介護士の給料が上がるとする岸田首相の政策とは?昇給額の現状から今後の展望まで分析

岸田首相の政策で介護士の給料が上がるイメージ
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介護士の給料が上がるとする岸田首相の政策とは?
介護士の給料が上がるとする岸田首相の政策とは、具体的に何の政策を指し、内容はどのようなものなのかお伝えします。また、介護職の昇給額の現状や今後どうなるのかの展望まで解説していきます。
介護士として働いているものの給料に不満があるので、国の施策として処遇改善が行われなければ自分の今後のキャリアについても考え直したいと思っている人はいませんか? こちらの記事を参考に自分のキャリアの方向性を決めていってください。

介護士の給料が上がるとする岸田首相の政策とは?

そもそも介護士の給料が上がるとする岸田首相の政策とは、具体的に何の政策を指し、内容はどのようなものなのでしょうか。
政策の概要と介護保険で行われた具体的な改正の内容についてご紹介します。

分配戦略

分配戦略とは経済政策の1つで、税制や社会保障制度などを活用して富裕層から中間層へと消費の原動力となるお金を移動させ、経済を活性化させることです。
日本の経済が成長しても、富裕層にばかりお金が集中すると全体として消費にまわるお金は少なくなってしまいます。
そのため富裕層から中間層にお金を移動させることで消費を促し、より公平な経済を目指す政策が分配戦略というわけです。
首相官邸のホームページに掲載されている、岸田首相が行う分配戦略は次の3種類です。
  • 所得の向上につながる「賃上げ」
  • 「人への投資」の抜本強化
  • 家計の資産形成支援
この3種類の戦略の中の「賃上げ」に介護士の給料が上がるとする岸田首相の政策が含まれています。
賃上げの具体的な内容は次の4つです。

賃上げの項目

概要

公的価格の見直し

・2022年2月から保育士、幼稚園教諭、介護職員、障がい福祉職員の収入を3%程度(月額9,000円)上げるための措置を行う

・一定の役割を担う看護職員を対象に段階的に3%程度引き上げる

賃上げを行う企業への支援

・大企業については、継続雇用の従業員の賃上げを評価し税額控除率を最大30%まで引き上げる

・中小企業については税額控除率を最大40%まで引き上げる

下請取引の適正化

・下請中小企業振興法に基づいて、事業の所管大臣から親事業者への指導や助言を行い、価格転嫁対策を強化する

最低賃金の引上げ

・早期に全国加重平均が1,000円以上となるのを目指す

介護職員に対する賃上げは、「公的価格の見直し」の中でも2022年2月という開始日時と、月額9,000円という金額が具体的に示されているのが特徴的と言えるでしょう。

介護職員等ベースアップ等支援加算

介護士の給料が上がるとする岸田首相の政策である分配戦略を、介護保険における臨時の報酬改定という形で具体化したのが、2022年10月以降に新しくできた「介護職員等ベースアップ等支援加算」です。
介護職員等ベースアップ等支援加算は、事業所が加算を申請しても現場の介護士の給料が上がらないということのないよう、加算額の2/3は基本給か決まって毎月支払われる手当の引き上げに使用しなければなりません。
介護職員等ベースアップ等支援加算の概要は次の通りです。

項目

概要

加算額

・対象となる事業所の介護職員(常勤換算)1人あたり月額平均9,000円の賃金引上げに相当する額

取得要件

・介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのうちどれかを取得している事業所

加算の対象となる職種

・介護職員

・事業所の判断で他の職員の処遇改善にあててもよい

申請方法

・各事業所で、都道府県などに介護職員やその他職員の月額の賃金改善額の総額を記載した計画書を提出する

報告方法

・各事業所で、都道府県などに賃金改善期間が経過した後、月額の賃金改善額の総額を記載した計画の実績報告書を提出する

交付方法

・対象となる事業所が都道府県などに対して申請し、報酬によって支払われる

申請・交付スケジュール

・2022年8月から受付を開始し、10月分から毎月支払われる(実際の支払は12月から)

介護保険の加算が事業所によってきちんと介護士の処遇改善に使われるようにするため、申請時に賃金改善額の計画書を提出し、加算を受けた後は賃金改善額の実績報告書を提出するよう求めているのが特徴的だと言えるでしょう。
介護職員等ベースアップ等支援加算の取得状況は次の通りです。

