更新日:2023年04月11日
公開日:2020年06月22日
高齢者にとって食事は楽しみの一つであり健康を維持するための欠かせない役割をもっています。
しかし、年齢を重ねて介護が必要になってしまうと普通の食事では喉に詰まらせてしまったり、肺炎を引き起こすなど危険なことが増えるため「介護食」が必要となります。
そこで本コラムでは介護食を詳しく知らない方のために介護食の種類や調理のポイントについて解説していきます。
介護現場や介護をする方々にとっては欠かせない内容となっているのでぜひ参考にしてみてください。
はじめに、介護食とは?というところからご紹介していきます。
人は高齢になるにつれて噛む力が衰えるうえ、食道が狭まり飲み込む力が低下してしまうことにより食べ物を喉に詰まらせるなどの危険が増えます。
また、「噛む力」と「飲み込む力」2つの機能に問題があることで、口から食べることができなくなったり、気管や肺に食べ物が入って誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうおそれもあります。
この2つの機能に影響があった際に高齢者が食べやすいよう調理を考えたり、食べ物の形を変えて作る食事が「介護食」と言われています。
介護食は高齢者がどのくらいの噛む力があるのか、どれくらいなら飲み込めるかなどしっかり確認したうえで調理していくことがポイントとなります。
もし顎の力が残っているにも関わらず柔らかいものを食べてしまっていると、残っていた力もなくなったり、逆に顎の力が弱いのに硬い物を食べて飲み込みきれず、喉につかえてしまうことも少なくないでしょう。
そのため、高齢者にとっての食事時間は楽しい反面、危険を伴う時間でもあります。
介護食は高齢者すべての人が同じものありません。
高齢者の体調1人1人に合わせた硬さや形に細かく分かれているのです。
ではここから、介護食の種類について見ていきましょう。
介護食は食べ物の硬さや形状を工夫し、歯や顎の状態や、飲み込みの状態に応じて種類が分かれています。
どんな種類があるのか1つずつ説明していきます。
■通常食 (普通食)
噛む力や飲み込む力の低下が少なく、病気などでの食事制限もない普通に食事ができる高齢者を対象とした食事。
■刻み食
噛む力が低下した高齢者が噛みやすいように食べ物を小さく刻んだ食事。
筋力が低下して大きく口を開けられない高齢者にも向いています。
噛む力が低下していても飲み込む力がある高齢者が対象となります。
■ソフト食 (柔らか食)
食材を舌でつぶせるくらいまで煮込んだりゆでたりして、やわらかく調理した食事。
噛む力や飲み込む力が低下した高齢者や、消化不良を起こしやすい高齢者に適しています。
■ミキサー食
食品をミキサーにかけて液状にした食事。
噛む力が無い方や飲み込みに障害のある高齢者に向いています。
誤嚥防止のため、場合によってはとろみをつけてることも。
■嚥下食 (ゼリー食)
食べ物をミキサーにかけ、飲みやすさを優先してゼラチンや片栗粉を使用したペースト状やゼリー状の食事。
飲み込む力が低下し、誤嚥が心配な高齢者に向いています。
■流動食
固形物を除去して消化しやすさを重視したスープ状の食事。
基本的に具なしの野菜スープや重湯、牛乳、などを利用します。
刺激が少なく味が淡泊であろ、口当たりがよいことが特徴で、胃腸の手術をした高齢者や消化する力が弱っている高齢者に向いています。
口からの摂取ができない方には、チューブを使って栄養管理していく方法も。
誤嚥などのトラブルは基本的にありませんが栄養素が少ないのが難点です。
介護食の種類は上記のように6つの種類で細かく分かれ、高齢者それぞれに合った食事を選ぶことが重要ということがが分かりました。
では次に、食べやすさの目安となる介護食の区分について見ていきましょう。
介護食は日本介護食品協議会で制定された、ユニバーサルデザインフード(UDF)により4つに区分けされています。
■区分1
普通のご飯が容易に噛めるレベル。硬いものや大きい食品はやや食べづらく感じます。
普通に飲み込める人向け。
■区分2
木綿豆腐が歯ぐきで潰せるレベル。
硬いもの、大きいものは食べづらく、場合によっては飲み込みにくいことがある。
■区分3
絹ごし豆腐が舌でつぶせるレベル。
細かくてやわらかければ食べられますが、水やお茶が飲み込みにくいことがある。
■区分4
ペースト状のおかゆなど、噛まなくて良いレベル。
固形物は小さくても食べづらく、水やお茶が飲み込みづらい。
「ユニバーサルデザインフード」は高齢者に限らず歯の治療中などで固いものが噛めない人、食べ物を飲みこむ力が弱い人でも多くの人が利用できるように考えられた食品のことです。
