更新日:2023年09月28日
公開日:2023年08月21日
介護士として現場で仕事をこなす日々だけれど、介護業界の中でさらにスキルアップするためにも何か資格を取りたいと考えている人はいませんか?
この記事では、そんな人におすすめの介護福祉士実務者研修について詳しくご紹介します。
介護福祉士実務者研修とは介護職員初任者研修の上位資格で、国家資格である介護福祉士を受験するために必要な資格の1つです。
介護サービスの質の向上を目標として、介護の現場で働く人たちが基本的な介護提供能力を習得するために設置されました。
介護福祉士実務者研修は、「ホームヘルパー1級」「介護職員基礎研修」を一本化するのが目的で作られた資格と思われがちです。
しかし介護福祉士実務者研修とホームヘルパー1級や介護職員基礎研修のカリキュラムを比較すると「人間の尊厳と自立」「生活支援技術」など今までにない科目が含まれ、より深い知識や技術を学べるようになっています。
このことから介護福祉士実務者研修は介護福祉士の受験資格の1つとするのにふさわしく、より専門的な知識や技術を身に着けるのを目的として作られた資格なのがわかります。
介護福祉士実務者研修の受講資格はなく誰でも受講できます。
ただし、スクールによっては介護職員初任者研修を受けてからでないと受講できない場合があるので注意しましょう。
2021年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和3年度介護労働実態調査」では介護労働に従事する人19,925 人を対象に、現在持っている資格についてたずねた所、次のような結果でした。
資格の種類 | 割合 |
介護福祉士 | 57.0% |
介護福祉士実務者研修 | 14.9% |
介護職員初任者研修 | 12.9% |
介護職員基礎研修 | 3.0% |
ホームヘルパー1級 | 4.1% |
ホームヘルパー2級 | 33.9% |
主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー) | 4.4% |
介護支援専門員(ケアマネージャー) | 17.6% |
介護福祉士実務者研修は、介護関連の資格の中では取得している人がまだそれほど多くはないため、これから取得すると他の介護職員と差別化できる資格だと言えるでしょう。
参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査について」
前の項目でもご紹介しましたが、2023年現在取得できる介護士の資格にはどのようなものがあるのでしょうか。
主な資格をご紹介します。
資格の種類 | 根拠となる法律 | 受験資格 | 問い合わせ先 |
民間資格 | 介護保険法施行細則 | なし | 都道府県または都道府県知事の指定した研修の実施主体 |
民間資格 | 社会福祉士及び介護福祉士法 | なし | 介護福祉士実務者養成施設 |
国家資格 | 社会福祉士及び介護福祉士法 | ①養成施設ルート ②実務経験ルート ③福祉系高校ルート ④経済連携協定(EPA)ルート | 公益財団法人社会福祉振興・試験センター |
民間資格 | 介護保険法 | ・都道府県が実施する「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格し、「介護支援専門員実務研修」を修了する ・5年以上の実務経験がある法定資格の取得者 | 一般社団法人日本介護支援専門員協会 |
民間資格 | ー | ・介護福祉士の資格を持つ ・介護福祉士資格取得後の実務経験5年以上 ・介護職員を対象とした現任研修で100時間以上の研修歴がある ・研修実施団体が課すレポート課題または受講試験にで一定の水準の成績を修めている | 認定介護福祉士認証・認定機構 |
ケアマネージャーの受験資格にある「法定資格」とは次の資格のことです。
・介護福祉士
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・医師
・歯科医師
・薬剤師
・保健師
・助産師
・看護師
・准看護師
・理学療法士
・作業療法士
・視能訓練士
・義肢装具士
・歯科衛生士
・言語聴覚士
・あん摩マッサージ指圧師
・はり師
・きゅう師
・柔道整復師
・栄養士
介護の現場では介護士だけではなく医療や栄養、リハビリの専門家も仕事をするため、その人たちもケアマネージャーになれるように広く法定資格を定めているのがわかります。
一方国は高齢化社会の到来を背景に、質の高い介護サービスを安定して供給するためには介護の現場で働く人たちの資質向上が不可欠だと考えています。