2022年10月

2023年4月

介護職員等ベースアップ等支援加算

85.4%

92.1%

2023年4月現在でも残念ながら100%にはなっていないため、給料が上がらない介護士も一部いるということになります。

介護職の昇給額の現状

介護職員等ベースアップ等支援加算では、1人あたり月額平均9,000円の賃金引上げに相当する額を加算として事業所が請求できますが、実際の介護職の昇給額はどのくらいだったのでしょうか。
介護職員等ベースアップ等支援加算の届出状況、配分した職員の範囲、具体的な昇給額の3つの観点からご紹介します。

介護職員等ベースアップ等支援加算の届出状況

厚生労働省が2022年に発表した「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」で、2022年12月に7,284の事業所を対象に介護職員等ベースアップ等支援加算の届出状況について調査した所、次のような結果でした。

施設の種類

届出をした

届出をしていない

介護老人福祉施設

97.9%

2.1%

介護老人保健施設

92.7%

7.3%

介護療養型医療施設 

73.4%

26.6%

介護医療院

84.6%

15.4%

訪問介護事業所 

87.1%

12.9%

通所介護事業所

90.9%

9.1%

通所リハビリテーション事業所

88.4%

11.6%

特定施設入居者生活介護事業所

95.7%

4.3%

小規模多機能型居宅介護事業所

94.6%

5.4%

認知症対応型共同生活介護事業所

95.6%

4.4%

合計

91.3%

8.7%

介護職員等ベースアップ等支援加算の届出状況は施設の種類によって届出をしているかどうかに違いがあり、一番届出が多い介護老人福祉施設と一番届出が少ない介護療養型医療施設 では24.5%も差があるのが現状です。
介護療養型医療施設は看護や医学的管理を必要とする利用者に対して機能訓練や医療を提供するのを目的とした施設で、介護職員と看護職員の人員配置基準が6対1以上で同じという特徴があります。
介護職員等ベースアップ等支援加算を取得するには、介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのうちどれかを取得している事業所でなければなりません。
介護療養型医療施設の成り立ちを考えると、介護職員だけの賃金アップを目的とした介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲを取得するのは、医療スタッフが不平等感を持ってしまうので難しいと考える場合もあるでしょう。
そのため、介護職員等ベースアップ等支援加算も取得できない事業所が多くなってしまったと予想されます。
しかし今回の分配戦略では看護職員の処遇改善も行われることから、今後は介護療養型医療施設にも積極的に介護職員等ベースアップ等支援加算を取得することが期待されます。

配分した職員の範囲

「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」で介護職員等ベースアップ等支援加算を配分した職員の範囲についてたずねた所、次のような結果でした。

