介護業界で働く人の給料とは?安いと言われる背景から昇給事情まで詳しく解説

更新日:2023年09月28日

公開日:2023年08月22日

給与支払明細書

介護業界で仕事をしているけれど、平均給与や昇給の機会がどのくらいあるのかを知った上で、将来について考えたいという人はいませんか?

この記事では、介護業界で働く人の給料から昇給事情まで詳しく解説します。

介護業界で働く人の給料

通帳を見ながらパソコン作業をする女性

2021年に公益財団法人介護労働安定センターが行った、令和3年度介護労働実態調査における38,759人へのアンケート調査の結果によると、介護業界で働く人の平均の給料は次のような結果でした。

職種平均給与
労働者全体242,273円
訪問介護員224,126円
介護職員222,756円
サービス提供責任者259,904円
生活相談員257,498円
介護支援専門員 264,577円

介護業界では、資格を取得してスキルアップするごとに給料が上がるのがわかります。

参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査結果について」

介護業界の給料が安いと言われる背景

労働条件通知書

介護業界の給料安いと言われる背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

給料が労働条件に見合っていない

介護業界の給料がなぜ安いと言われるのかを調べてみると、給料が労働条件に見合っていない現状があるのがわかります。

令和3年度介護労働実態調査における19,925人へのアンケート調査で労働条件等の悩み、不安、不満について聞いてみた所、次のような結果が出ました。

労働条件等の悩み、不安、不満割合
仕事内容のわりに賃金が低い38.3%
有給休暇が取りにくい25.6%
休憩が取りにくい21.1%
労働時間が不規則である9.3%
労働時間が長い7.8%
不払い残業がある・多い4.7%
仕事中のケガなどへの補償がない3.9%

労働条件と給料のバランスが取れていれば働く人はそれなりに満足するかもしれませんが、労働時間が不規則で休憩が取りにくく、仕事中のケガへの補償もないのであれば、見合った給料をもらえていると感じる人は少なくなるでしょう。

給料が労働環境に見合っていない

介護業界の給料がなぜ安いとされるのかを調べてみると、給料が労働環境に見合っていない現状があるのがわかります。

令和3年度介護労働実態調査における19,925人へのアンケート調査で、職場内で受けたことのある身体的・精神的な攻撃についてたずねた所、次のような結果が出ました。

職場内で受けたことのある身体的・精神的な攻撃の種類割合
脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)8.0%
隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)4.5%
私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)3.7%
業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)3.1%
暴行・傷害(身体的な攻撃)1.6%
業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)1.4%
その他1.1%
無回答85.4%

精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、個の侵害、過大な要求、身体的な攻撃、過小な要求は厚生労働省が定義するパワーハラスメントの6つの類型で、背景に次の3つの要素があればパワーハラスメントに当たります。

・優越的な関係に基づいて行われること
・業務の適正な範囲を超えて行われること
・身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること

アンケートの結果ではそれぞれの数値はあまり大きなものではありませんが、無回答が85.4%もあるため、他にハラスメントが隠れている可能性も否定できません。

一方利用者の家族から受けたセクハラ・暴力などについてたずねた所、次のような結果が出ました。

利用者の家族から受けたセクハラ・暴力などの種類割合
暴言(直接的な言葉の暴力)19.5%
介護保険以外のサービスを求められた14.7%
暴力9.6%
セクハラ(性的嫌がらせ)9.1%
その他0.7%
上記のような経験をしたことはない26.2%
無回答40.6%

暴言と暴力、セクハラの合計は38.2%で無回答の人も40.6%いることから、利用者の家族からパワハラ、セクハラを受ける人が少なくないのも事実です。

これらのことから職場でのパワハラやセクハラがある介護事業所の場合、労働環境が良いとは言えないため、給料が安いと感じる人が出てきてもおかしくはありません。

参考:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメントについて」

人事評価が給料に反映されていない

介護業界の給料がなぜ安いと言われるのかを調べてみると、人事評価が給料に反映されていないという現状があるのがわかります。

令和3年度介護労働実態調査における19,925人へのアンケート調査で、賃金や手当に関する希望をたずねた所、次のような結果が出ました。

賃金や手当に関する希望割合
基本給の引き上げ65.4%
賞与(ボーナス)の導入・引き上げ48.0%
能力や仕事ぶりに応じた評価の実施38.7%
勤務年数に応じた評価の実施31.8%
資格手当の導入・引き上げ26.9%
役職手当の導入・引き上げ14.0%
早朝・夜間勤務手当の導入・引き上げ13.8%
通勤手当の導入・引き上げ11.3%
連絡用の携帯電話の支給・通信費補助9.1%
移動時間の労働時間への算入や移動手当の導入・引き上げ7.0%
その他3.8%
賃金や手当等についての希望はない12.0%
無回答2.2%

