ご自身の力で衣服の脱ぎ着するのが難しい方の着替えを介助することを着脱介助、または更衣介助といいます。
利用者の身体の清潔を保つために、衣服の着替えは欠かせません。
気持ちをリフレッシュするためにもとても大切です。
しかし麻痺や寝たきりの利用者の方の着脱介助は難しく、コツをつかまなければなかなかスムーズにできません。やり方を間違えると、利用者の方に痛みやストレスを与えてしまうことになります。
スムーズに介助できるように正しい手順を理解していきましょう。
着脱介助(更衣介助)に必要な準備
着脱介助をする場合には、着替えの他に、必要に応じて下着や靴下を用意します。
また着替えで裸になる場合には、上から掛けられるようにバスタオルやブランケットも準備しておきましょう。
着脱介助(更衣介助)をするときの注意点
着脱介助(更衣介助)をする前に、下記の5つの注意点を頭に入れておきましょう。 ◆部屋の温度調整をする
服を着替える際には肌が露出して身体が冷えていきますので、必ず室内の温度調整をしてから着替えに入ります。室温23~25℃前後の暑くも寒くもない適温に保ちましょう。 ◆転倒・転落に注意する
着替えの際、利用者に椅子やベッドに腰掛けてもらいますが、バランスがうまくとれずにふらついたり、身体を動かした拍子に転倒してしまう可能性もありますので、十分に注意しましょう。ふらつきがひどい方の場合には二人体制での介助が必要となるでしょう。 ◆皮膚の様子も観察する
着脱介助の際には、あわせて皮膚の状態をチェックしましょう。皮膚の乾燥、傷やアザがないか、臀部の褥瘡の状態など、しっかりと観察してください。早期発見・早期治療で重症化を予防できます。このようにして日々の変化や異常に気づくことが大切です。◆マヒや拘縮がある部位に触れる際は慎重に
身体にマヒや拘縮(関節の動きが悪くなっている状態)がある方の介助は、その部分を強くつかんだり引っ張ったりすることのないように細心の注意をはらいましょう。スムーズに動かせない分、どうしてもやりづらさはありますが、無理に力を加えるて痛めてしまうようなことがあってはいけません。やさしく支えるように持ち、ゆっくり丁寧に介助するよう心がけてください。◆できない部分だけサポートする
寝たきりの方など全介助の場合以外は、できることは利用者ご自身でやっていただき、できない部分だけ介助者がサポートするようにしましょう。 その理由は、利用者の方の身体機能を維持するためです。可能な限り自立した生活を送るために、動かせる部分は動かして機能維持・回復に努めましょう。 また利用者のプライバシーや尊厳を守るためでもあります。なかには着替えの際に体を見られたり触れられることを恥ずかしいと感じる方もいらっしゃいます。同性のスタッフが最小限の介助をするなど、プライバシーに配慮することも必要です。 ただし気をつけなければいけないのは、「この人は介助なしでできる」という決めつけです。利用者の方の調子によっては、自分でできる日もあればできない日もあるかもしれません。コミュニケーションをとりながら、日々の変化に応じて適切にサポートしてください。 スムーズに着脱介助(更衣介助)を行うコツ
スムーズに着脱介助をするためのコツは以下の3つです。 コツ1|着脱しやすい衣服を選ぶ
着脱しやすい衣服を選ぶことを心がけましょう。伸縮性があってゆったりとしているものがおすすめです。 ご本人のお気に入りの服を着ていただくのが一番よいのですが、着脱が難しいという場合には、介護用の着脱しやすいデザインの衣服もありますので、そちらを検討してみてもよいでしょう。 コツ2|着患脱健(ちゃっかんだっけん)
着患脱健とは、「患側(かんそく)から着て、健側(けんそく)から脱ぐ」ことです。患側は麻痺(マヒ)などの障害がある体側のことで、マヒ側ともいいます。正常な体側は健側(非マヒ側)といいます。 片マヒがある方の更衣介助は着患脱健が基本です。服を着るときは患側から行い、脱ぐときは健側から行うことで、無理なく衣服の着脱ができます。 コツ3|必ず声かけをする
全介助の人はもちろん一部介助の利用者の方にも、「少し膝を曲げますね」「袖をたぐり寄せて腕を通していきましょう」など、アクションごとに何をするのか声かけをして誘導してあげるとよいでしょう。声かけなしに利用者の方の補助をしたり身体を動かしたりすると、不安感を与えてしまう場合もあります。安全に行うためにも、声かけしながら進めていきましょう。 着脱介助の手順
