更新日:2023年04月13日
公開日:2020年11月02日
早速ですが皆さん、「ICF(国際生活機能分類)」という言葉を聞いたことがありますか?
介護福祉士やケアマネージャーの方は、資格試験の勉強などですでにご存知かもしれません。
このICFについて、
「説明を聞いてもいまいちよくわからない」
「結局介護にどう活かせばいいかわからない」
と思われている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回はICFとはつまり何なのか、ICFを現場にどう活かしていくのかについてお伝えしていきます。
ICFは2001年、WHO(世界保健機構)によって提唱されました。
International Classification of Functioning, Disability and Healthの略で、世界共通の生活機能分類です。
と聞いても、「生活機能分類」という言葉にそもそも馴染みがなくてよくわかりませんね。
どういうものかというと、つまりICFとは「人の健康状態を取り巻くさまざまな事柄を体系立てて分類したもの」です。
人の健康状態というのは、例えば病気や怪我などのことです。
それらを取り巻くさまざまな事柄というのは、心身の状態、生活環境、人間関係など生活するうえでの全般のことといえるでしょう。
人の健康状態に関する事柄を体系立てて分類することで、
人の健康について考えるときに
一部ではなく全体を見よう
さまざまな視点から考えていこう
というねらいがあります。
“生きることの全体像”を示す“共通言語”
という考えに基づいて、このICF(国際生活機能分類)が提唱されました。
ICFは次のような目的で用いられています。
■ICFの目的
また、ICFは病気や怪我を抱える特定の人々に限らず「全ての人に関する分類」とされていて、医療や福祉分野だけでなく、保険、社会保障、労働、教育、経済、社会政策、立法、環境整備のような領域でも用いられています。
<さまざまな用途に用いられているICF>
■統計ツール
データ収集•記録(例:人口統計、実態調査、管理情報システム)
■研究ツール
結果の測定、QOLや環境因子の測定
■臨床ツール
ニーズの評価、特定の健康状態における治療法とその対応、職業評価、リハビリテーション上の評価、結果の評価
■社会政策ツール
社会保障計画、補償制度、政策の立案と実施
■教育ツール
カリキュラムの立案、市民啓発ソーシャルアクション
人の健康状態および、生活全般を体系立てて分類したものがICFとお伝えしました。
ではICFがどのように分類されているのかを見ていきましょう。
ICF は、「生活機能」と、それに影響する「背景因子」で構成されています。
生活機能は「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つに分かれます。
背景因子は「環境因子」「個人因子」です。
ICFに健康状態を加えた
・健康状態
・心身機能・身体構造
・活動
・参加
・環境因子
・個人因子
これら計6つの項目が「生活機能モデル」となります。(上図参照)
ICFはこのように生活機能モデルとして体系立ててとらえて考えることに意味があります。
単に分類として各項目をバラバラに見ることに意味はありません。
特に大切なのは、図の矢印のように、個々の要因はすべて相互作用があり影響し合っていると考えることです。
また、生活機能の3項目「心身機能・身体構造」「活動」「参加」については、健康状態や背景因子の影響(プラス・マイナス面)を受けることを忘れず、全体を見て考えることが大切です。
2001年にICFが提唱される以前はICIDH(国際障害分類)が共通言語とされていました。
ICIDHは病気や疾患だけでなく生活や人生も見ることを提唱し「機能・形態障害があっても能力障害を解決することができるし、仮に能力障害が残っても社会的不利を解決することができる」という柔軟な考え方ができるものでしたが、いくつか問題点もありました。
◆ICIDHの問題点
・疾患の帰結(結果)に関する分類で一方向になっている
・マイナス面が中心
・環境が考慮されていない
ICIDHはICFの前身となる考え方。
