介護予防支援とは?現状から今後の課題まで詳しく解説

更新日:2023年08月31日

公開日:2023年08月17日

ストレッチをする男性とスタッフ

最近介護予防支援というサービスがあると知ったけれど、具体的にどのような内容かわからず現場でどのように対応をすればよいのか悩んでいる人はいませんか?  この記事では介護予防支援の現状から今後の課題まで詳しく解説します。

介護予防とは?

介護保険証

介護予防とはそもそもどのようなことを示すのでしょうか。

定義、目的、介護予防サービスの種類の3つの観点からご紹介します。

介護予防の定義

介護予防の定義は次の3つです。
・要介護状態になるのをできるだけ遅らせること
・要介護状態になったらその悪化をできるだけ防ぐこと
・要介護状態の軽減を目指すこと

介護保険法の第4条では、国民は要介護状態になるのを予防し要介護状態になっても能力の維持向上に努めると定められていることから、介護予防は法律に基づいて国民が取り組む必要のある努力義務だとわかります。

参考:e-GOV法令検索「介護保険法」
参考:エビデンスを踏まえた介護予防マニュアル改訂委員会「介護予防マニュアル第4版」

介護予防の目的

介護予防は高齢者の心身の機能を改善させるだけではなく、それを通じて家庭や社会への参加を促し、個人の生きがいや自己実現への取り組みを支援してQOL(生活の質)を改善するのを目的とします。

そのため高齢者の身体の機能回復だけではなく、高齢者を取り巻く環境=地域にもアプローチをして生活機能全体を向上させる必要があると言えるでしょう。

参考:エビデンスを踏まえた介護予防マニュアル改訂委員会「介護予防マニュアル第4版」

介護予防サービスの種類

介護保険で行われる介護予防サービスは次の16種類です。

分類サービスの種類概要対象者
介護予防サービス介護予防訪問入浴介護・利用者の居宅で行う介護予防目的の入浴介護・居宅(自宅以外に軽費老人ホームや有料老人ホームの居室も含む)で生活する要支援の認定を受けた人
介護予防訪問看護・利用者の居宅で行う介護予防目的の看護・同上
介護予防訪問リハビリテーション・利用者の居宅で行う介護予防目的のリハビリテーション・同上
介護予防居宅療養管理指導・医師、歯科医師、薬剤師が行う介護予防目的の療養管理と指導・同上
介護予防通所リハビリテーション・理学療法、作業療法、その他の介護予防目的のリハビリテーション・同上
介護予防短期入所生活介護・ショートステイをする中で、介護予防を目的として施設で行う介護、その他日常生活を送る時必要な支援や機能訓練・同上
介護予防短期入所療養介護・ショートステイをする中で、介護予防を目的として施設で行う看護、医学的な管理が必要になる介護や機能訓練、その他必要な医療、日常生活上の支援・同上
介護予防特定施設入居者生活介護介護予防を目的として、介護予防特定施設サービス計画に沿って行う入浴、排泄、食事などの介護、日常生活上の支援、機能訓練、療養上の世話・特定施設に入居している要支援の認定を受けた人
介護予防福祉用具貸与・福祉用具の中で厚生労働大臣が介護予防に効果があると定めた福祉用具をレンタルすること・居宅(自宅以外に軽費老人ホームや有料老人ホームの居室も含む)で生活する要支援の認定を受けた人
特定介護予防福祉用具販売介護予防に効果はあるが入浴や排泄の際に使うといった理由でレンタルしにくいもの(「特定介護予防福祉用具」という)を販売すること・同上
地域密着型介護予防サービス介護予防認知症対応型通所介護介護予防を目的として、認知症の人が老人デイサービスセンターなどで一定期間入浴、排泄、食事などの介護、その他日常生活を送る時に必要なサービスや機能訓練を受けること・同上
介護予防小規模多機能型居宅介護・居宅、通所、ショートステイで、介護予防を目的に行う入浴、排泄、食事などの介護、その他日常生活を送る時に必要なサービスや機能訓練を受けること・同上
介護予防認知症対応型共同生活介護介護予防を目的として、利用者が共同生活をする住居で行う入浴、排泄、食事などの介護、その他日常生活を送る時に必要なサービスや機能訓練を受けること・要支援の認定を受けた認知症の人
介護予防支援・要支援の認定を受けた人が介護予防サービスなどを適切に利用できるよう、介護予防サービス計画を作成し、それに基づいてサービスが行われるようサービス事業者との連絡調整を行うこと・居宅(自宅以外に軽費老人ホームや有料老人ホームの居室も含む)で生活する要支援の認定を受けた人