では着脱介助の手順を見ていきましょう。
・前開きの上着
・かぶりの上着
・ズボン
・寝たきりの場合
に分けて、イラストを交えながらそれぞれの着脱のポイントについてお伝えしていきます。
◆前開きの上着編
\ポイント/
着患脱健の原則を守りましょう。
片腕に麻痺がある方は、健側の腕を通すとき・抜くときに介助が必要となることが多く、特に手助けが必要となる部分です。
脱衣
1.椅子(ベッド)に座ってもらう
椅子やベッドに安定した姿勢で座ってもらいます。
足がきちんと床につく高さで座りましょう。
介助者は利用者の患側に立ちます。
2.ボタンを外す
ボタンを外していきます。
片手でも可能な方にはご自身でやってもらうとよいでしょう。
難しければ介助します。
3.健側の肩を外す
健側の肩から上着を外していきます。
外したら、袖から腕を抜きやすくするために肘を少し後ろに引いてもらいましょう。
4.健側の腕を抜く
健側の腕を袖から抜きます。
肘が出てしまえば、そこからは楽に手を引き抜けるでしょう。
5.患側の肩を外す
患側の肩から上着を外します。
可能であれば、健側の腕を使ってご自身でやってもらうとよいでしょう。
6.患側の腕を抜く
続いて患側の腕を袖から抜きます。
こちらもできるようであれば健側の腕を使ってご自身でやっていただきましょう。
7.脱衣完了
両腕が袖から抜けたら脱衣完了です!
着衣
1.椅子(ベッド)に座ってもらう
椅子やベッドに安定した姿勢で座ってもらいます。
足がきちんと床につく高さで座りましょう。
介助者は患側に立ちます。
上着のボタンは外しておきます。
2.患側の腕を通す
患側の腕を袖に通して肩まで引き上げます。
あらかじめ袖をたくし上げておくと、すんなりと腕を通しやすいです。
可能であれば、健側の腕を使ってご自身でやっていただきましょう。
3.上着を羽織る
衣服を背中側から健側の腕まで回し、肩に羽織ります。
拘縮などがあれば非常にやりづらい動作になりますので、大変そうであればサポートしましょう。
4.健側の腕を通す
健側の手を袖に通していきます。
介助者が袖をたくし上げて通しやすいようにしてあげるとよいでしょう。
5.ボタンをかける
最後にボタンを留めていきます。
かけ違いに注意しましょう。
自力でできない場合には介助者が行います。
6.着衣完了
シワなどを伸ばし整えて着衣完了です!
前開きの上着編の手順動画
◆かぶりの上着編
\ポイント/
かぶりの上着は、肩関節の動きに不自由がなければボタン留めの必要がない分、着脱が楽です。ただし頭を通すときが少し大変です。
頭を通しやすいように伸縮性のある生地で少し大きめのサイズを選ぶと着脱しやすいでしょう。
着衣は患側→頭→健側の順、脱衣は健側→頭→患側の順で通します。
脱衣
1.椅子(ベッド)に座ってもらう
椅子やベッドに安定した姿勢で座ってもらいます。
足がきちんと床につく高さで座りましょう。
介助者は患側に立ちます。
2.健側の腕を抜く
上着の前身頃と後身頃をたくし上げ、健側の腕を袖から抜きます。
3.頭を上着から出す
顔に引っかからないように気をつけながら、上着から頭を抜きます。
4.患側の腕を抜く
患側の腕を袖から抜きます。
健側の手で袖を持ち、引っ張るようにして抜いてもらうとよいでしょう。
5.脱衣完了
健側→頭→患側の順に、全て抜けたら脱衣完了です!
着衣
1.椅子(ベッド)に座ってもらう
椅子やベッドに安定した姿勢で座ってもらいます。
足がきちんと床につく高さで座りましょう。
介助者は患側に立ちます。
2.患側の腕に通す
袖をたくし上げておくと通すときに楽です。
たくし上げた袖を患側の腕に通します。
3.袖を引き上げる
そのまま袖を患側の肩まで引き上げていきます。
4.首を通す
顔に引っかからないように気をつけながら、上着を頭から被ってもらい首を通します。
このとき、利用者の方には健側で襟元を掴んで固定していただきます。
5.健側の腕を通す
上着から頭を出せたら、あとはご自身で健側を袖に通してもらいましょう。
6.着衣完了
身頃を下まで下ろし、整えて着衣完了です!
