介護サービスを利用するために必要となるケアプラン。
ケアプランの作成はおもにケアマネージャーがおこないます。しかし、新人ケアマネージャーのなかには、ケアプランの作成に不安がある方もいるのではないでしょうか?
そこで、ケアプランの作成の流れから作成方法、記入例、ポイントなどについて分かりやすくご紹介したいと思います。
ケアプラン(介護サービス計画書)とは?
ケアプランとは介護を必要とする方、一人ひとりが適切な介護サービスを利用できるように、利用者の心身状態や家庭の状況を踏まえ、サービスの種類や内容などを決める計画書のことです。
要介護または要支援の認定を受けると、在宅介護や施設介護で介護保険を利用したサービスを受けることが可能になります。しかし介護保険は医療保険(健康保険)のように、いつでも自由に利用できるわけではありません。
介護保険を利用するには、ケアマネージャーが作成したケアプランをもとに提供された介護サービスにのみ保険給付がおこなわれます。そのため、ケアプランは要介護者や要支援者にとって介護保険サービスを利用するために必須かつ重要な書類といえます。
ケアプランの種類
ケアプランの種類は1つではなく、受けるサービスによって以下3つの種類に分けられます。
要介護の方を対象とするのは「居宅サービス計画」「施設サービス計画」の2種類。
要支援の方を対象としているのは「介護予防サービス計画」の計3種類です。
それぞれのケアプランの対象と特徴について見ていきましょう。
【居宅サービス計画】
要介護1~5の認定を受けた方が対象。
自宅での訪問介護サービスや通所介護サービス、短期入所サービスなどを利用するために
必要となるケアプランです。
【施設サービス計画】
要介護1〜5の認定を受けた方が対象(施設形態により異なる)。
以下3つの施設に入所するために必要となるケアプランです。
□介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム(特養))
□介護老人保健施設(老健)
□介護療養型医療施設
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム(特養))は原則、要介護3以上の方のみが対象となっています。「介護老人保健施設(老健)」と「介護療養型医療施設」は要介護1~5の方が対象です。
【介護予防サービス計画】
要支援1〜2の認定を受けた方が対象。
介護はまだ必要ない健康な方が、将来介護が必要にならないよう介護予防サービスを利用するために必要となるケアプランです。
初めてでも大丈夫!ケアプランの作成方法をご紹介
さっそく、実際にケアプランを作成する流れと作成方法についてご紹介したいと思います。
ケアプラン作成の流れ
まずはケアプランをどのよう手順で作成するのか、作成の流れについて見ていきましょう。
上記の図は、ケアプラン作成の流れを表したものです。それぞれの項目でどのようなことをおこなうのか、以下を見ていきましょう。■インテーク
ケアプラン作成におけるインテークとは、利用者の現状を把握するための大事なファーストステップです。対面や電話などで、介護サービスを利用したい本人や家族の悩みや希望、体調、家庭環境などを聞きます。 ■アセスメント
利用者の自宅へ訪問し、利用者本人の健康状態、介護や住まいの状況、どのような生活を送りたいかなどの希望などを確認し情報を集めます。利用者家族や医療関係者からの情報を踏まえて、生活上の課題を分析します。■ケアプラン原案の作成
アセスメント結果をもとに仮のケアプランであるケアプラン原案を作成します。利用者や家族の希望に合わせた目標設定、必要なサービスの検討、プランの組立てなどをおこないケアプラン原案を作成していきます。ケアプラン原案をもとに、受入れが可能なサービス事業者との連絡調整をおこない、利用者の希望と相違がないかを本人や家族に見せて確認します。■サービス担当者会議
ケアマネジャーが作成したケアプラン原案をもとに、ケアマネージャーを中心として利用者本人と家族、介護サービス提供事業者の担当者、主治医などの関係者と会議をおこないます。利用者や家族の生活や課題を共通認識し、設定している目標や介護方針・計画を共有するために設けられています。このサービス担当者会議で本人や家族、関係者から意見を聞き、プラン内容に問題ないかの検討をします。サービス担当者会議は、ケアプランを定期的に見直す際にも開催します。■ケアプラン原案の修正・再提案・同意
