3の人における、居宅サービスでの利用実態を訪問介護、通所介護と通所リハビリテーションの2つにわけてご紹介します。
訪問介護におけるサービスの利用割合は次の通りです。
訪問介護におけるサービスの種類 | 割合 |
身体介護 | 68.5% |
身体介護と生活援助 | 34.8% |
生活援助 | 40.0% |
通院等乗降介助 | 7.3% |
要介護3では日常生活動作や手段的日常生活動作に介護を必要とするため、身体介護の利用割合の方が生活援助より多い実態がうかがえます。
また通所介護・通所リハビリテーションにおける、要介護1~要介護5の人を100%とした場合の利用割合は次の通りです。
| 通所介護 | 通所リハビリテーション |
要介護3 | 17.3% | 17.5% |
在宅で生活を続けるため、通所介護や通所リハビリテーションを随時活用し身体の機能を維持しようとする様子がうかがえます。
地域密着型サービスでの利用実態
要介護度別の地域密着型サービスの利用実態は次の通りです。
| 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 25.3% | 25.1% | 18.7% | 18.7% | 12.3% |
夜間対応型訪問看護 | 12.4% | 25.0% | 22.5% | 21.5% | 18.6% |
地域密着型通所介護 | 40.5% | 30.0% | 16.2% | 9.0% | 4.3% |
地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用以外) | 18.9% | 24.2% | 22.3% | 22.0% | 12.6% |
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 | 0.8% | 2.2% | 25.0% | 41.0% | 31.1% |
複合型サービス | 15.3% | 20.0% | 19.7% | 22.7% | 22.3% |
地域密着型のサービスにおいては、要介護度による利用割合の違いが居宅サービスほど大きくはありません。
しかし、入所定員が30人未満の特別養護老人ホームで地域や家族との結び付きを大切にしながら介護を受けられる、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護では要介護3の人が利用割合の25%を占めており、人気が高いサービスだと言えるでしょう。
施設サービスでの利用実態
要介護度別の施設サービスの利用実態は次の通りです。
| 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
介護老人福祉施設 | 1.0% | 2.9% | 26.1% | 40.4% | 29.6% |
介護老人保険施設 | 12.6% | 19.0% | 24.2% | 27.8% | 16.3% |
介護療養型医療施設 | 1.7% | 3.0% | 8.6% | 37.2% | 49.5% |
介護医療院 | 2.2% | 3.9% | 10.1% | 38.7% | 45.0% |
まとめ
要介護3でもらえるお金とは介護保険サービスを利用した時に支給されるお金のことで、居宅サービスにおいては介護保健法第43条で区分支給限度基準額という上限が定められているため、もらえる金額は270,480円です。この記事も参考にして、要介護3の人の現状に合った介護サービスを見つけ、本人のQOLの向上に役立ててみてください。※掲載情報は公開日あるいは2023年03月30日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。