介護のQOLとは?利用者の生活の質を上げるために介護職員ができること

更新日:2021年06月08日

公開日:2021年06月08日

介護のQOLを解説

近年、医療や介護の現場では、QOLを向上するための取り組みが重視されるようになっています。
このQOLとは一体どのようなことを指し、向上させるためにできることとは何でしょうか?

本コラムでは、介護におけるQOLについて解説しています。
利用者にとってより良い介護サービスを提供することにつながりますので、介護職員の皆さんはぜひ参考にしてください。

QOLとは

QOLとはQuality Of Life(クオリティ・オブ・ライフ)の頭文字をとったもので、日本語では「生活の質」「人生の質」と訳されることが一般的です。

WHO(国際保健機関)は1947 年に健康憲章の中で、健康を「単に疾病がないということではなく、完全に身体的・心理的および社会的に満足のいく状態にあること」と定義しています。

そしてQOLについては1994年、一個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識と定めています。

WHOが提唱する「健康」つまり「完全に身体的・心理的および社会的に満足のいく状態」であるほど、QOLが良い状態といえるでしょう。

しかしQOLの定義は上記の通り、個人の認識です。
生活環境や性格、好きな食べ物、趣味・・・それらは個人によって違いがあり、何を好むか、何をしている時に幸せを感じるかといった価値観は人それぞれです。

したがって何をもってQOLが良い状態とするのかは人それぞれに異なるということを理解しておく必要があります。

QOL低下に影響を与える要因

QOLに影響を与える5つの要素

まずはQOLが低くなる要因について理解しておく必要があるでしょう。
QOLには次の5つの要素が大きく影響するといわれています。

心理面(精神面)
抑うつ、不安、情動、認知機能、心の痛みなど

社会面
家族や友人との関係、社会的立場、経済

役割・機能面
活動性、日常生活の役割など

身体面
身体症状や身体の痛みなど

スピリチュアリティ(霊性・魂性)
信念、生きがい(実存)、平穏な気持ちなど

これらの状態が悪いとQOLが低いということになります。
高齢者のQOLの低下には、特に「身体機能の低下」、またそれによる「心理的ストレス」が大きいと考えられます。

口腔機能が低下して食事がとれない
関節が痛くて衣服の着脱がしづらい
といったような、身体機能の低下によって不自由を感じることがQOL低下の大きな要因です。

しかしそれだけではありません。
身体機能の低下から、自信喪失につながり他者との関わりが怖くなったりします。
また身体の痛みによるストレスや、不安を感じながら毎日を過ごすストレスなどもあるでしょう。

このように身体機能の低下によって生じる心理的ストレスもQOLが低下する大きな要因となっています。

介護のQOLの指標・測定方法

QOLに影響を与える要素である心理的ストレスや痛みの度合いなどは主観的なものであり、他人が評価することは容易ではありません。

そこで他者がQOLを測定して評価するための指標が作られました。
評価指標にはいくつかの種類があり、WHOが定めた指標「QOL26」や一般的指標である「SF-36」が有名です。
また特定の疾患を持つ人のQOLを評価する特異的指標というものもあります。

医療や介護分野では「SF-36」を用いられることが多いでしょう。
健康状態を測る調査票として世界中で最も普及しています。


SF-36の特徴


1.包括的尺度である
QOLの尺度は包括的なものと特定の疾患向けのものに分類されます。
SF-36はさまざまな疾患に対応した包括的尺度であるため、疾病の異なる患者さん間のQOL比較も可能です。

2.国民標準値との比較ができる
SF-36には国民標準値が設定されており、対象者のQOLと比較することができます。

3.国際的に最も普及している健康関連QOL尺度である
健康状態を測る調査票として、世界中で最も普及しています。

SF-36では、36の質問に答えることで、次の8つの領域においてQOLが高いか、低いか、どこに課題があるかといったことを可視化します。

<8つの領域>
1. 身体機能
2. 日常役割機能(身体) 
3. 体の痛み 
4. 全体的健康感
5. 活力
6. 社会生活機能
7. 日常役割機能(精神)
8. 心の健康

