介護職員等特定処遇改善加算とは?制度ができた背景から処遇の改善状況まで詳しく解説

車椅子の女性を押してあげる介護士
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介護サービス事業者として介護の現場に携わる職員には給与面でもできれば手厚く報いたいと考えているけれど、なかなか難しいと感じている人はいませんか?
この記事ではそんな人に知ってほしい介護職員等特定処遇改善加算について詳しく解説します。

介護職員等特定処遇改善加算とは?

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介護職員等特定処遇改善加算とは、介護職員の処遇改善を目的として2019年10月に創設された制度で、2022年度の介護報酬の改訂においては介護職員処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算とともに処遇改善の柱となっている制度です。

3つの制度の概要を表にまとめてみました。

 

対象

算定要件

備考

介護職員処遇改善加算

・介護職員

・介護職員処遇改善加算(Ⅰ)

キャリアパス要件①~③を満たし職場環境要件①~⑥のうち1つ以上に取り組んでいる
・介護職員処遇改善加算(Ⅱ)

キャリアパス要件①~②を満たし職場環境要件①~⑥のうち1つ以上に取り組んでいる

・介護職員処遇改善加算(Ⅲ)

キャリアパス要件①を満たし職場環境要件①~⑥のうち1つ以上に取り組んでいる

・キャリアパス要件 

①職位、職責、職務内容等など応じた任用要件と賃金体系を整備する
②介護職員の資質向上のための計画を策定して研修の機会を確保し実施する

③経験や資格などに応じて昇給する仕組みか一定の基準に基づき定期昇給を判定する仕組みを設ける(明確な就業規則を書面で整備し、全ての介護職員へ周知することを含む)
・職場環境要件

①入職促進に向けた取り組み
②資質の向上やキャリアアップに向けた支援
③両立支援や多様な働き方の推進
④腰痛を含む心身の健康管理

⑤生産性向上のための業務改善の取り組み

⑥やりがいや働きがいの醸成 

介護職員等特定処遇改善加算

・事業所が次の3つに該当すると認めた人が対象
①経験・技能のある介護職員
②その他の介護職員
③その他の職種

・介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のどれかを取得している

・介護職員処遇改善加算の職場環境要件に関し複数の取組みを行っている

・介護職員処遇改善加算に基づく取組みについてホームページ掲載などを通じた見える化を行っている

※介護福祉士の配置割合などに応じて加算率を(Ⅰ)(Ⅱ)の2段階に設定 

介護職員等ベースアップ等支援加算

・介護職員(事業所の判断で他の職員の処遇改善にこの加算をあてることもできる)

・介護処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のどれかを取得している

・賃金アップが継続できるよう加算額の2/3は介護職員などのベースアップ などに使用する

3つの加算を比較してみると、介護職員処遇改善加算は介護職員の賃金と働く環境の改善、介護職員等特定処遇改善加算は技能や経験がある職員に対する賃金改善、介護職員等ベースアップ等支援加算は介護職員と他の職員の賃金改善を目的としていることがわかります。

介護職員等特定処遇改善加算ができた背景とは?

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介護職員等特定処遇改善加算が創設された背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

急激な高齢化が進んでいるため

2022年に内閣府が発表した「令和4年高齢社会白書」によると日本の総人口に占める65才以上の人の割合である高齢化率は28.9%となりましたが、今後も高齢化率は増え続け2036年には33.3%、2065年には38.4%になり国民の1/3以上が高齢者になると推計されています。

また2020年の男性の平均寿命は81.56才、女性は87.71才で、2019年の男性の健康寿命は72.68年、女性の健康寿命は75.38年となっています。

平均寿命とは0才時に何才まで生きられるかを統計から予測した平均余命のことで、健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる時間のことですが、平均寿命と健康寿命の間には10年程度の差があるので、その間は介護を受けて生活する必要があると言えるでしょう。

これらのことから能力の高い介護職員を評価して賃金面でも報いることのできる介護職員等特定処遇改善加算制度を創設したのは、介護の担い手を増やす必要があるためだとわかります。

参考:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

介護職員の給与水準が低かったため

厚生労働省が公表している「賃金構造基本統計調査」と「介護従事者処遇状況等調査」のデータから全国の主要産業に雇用される労働者と介護職員の平均月額給与を比較してみると次のようになりました。

 