サービス担当者会議で得た意見をもとに、修正する点があればケアプラン原案を修正し再提案します。利用者や家族に問題はないか最終確認し同意を得ます。■ケアプランの交付
問題なければケアプランの最終決定となり、利用者・家族へ計画書を交付・説明し、同意を得られれば同意書に自署または記名・押印をもらいます。完成したケアプランは介護サービス提供事業者にも交付します。■モニタリング
ケアプランにもとづいた介護サービスが、きちんと提供されているかどうか月1回以上利用者宅へ訪問し確認します。ケアプランは6カ月程度で必ず見直しをおこない、モニタリングの結果、ケアプランに見直しが必要な場合は、再度アセスメントから実施しケアプランの修正と再交付をします。ケアプランの作成方法
それでは、ケアプラン作成の方法について見ていきましょう。
居宅サービス計画書を例に作成方法について解説していきたいと思います。
まず、ケアプランに使用する書類の構成について見ていきましょう。
ケアプランを作成する書類は、居宅サービスや施設サービスなどによって構成が異なります。
居宅サービスにおけるケアプランの書類は「第1表~7表」の7枚から構成されています。
このうち「第4表」と「第5表」を除く5枚の書類を、本人(家族)と介護事業所、ケアマネージャーとで共有します。
居宅サービスにおけるケアプラン第1表~7表に記載される内容は以下です。
名称 | 記入する内容 |
第1表:居宅サービス計画書(1) | ・要介護認定の情報 ・利用者および家族の意向 ・介護認定審査会の意見及びサービスの種類の指定 ・総合的な援助の方針 |
第2表:居宅サービス計画書(2) | ・利用者の解決すべき課題 ・長期と短期の目標 ・課題解決に向けた具体的な介護サービスの内容(頻度・期間) |
第3表:居宅サービス計画書(3) | ・利用する介護サービスを組み合わせた1週間のサービススケジュール表 ・おもな活動内容 |
第4表:サービス担当者会議の要点 | ・サービス担当者会議で話しあった内容、利用者 ・家族の意向、結論などを記録 |
第5表:居宅介護支援経過 | ・ケアマネージャーと利用者のやりとりを記録 記載事項:利用者からの相談内容、事業者との連絡内容、調整事項、支援内容、モニタリング結果など |
第6表:サービス利用表 | ・介護サービスを提供する各事業所の1ヵ月の提供スケジュールを記録 記載事項:提供時間、サービス内容、事業所名 |
第7表:サービス利用表別表 | 1カ月の介護サービスごとの利用単位数や費用(利用者負担額) |
ケアプランの作成方法の順番としては、
第2表「課題・目標・サービス内容」から作成を始め、第3表「1週間のサービススケジュール・活動内容」の後に第1表「総合的な援助の方針・利用者および家族の意向など」へ進めると効率的です。
第1表を3番目に書くことをおすすめする理由は、ケアプランの全体像を記録する内容となるため、総合的な援助方針と具体的なサービス内容や目標にズレが起きないようにするためです。
【第1表】「居宅サービス計画書(1)」の書き方
第1表は、利用者の基本情報や意向、総合的な援助の方針などについて記入する書類です。
1)初回・紹介・継続
いずれか該当するものを選ぶ。
2)利用者及び家族の生活に対する意向
「利用者の意向」と「家族の意向」は分けて書くこと。
家族の意向には、妻・夫・息子・娘など続柄も書いておく。
話した内容は要約せず、そのままの表現で書く。
3)認定審査会の意見及びサービスの種類の指定
利用者の被保険証を確認し「認定審査会の意見及びサービスの種類の指定」欄に記載があるのかを確認。
記載がある場合は、そのまま内容を書き写し、記載がなければ「なし」と記入する。
4)総合的な援助の方針
家族、ケアマネージャー、サービス事業者がチームとしてどのような方針で援助するのかを記載します。
5)生活援助中心型の算定理由
1~3のいずれかを選びます。(3)の「その他」を選ぶ場合は、具体的な理由を記入しましょう。