8つの分類得点の解釈
低い高い
身体機能入浴または着替えなどの活動を自力で行うことがとても難しい激しい活動を含むあらゆるタイプの活動を行うことが可能である
日常役割機能 
 (身体)
過去1ヵ月間に仕事や普段の活動をした時に身体的な理由で問題があった過去1ヵ月間に仕事や普段の活動をした時に、身体的な理由で問題がなかった
体の痛み過去1ヵ月間に非常に激しい体の痛みのためにいつもの仕事が非常にさまたげられた過去1ヵ月間に体の痛みは全然なく、体の痛みのためにいつもの仕事がさまたげられることは全然なかった
全体的健康感健康状態が良くなく、徐々に悪くなっていく健康状態は非常に良い
活力過去1ヵ月間、いつでも疲れを感じ、疲れはてていた過去1ヵ月間、いつでも活力にあふれていた
社会生活機能過去1ヵ月間に家族,友人、近所の人、その他の仲間との普段のつきあいが、身体的あるいは心理的な理由で非常にさまたげられた過去1ヵ月間に家族、友人、近所の人、その他の仲間とのふだんのつきあいが、身体的あるいは心理的は理由でさまたげられることは全然なかった
日常役割機能
(精神)
過去1ヵ月間、仕事や普段の活動をした時に心理的な理由で問題があった過去1ヵ月間、仕事や普段の活動をした時に心理的な理由で問題がなかった
心の健康過去1ヵ月間、いつも神経質で憂鬱な気分であった過去1ヵ月間、落ち着いていて、楽しく、穏やかな気分であった

0~100点までの配点で、得点が高いほどQOLが高いという評価になります。
詳しい内容に関しては下記サイトをご確認ください。
出典:SF-36v2日本語版 - SF-36|Qualitest株式会社

介護のQOLを向上させるには

では介護現場において、利用者のQOLを向上させるにはどういったことが有効なのでしょうか。

介護サービスを利用するということは病気や障がいなどによってすでにQOLが低下している可能性が高いですが、利用者の病気や障がいを治してQOLを向上させることは介護職員にはできません。

そのような状態であっても、最大限その人らしく満足のいく暮らしができるように日常生活を手助けすることが介護職員の役割といえます。
そのためにはまずQOLとADL・IADLとの関連性を理解すること、そしてICFの考え方を理解しておく必要があるでしょう。

QOLとADL・IADLと関係性について

介護資格をお持ちの方は「ADL」「IADL」について学習したことがあるのではないでしょうか。


ADL

日常生活動作(Activities of Daily Living)

日常生活を送るための基本となる身体動作を指します。
・食事
・排泄
・着脱衣
・入浴
・歩行
などがADLにあたります。


IADL

手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living)

ADLが日常における基本動作であるのに対し、IADLはADLを応用した動作を指します。
・電話の使い方
・買い物
・食事の準備
・家事
・洗濯
・移動
・服薬管理
・金銭管理
の8項目です。

利用者の自立を測る指標としてADLが用いられることがありますが、利用者のQOLはこのADL(日常生活動作)と密接な関わりがあるとされています。

例えば、本来食べることが大好きなのに、嚥下機能が低下して食事がとりづらくなってしまった方がいたとします。
もしその方が、むせ込むことが怖くて食事の時間を楽しめなくなったとしたら、それは嚥下機能(ADL)が低下したことによって、食事を楽しむことで得られていた心の健康(QOL)も低下したといえるでしょう。

このようにADLが低下することでQOLも低下したり、反対にQOLの向上がADLの向上につながるというような場合もあります。

またADLの低下に先行してIADLが低下していく傾向にあります。
要支援の方などはADLに問題はなくてもIADLの一部に支援が必要な方が多かったりするのです。
そのため、QOLの向上にはADLだけでなくIADLの低下を予防することも大切になるでしょう。

しかしながら、QOLを高めるために必ずIADLやADLを向上させなければいけないのかというとそうではありません。

例えば以前より歩行が困難になった方には、杖を使って歩く訓練をしてもらうよりも車椅子を利用して楽に移動もらった方がQOLは向上するかもしれません。

ADLの維持・向上を重視することでQOLを低下させてしまう場合もあるので、このバランスをとっていくことがとても大切になります。
そのためにも利用者が「どのような状態だと満足するのか」「幸せを感じるのか」ということをないがしろにしないようにしましょう。

ICFの考え方とは

ICFというのは世界共通の生活機能分類と訳されます。
人の健康状態を取り巻くさまざまな事柄を体系立てて分類したもの」です。

人の健康状態に関する事柄を体系立てて分類することで、人の健康について考えるときに
一部ではなく全体を見よう
さまざまな視点から考えていこう
というねらいがあります。