そのため介護職員として働く人たちが将来のキャリアプランを描きやすいよう、レベルに応じた資格を取得して段階的にキャリアアップを目指せるように環境を整えたわけです。
介護福祉士実務者研修で受講する科目とその概要は次の通りです。
科目 | 到達目標 | 概要 | 時間 |
人間の尊厳と自立 | ・人間の尊厳の保持についての理解を深める | ・人間の多面的な理解と尊厳 ・自立の支援 ・人権と尊厳 | 5時間 |
社会の理解Ⅰ | ・介護保険制度の内容を理解して利用者に助言できる | ・介護保険制度創設の背景と目的 ・介護保険制度の基礎的理解 ・介護保険制度における専門職の役割 | 5時間 |
社会の理解Ⅱ | ・社会保障制度や介護に関する制度について理解できる | ・社会と生活のしくみ ・地域共生社会の実現に向けた制度や施策 ・社会保障制度 ・障がい者総合支援制度 ・介護実践にかかわる諸制度 | 30時間 |
介護の基本Ⅰ | ・介護福祉士制度やその職業倫理を理解し実践している | ・介護福祉士の役割と機能 ・尊厳の保持、自立に向けた介護の考え方と展開 ・介護福祉士の倫理 | 10時間 |
介護の基本Ⅱ | ・要介護者の生活とニーズを理解した上でチームで連携してケアができる ・介護福祉士の仕事におけるリスクマネジメントや安全管理ができる | ・介護を必要とする人の生活の理解と支援 ・介護実践における連携 ・介護における安全の確保とリスクマネジメント ・介護従事者の安全 | 20時間 |
コミュニケーション技術 | ・利用者や家族と適切なコミュニケーションを取り情報を共有できる | ・介護におけるコミュニケーション ・介護におけるコミュニケーション技術 ・介護場面における利用者 ・家族とのコミュニケーション ・介護におけるチームマネジメントとコミュニケーション | 20時間 |
生活支援技術Ⅰ | ・利用者の自立に向けた生活支援と環境整備ができる | ・生活支援とICF ・居住環境の整備と福祉用具の活用 ・移動・移乗の生活支援技術の基本 ・食事の生活支援技術の基本 ・入浴 ・清潔保持の生活支援技術の基本 ・排泄の生活支援技術の基本 ・着脱、整容、口腔清潔の生活支援技術の基本 ・家事援助の基本 | 20時間 |
生活支援技術Ⅱ | ・利用者の心身の状態に応じた生活支援と環境整備ができる | ・環境整備と福祉用具等の活用 ・移動・移乗の生活支援技術 ・食事の生活支援技術 ・入浴・清潔保持の生活支援技術 ・排泄の生活支援技術 ・着脱、整容、口腔清潔の生活支援技術 ・休息・睡眠の生活支援技術 ・人生の最終段階における介護の生活支援技術 | 30時間 |
介護過程Ⅰ | ・介護過程について理解し目標に沿った計画的な介護ができる ・チームで介護過程を展開できる | ・介護過程の意義と目的 ・介護過程の展開 ・介護過程とチームアプローチ | 20時間 |
介護過程Ⅱ | ・介護職として介護過程を展開できる | ・介護職による介護過程の進め方 ・介護過程の実践的展開 ・施設で暮らす高齢者の介護過程 ・在宅で暮らす高齢者の介護過程 | 25時間 |
介護過程Ⅲ(スクーリング) | ・介護過程を展開し、必要あれば他職種とも連携できる | ・利用者の特性に応じた介護過程の実践的展開 | 45時間 |
発達と老化の理解Ⅰ | ・老化に伴う身体的・心理的な変化と日常生活への影響を理解できる | ・こころの変化と日常生活への影響 ・からだの変化と日常生活への影響 | 10時間 |
発達と老化の理解Ⅱ | ・老年期の発達とその課題について理解し支援に活かせる | ・人間の成長 ・発達 ・老年期の発達 ・成熟と心理 ・高齢者に多くみられる症状 ・疾病等 | 20時間 |
認知症の理解Ⅰ | ・認知症ケアの理念、認知症の特性、関わり方の基本を理解している | ・認知症ケアの理念と視点 ・認知症による生活障害、心理、行動の特徴 ・認知症の人や家族へのかかわり、支援の基本 | 10時間 |
認知症の理解Ⅱ | ・認知症について医学的に理解し状況に合わせたサポートを地域のサポート体制も活かして行える | ・医学的側面からみた認知症の理解 ・認知症の人への支援の実際 | 20時間 |
障害の理解Ⅰ | ・障がいとは何か、障がい者支援の理念、関わり方を理解できる | ・障害者福祉の理念 ・障害による生活障害、心理 ・行動の特徴・障害のある人や家族へのかかわり ・支援の基本 | 10時間 |
障害の理解Ⅱ | ・障がいについて医学的に理解し状況に合わせたサポートを地域のサポート体制も活かして行える | ・医学的側面からみた障害の理解 ・障害の特性に応じた支援の実際 | 20時間 |