施設の種類

介護職員

看護職員

生活相談

員・支援相

談員

PT、OT、

STまたは機

能訓練指導員

介護支援専門員

事務職員

調理員

管理栄養士・栄養士

その他

介護老人福祉施設

99.9%

81.3%

80.2%

57.0%

73.9%

74.8%

31.1%

74.8%

24.9%

介護老人保健施設

100.0%

56.5%

53.2%

50.7%

50.4%

50.0%

16.9%

48.6%

13.9%

介護療養型医療施設

100.0%

30.2%

5.3%

22.4%

23.6% 

8.7%

0.0% 

0.0% 

8.5%

介護医療院

100.0%

33.7%

17.5% 

18.4%

30.5% 

22.3%

9.5%

18.9%

8.0%

訪問介護事業所

99.9%

16.7%

16.0%

7.3%

13.4% 

25.4%

9.6%

8.0%

2.4%

通所介護事業所

99.9% 

56.6%

67.3% 

37.3%

16.0% 

25.4%

17.3% 

11.8%

10.4%

通所リハビリテーション事業所

99.8% 

42.0%

29.0% 

42.2%

23.0%

30.0%

8.0%

24.0%

9.9%

特定施設入居者生活介護事業所

99.6% 

59.2%

64.1% 

41.6%

58.0%

35.4%

14.4%

19.4%

11.9%

小規模多機能型居宅介護事業所

99.9%

63.7%

27.9%

16.0%

56.8%

32.1%

23.2%

14.0%

7.4%

認知症対応型共同生活介護事業所

100.0%

33.3%

25.4%

12.2%

46.3%

26.4%

19.6% 

12.0%

10.9%

介護職員への配分はほとんどの事業所でほぼ100%だったのですが、看護職員と介護支援専門員への配分は事業所によって大きく対応が分かれる結果となりました。
看護職員は、配分した割合が一番多い介護老人福祉施設と一番少ない訪問介護事業所の差が64.6%です。
また介護支援専門員は、配分した割合が一番多い介護老人福祉施設と一番少ない訪問介護事業所の差が60.5%でした。
看護職員に対しては分配戦略による処遇改善、介護支援専門員に対しては介護職員等特定処遇改善加算を用いて処遇改善を行った事業所の場合、介護職員等ベースアップ等支援加算における看護職員と介護支援専門員への処遇改善に積極的ではなかったのかもしれません。
事業所としても、平等に配分をするのが難しいと考えている様子が垣間見える結果だと言えるでしょう。

具体的な昇給額

「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」で、介護職員等ベースアップ等支援加算の常勤者における届出前と届出後の平均給与額の差に基づいた昇給額は次のような結果でした。

施設の種類

昇給額

介護職員

17,490

看護職員

18,180

生活相談員・支援相談員

16,170

理学療法士、作業療法士、 言語聴覚士または機能訓練指導員

12,320

介護支援専門員

14,750

事務職員

12,710

調理員

12,800

管理栄養士・栄養士

15,360

※(単位:円)
介護職員等ベースアップ等支援加算に基づいた職員の昇給額の中では、介護職員の昇給額が一番多い結果となっています。

介護職の給料の手取りの平均額とは?

介護職員等ベースアップ等支援加算導入後に、介護職員の給料の手取りの平均額はどのように変化したのでしょうか。
「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」で、介護従事者における2022年12月の平均給与額について調べた所、次のような結果でした。

施設の種類

2022年12月の平均給与額

介護職員

318,230

看護職員

372,970

生活相談員・支援相談員

342,810

理学療法士、作業療法士、 言語聴覚士または機能訓練指導員

355,060

介護支援専門員

362,700

事務職員

308,430

調理員

262,540

管理栄養士・栄養士

316,820

※(単位:円)
一方2022年に行われた「令和4年賃金構造基本統計調査」によると一般労働者の月額賃金の平均は311,800 円だったため、介護職員の方が一般労働者より6,430円高い結果となりました。
このことから介護職員等ベースアップ等支援加算の導入により、介護職員の給料の手取りの平均額は一般労働者の手取りの平均額より上昇したことが予想されます。

介護職の給料は今後どうなるのか

介護職の給料は今後どのように変化していくのでしょうか。
介護報酬改定とそのスケジュールから見ていきましょう。

介護報酬改定に向けた基本的な視点

2023年10月11日に行われた第227回社会保障審議会介護給付費分科会では、2024年の介護報酬改定に向けた話し合いが行われました。
会議資料の中では、2024年の介護報酬改定に向けた基本的な視点は次のようなものだと説明されています。
  1. 地域包括ケアシステムの深化・推進
  2. 自立支援・重度化防止に向けた対応
  3. 良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり
  4. 制度の安定性・持続可能性の確保
介護職員の処遇改善については③の中で「介護職員の処遇改善や介護職員のやりがい・定着にもつながる職場環境の改善に向けた先進的な取組を推進していくことが必要」とされています。
良質な介護サービスを提供するためには給与を上げるということだけではなく、介護ロボットやICTの活用で介護職員が働きやすい環境を整えることも重要だと位置づけているということです。
2023年11月現在、社会保障審議会介護給付費分科会ではこの基本的な視点を踏まえながら各介護サービスにおける加算の見直しなどが話し合われています。

スケジュール

第227回社会保障審議会介護給付費分科会では介護報酬改定のスケジュールについても検討されました。
上記の画像のように、介護報酬の改定が行われる場合は年末から年始にかけて改定内容が決まり、内容を交付するのが4月となるので2024年に介護報酬改定が行われる場合もそのスケジュールを踏まえて行う可能性が高いでしょう。

まとめ

介護士の給料が上がるとする岸田首相の政策とは分配戦略のことで、その政策を具体化したのが介護職員等ベースアップ等支援加算です。
この記事も参考にして、2024年の介護報酬改定も踏まえながら自分のキャリアの方向性を決めていってください。

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