更新日:2023年04月11日
公開日:2020年07月29日
高齢者の日常生活で、最も起こりやすい事故「転倒」。
本コラムでは、高齢者の転倒について
・なぜ危険なのか
・どのような場面で起こりやすいのか
・予防するためにはどうすればいいのか
といった内容をお伝えしていきます。
介護者の方はぜひ参考にしてみてください。
まずは高齢者の転倒がなぜ危険なのかをお伝えします。
転倒の危険性は、単に転んで痛みを感じることだけではありません。
日常生活で起こる転倒・転落は軽いケガで済む場合もあれば、骨折や頭部外傷といった大きな事故につながる場合もあります。
それによって介護が必要な状態になってしまったり、最悪の場合は死に至るケースもあるのです。
厚生労働省「国民生活基礎調査(平成28年)」の発表によると、高齢者の介護が必要となる原因の第4位が「骨折・転倒」です。
認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱に次ぐ要因で、事故のなかでは一番大きな原因となっています。
高齢者が転倒すると、ただ転ぶだけではなく大きなケガにつながる可能性が高く、最も多い症状は骨折です。
転倒でケガや骨折をすると、治るまで体を動かす機会が減ってしまいます。
体を動かさない状態が続くことによって、どんどん筋力や体力が衰えていくのです。そこから他の病気を併発したり、持病が悪化することもあります。
そして身体的な面だけでなく精神的なダメージも受ける場合があります。
「また転んでしまったらどうしよう」という恐怖心、自信喪失から家に閉じこもりがちになり、活動量が減ることで身体機能が低下します。
高齢者にとって一度衰えた筋力や体力を取り戻すことは容易ではありません。リハビリにも根気が必要になります。
体を動かさない時間が長くなるほど、そのまま寝たきりになる可能性が高くなってしまうでしょう。
高齢者の転倒の原因を、外的要因と内的要因に分けてご説明します。
■外的要因
外的要因とは外部に求められる原因であり、転倒の原因が生活環境などにある場合を指します。
例えば、段差につまづいたり、お風呂場ですべったりといったようなことです。
外的要因は内的要因よりも改善することが容易です。
生活環境や居住空間に工夫を加えることで、高齢者の転倒を大幅に防ぐことができます。
転倒しやすい外的要因をしっかりと取り除くことが転倒予防には非常に効果的です。
■内的要因
内的要因は外的要因とは逆に、内部、つまり高齢者自身に何らかの転倒要因があるということです。
例えば
・筋力の低下
・心肺機能の低下
・歩行障害
・視力・聴力の低下
といったことが挙げられます。
さらには
・病気
・服薬(薬の副作用)
によっても転倒する場合があります。
持病による体調不良、また薬の副作用で起こる倦怠感や眠気、ふらつきなどが転倒につながります。
以下は、高齢者が転倒しやすい場所です。
◆段差がある場所
階段などの大きな段差は、足を踏み外すことにより転倒・転落します。
また敷居などの小さな段差につまずいて転倒してしまうことも。
小さな段差での転倒は、気づかない、あるいは忘れていることによって起こります。
屋外では点字ブロックなどにも注意が必要です。
◆片付いていない場所
物が散らかっている場所は注意が必要です。
床に放置した新聞や雑誌などで足が滑って転んだり、電気コードに引っかかったりということが起こります。
居住空間は常に整理整頓、なるべく床に物がない状態を作ることが大切です。
◆暗い場所
室内、屋外を問わず、暗い場所は転倒する危険性があります。
高齢者の場合、加齢によって視力機能は落ちていると考えられます。
暗い場所では周りの物や足もとが見えにくく、視野も狭まるため、物にぶつかったりつまづいて転倒するリスクが高くなります。
◆濡れている場所
地面が濡れている場所はすべりやすいため用心しなければいけません。
室内では台所やお風呂などの水場、屋外では雨の日のマンホールやタイルの上を歩く場合にすべって転倒しやすくなるので特に注意しましょう。
高齢者の転倒は対策をしっかりすることで回避できる可能性が高まります。
具体的にどのような点に気をつけるべきか、すぐに取りかかれる3つの転倒防止策をご紹介します。
まずは環境整備を行いましょう。
以下はすぐに対応できる内容ですので、さっそくやってみてください。
・明るい照明に変える
・床や階段に物は置かない
・小さな段差を減らす(段差予防のシートなど)
・電気コードはまとめる、カバーをつける
