訪問入浴介護とは?現状から働くのに向いてる人まで詳しくご紹介

更新日:2023年09月28日

公開日:2023年08月21日

入浴介助

訪問入浴介護の仕事をしてみたいと思っているけれど、大変だという話ばかりを聞いて何だか不安になっている人はいませんか?  この記事では、訪問入浴介護の現状から働くのに向いてる人まで詳しくご紹介します。

訪問入浴介護とは?

入浴介助ベット

訪問入浴介護とは介護保険サービスの1つで、介護職員と看護職員が利用者の自宅を訪問して持参した浴槽を用いて行う入浴介護のことです。

利用者の生活機能の維持や向上を目指して、身体の清潔の保持を目的に行われます。

訪問入浴介護に必要な人員と設備は次の通りです。

項目概要
従業員・指定訪問入浴介護事業者の事業所ごとの人数①看護師または准看護師 1名②介護職員 2名以上
管理者・指定訪問入浴介護事業者は事業所ごとに専従の常勤管理者が必要
設備・事業の運営に必要な広さを持つ専用の区画を設ける・訪問入浴介護のサービス提供に必要な設備と備品を備える

訪問入浴介護の仕事に就きたいなら、まずが看護師、准看護師、介護福祉士などの関連資格を取得するのが望ましいでしょう。

訪問入浴介護の料金

訪問入浴介護の介護報酬は利用者1人に対して看護職員1人と介護職員2人がサービスを提供した場合、基本サービス費として1回あたり1,234単位が算定されます。

加算条件と減算条件は次の通りです。

条件の種類
条件割合(1回あたり)
加算条件・介護福祉士などを一定割合以上配置+研修等の実施 ・36単位、24単位
・中山間地域などでのサービス提供・5%~15%
減算条件・介護職員3人によるサービス提供・ー5%
・清拭または部分浴でのサービス提供・ー30%

また利用者の全身入浴の場合の自己負担額は次の通りです。

要介護度自己負担額(1回あたり)
要支援1~要支援2845円
要介護1~要介護51,250円

介護保険は利用者負担が1割でサービスを2人で行うのを考えると、訪問入浴介護介護報酬はそれほど高いものではないことがわかります。

訪問入浴介護を利用する理由

2017年に厚生労働省が発表した「第142回社会保障審議会介護給付費分科会資料」の参考資料1「訪問介護及び訪問入浴介護」内で、要支援者の訪問入浴介護を利用する理由についてたずねた所、主な回答は次の通りでした。

回答割合
家の設備では介助が困難(もしくは設備がない)54%
家族や訪問介護の介助では困難だから23%
感染症や疾病等の理由で通所介護での入浴介助が利用できない11%
その他12%

要介護度が要支援1と要支援2の人では、訪問入浴介護を利用するのは家の設備では入浴できないという理由と、他の介護サービスでは対応できないという理由が多く、やむを得ない理由から利用を決めることが多いのがわかります。

参考:厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索」
参考:厚生労働省「第142回社会保障審議会介護給付費分科会資料」

訪問入浴介護の現状

体温を測る高齢者とスタッフ

2022年にデベロ老人福祉研究所が発表した「令和3年度老人保健健康増進等事業『訪問入浴介護の実態に関する調査研究事業』」では、指定訪問入浴介護事業所935件に対しアンケート調査を行いました。

この調査結果を基に、訪問入浴介護現状を「要介護度別の利用者数」「サービス提供時間」「介護サービスの質の向上のための取り組み」という3つの観点からご紹介します。

要介護度別の利用者数

指定訪問入浴介護事業所935件に対し、要介護度別の利用者数をたずねた所次のような結果が出ました。

 全体要支援1要支援2要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
利用者数37,051人59人259人1,079人3,080人4,932人10,457人17,185人
割合100%0.2%0.7%2.9%8.3%13.3%28.2%46.4%