【第2表】「居宅サービス計画書(2)」の書き方
第2表は、ケアプランの具体的な内容や目標などについて記入する書類です。
6)生活全般の解決すべき課題(ニーズ)
アセスメントの結果、導き出した「解決すべき課題」を記入する。
記入する際は、優先順位が高いものから順に記入していく。
「どんな事に困っていて、どうしていきたいのか」というように、利用者がどのような生活や状態を希望しているのかが分かるように記入しましょう。
7)目標(長期目標・短期目標・期間)
長期目標は、最終的に目指す状態について書きます。
短期目標は、長期目標を達成するための段階的な目標について書きます。なるべく達成可能な目標設定にし、評価しやすい表現で記入します。
計画的に目標達成できるように、期間を設定します。
8)援助内容
援助内容の記入で大切なのは「いつまでに・誰が・なにを・どのように実施するのか」ということを明確にすることです。
最適なサービスや方針、実施するサービス事業所を選定し、上記を記入しましょう。
また、すでに実施されているサービスが別にある場合はあわせて記載することを忘れずに。
【第3表】「週間サービス計画表」の書き方
第3表は、サービスの計画を組み、週間スケジュールを作成する書類です。
9)週間スケジュール
第2表で決めた内容をもとに、曜日や時間、サービス内容の週間スケジュールを組みます。
家族などから受ける援助内容も書き込み、詳しい計画表を作成します。
10)主な日常生活上の活動
利用者の平均的な一日の過ごし方をできるだけ具体的に記入します。
行動だけでなく、起床、食事、散歩、入職、就寝の時間なども記載しておきましょう。
11)週単位以外のサービス
週単位以外で実施されるサービスなどがあれば記入します。
【第4表】「サービス担当者会議の要点」の書き方
第4表は、サービス担当者会議が終了した後、会議の要点をまとめ記入する書類です。
12)会議出席者
サービス担当者会議に出席した方の「所属または職種・氏名」を記入します。
利用者本人の氏名や家族の氏名・続柄も書きます。
13)検討した項目
会議で検討した項目について記入します。
記入方法は、項目ごとに番号を振り箇条書きします。
14)検討内容
協議した内容を要約し意見があった際は「誰が・どのように意見したか」が分かるように記入しましょう。
15)結論
協議した内容の結論を記入します。
16)残された課題
協議の結果、結論がでなかった項目や新たな課題、また次回の開催時期や開催方針などを記入します。
【第5表】「居宅介護支援経過」の書き方
第5表は、ケアプラン作成における過程について記録する書類です。
17)年月日・内容
ケアプラン作成における過程を時系列に沿って詳しく記録する。
内容には、
・利用者との相談内容
・事業者との連絡・調整内容
・サービスの利用状況や有効性
・把握している事実
・ケアマネージャーの所見
などを記入します。
サービスを提供するうえで必要となる情報はすべて記入しておきましょう。
たとえば、利用者家族のみが知っている事実や本人に知られてはいけないことなどは、この第5表に記録しておきましょう。
【第6表】「サービス利用票」の書き方
第6表は、週間サービス計画表(第3表)をもとに保険給付が対象となるサービスの月間サービス計画と提供実績について記録する書類です。
18)提供時間帯
サービス提供時間を早い順に記入します。
記入は24時間制で0:00~24:00表記で記入。
19)サービス内容
サービスの内容について記入します。
20)予定・実績
サービス提供の予定数と実績回数を記入します。
21)区分支給限度基準額・限度額適用期間
被保険者証に記載されている「支給限度基準額(単位数)」と「限度額適用期間」を書き写します。
【第7表】「サービス利用票別表」の書き方
第7表は、利用者にとって利用明細書のような意味があります。また、給付管理においても重要となる書類です。第6表に記入した内容から「支給限度管理の対象となるサービス」をすべて書き写し、その単位数と費用を計算します。
22)事業所名・サービスコード
同一事業所の複数のサービスを利用する場合は、サービスコードごとに記入します。
23)サービス単位/金額