給料を上げてほしいという希望はもちろんのこと、能力や勤務年数、資格など何らかの基準に基づいて適正に人事評価をしてほしいという希望が見て取れます。

何に基づいて自分の給料が決められているのかはっきりしない場合、給料が安いと感じる人も出て来るでしょう。

参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査結果について」

介護業界で働く人が給料を上げるには

資格取得

介護業界で働く人が給料上げるには、どのようなことをすればよいのでしょうか。

3つご紹介します。

自分の勤務先の給料の引き上げ要件を知る

介護業界で働く人が給料アップを目指すなら、まずは自分の勤務先の給料の引き上げ要件について知りましょう。

2022年に厚生労働省が発表した「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」で1,283ヵ所の施設・事業所を対象に給与の引き上げ要件についてたずねた所、次のような結果が出ました。

給与の引き上げ要件割合
勤続年数24.4%
経験年数14.3%
資格の保有24.8%
サービス提供責任者3.9%
主任介護支援専門員1.0%
勤務形態(常勤・非常勤)27.9%
雇用形態(正規・非正規)20.2%
勤務時間11.9%
管理職(ユニットリーダー以外)7.1%
管理職以外10.3%
人事評価37.9%
要件にかかわらない6.9%
その他13.8%

人事評価に基づいて給料を引き上げている施設・事業所が37.9%で一番多いですが、勤続年数や資格の保有など意外とさまざまな種類の要件があるため、なるべく具体的に確認するのが望ましいでしょう。

給料の引き上げ要件となる資格を取得する

次に給料の引き上げ要件となる資格を取得しましょう。

前の項目でご紹介した給料の引き上げ要件となる資格はサービス提供責任者、主任介護支援専門員、その他の資格のためそれぞれの資格取得方法を解説します。

サービス提供責任者になるための資格

サービス提供責任者になるには、介護福祉士か、介護福祉士実務者研修の取得が必要です。

介護福祉士の資格を得るためには以下の4つのルートがありますが、どのルートが自分にとって望ましいかは現状取得している資格や実務経験によっても異なるため、詳細は公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページで確認しましょう。

ルートの種類概要
養成施設ルート・介護福祉士養成施設を卒業し筆記試験を受けることで資格が取得できるルート(実技試験は免除)
実務経験ルート・3年以上の実務経験を積み所定の研修を受けた上で筆記試験を受けることで資格が取得できるルート(実技試験は免除)
福祉系高校ルート・福祉系高校を卒業して9ヵ月以上の実務経験を積み、筆記試験を受けることで資格が取得できるルート(実技試験が免除かどうかは要確認)
経済連携協定(EPA)ルート・EPA介護福祉士候補者となって3年以上の実務経験を積み、筆記試験を受けることで資格が取得できるルート(実技試験が免除かどうかは要確認)

最新の試験の日程や出題基準、受験にかかる手数料などもホームページで確認するようにしましょう。

また介護福祉士実務者研修は介護職員初任者研修の上位資格で、国家資格である介護福祉士を受験するために必要な資格の1つです。

スクールの就職支援制度、ハローワークの制度などを活用するとテキスト代以外の受講料が無料になる場合もあるので、利用してみるのもよいでしょう。

受講資格はありませんが、スクールによっては介護職員初任者研修を受けてからでないと受講できない場合があるので注意が必要です。

参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」

主任介護支援専門員

主任介護支援専門員になるには、介護支援専門員更新研修を終了した後、次の4つの要件のうちどれかを満たした上で主任介護⽀援専⾨員研修を受験しなければなりません。

・専任の介護支援専門員として勤務した期間が通算で5年以上
・ケアマネジメントリーダー養成研修修了者、または⽇本ケアマネジメント学会が認定する認定ケアマネージャーで、専任の介護⽀援専⾨員として勤務した期間が通算して3年以上
・主任介護支援専門員に準ずる人として現在地域包括支援センターで勤務している
・介護支援専門員の業務に対して十分な知識と経験を持ち都道府県が適当と認める