ICIDHで生じたいくつかの問題点を踏まえて改善されたものがICFになります。
ではここからは、先ほどお伝えしたICFの生活機能モデルを構成するそれぞれの項目について、一つずつ詳しく紹介していきます。
生活機能は、ICFの中心ともいえる概念です。
人が生きるうえでの「生命(生物)」「生活(個人)」「人生(社会)」という3つのレベルに応じて、
・心身機能・身体構造(生命・生物レベル)
・活動(生活・個人レベル)
・参加(人生・社会レベル)
と定義されています。
生命の維持に直接関係する身体・精神の機能や構造です。
心身機能は、たとえば手足の動きや精神の働き、五感や内臓の働きなどのこと。
身体構造は、手足や心臓(の一部)など体の部分のことを指します。
活動はあらゆる生活行為を含みます。
生活上の目的をもつ動作、具体的な行為のことです。
例えば、歩行や睡眠などの日常行為だけでなく、家事や仕事、趣味などを行うために必要な行為のすべてです。
また活動は「できる活動」と「している活動」の2つに分け、能力と実際の行動を明確に区別して考えます。
この両者の差が生じる原因を明らかにして潜在能力を引き出していくことが、活動向上につながります。
家庭や社会におけるさまざまな活動に関与し、そこで役割を果たすことです。
参加には幅広い範囲のものが含まれます。
社会参加だけではなく、
・働くこと
・家庭内・職場・地域組織のなかで役割を果たすこと
・趣味やスポーツなどのコミュニティへの参加
・文化的・政治的・宗教的な集まりへの参加
など多岐に渡ります。
背景因子は、生活機能にプラスやマイナスの大きな影響を与える要因となるものです。
環境因子と個人因子の2つからなります。
ICFにこの背景因子が導入されたことが、先述したICIDH(ICFの前身)との大きな違いといえます。
環境因子は、
・住居やインフラなどの住環境
・家族や友人、仕事仲間といった人的環境
・世の中の反応や人の目
・医療や介護サービスや教育制度
など広い範囲が環境因子となります。
その人固有の特徴をいいます。
非常に幅広く、年齢、性別、民族、学歴や職歴、価値観、ライフスタイルなどの多数の例が挙げられています。
個人因子は個性というものに非常に近いものです。
生きていくうえで「個性の尊重」を重んじる現代において、非常に大きな影響を与える要因となります。
最後に、このICFを介護現場でどのように取り入れていくかについてです。
専門用語が多く難しく考えてしまいがちですが、要は病気や身体機能の障害など一部だけにフォーカスを当てるのではなく、その人の思いや環境など生活すべてを見て介護をすることが、ICFを取り入れた介護になります。
健康的な生活を送るには心身機能だけを見ても環境だけを見ても、個人の思いを重視するだけでもうまくいきません。
環境因子や個人因子等の視点を加えて、障害があっても「こうすれば出来る」というプラスの視点を持ち、視野を広げて総合的に理解することが大切です。
介護士は環境因子の専門家といえます。
そのため、そうしても環境因子の部分だけを見て考えてしまうことがあります。
自身の専門領域からの視点だけで物事を捉えてしまうと、当事者の思いをないがしろにしてしまったり、その人の可能性を潰してしまうことにもなりかねません。
当事者は、自身の「活動」「参加」そして「個人因子」の影響について誰よりもよく知っています。その点でご本人やご家族は生活・人生の専門家ともいえます。
したがって当事者の話を傾聴することも、とても大切になります。
またICFはチームケアにも欠かせないものといえるでしょう。
医療関係者、本人、家族、介護者全員がICFという同じ基準で、連携してケアをすることで、生活機能の向上を図り、QOLを上げていくことが可能になります。
世界基準の共通言語ICF(国際生活機能分類)について解説しました。
◆ポイント
・その人の生活すべてを見て介護をする
・マイナスだけではなく、プラスの視点を持つ
・視野を広げて総合的に理解すること
・チームケアに活かす
ケアの方向に迷った時の方向性を導くツールとしてぜひ活用していただけたらと思います。
参考文献:生活機能分類の普及に向けて|厚生労働省
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