老々介護で共倒れに!?問題の現状や原因、解決方法、さらに認認介護も解説

更新日:2023年09月28日

公開日:2023年08月17日

老老介護

「老老介護でなぜ共倒れするの?」「老老介護と認認介護の関係について知りたい」と思っている介護関係者はいませんか。
老老介護は、高齢者数の増加や核家族化などの様々な原因によって発生しています。
老老介護を問題として考えなければならない理由としては、共倒れという大きなリスクを抱えているからです。
そこで今回は、老老介護問題について共倒れリスクや原因、解決策などの視点で解説します。

老老介護で共倒れになる

買い物をする高齢女性

老老介護には、介護する側と介護される側が共倒れになるという大きなリスクがあります
なぜなら、双方とも高齢なので身体的・精神的な負担に耐えられないからです。
最近のニュースにもなっている老老介護とは、介護する側と介護される側がともに高齢者であるケースで、介護が夫婦間や親子間、兄弟姉妹間などで行われます。
介護施設への入居や介護保険サービスなどを利用しないで在宅で介護することも、老老介護問題がおきてしまう理由の一つです。

また、老老介護の世帯は以下のような問題を抱えています。

●身体的な負担が大きい:介護に慣れていない高齢者が24時間連続で介護をするから
●精神的な負担が大きい:一人で介護をしてストレスがかかるから
●自宅に閉じこもる:在宅での介護に多くの時間を費やし外出しなくなるから

上記のようなことが原因となって、老老介護は共倒れをしてしまうのです。

老老介護問題の現状とは

寄り添う夫婦

ここでは、老老介護問題の現状を国民生活基礎調査の結果をもとに確認していきましょう。
参照:厚生労働省 2019年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況

老老介護が増加している

現在の日本は老老介護が増加しています。日本の高齢者人口は毎年増え続け、令和3(2021)年の高齢化率(全人口に占める65歳以上人口の割合)は29.1%でした。
高齢化率の上昇も影響し老老介護の件数は増加しています
下図は令和元(2019)年の国民生活基礎調査をもとに、介護する側と介護される側の年齢別の組み合わせの割合を表した図です。
下図によると、年々、老老介護の件数が増加しています。

図 要介護者等と同居の主な介護者の年齢組合せ別の割合の年次推移

グラフ

図引用元:厚生労働省 2019年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況

令和元(2019)年時点では、60歳以上同士の組み合わせが74.2%と高い数値でした。
また、75歳以上の組み合わせも33.1%と驚くべき数字です。

認認介護も増加している

実は老老介護だけではなく認認介護も増加しています
認認介護は介護する側と介護される側がともに認知症であることです。
前述の国民生活基礎調査では、要介護認定の原因の第1位が認知症で全体の24.3%でした。 
このことから老老介護の世帯においても、とも認知症である認認介護のケースが多いことが十分想像できます。
なお、要介護になる原因で認知症の次に多かったのが脳血管疾患(脳卒中)でした。

様々な原因が老老介護問題がひきおこす

横顔を見つめる女性

ここまで老老介護問題の現状をみてきましたが、いったい何が原因なのでしょうか。
ここからは、老老介護問題を引きおこす様々な原因について確認します。

社会状況が変化している

まず一つ目は日本の社会状況がかなり変化していることです。
現在もおきている社会変化には以下のようなものがあります。

●女性の就業率の上昇
●未婚率の上昇
●初婚年齢の上昇
●核家族化
●景気の長期低迷
●平均年齢の上昇
●少子高齢化

上記の社会変化が以下の式のように複雑に絡みあって、老老介護の問題を引きおこしているのです。

「初婚年齢の上昇」×「景気の長期低迷」=「少子高齢化」→「老老介護」

相談することに抵抗がある

原因の二つ目は相談への抵抗感です。
ちょっとした悩みなら相談しやすいかもしれませんが、介護は家庭の問題であり相談することに抵抗を感じる方が多くいます
特に認知症が原因で介護になったケースの場合は、認知症への偏見がいまだにある日本社会では、相談に抵抗を感じることは当然です。