主任介護支援専門員研修は各都道府県で行われているので、詳細はホームページで確認してみましょう。

参考:内閣府「主任介護支援専門員の概要」
参考:CMAT「東京都主任介護支援専門員研修」

その他の資格

給料の引き上げ要件には「資格取得」もあるので、その他の資格取得を検討するのもおすすめです。

令和3年度介護労働実態調査における7,559人へのアンケート調査で、今後取得したい資格についてたずねた所、多かったのは次の資格でした。

資格の種類割合
介護支援専門員(ケアマネージャー)36.6%
介護福祉士26.7%
社会福祉士14.9%
主任介護支援専門員13.1%
介護福祉士実務者研修10.0%

前の項目でご紹介した資格ももちろん入っていますが、「介護支援専門員」「社会福祉士」の人気が高いので、給料アップを考えるなら参考にしてみましょう。

参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査結果について」

同じ事業所で長期にわたって勤務する

給料の引き上げ要件には「勤続年数」「経験年数」があるため、給料上げるには1つの事業所で長く働くことも視野に入れるのが重要です。

自分が求める労働条件や労働環境を満たしていて、昇給が見込めるならある程度の年数は同じ事業所で勤務しましょう。

参考:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」

介護業界で働く人の昇給について

硬貨と双葉

介護職として働く人たちの昇給額や、昇給の実施状況はどのようになっているのでしょうか。

2022年に厚生労働省が発表した「賃金引き上げ等の実態に関する調査」の結果を基に3つの観点からご紹介します。

2022年の賃金改定の実施状況

2022年における賃金改定の実施状況を、全企業と「医療・福祉」で比較してみると次のような結果でした。

 1人平均賃金を引き上げた・引き上げる1人平均賃金を引き下げた・引き下げる改定の時期は1月~8月のみ改定の時期は9月~12月のみ改定の時期は1月~8月と9月~12月賃金の改定を実施しない未定
全企業85.7%0.9%74.9%6.7%4.9%6.2%7.3%
医療・福祉95.2%81.0%3.8%10.4%2.0%2.8%

医療・福祉業界では全企業と比較して賃金を引き上げる企業が9.5%多く、賃金の改定について未定の企業が2.8%と少ないのが特徴的です。

これらのことから、2022年介護業界では昇給が積極的に行われたと言えるでしょう。

2022年の賃金改定額

2022年における賃金改定額の平均を、全企業と「医療・福祉」で比較してみると次のような結果でした。

 1人平均賃金の改定額1人平均賃金の改定率
全企業5,534円1.9%
医療・福祉6,403円2.8%

医療・福祉業界では全企業と比較して改定額は869円、改定率は0.9%高いという結果のため、介護職の人の昇給額もそれなりに大きかったと言えるでしょう。

定期昇給・ベースアップの実施状況

2022年の定期昇給・ベースアップの実施状況を全企業と「医療・福祉」で比較してみると次のような結果でした。

 定期昇給とベースアップの区別があるベースアップを行った・行うベースアップを行わなかった・行わないベースダウンを行った・行う定期昇給とベースアップの区別はない
全企業(管理職)60.4%24.6%35.6%0.2%38.1%
全企業(一般職)63.7%29.9%33.8%34.8%
医療・福祉(管理職)45.9%29.9%16.0%52.6%
医療・福祉(一般職)49.9%32.8%17.1%48.6%

医療・福祉業界では全企業と比較すると定期昇給とベースアップを区別していない事業所が多いのが特徴的で、2022年は全企業と比較して管理職では5.3%、一般職では2.9%多くベースアップを行っています。

これらのことから近年医療・福祉業界では定期昇給やベースアップに積極的な事業所が増え、仕事をした人の給料が上がる仕組みが少しずつ整ってきていると言えるでしょう。

参考:厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査:結果の概要」

まとめ

¥マークを持った手 青空

介護業界で働く人の給料は労働条件や労働環境に見合っていないと感じる要素があることから安いと言われがちですが、近年各事業所では定期昇給やベースアップに積極的に取り組む傾向が見られます。

この記事も参考にして、ぜひ自分の事業所の給料が上がる要件を満たし、昇給を目指してみてください。

※掲載情報は公開日あるいは2023年09月28日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。

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