サービス単位と金額について記入します。
サービス単位の端数は小数点以下を四捨五入して記入しましょう。
記入例10選|課題(ニーズ)・長期目標・短期目標
サービス計画書の「課題(ニーズ)・長期目標・短期目標」をどのように書いたらいいのか分からない…という方は少なくないはず。
そこで、課題(ニーズ)・長期目標・短期目標の記入例をご紹介したいと思います。
課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 |
自分で嚥下がうまくできず、むせることが時々ある | 食事をむせずにとることができる | 一口ずつしっかりと嚥下する |
室内でよく転倒する | 転倒することなく、安全に生活できるようになる | 筋力を向上させ、安全に移動ができるようになる |
歩行が不安定で屋外での歩行がこわい | 屋外で歩行ができるようになり、気分転換を図れるようになる | 室内で安全に歩行できるようになる |
夜間尿意を催したとき、トイレに間に合わず、失敗することがある | 清潔かつ気持ちよく生活することができる | トイレで排泄をおこない、清潔な下着で過ごすことができる |
自分で入浴できるようになりたい | 自分ひとりで入浴できるようになる | できる入浴動作を増やす |
脳卒中後遺症で着衣がうまくできない | 一人で着衣ができるようになる | 着衣動作のできることを増やす |
食事の用意が自分でできない | 自分で食事の用意ができるようになる | パンを焼くなど比較的簡易な作業ができるようなる |
外出の機会がほとんどない | 交流の場に参加し、気分転換ができる | 外部と交流を持ち、生活を活性化させる |
室内に閉じこもってテレビを見ていることが多い | テレビ以外の楽しみが増え、明るいきもちで生活することができる | 日常生活にテレビ以外の楽しみを見つける |
趣味に興味を示さなくなった | 自分らしい生活を取り戻す | 好きなことを見つけ意欲を回復させる |
ケアプランを作成する3つのポイント
より良いケアプランを作成するためのポイントについて見ていきましょう。作成するためのポイントは以下の3つ。◎サービスを受ける本人や家族の希望がしっかりと反映されていること
◎課題を解決するための具体的な目標やサービスが記載されていること
◎経済的に無理のないプランであること
ケアプランを作成するにあたって大切なことは、サービスを受ける利用者本人と家族が納得し少しでも理想の生活を送れるようなプランを立てることです。上記3つのポイントを満たすためには、アセスメントでの情報収集と課題分析がとても重要です。利用者や家族の意見を引き出し「どんな生活を望み・障がいとなっていることは何か」
を明確にすることで、本当に必要なサービスを提供できるケアプランを作成することができます。 ケアプラン作成で注意したいこと
ケアプランを作成する際に注意したいことは「聞きにくい情報は最初に確認する」ということです。聞きにくい情報は、最初の面談時などで聞きそびれてしまうと聞くタイミングが難しくなってしまいます。とくに、経済状況などは差し障りの無い範囲で最初に教えてもらっておくことをおすすめします。
また、ケアプランは一度作成して終わりではありません。月1回以上の面談をおこない、必要に応じてケアプランを見直す必要があります。
ここで注意してほしいのが、面談で最近の状況を聞いた際、利用者や家族からの「とくに変わりありません」という返答です。最初は色々話してくれていても、面談を重ね慣れてくるとあまり細かく話してくれなくなってしまうことも少なくありません。
そうならないためにも、慣れてきたときこそどんな小さな変化でも話してもらえるように「話を引き出す力」を身につけておきましょう。
さいごに
介護におけるケアプランは、利用者本人がその人らしく生活するための大切な計画書です。
異なる一人ひとりの意向や心身の状況を理解し、家族や本人に寄り添ったプランを作成することがとても重要です。
会話から、利用者が望む目標や生きがいを見つけてあげる作業はケアマネージャーとしての大事な役割といえます。
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