「介護の見守りにはカメラやセンサーを有効に使ったほうがよいのかな?」と考えている介護施設の幹部職員やケアマネジャーがいるかもしれません。
介護業界でもDXの必要性が言われているため、見守りツールの活用も検討したほうがよいでしょう。
ただ、「介護における見守りとは何か」を十分に理解したうえで、見守りツールを活用することが重要です。
そこで今回は、介護における見守りの目的・コツや見守りツール、自宅で利用できる見守りサービスなどについて解説します。
介護における見守りとは
介護における見守りとは、必要に応じて利用者様をサポートできる態勢を維持することです。
自宅や介護施設によって見守りの方法は異なりますが、本人の様子をしっかり観察して行うことに変わりありません。
もし、見守りができていないと命にかかわる重大な事故につながることもあるため注意が必要です。
介護における見守りを理解するためにも、まずは見守りの目的やコツについて確認していきましょう。
見守りには目的がある
介護における見守りの目的は、利用者様本人の病気や環境上の危険から守ることです。見守りによって利用者様の安全を確保し安心して暮らしていただけます。見守りの詳細な目的は以下の通りです。●事故防止:転倒・転落などの事故を防ぐ
●急変対応:急激な体調変化に素早く対応する
●能力維持:過度な介護をしないで利用者様が自立できるようにする
利用者様は年齢や既往症などがあるため、事故や急激な体調変化がおきやすいと言えます。ただ、介護施設の職員や家族がそれらを恐れて過度に介護をしては、利用者様の心身能力を低下させてしまうでしょう。事故と心身能力の低下の両方を防ぐためには、適度な距離間で見守りをすることが必要なのです。 見守りをするコツとは
介護における見守りは、利用者様のそばでつねに見続けることではありません。利用者様一人ひとりにあった見守り方法があるのです。以下のようなポイントを把握し行うことが、一人ひとりにあった見守りにつながっていきます。●心身機能の把握:個別性を理解するために一人ひとり異なる心身機能を把握する
●必要な見守りの理解:心身機能の把握によりその利用者様に必要な見守り方法を理解する
●行動・体調変化を予測する:どのように行動するか予測し事故を防ぐ。現状を把握し体調の悪化に対応する
上記のポイントの把握によって、一人ひとりにあった見守りができるだけはなく、利用者様の理解や介護の質を高めることにもつながります。 緊急時の対応方法とは?
介護職員がしっかり見守りをしていても、事故や急激な体調変化は防げません。
見守りと同じように重要なことは、異変がおきたときに素早く対応することです。
一人で対応しようとはしないで、同僚職員や看護師に伝えてチームで対応しましょう。
ただ、利用者様の状況によっては、救急要請やAEDの使用が必要な場合もあります。
利用者様の状態を見極め、まず何をするべきか冷静に判断してください。
緊急時の対応力をつけるためには、消防署が実施している救命講習に参加するとよいでしょう。
施設単位で実施しているところもありますが、実施していないようならお住いの消防署に問いあわせてください。
介護施設で便利な見守りツール
介護における見守りは介護職員の目で行うことが一般的でした。
しかし、介護の質の向上や人手不足に対応するため、見守りツールの活用が必要になってきています。
居室にカメラを設置する
介護施設での見守りにカメラの活用が考えられます。介護職員が居室へ行かなくても、職員室からモニターで見守りができます。ただ、見守りカメラは居室での利用者様の状況を24時間映し続けるようなツールではありません。最近では、利用者様が起床や離床などをしたときに通知があり、様子が映し出される仕組みになっています。参照:株式会社ケアコム 見守りカメラシステムしかし、利用者様をカメラで映すことは、プライバシーや肖像権の問題があることも忘れないでください。見守りカメラを導入や利用するときは、利用者様やその家族に十分説明し理解を得るようにしましょう。参照:経済産業省 カメラ画像利活用ガイドブックver3.0概要 センサーマットや人感センサー などを活用する
センサーの活用も介護施設での見守りには効果的です。ただ、様々な機能があるため、利用者の状況にあわせてセンサーを選びましょう。●人感センサー:体温に反応し人の動きを感知
●センサーマット:体重の変化を感知。床やベッドに敷いて使用
●シルエットセンサー:人の動きをシルエットで確認。カメラのように目視しないためプライバシーに配慮できる
上記のようなセンサーの使用は介護職員のサポートになりますが、介護職員の見守り業務は今後も必要です。あくまでも見守り業務のサポートとしてセンサーを使用することを忘れないでください。 在宅で便利な見守りツール・サービス
ケアマネジャーが担当している利用者様のご家族から、見守りツールやサービスを相談されることもあるでしょう。
ここでは、在宅で活用できるツールやサービスを解説します。
センサーやアプリを活用しよう!