要介護度の平均値は4.05で、要介護度が上がるほど訪問入浴介護の利用者数は増加しているのがわかります。

サービス提供時間

指定訪問入浴介護事業所935件に対し、サービス提供時間(居宅における準備・居宅からの撤収などの時間を含む)について確認した所、次のような結果となりました。

 20分未満20~40分未満40~60分未満60~90分未満90分以上無回答
通常のサービス0.4%73.8%23.0%1.1%1.7%
清拭14.9%65.7%5.9%0.2%13.4%
部分浴(足浴・手浴・座浴・半身浴など身体の一部分だけをお湯につける入浴法)0.2%8.9%57.5%4.6%0.2%28.6%

サービス提供時間の平均は通常のサービス提供で 50.2 分、清拭で49.0 分、部分浴で49.1 分でした。

どの入浴方法においてもサービス提供時間は40分~60分未満の割合が一番多くなっていますが、清拭と部分浴では60分以上かかる割合は少なくなっています。

このことから訪問入浴介護には1件あたりおおむね1時間前後の時間がかかると言えるでしょう。

介護サービスの質の向上のための取り組み

指定訪問入浴介護事業所935件に対し、訪問入浴介護における介護サービスの質の向上のためにどのようなことに取り組んでいるかをたずねた所、次のような結果でした。

取り組みの内容回答数割合
賃金アップ470 件50.3%
労働環境の改善662件70.8%
長期継続的な雇用の確保569件60.9%
ICT 機器・介護ロボットの活用418件44.7%
キャリアパスの構築519件55.5%
社会的地位の向上299件32.0%
能力向上・資格取得に向けた支援の拡充573件61.3%
福利厚生制度の充実530件56.7%
出産・子育て等を応援する制度の充実541件57.9%
家族の看護・介護を応援する制度の充実414件44.3%
職場内のコミュニケーションの促進や親睦を図る取組(意見交換会、懇親会等)の実施483件51.7%
職場内の人間関係の悩みや不安に対する対策(相談窓口の設置など)592件63.3%
利用者や利用者家族からのハラスメントに対する支援(相談窓口の設置など)542件58.0%
利用者や利用者家族との関係構築に対する支援(相談窓口の設置など)396件42.4%
その他271件29.0%
無回答49件5.2%

アンケートの結果から、指定訪問入浴介護事業所では「賃金アップ」「労働環境の改善」「長期継続的な雇用の確保」といった、スタッフが働きやすい環境構築に取り組んでいるのがわかります。

このことから、指定訪問入浴介護事業所では介護サービスの質を向上させるためには働きやすい環境を整え、質の高い人材の定着を図るのが大切だと考えているのがうかがえる結果となっています。

参考:デベロ老人福祉研究所「令和3年度老人保健健康増進等事業『訪問入浴介護の実態に関する調査研究事業』」

訪問入浴介護の課題

中止

訪問入浴介護が現状抱えている課題にはどのようのものがあるのでしょうか。

デベロ老人福祉研究所が発表した「令和3年度老人保健健康増進等事業『訪問入浴介護の実態に関する調査研究事業』」のアンケート結果を踏まえて3つご紹介します。

当日キャンセル

指定訪問入浴介護事業所935件に対し、2021年6月ににおける当日キャンセルの回数をたずねた所、次のような結果でした。

当日キャンセル回数回答数割合
0 回163件17.4%
1~3 回157件16.8%
4~6 回364件38.9%
7~10 回56件6.0%
10 回以上164件17.5%
無回答31件3.3件

当日キャンセル回数の平均は約6.2回でした。

また当日キャンセルになった理由は次の通りです。

当日キャンセルの理由回答数割合
利用者の容態の変化740件79.1%
介護者、家族の都合475件50.8%
利用者の入浴拒否361件38.6%
その他43件4.6%
無回答163件17.4%

利用者の容態の変化、家族の都合などやむを得ない理由でキャンセルするのがほとんどですが、当日キャンセルが月に10回以上という事業所もあるのがわかります。

当日キャンセルをした場合、料金は発生するのかをたずねてみると次のような結果でした。

当日キャンセル料金の有無回答数割合
67 件7.2%
828件88.6%
無回答40件4.3%

90%近くの指定訪問入浴介護事業所が、当日キャンセルをされてもキャンセル料金を利用者に請求しておらず、当日キャンセルが多ければ多いほど事業所に金銭的な負荷がかかるのが大きな課題となっているのがうかがえます。