介護予防支援は、介護予防サービスの種類の1つとして位置づけられ、要支援認定を受けた人がスムーズに介護予防サービスを受けられるようにするためにあるのがわかります。

参考:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「介護保険の解説ーサービス編ー」

介護予防支援とは?

笑顔のスタッフ

介護予防支援とは、要介護認定で要支援の認定を受けた人が、介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス、介護予防に効果がある保健医療サービス、福祉サービスを適切に利用できるよう介護予防サービス計画を作成し、関係各所と連絡・調整をすることです。

介護予防支援を利用する際の自己負担はありません。

また介護予防支援を行うための人員基準は次のように定められています。

項目概要
管理者・常勤で専従の人を配置
担当職員・1人以上を配置(保健師、介護支援専門員、社会福祉士、経験のある看護師、高齢者保健福祉に関する相談援助業務を3年以上行った社会福祉主事のうちいずれかの要件を満たす人)

実際に介護予防支援を行うのは、地域包括支援センターの職員で上記の要件を満たす人です。

要支援の認定を受けた人から介護予防支援の依頼をされたら、その人の心身の状況、おかれている環境、本人や家族の希望などを考慮した上で、利用するサービスの種類や内容、担当者を決めます。

介護予防支援は介護予防サービス、介護予防ケアマネジメント、居宅介護支援と混同されやすいので、それぞれの違いについて見ていきましょう。

参考:厚生労働省「居宅介護支援・介護予防支援」
参考:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「介護保険の解説ーサービス編ー」

介護予防サービスと介護予防支援の違い

前の項目でもご紹介した通り、介護予防サービスと介護予防支援は3つある介護予防サービスの分類のうちの1つとしてそれぞれ位置づけられています。

介護予防支援介護予防サービスが行われる前段階の計画立案やサポート、関係各所との調整を指しますが、介護予防サービスは実際に行われるサービスを指すのが大きな違いと言えるでしょう。

介護予防支援と介護予防ケアマネジメントの違い

介護予防支援は要支援者に対して行われますが、介護予防ケアマネジメントは要介護認定を受けておらず総合事業における介護予防・生活支援サービスのみを利用する、「介護予防・生活支援サービス事業対象者」と要支援者両方に対して行われるという違いがあります。

具体的には地域包括支援センターが介護予防ケアマネジメントを行い、要支援者には介護予防サービスと介護予防・生活支援サービス両方を組み合わせたサービス計画を作成します。

一方介護予防・生活支援サービス事業対象者には介護予防・生活支援サービスのみを用いてサービス計画を作成するのです。

介護予防ケアマネジメントや総合事業について詳細を知りたい人は、厚生労働省のホームページを確認してみてください。

参考:厚生労働省「総合事業」
参考:厚生労働省老健局振興課「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(概要)」

介護予防支援と居宅介護支援の違い

介護予防支援居宅介護支援の定義と人員基準の違いは次の通りです。

 定義人員基準
介護予防支援・要介護認定で要支援の認定を受けた人が、介護予防サービス、地域密着型介護予防サービス、介護予防に効果がある保健医療サービス、福祉サービスを適切に利用できるよう介護予防サービス計画を作成し、それに基づいたサービス提供をするよう関係各所と連絡・調整すること①管理者・常勤で専従の人を配置②担当職員・1人以上を配置(保健師、介護支援専門員、社会福祉士、経験のある看護師、高齢者保健福祉に関する相談援助業務に3年以上従事した社会福祉主事のいずれかの要件を満たす人)
居宅介護支援・居宅で生活する要介護者が居宅サービス、地域密着型サービス、その他日常生活を送るために必要となる保健医療サービス、福祉サービスを適切に利用できるようサービスの種類や内容、担当者などを定めたサービス計画を作成し、それに基づいたサービス提供をするよう関係各所と連絡・調整すること ①管理者・常勤専従の主任介護支援専門員を配置②介護支援専門員・利用者35人に対し1人を配置