自宅で活用できる見守りツールにセンサーやアプリがあります。カメラでの見守りは自宅での様子が映像でわかるため効果的ですが、プライバシーを気にされる利用者様もいるでしょう。そのような方にはセンサーやアプリでの見守りが効果的です。人感センサーは頻繁に通るキッチンやトイレなどの生活動線に設置すれば、自宅に住まわれている利用者様の様子がわかります。また、スマートフォンを使用している方なら、アプリの使用がおすすめです。見守りアプリの機能は種類によって以下のように複数あります。●状況通知:1日1回といった頻度で様子を確認し通知する
●移動確認:GPS機能で場所・移動状況がわかる
●充電確認:充電しているかどうか通知する
機能が複数あるため本人の状況にあわせて選びましょう。 公的や民間などの様々な見守りサービスがある
地域包括支援センターや郵便局などで見守りサービスを行っています。地域包括支援センターが行っている見守りサービスは、地域のボランティアと協力して行う見守りサービスです。例えば、東京都練馬区の地域包括支援センターが行っている見守りサービスは、地域のボランティアが利用者様宅を週1回訪問する「定期訪問」や、週1回電話連絡をする「電話訪問」です。参照:練馬区 利用者様在宅生活あんしん事業また、郵便局は「郵便局のみまもりサービス」という見守りサービスを行っています。同サービスの詳細は下表のとおりです。 | 見守り内容 | 月額料金(税込) |
みまもり訪問サービス | 利用者宅を訪問(毎月) | 2,500円 |
みまもりでんわサービス | 自動音声による体調確認(毎日) | 1,070円(固定電話) 1,280円(携帯電話) |
駆けつけサービス (オプション) | 異変時に家族からの要請により訪問(随時) | +880円 ※駆けつけ料は5,500円 |
訪問介護やデイサービスなども見守りになる?
介護保険サービスは、見守りサービスとしても活用できます。
介護保険サービスは、「介護のプロ」が利用者様にあったサービスを提供するため、見守りとしても効果的です。
「介護保険サービス=見守りサービス」という関係が、疑問に感じる方もいるでしょう。
ただ、見守りサービスの利用を検討している状況は、年齢や心身の状態から高齢者一人での生活に不安を感じているということです。
介護保険申請をして要介護・要支援認定がされれば、介護保険サービスが利用できます。
ご自宅でお住いの高齢者の見守りも兼ねて利用するとよい介護保険サービスとしては、デイサービスや訪問介護などがあります。
見守りだけではなく生活を総合的に考えて、介護保険サービスの利用を検討されてはいかがでしょうか。
「見守られる側」から「見守る側」になる!
見守りが必要な高齢者が逆に見守る側になれば、見守り問題が解決することもあります。
見守りをする活動を通して、高齢者同士がお互いに見守り元気に過ごせるためです。
地域には高齢者が参加している団体やサークルがあります。
それらに参加することで、お互いに見守り・見守られの関係性が築けます。
そのような関係が築かれると、地域に住まわれている見守りが必要な高齢者の情報が自然に集まってきます。
そして、団体・サークルとして行政や地域包括支援センターと連携すれば、見守りが必要な高齢者の情報が共有されるでしょう。
最終的には、団体・サークルに参加している高齢者も行政や地域包括支援センターから見守られ、介護保険サービスが必要になったときの対応もスムーズに進むのです。
見守りを理解して利用者本人にあった介護をしよう!
介護における見守りは利用者様を危険から守ることが目的であり、一人ひとりの理解が効果的な見守りにつながっていきます。
また、最近ではツールやアプリ、サービスを利用した見守りが行われるようになりました。
介護ロボットが見守りをする時代も、すぐそこまで来ているかもしれません。
利用者様の考えを尊重しながら、ツールやサービスを活用して見守りを行っていきましょう。