また、「ほかの人に頼りたくない」「自分たちの力で解決したい」などの独立心が強いことが、相談のハードルを高くしてしまう場合もあります。
たったの一回の相談すら老老介護をしている方々にとっては、とてもしずらいことなのです。

サービス利用を控える

最後の原因は介護サービスの利用を控えてしまうことです。
介護サービスを利用しないと家族の介護を同居する家族が行うため、老老介護の問題が発生します
介護サービスを控える理由には先ほど解説した相談への抵抗があり、介護サービスの利用が始まらないのです。

また、経済的な問題を抱えている方々も介護サービスの利用を控えてしまいます。
介護保険サービスなら1割から3割の利用者負担ですみますが、その負担すら渋ってしまうのです。

老老介護問題の解決方法

スタッフと車椅子の女性

ここでは、共倒れを防ぐためにも老老介護問題の二つの解決方法をみていきましょう。

地域包括支援センターに相談する

解決方法の一つ目は、地域包括支援センターに相談することです。
保健師や主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されていて、健康や介護などの様々な問題を相談でき、ワンストップで対応してくれる機関であるからです。
地域包括支援センターは、地域の在宅高齢者の介護問題を解決するための相談機関です。
中学校と同じぐらい規模の人口基準で整備され、地域に根差した活動をしています。

地域包括支援センターへ相談することで、抱えている老老介護問題を分析し、必要なサービスを提案してくれます
必要に応じて介護保険申請の助言もしてくれるため、介護認定が出れば介護保険サービスが利用でき、老老介護問題が解決に向けて一気に動き出します。

サービスを利用する

解決方法の二つ目は、介護保険制度や見守りなどのサービスを利用することです。
サービスを利用することで、介護する側の負担が減り共倒れするリスクも減らせるからです。
在宅で利用できる介護保険サービスとしては、以下のようなものがあります。

●訪問介護:訪問介護員が自宅を訪問し身体介護・生活援助を受ける
●通所介護(デイサービス):介護事業所に通い身体介護・レクリエーションなどのサービスを受ける
●短期入所(ショートステイ):介護事業所へ行き泊まりの介護サービスを受ける

また、 介護保険サービスでなくても配食サービスや見守りサービスを利用することで、介護の身体的・精神的な負担を減らせます。
外部の介護サービスの利用で、介護保険サービスを導入するときの心理的な抵抗も少なくなるでしょう。

老老介護問題に地方自治体はどのように対応しているか?

相談を受ける男性スタッフ

ここでは、老老介護問題に対して積極的に対応している地方自治体の事例として、東京都の「高齢者見守り相談窓口設置事業」について解説します。
同事業は、高齢者が安心して在宅生活ができるように、都内の各市区町村内に見守り拠点を設置する事業です。
見守り拠点は、地域の高齢者からの相談の受付や生活実態の把握などをしています。
積極的に高齢者の生活実態の把握に努めていることは、相談を受けてから対応する今までの福祉行政とは大きく異なります
生活実態の把握によって老老介護・認認介護の世帯がわかるため、共倒れする前に解決に導くことができるのです。
参照:東京都福祉保健局 高齢者見守り相談窓口設置事業

現状や原因、解決方法を理解して老老介護問題を解決しよう!

笑顔の家族

老老介護問題は、共倒れリスクがあるため、早急に解決しなければなりません。
老老介護は、様々な原因が複雑に絡み合って老々介護が増えています。
解決方法としては、地域包括支援センターへ相談することや、介護サービスの利用があります。
介護する側と介護される側が共倒れする前に、解決に向けた動きが必要です。

※掲載情報は公開日あるいは2023年09月28日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

あなたにあなたにピッタリの求人をご紹介! 求人を紹介してもらう