2008年

2021年

労働者

29万9,100円

30万7,400円

介護職員

22万1,000円

(介護職員等特定処遇改善加算Ⅰ~Ⅱを取得している施設・事業所の介護職員)
 32万3,190円

処遇改善の取り組みがまだされていなかったころは、介護職員は平均的な労働者の賃金と比較して7万円程度も月額給与が低かったものの、処遇改善への取り組みが進むにつれ少しずつ労働者の平均給与に近づいてきていることがわかります。

参考:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
参考:厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査:結果の概要」

リスクの高い仕事が増加しているため

現在介護の現場においては医療的な生活援助行為である医療的ケアや、新型コロナウイルスに感染した職員が施設入居者を介護する陽陽介護など、リスクの高い仕事が増加する傾向にあります。

医療的ケアは医師の指示の下に行われ、陽陽介護はそれを回避するための感染防止対策や、感染者が発生した際に使うことのできる地域医療介護総合確保基金の制度創設なども行われていますが、介護職員に大きなプレッシャーや緊張感をもたらしているのは間違いないでしょう。

このことからリスクの高い仕事にも適切に対処できる能力の高い職員に対し、賃金面で報いることのできる介護職員等特定処遇改善加算のような制度は、早急に必要だったと言えます。

介護職員等特定処遇改善加算の内容

領収書と請求書
介護職員等特定処遇改善加算の加算算定の対象となるサービスと加算率はどのように定められているのでしょうか。

対象となる主なサービスについて加算率を表にまとめてみました。


サービス区分

介護職員処遇改善加算

介護職員等特定処遇改善加算

介護職員等ベースアップ等支援加算

キャリアパス要件などの適合状況に応じた加算率

サービス提供体制強化加算などの算定状況に応じた加算率

介護職員処遇改善加算Ⅰに該当

介護職員処遇改善加算Ⅱに該当

介護職員処遇改善加算Ⅲに該当

介護職員等特定処遇改善加算Ⅰに該当

介護職員等特定処遇改善加算Ⅱに該当

訪問介護

13.7%

10.0%

5.5%

6.3%

4.2%

2.4%

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

13.7%

10.0%

5.5%

6.3%

4.2%

2.4%

(介護予防)訪問入浴介護

5.8%

4.2%

2.3%

2.1%

1.5%

1.1%

通所介護

5.9%

4.3%

2.3%

1.2%

1.0%

1.1%

地域密着型通所介護

5.9%

4.3%

2.3%

1.2%

1.0%

1.1%

(介護予防)通所リハビリテーション 

4.7%

3.4%

1.9%

2.0%

1.7%

1.0%

(介護予防)特定施設入居者生活介護 

8.2%

6.0%

3.3%

1.8%

1.2%

1.5%

(介護予防)認知症対応型通所介護

10.4%

7.6%

4.2%

3.1%

2.4%

2.3%

(介護予防)認知症対応型共同生活介護

11.1%

8.1%

4.5%

3.1%

2.3%

2.3%

(介護予防)小規模多機能型居宅介護

10.2%

7.4%

4.1%

1.5%

1.2%

1.7%

(介護予防)短期入所生活介護

8.3%

6.0%

3.3%

2.7%

2.3%

1.6%

介護サービスが介護予防サービスより一概に加算率が高いわけではないということがわかります。

参考:厚生労働省「介護職員の処遇改善に係る加算に関する通知」

介護職員等特定処遇改善加算の請求状況とそれによる処遇の変化

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介護職員等特定処遇改善加算はどのくらい請求され、それにより介護職員への処遇はどのように変化したのでしょうか。

介護職員等特定処遇改善加算の請求状況と介護職員への処遇の変化にわけてご紹介します。

介護職員等特定処遇改善加算の請求状況

2019年10月に介護職員等特定処遇改善加算が創設されてからの、各年度における請求状況は次の通りです。

 

2019年10月

2020年4月

2020年10月

2021年4月

2021年10月

介護職員等特定処遇改善加算

53.8%

64.3%

66.1%

68.5%

69.0%

(参考)

介護職員処遇改善加算

92.3%

92.4%

92.9%

93.2%

93.3%

介護職員等特定処遇改善加算は介護職員処遇改善加算と比較すると請求するための算定要件が厳しいため、制度ができた当時は全事業所における半数程度の請求にとどまりましたが、制度に対する理解が進むにつれ少しずつ請求率が増加してきているのがわかります。