こころとからだのしくみⅠ | ・介護に関連する心と身体の仕組みについて理解できる | ・移動 ・移乗に関連するからだのしくみ ・食事に関連するからだのしくみ ・入浴 ・清潔保持に関連するからだのしくみ ・排泄に関連するからだのしくみ ・着脱、整容、口腔清潔に関連するからだのしくみ ・休息・睡眠に関連するからだのしくみ | 20時間 |
こころとからだのしくみⅡ | ・心と身体の仕組みを理解し他職種と連携してケアができる | ・人間の心理 ・人体の構造と機能 ・移動・移乗における観察のポイント ・食事における観察のポイント ・入浴 ・清潔保持における観察のポイント ・排泄における観察のポイント ・着脱、整容、口腔清潔における観察のポイント ・休息・睡眠における観察のポイント ・人生の最終段階のケアにおける観察のポイント | 60時間 |
医療的ケア | ・医療的ケアを安全に配慮して行うための基礎知識、倫理、法制度を理解している | ・医療的ケア実施の基礎 ・喀痰吸引(基礎的知識・実施手順) ・経管栄養(基礎的知識・実施手順) ・演習 | 50時間 |
実務者研修受講時間数 | ー | ー | 450時間 |
上記の科目のうち「医療的ケア」は、50時間とは別に演習を終了する必要があるので注意しましょう。
参考:厚生労働省「介護福祉士養成施設等における『医療的ケアの教育及び実務者研修関係』」
参考:中央法規「改訂介護福祉士実務者研修テキスト」
介護福祉士実務者研修を取得するためには、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
制度を活用してなるべく費用がかからずに済む方法を4つご紹介します。
介護福祉士実務者研修を実施しているスクールでは、就職支援制度を設けている場合があるため、概要をご紹介します。
スクール名 | 制度名 | 概要 | 問い合わせ先 |
未来ケアカレッジ | 就業生キャッシュバック制度 | ・就職支援制度を通じて就職すると講座の無料受講や講座費用の全額キャッシュバックが受けられる(テキスト代は別途必要) | 未来ケアカレッジ「就職サポート」 |
カイゴジョブアカデミー | 特待生キャンペーン | ・就職支援を受けて就職すると受講料とテキスト代を実費負担してもらえる | カイゴジョブアカデミー「特待生キャンペーン」 |
ニチイ | 受講料キャッシュバック制度 | ・介護福祉士実務者研修を修了し、受講中か修了後3ヵ月以内にニチイに入社し、3つの適用条件を満たすと受講料をキャッシュバックしてもらえる | まなびネット「介護の講座受講料キャッシュバック制度」 |
就職支援制度を活用することで、介護福祉士実務者研修の資格取得にかかる費用を抑えることができるので、詳細を知りたい人はまず問い合わせをしてみましょう。
介護福祉士実務者研修を受講中の人は、介護福祉士実務者研修受講資金貸付事業を利用し20万円以内で研修にかかる費用を貸してもらうことができます。
受講後に介護福祉士として介護業務に2年間勤務することで返済が全額免除されるので、介護福祉士の取得まで考えている人は厚生労働省のホームページで詳細を確認し、制度の利用を検討してみましょう。
参考:厚生労働省「介護福祉士・社会福祉士を目指す方々へ(修学資金貸付制度のご案内)」
ハローワークで求職登録をして雇用保険を受給している人は、介護労働講習という位置づけで介護福祉士実務者研修を無料(テキスト代などの実費負担あり)で受講できます。
ハローワークを通じて申込が必要ですが実施するのは公益財団法人介護労働安定センターのため、講習期間や募集期間などの詳細はホームページで確認しておくとよいでしょう。
一方雇用保険を受給できない人も、求職者支援制度という位置づけで介護福祉士実務者研修を無料で受講できます。
一定の要件を満たせば訓練期間中に職業訓練受講給付金(月額10万円)ももらえるため、条件に合うかどうかを厚生労働省のホームページで確認しましょう。
参考:公益財団法人介護労働安定センター「介護労働講習(実務者研修を含む)」
参考:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
地方自治体が勤務先の施設に対して介護福祉士実務者研修の受講者に対する助成金を出していたり、勤務先の施設自体が資格取得制度を設けている場合があります。
この場合は施設にまず制度の詳細を確認することから始め、資格取得まで連携して進めるのがおすすめです。
介護福祉士実務者研修とは介護職員初任者研修の上位資格で、国家資格である介護福祉士を受験するために必要な資格の1つです。
この記事も参考にして、ぜひ自分に合った形で介護の資格取得を進めてみてください。
※掲載情報は公開日あるいは2023年09月28日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。