【引用:日本介護食品協議会 ユニバーサルデザインフード(UDF)】
ここから、介護食の種類と区分をふまえたうえで実際に食事を作っていくときのポイントについて解説していきます。
介護食を作る際には、調理過程での工夫が必要です。
では、どのような点に気をつけて調理すれば良いのか見ていきましょう。
■高齢者に不足しやすい栄養素のある食材を多く使う
高齢者は食事が偏り栄養不足になやすいので、献立を考える際はバランスを考えながら不足しやすい栄養素を豊富に含む食材を多く取り入れるようにしましょう。
特に不足しやすいとあれるビタミン・タンパク質・カルシウム・食物繊維を多く含む主な食品は以下の通りです。
【タンパク質】
肉・魚・卵・豆類など
【カルシウム】
乳製品・豆腐・小魚など
【食物繊維】
ごぼう・いも類・海藻類など
【ビタミン】
レバー・緑黄色野菜・果物・しじみなど
■塩分を控えめにする
人は年を重ねるごとに血圧が高くなることが多いため、塩分の摂りすぎには十分注意しましょう。
薄口の味付けにしたり、少し薄いかな?と感じるくらいに塩分を控えめにすることが大事です。
しかし、味が薄すぎると満足感が得られないこともあるため、その方の体調や病気に合わせて味付けをしていきましょう。
■刻み食に関して
ただ刻むだけでは細かい食べ物が口全体に広がるため飲み込むことが難しくなってしまい、誤嚥を引き起こしてしまう可能性があります。
また、細かい食べ物が歯の隙間に挟まることで虫歯にもなりやすいでしょう。。
そのため、とろみ剤で作ったあんをかけるなどして口の中でバラバラにならないよう工夫しましょう。
■ソフト食 (柔らか食)に関して
繊維の少ないやわらかい食材を選びましょう。
また、蒸せることができる食材は蒸します。
なぜならば、蒸すと食材は柔らかくなり、茹でるよりも栄養素を逃がすことが少ないからです。
また、肉は加熱すると固くなるため、焼く・揚げるのであれば蒸してからにしましょう。
ミキサーで一度つぶした食材は卵や片栗粉、油などの「つなぎ」を混ぜ合わせることで、舌でつぶせる程度のほどよい柔らかさにできます。
卵をつなぎとして使うことで高齢者に足りない栄養素の一つであるタンパク質も摂取することができるでしょう。
■ミキサー食に関して
ミキサー食を作る際は、栄養素を沢山含んだほうれん草のような葉物、芋などのでんぷん量が多い食材、繊維が少ない野菜、脂肪分が多く含まれている魚や肉を使用します。
普通の食事をミキサーにかけてスープ状にするため、どうしても見た目が悪くなり食欲が湧かなくなってしまいます。それを防ぐためにも、見た目に配慮することはとても大切です。
対応としては、全部の食材を一緒にミキサーにかけずに品目や色物ごとにしましょう。
また、水分を多く含む状態になるため、とろみ剤や片栗粉などを使って飲み込みやすくします。
■流動食に関して
食べ物をミキサーにかけた後、固形物が残っているようならザルなどでこして排除します。
お粥は上澄み液の重湯で対応し、牛乳や豆乳、脱脂粉乳などの乳製品を加えることでエネルギーやたんぱく質が補えます。
状態を見ながら食事にたんぱく質の量を増やしたいのであれば白身魚や卵、豆腐などを加えます。
水分量が多いため、食事をしながらの水分補給が可能です。
調理に関して細かく説明してきましたが、たとえ食事を食べようとしない利用者がいるのであればまずは食事の形態について確認してみてください。
実際に好き嫌いで食べないという理由でなく、もしかしたら硬くて食べてないからという理由からかもしれません。
また、食事をきちんと摂らないと栄養不足になってしまったり、栄養不足で免疫力が下がるため病気にかかりやすくなることも。
そうならないためにも、利用者の食事シーンをチェックしたり食事形態を見直していくことが必要となるでしょう。
食事介助に関してはこちらのコラムもご参考ください。
■「食事介助のポイントと注意点-安心・美味しい・楽しい食事を-」
介護食について解説してきました。
今回は高齢者に特化した内容となっていますが、障害のある方や介護が必要な方にも活用できるポイントもいくつか載っていますのでぜひ参考にしていただければと思います。
利用者にどんな食べ物の状態が合っているのかわからない場合は、かかりつけの医師に相談すれば答えてくれます。また、食事は歯や義歯の状態と密接に関わるため、硬さなどで悩んでいる方は歯科医に相談してみるのも良いでしょう。
介護食の作り方に関してはインターネットで検索すると詳しいレシピも出てきますのでぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
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