参考:厚生労働省「介護職員の処遇改善」

介護職員等特定処遇改善加算による処遇の変化

介護職員等特定処遇改善加算が創設されることで、介護職員の賃金はどのように変化したのでしょうか。

介護職員への処遇改善がされていなかった2008年、介護職員処遇改善加算制度が運用されていた2018年、介護職員等特定処遇改善加算が創設された2019年、現在の労働者全体と介護職員の平均賃金を表にまとめてみました。

 

2008年

2018年

2019年

2021年

労働者

29万9,100円

30万6,200円

30万7,700円

30万7,400円

介護職員

22万1,000円

(介護職員処遇改善加算を取得している施設・事業所の介護職員) 

30万970円

(介護職員等特定処遇改善加算Ⅰ~Ⅱを取得している施設・事業所の介護職員) 

30万7,430円

(介護職員等特定処遇改善加算Ⅰ~Ⅱを取得している施設・事業所の介護職員) 

 32万3,190円

加算制度が充実するにつれ、介護職員の平均給与が少しずつ上昇してきているのがわかります。

参考:厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査:結果の概要」
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 結果の概要」

介護職員処遇改善支援補助金について

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2022年2月~9月までの間、厚生労働省では介護職員の更なる処遇改善をするため介護職員処遇改善支援補助金を交付し、10月以降も臨時の介護報酬改定を行い、同様の措置を続けることにしています。

介護職員処遇改善支援補助金の概要と申請の流れについてそれぞれご紹介します。

介護職員処遇改善支援補助金の概要

介護職員処遇改善支援補助金の制度概要を表にまとめてみました。

 

対象期間

補助金の金額

補助金の対象者

補助金の取得要件

介護職員処遇改善支援補助金

・2022年2月~9月

・事業所ごとに算定式を用いて算定・支給する 

・算定式ある月の総報酬×交付率=補助額 

・介護職員 

・事業所の判断で他の職員の処遇改善にこの補助金をあてることもできる

・介護職員処遇改善加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのどれかを取得している

・2022年2月から賃金改善を実施する

・補助金の全額を賃金改定に使用し賃金改善の合計額の2/3以上をベースアップにあてる

また、介護職員処遇改善支援補助金の算定式にある交付率は介護事業所のサービス区分に応じて次のように定められています。

サービス区分

交付率

訪問介護夜間対応型訪問介護定期巡回・随時対応型訪問介護看

2.1%

(介護予防)訪問入浴介護

1.0%

通所介護 ・地域密着型通所介護

1.0%

(介護予防)通所リハビリテーション

0.9%

(介護予防)特定施設入居者生活介護 地域密着型特定施設入居者生活介護

1.4%

(介護予防)認知症対応型通所介護

2.1%

(介護予防)小規模多機能型居宅介護 看護小規模多機能型居宅介護

1.6%

(介護予防)認知症対応型共同生活介護

2.0%

介護老人福祉施設 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 (介護予防)短期入所生活介護

1.4%

介護老人保健施設 (介護予防)短期入所療養介護(老健)

0.8%

介護療養型医療施設 (介護予防)短期入所療養介護(病院等)

0.5% 

介護医療院(介護予防)短期入所療養介護(医療院)

0.5%

介護予防の訪問看護、介護予防の訪問リハビリテーション、介護予防の福祉用具貸与、特定介護予防福祉用具販売、介護予防の居宅療養管理指導、居宅介護支援、介護予防支援は介護職員処遇改善支援補助金の交付対象外となっていることに注意が必要です。

参考:厚生労働省「介護職員処遇改善支援補助金の概要」

介護職員処遇改善支援補助金の申請の流れ

介護職員処遇改善支援補助金の申請の流れは次の通りです。

①介護サービス事業者が都道府県に処遇改善計画書を提出する
②申請が認可されると都道府県から支払いの委託を受けた国保連が補助金を事業者に支払う
③補助期間終了後介護サービス事業所は都道府県に実績報告書を提出する

処遇改善計画書と実績報告書の書式と記入例が厚生労働省のホームページに掲載されているので、申請を予定している人は参考にしてみてください。

参考:厚生労働省「介護職員の処遇改善に係る加算に関する通知」

まとめ

車椅子の女性と青空を指指す介護士
介護職員等特定処遇改善加算とは、技能や経験がある職員に対する賃金改善を目的として2019年10月に創設された制度で、請求する介護サービス事業者が増加するにつれ少しずつ介護職員の平均給与が上がってきています。

この記事も参考にして、ぜひ介護の現場でがんばる職員への処遇改善を積極的に進めてみてください。
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