「移乗介助が恐い」「上手くできない」など移乗介助に対する恐怖や挫折は、介護職員の誰しもが味わったことがあるのでないでしょうか。
とはいえ介護の世界において移乗介助を避けて通ることはできません。
そこで訪問介護事業所ティスメイト深江橋のベテランヘルパーの瀬戸さんに、明日から実践できる移乗介助のポイントについて話を伺いましたのでご紹介します。
明日から実践できる移乗介助のポイント1
Q:瀬戸さんにも “移乗介助が不安”という時期はあったのでしょうか?
最初に入社した事業所では口頭だけの説明だったので、緊張で頭に入ってきませんでしたね。
自己流の力任せの介助になってしまっていました。
力任せにしたら利用者からは「痛い」「ふらつくから怖い」と言われて。
Q:不安な時期はどうやって乗り越えたんですか?
先輩ヘルパーからマンツーマンで指導してもらったり、重度の身体障がいの利用者さんには何度も同行訪問してもらいました。「腕だけでなく足腰に力をいれてあげていく」など当時の先輩には手取り足取り教えてもらい、実践を積み重ねてここまでやってきました。
技術に不安を感じたら先輩に聞くのが一番だと思います。
あとは、一人では難しいと思ったら会社や生活相談員に素直に相談して2人対応にしてもらう。
利用者さんにとってみれば料金は倍だけど、サービスの実現を考えると他に手はないので、「すみません。女性だけでは難しいので2人でやらせてもらいます」と。
ここがポイント!
利用者さんの為にも人に頼る!
巻き込んでいく!
明日から実践できる移乗介助のポイント2
Q:「移乗介助において密着は大事」と常々指導をしているという瀬戸さん。 なぜ 密着が大事なのでしょうか?
「上手くできなかったらどうしよう」 「自分の体臭が気になって利用者さんに不快な気持ちをさせまい」 など、利用者さんの事を考えすぎるあまり、体と体をくっつける事を遠慮してしまう介護職員は結構多いのですが、遠慮がちに移乗介助をしているとへっぴり腰になってしまいます。このへっぴり腰というのがふらつきの原因であり、腰痛の元なんです。
密着を嫌がる利用者さんはあまりいませんし、密着すると逆に安心してくれますので、“遠慮せずに自分の体を利用者さんに密着させる” というのを新人介護職員にはぜひ実践してほしいですね。 参考までに、僕は初めての利用者さんにも遠慮せず「すみません!体密着させますね!」と言って密着しています。
ここがポイント!
相手にぴったりと密着し、
安定感と安心感を。
明日から実践できる移乗介助のポイント3
Q:移乗介助で、大切な事はズバリ何でしょうか?
声かけはとっても大事。「今からこっちに移るので、一、二の三で移しますね!」と伝えたら、利用者さんは持っている力で協力してくれるんです。足に力が入る人なら対応してくれますので、少ない力で移乗できますし、体が動かない人でも心構えができます。心構えができると安心して体を任せてくれるんです。
Q:利用者さんにとってみれば、声かけがあれば、今から何をされるか把握できて安心ですよね?
ここがポイント!
声をかける事で利用者さんが安心し、
少ない力で移乗介助ができる。
明日から実践できる移乗介助のポイント4
Q: 「利用者さんが重くて移乗介助がふらつく」と、 悩んでいるヘルパーも多いと良く聞きますが、実際はどうなのでしょうか?
ヘルパーが女性で利用者さんが男性という場合は、
相手の方が重たいという場合がほとんどです。 利用者さんが重たくてふらつくという場合には、重心を下げて足腰に力を入れ全体の力で移乗するのがポイントです。本人さんが足に力が入るようであれば足に力を入れてもらって、ちゃんと足がつくかとかベッドの高さも重要です。ずり落ちた時に持ち上げる時がすごく大変なので。
利用者さんは力が抜けているので、地べたに座り込んでしまったら「どうしよう」ってなります。
ずり落ちた時は、足に力が多少はいる人やったら、足三角座りして体を丸めてもらって、僕らも脇から力をいれて振り子のように揺らします。その勢いで、来た時に立ち上がってもらいます。
振り子の反動を利用してガッと。それが一番負担がなくて楽なんです。
勢いをつけすぎると利用者さんが飛んでしまうのでそこは注意しないといけません。
※ずり落ちた場合の起き上がらせ方を動画でチェックできます!
ここがポイント!
重心を下げて、 全体の力で移乗介助を。
明日から実践できる移乗介助のポイント5
Q:初めての利用者さんに対して心がけている事はありますか?
コミュニケーションを取って、
「相手を知り、自分を知ってもらう」
という事を心がけています。 体を預けるわけですから、何も知らない人に体を預けるのは、利用者さんにとっても恐怖ですよね。
注意点だったり、「今からこうするんですけど、ここを注意した方がいいですか?」とか事細かに聞きます。家族がいればあらかじめ聞いておいたり。
自分でうまく伝えられない方は表情を見るようにしています。表情は絶対でます。痛いとかしんどいとか。 表情が豊かではない方でも痛い時は眉間にしわがよるので、観察が大事です。 痛いまま介助しても利用者さんに嫌われますし。
あと、第一印象も重要なので、相手の目を見て、目線・目の位置を合わせるというのも大切にしています。目線を合わせて話すというのをできていない人は結構います。
ベッドに寝ている利用者さんに上から「こんにちは」という人が多い。 それだとどうしても威圧感が出てしまうんですね。 横を向いて目線が合うぐらいにまで腰を落として利用者さんと話しをしています。
ここがポイント!
移乗介助の第一歩は、
コミュニケーションから。
Q:最後に、移乗介助で悩んでいる介護職員にメッセージをお願いできますか?
「失敗する」っていう気持ちを抱えてしまうとミスを招きますし、利用者さんに不安を与えて悪循環になる。不安なことがあるんやったら先輩ヘルパーに相談した方がいい。 チームプレーなので、個人で抱えずに誰かを頼る。 弱音を吐くのは難しいけど、それが利用者さんのためであり自分のためでもある。
先輩ヘルパーが怖い空気を出していても、気にせずガツガツと聞いていきましょう! 記事監修
瀬戸 一馬(せと かずま)
<保有資格一覧>
・介護職員基礎研修
・大阪府移動支援従業者養成研修(全身性障害課程)
・同行援護従業者養成研修
18歳の時にボランティアでデイサービスの職員を体験し、楽しさを感じたのが始まり。
訪問介護職員として働く母親にデイサービスの体験を伝えたところ介護の資格取得を勧められる。 19歳の時に介護資格を取得し、知人の紹介で訪問介護事業所へ就職。
訪問介護の1対1の楽しさを感じ、以降10年訪問介護を続けている。
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※掲載情報は公開日あるいは2020年06月13日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。