・家具が動かないように固定する
・バスマット、玄関マットを変える
・靴、スリッパを変える
上記は主に居室空間でできる転倒防止策です。
実は、高齢者の転倒事故が最も多い場所は居室です。
慣れた環境ではつい油断しがちになります。日頃から整理整頓、そして危険な箇所がないかの確認をしておきましょう。
最近ではケーブルカバーや滑り止めシート、シューズ、靴下などさまざまな転倒防止グッズが売られていますので、ぜひそれらも活用してください。
また少し大掛かりになるかもしれませんが、可能であれば介護リフォームを考えてみてもよいかもしれません。手すりをつける、段差をなくすだけでも転倒の危険度はかなり下がります。
できるだけ、自宅周りの環境整備をして転倒防止に努めましょう。
現在の体調、病状、心の状態などをしっかりと把握しておくことが非常に重要です。
多くの高齢者は、体力や筋力が低下しています。
加えて、持病を持っていたり認知症を患っていることもあります。
先述したように、高齢者の心身の状態は転倒の内的要因となります。
健康状態や服用している薬、また日々の行動なども細かく把握しておくことで、内的要因による転倒を予防できる可能性があります。
まずは高齢者の心身の状態を理解したうえで、できるサポートを考えていきましょう。
体力をつけること、身体機能を維持するための運動は、ご本人にぜひ頑張ってもらわなければいけません。
転倒しないためには
・身体のバランスを保つ
・立ったり座ったりする筋力を維持する
この2点を強化できる運動を、習慣的に行うことが効果的です。
具体的には、下肢の筋肉や体幹の強化です。
椅子に座った姿勢でのもも上げや、かかと立ち・つまさき立ちなどの軽い運動から始めてみてください。
とはいえ、ケガをしては元も子もありません。絶対に無理のない範囲で行います。
継続するためにも楽しく気軽にできる運動がよいでしょう。
動作は動画で覚えるのがわかりやすくておすすめです。
YouTubeなどの動画サイトに、転倒防止の体操や運動がたくさんアップされていますのでぜひ参考にしてみてください。
ここまでにご紹介した転倒防止策の他にも、介護施設において職員が特に注意すべきポイントがありますのでご紹介します。
公益財団法人 介護労働安定センターの「介護サービスの利用に係る 事故の防止に関する調査研究事業」報告書によると、転倒・転落・滑落は介護施設内で起こる事故の65%を占めています。
そしてこれらの事故は、見守り中や目を離した隙、他の利用者の介助中など、介護者の観察が手薄になったときに起こっていることもわかっています。反対に介助中に発生する事故は比較的少ないと報告されています。
日々の介護業務において、以下の点を意識してください。
■管理体制・連携体制の見直し・強化
見守り中や他の利用者へ介助中、目を離した隙に転倒するケースが多く見られることから、転倒事故防止には、管理体制や連携体制の見直し・強化が必須となるでしょう。
■利用者から日常生活のヒアリング
施設での生活で、危険だと感じる場面がないかをヒアリングしてみてください。
ヒアリング内容は職員全体で情報共有し、改善できることであればすぐに改善していきましょう。
■福祉用具、設備などの安全性を確認
定期的に施設内に危険な場所がないか、また備品や福祉用具は安全に使用できるかをチェックしましょう。
チェックリストを作成して全体に共有。事故につながる危険性の高い設備や用具は交換するなどの対応をしてください。
職員全員で気づくことができる仕組みを作りましょう。
■介助方法の改善、教育の徹底
歩行時、移乗時など介助中に起こりうる転倒事故を想定し、シミュレーションする機会を設けるなど、職員全体に転倒事故の危険性と対応マニュアルを周知。
誰もが安全な方法で介助できるように徹底しましょう。
高齢者の転倒の原因と転倒防止策をご紹介しました。
■特に注意が必要な場所
・段差がある場所
・片付いていない場所
・暗い場所
・濡れている場所
■転倒防止策
・事故の原因となるものを減らす
・高齢者の心身の状態を把握する
・転倒予防の運動をする
これらの対策をとることで事故はかなり防げますが、それでも100%予防できるわけではありません。
もしも事故が起こってしまった場合には、応急処置や警察、病院への連絡などが必要となるでしょう。適切な対応がとれるよう、高齢者の転倒・転落事故に関する情報収集をしておきましょう。
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