人手不足

指定訪問入浴介護事業所935件に対し、2021年6月ににおける事業所全体の従業員の過不足状況についてたずねた所、次のような結果でした。

過不足の状況回答数割合
不足486件52.0%
やや不足264件28.2%
適当155件16.6%
やや過剰7件0.7%
過剰4件0.4%
無回答19件2.0%

一方、2020年4月1日~2021年3月31日までの期間における事業所の採用者数と離職者数についてたずねた所、次のような結果だったのです。

 0人1人2人3人4人5~9人10人以上無回答
採用者数24.5%15.9%10.3%7.0%3.6%5.2%0.7%32.7 %
離職者数26.6 %16.8%11.3%5.7%2.9%3.5%0.4 %32.7%

前の項目でもご紹介したように、指定訪問入浴介護事業所では働きやすい環境作りに取り組んでいるため、離職者数0人の事業所ではその結果が反映されている可能性が高いと言えるでしょう。

しかし、1年間の離職者数が5人以上と回答した事業所が3.9%、採用者数0人と回答した事業所が24.5%あり、退職する人が多い半面新しい人が補充されない人手不足な環境の事業所も一定数あるのが課題だと言えるでしょう。

サービス提供がうまくいかない時がある

指定訪問入浴介護事業所935件に対し、サービス提供時に利用者の状態により苦労した例についてたずねた所、次のような結果でした。

苦労した例回答数割合
認知症(BPSD など)464件49.6%
医療器具などの装着538件57.5%
感染症466件49.8%
体格の問題752件80.4%
複数の疾患を合併している397件42.5%
看取り期510件54.5%
精神障害393件42.0%
その他295件31.6%
無回答67件7.2%

看取り期の人とは医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した人を指します。

医療器具などの装着、感染症、複数の疾患を合併しているなどの場合は医師のサポートがほしいと感じる場合も多いかもしれませんが、訪問入浴介護の人員基準では看護師がいれば問題がないため、その場で相談するのは難しいのが現状でしょう。

参考:デベロ老人福祉研究所「令和3年度老人保健健康増進等事業『訪問入浴介護の実態に関する調査研究事業』」

訪問入浴介護の仕事に向いてる人とは?

車椅子の高齢者とスタッフ

訪問入浴介護の仕事に向いてる人とは、どのような人なのでしょうか。

3つご紹介します。

コミュニケーション能力が高い人

訪問入浴介護は看護職員と介護職員、利用者、家族が適切なコミュニケーションを取ることで質の高いサービスが提供できるため、コミュニケーション能力が高い人が向いていると言えるでしょう。

1時間前後という短い時間内で安全・安心な入浴を実現させるためには、介護職員と介護職員間の連携が取れている必要があります。

また利用者や家族から都度最新の状況をお聴きし、臨機応変に対応する力も訪問入浴介護においては重要です。

健康で体力のある人

訪問入浴介護は浴槽の設置、利用者を抱えて浴槽につからせるなど体力を使う作業が多い仕事です。

そのため、健康や体力に自信がある人は訪問入浴介護の仕事に向いてる人だと言えるでしょう。

チームで仕事をしたい人

訪問入浴介護には必ず複数の人が関わるため、チームで仕事をし課題解決につなげたい人に向いています。

協調性が高く、個人で目標を達成するよりチームで目標を達成する方が仕事にやりがいを感じる人は訪問入浴介護に向いていると言えるでしょう。

まとめ

ベットの高齢者とスタッフ

訪問入浴介護とは介護保険サービスの1つで、介護職員と看護職員が利用者の自宅を訪問して持参した浴槽を用いて行う入浴介護のことです。

人手不足でサービス提供があまりうまくいかない場合もあるなど課題も抱えていますが、そんな状況を変えようと事業所が働きやすい環境作りに前向きに取り組んでいるのもまた事実です。

この記事を読み、訪問入浴介護に向いているかもしれないと感じた人は、ぜひチャレンジしてみてください。

※掲載情報は公開日あるいは2023年09月28日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

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