かぶりの上着編の手順動画
◆ズボン編
\ポイント/
座って行うズボンの着脱は重心が移動してバランスを崩しやすくなるため、転倒に注意してください。利用者の方にベッドの柵などを持ってもらうと安全です。
寝た状態の方がやりやすい場合には寝ながらでも構いません。
(寝ながらの着脱方法は後述しています。)
脱衣
1.椅子(ベッド)に座ってもらう
椅子やベッドに安定した姿勢で座ってもらいます。
足がきちんと床につく高さで座りましょう。
介助者は患側に立ちます。
2.膝近くまでズボンを下ろす
ズボンのウエスト部分に手をかけ下ろしていきます。
左右にお尻を浮かせてもらいながら、膝のあたりまでズボンをずり下げます。
もし立位が可能であれば、一度立っていただいて膝のあたりまでズボンを下ろしていただくとスムーズです。
3.健側の足を抜く
健側のズボンを足元まで下ろし、健側を先にズボンから引き抜きます。
前屈みになることが可能な利用者の方は、ご自身でやっていただきましょう。
4.患側の足を抜く
患側の足をズボンから引き抜きましょう。
利用者の方には健側の手で患側の足を少し持ち上げてもらうとよいでしょう。
5.脱衣完了
両足が抜けたら脱衣完了です!
着衣
1.椅子に(ベッド)に座ってもらう
椅子やベッドに安定した姿勢で座ってもらいます。
足がきちんと床につく高さで座りましょう。
介助者は患側に立ちます。
2.患側の足をズボンに通す
これから履くズボンの裾をたくし上げ、裾に介助者の手を通します。
その状態で、利用者の患側の足をやさしく持ち上げて足首に裾を通します。
3.健側の足をズボンに通す
同様にたくし上げたもう一方の裾を健側の足にも通します。
4.ズボンを引き上げる
健側の手で、ズボンを引き上げてもらいましょう。
左右にお尻を浮かせながら少しずつズボンを引き上げます。
立位が可能であれば、介助者が立位補助を行い、利用者が健側の手でズボンをウエストまで引き上げます。
5.着衣完了
ズボンをウエストまで上げたら、ズレやシワを整えて(立位の方はゆっくりと座り)着衣完了です!
ズボン編の手順動画
◆寝たまま編
\ポイント/
上着は被りではなく前開きの方が圧倒的に着脱しやすいため、前開きを選びましょう。その方が利用者の方の負担も少ないです。
寝たままの場合、上着の脱衣と着衣は同時進行で行うと体位変換が少なくて済みます。
脱衣→着衣【上着】
1.上着のボタンを外す
利用者に仰向けになっていただき、まずは上着のボタンを外していきます。
着替えの上着のボタンも全て外しておきます。
2.肩の部分を脱がせる
肩から上着を外していきます。
3.身体を横向きにして、片腕を袖から抜く
横向きにして、上になっている側の腕を袖から抜きます。
4.着替えの袖を通す
脱がせた方の腕に、着替えの袖を通します。
そのまま肩と背中も着せていきます。
5.仰向けにして、片腕を袖から抜く
仰向けに戻して、もう一方の腕を袖から抜けば脱衣は完了です。
6.身体を横向きにして、着替えの袖を通す
先ほどとは反対側に横向きになってもらいます。
(脱がせた側の腕が上にきます。)
着替えの袖を通していきましょう。
7.仰向けにして、ボタンを留める
再度、身体を仰向けに戻して最後にボタンを留めていきます。
8.脱着完了
ボタンを留めたら、ズレやシワを整えて着衣完了です!
脱衣→着衣【ズボン】
1.身体を横向きにして、ズボンを下げる
一度身体を横向きにして、片足ずつお尻の下までズボンをずらしていきます。
お尻を少し浮かせられる場合は、仰向けのままで問題ありません。
2.仰向けに戻し、ズボンを脱がせる
仰向けに戻して、足からズボンを抜き取ります。
少し膝を曲げてもらうとスムーズです。
ズボンから両足を抜き取ったら脱衣完了です。
3.着替えのズボンに足を通す
たくし上げたズボンを片足ずつ通します。
このともき少し膝を曲げてもらうとやりやすいです。
お尻の下まで上げていきます。
4.身体を横向きにして、ズボンをお尻まで上げる
身体を横向きにして、上になった側のお尻にズボンを着せてください。
5.反対側に横向き、4と同様に
続いて、反対側に横向きにして、もう一方のお尻までズボンを上げます。
6.脱着完了
身体を仰向けに戻して、ズレやシワを整えたら着衣完了です!
寝たまま編の手順動画
まとめ
着脱介助(更衣介助)は利用者の健康と清潔を保つための大切な役割があります。
介助が苦手で自信がないという方は、職員に利用者の代わりになってもらって練習することをおすすめします。
利用者の方に安心して任せてもらえるように、手順とコツをしっかりと理解して着脱介助を行いましょう!
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