介護予防支援は介護支援専門員以外の有資格者でもできますが、居宅介護支援は介護支援専門員でないとできないのが特徴的な違いと言えるでしょう。

介護予防支援の現状

筋トレをする高齢者

介護予防支援の現状について、介護予防支援事業所の数、介護予防支援の利用者数、介護予防支援を行った場合の介護報酬の3つの観点からご紹介します。

介護予防支援事業所の数

2020年に厚生労働省が発表した「居宅介護支援・介護予防支援」という資料では、介護予防支援の請求事業所数は2019年度で5,072件でした。

居宅介護支援の請求事業所が39,685件であるのと比較すると約1/8なので、日本では介護予防支援を行う事業所が居宅介護支援を行う事業所と比較するとまだ少ないのがわかります。

介護予防支援の利用者数

「居宅介護支援・介護予防支援」における介護予防支援の利用者数は2019年度で67.4万人でした。

居宅介護支援の利用者数が269万人であるのと比較すると約1/4なので、介護予防支援サービスの利用者数の方が少ない結果となっています。

介護予防支援を行った場合の介護報酬

介護予防支援を行った場合の介護報酬としてかかった費用は2018年度で359億円でした。

これはとても大きい金額に感じるかもしれませんが、2018年度居宅介護支援にかかった費用は4,654億円だったため、将来的には介護予防支援にかける費用の方が多くなり、居宅介護支援と介護予防支援の合計額も今より下がるのが理想的だと言えるでしょう。

参考:厚生労働省「居宅介護支援・介護予防支援」

介護予防支援の今後の課題

費用

介護予防支援の今後の課題を3つご紹介します。

ケアプラン有料化議論の影響

2022年4月13日に行われた財政制度分科会の配布資料「社会保障」には、居宅介護支援について利用者負担を導入した方がよいという意見と、その理由としてケアマネージャーの質の向上や現状の運用に合わせるためといった内容が記載されました。

居宅介護支援で自己負担が必要になるなら将来的に介護予防支援もその影響を受け、自己負担を求められる可能性が出てくるのではないでしょうか。

参考:財務省「財政制度分科会(令和4年4月13日開催)資料一覧」

人手不足

介護予防支援は人員基準が定められているため有資格者でないと行うことができませんが、資格を持つ人は急には増えないため、ニーズが高まるにつれ人手不足となることが考えられます。

例として社会福祉士の登録者数を見てみましょう。

 2018年2019年2020年2021年2022年
社会福祉士登録者数226,283人238,696人250,346人260,518人271,098人

ここ5年間のデータでは1年間で登録者数は1万人程度増加し続けていますが、大きく伸びてはいないのがわかります。

参考:厚生労働省「ページ3:社会福祉士の登録者数の推移」

地域包括支援センターが行うサービスのため地域差が出やすい

介護予防支援は地域包括支援センターが行うサービスのため、地域による内容の差が出やすいと言えるでしょう。

ただし2024年度から居宅介護支援事業所も指定対象とする方針が決まっているため、少しずつ選択肢が広がり、地域差が解消されていくのではないでしょうか。

まとめ

ストレッチをする高齢者とスタッフ

介護予防支援とは、要介護認定で要支援の認定を受けた人が、介護予防サービスを適切に利用できるよう介護予防サービス計画を作成し、関係各所と連絡・調整をすることで、利用する際の自己負担はありません。

この記事も参考にしてぜひ介護予防支援について理解を深め、介護予防サービス計画に基づいた支援を行ってみてください。

※掲載情報は公開日あるいは2023年08月31日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

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