つまり、病気や身体機能の障がいだけにフォーカスを当てるのではなく、その人の思いや環境など生活すべてを見て介護をするということです。
これは利用者のQOLの向上を考えるうえでも理解しておくべき考え方といえるでしょう。

<ICFについて詳しくはこちら>
コラム「介護職なら知っておくべきICF(国際生活機能分類)ってつまりどういうもの?わかりやすく解説します!」 

今日から実践!要介護者のQOLを上げるためにやるべき3つのこと

利用者さんのQOLを上げるために

ではここからは利用者のQOL向上のために介護職員がすぐにできるアクションをお伝えしていきます。

利用者を知る

まずは利用者を知ることから始めましょう。
QOLの向上には本人の思いを理解することがとても重要だからです。

そのためには利用者とコミュニケーションをとること、利用者をよく観察することが大切です。

積極的にコミュニケーションをとり利用者の方を知ることで、普段の介護に活かすことができます。
本当に些細な「好きな食べ物、嫌いな食べ物を知る」というようなことからで構いません。
話をすることで、その人がどういった性格なのかも見えてくるはずです。

また利用者のことをよく見て情報収集することも大切です。
一人で静かに過ごすことが好きな方もいますし、認知症の方や意思が確認できない方の場合、コミュニケーションをとることが難しいこともあります。

そういった場合には、無理にコミュニケーションをとろうとせず、ご家族や他の職員など第三者から話を聞いたり、日頃の行動などをしっかり観察することで情報を集めるとよいでしょう。

いずれにせよ利用者を理解しようとすることが大切です。

またコミュニケーションは利用者の思考や感情に刺激を与えて活性化させることにもつながります。
日常生活への活力が向上したり、新たな可能性を引き出せることもあるかもしれません。

コミュニケーションにおいては、
・じっくり聞くこと
・受け止めること
・質問すること

がポイントです。

ぜひ利用者さんとの触れ合いを楽しみながら、話の中で得た情報を一人ひとりのQOL向上に役立ててください。

<コミュニケーションについて詳しくはこちら>
コラム「詳しく解説!介護のコミュニケーションで大切なこととは!?」

コラム「介護職員の必須スキル「傾聴」上手に話を聴く5つのコツ」 

世話をしすぎず、時には見守る

これは利用者の身体機能の維持・向上が目的です。
利用者によっては機能訓練を受ける場合もありますが、そうでない利用者においても日常生活の中でADLの低下を予防する取り組みは可能です。

そのためには職員が世話を焼きすぎずに、見守ることが大切になります。

当然ながら利用者の身の回りのことは職員がやってあげた方が早く、つい手を差し出してしまうこともあるでしょう。
また自分でやることを面倒がる利用者の方も多いかと思います。
介護職員は面倒見がよい方が多いため、世話をしすぎてしまっていることもあるかもしれません。

ただ先ほどもお伝えしたように、ADLやIADLの低下がQOLの低下につながる可能性もあります。
なるべく自分でできることは自身でやってもらい、職員は補助的なサポートに徹して見守るというのが理想です。

ただしあくまで目的はQOLの向上ということを忘れてはいけません。
ADLの維持を目的にしてQOLが低下してしまわないように注意しましょう。

交流の場を作る

これは利用者の意向によりますが、外とのつながりを作ったり季節の行事やイベントなどに参加したりすることもQOLの向上につながります。

訪問介護の場合は個々の意向に沿ったサービス提供がしやすいため「身の回りのお世話よりも外出や散歩に重点を置く」というようなサービスもできるでしょう。
社会的な活動・行事へ参加なども効果的です。

施設介護の場合は個別の意向を反映することが難しい部分もあります。
しかし施設内でのイベントやレクリエーション、外への買い物などで他者との交流の場を増やすことはできるのではないでしょうか。

利用者の暮らしに新たな楽しみや喜びを与えられるような工夫をすることで、QOL向上につなげます。

まとめ

「利用者の生活の質を上げる」といっても、その質の善し悪しは利用者一人ひとりによって異なります。
その人にとってどういう環境が最適なのか、どういったサービスをすべきなのかを判断するには、まず利用者の思いをよく理解することが大切です。

利用者の気持ちに寄り添った介護を提供することが介護職員の務めといえるでしょう。

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