周囲から「社会福祉士はやめとけ」と言われ就業をためらっていませんか?どうしてそのように言われるのか、理由を解説していきます。
また、事業者側の改善の取り組みについてもお伝えしますので、就業を検討して悩んでいる方は参考にして下さい。
介護職はやめとけと言われる理由
介護職はどうして周囲の人からやめとけと言われてしまうのでしょうか。
3つの観点から解説します。
介護職にネガティブなイメージを持つ人が多いため
2022年にHELPMAN JAPANが発表した「介護職未経験者・介護事業者に対する意識調査」では全国の介護事業者857社、18才~50 才の全国の男女244人を対象にインターネットを通じてアンケートを行いました。
介護職未経験者244人に、介護業界への就業をためらう理由についてたずねた所、次のような結果が出ました。
回答 | 割合 |
体力的にきつい仕事の多い業界だと思うから | 54.5% |
精神的にきつい仕事の多い業界だと思うから | 44.7% |
給与水準が低めの業界だと思うから | 32.0% |
個人の向き・不向きのはっきりする業界だと思うから | 24.6% |
離職率が高い業界だと思うから | 22.5% |
休暇が取りやすい雰囲気や仕組みがなさそうな業界だと思うから | 20.1% |
他人の人生に関わるのが大変そうだと思うから | 17.2% |
自分に合った勤務時間やシフトで働けなさそうな業界だと思うから | 16.8% |
福利厚生があまり充実していない業界だと思うから | 11.5% |
介護職未経験者の人は体力や精神力が強くないと介護業界で働くのは難しいと考え、さらに業務負荷と給与や福利厚生、休暇などのバランスがよくないというイメージを持っているのがわかります。
そのため、周囲に介護職に就こうとする人や介護職をやめたいと相談する人がいれば、ついやめとけと言ってしまうのも理解できます。
ハラスメントの問題があるため
2023年11月4日のYahoo!ニュースでは、介護職に対し利用者が爪を立ててけがをさせる、罵倒されるなどのパワハラの問題や、女性職員の胸を触るといったセクハラの問題が報じられました。
報じられたパワハラやセクハラの内容は、どれも企業で仕事をしていれば許される内容ではありません。
このため、介護業界に対しこのようなひどいセクハラやパワハラがあっても見逃される業界であるというイメージを持ってしまうのはしかたがないと言えます。
また、2022年に公益社団法人日本介護福祉士会では、「介護現場におけるハラスメントの実態と対応策に関する調査」において、158人を対象にアンケートを行いました。
セクハラについて、これまで介護の現場でセクハラを受けたことがあるかをたずねた所、次のような結果が出ました。
また誰からセクハラを受けたかを聞いた所、次のような結果だったのです。
30%以上もの人が利用者からセクハラを受けているのですが、背景には相手がお客様であることや、介護職も虐待と言われるのをおそれて利用者やその家族に毅然とした対応を取りにくいといった現実があるのがうかがえます。
一方パワハラについて、これまで介護の現場で精神的な攻撃を受けたことがあるかをたずねた所、次のような結果が出ました。
また誰から精神的な攻撃を受けたかをたずねた所、次のような結果だったのです。
精神的な攻撃を受けた人が半数を超え、利用者の家族からも精神的な攻撃を受けるのであれば、相談を受けた周囲の人が介護職はやめとけと伝えたくなるのも理解できます。
介護職の賃金の低さが知られているため
2023年12月16日のYahoo!ニュースで、2024年度改定で原則3年に1回見直される介護報酬を1.59%引き上げる方向で最終調整に入ったことが報じられました。
一方、2023年に厚生労働省が行った「賃金引上げ等の実態に関する調査」で、賃金の引上げを予定している89.2%の企業に対し賃金の引き上げ時期についてたずねた所、次のような結果が出ました。
賃金の引上げ時期 | 割合 |
1月~8月のみ | 79.1% |
9月~12月のみ | 5.1% |
1月~8月および9月~12月 | 5.0% |
また1人あたりの平均賃金改定率は3.4%だったのです。
企業では年に1回または2回賃金が引き上げられるにもかかわらず、介護職は基本的に3年に1回しか昇給のチャンスはありません。
しかも企業の平均賃金改定率よりも低い割合での介護報酬の引上げなのに、確実に給与に反映されるかどうかはわからないのです。
どれだけ成果を挙げても給与にそれが反映されなければ、周囲の人が介護職はやめとけと止めたくなる気持ちも理解できます。
介護職をやめた方がいい人とやめない方がいい人の特徴
介護職をやめた方がいい人とやめない方ほうがいい人には、どのような違いがあるのでしょうか。
特徴の違いを複数の観点からご紹介します。
| 介護職をやめた方がいい人 | 介護職をやめない方がいい人 |
体力 | 自信がない | 自信がある |
コミュニケーション能力 | 自信がない | 自信がある |
アンガーマネジメント(怒りの感情と上手につきあうための知識や方法) | 実践できない | 実践できる |
レジリエンス(困難があっても精神的に回復し成長する力) | 低い | 高い |
課題の分離(自分の課題と他人の課題をわけて考えること) | 実践できない | 実践できる |
チームワーク | 苦手 | 得意 |
介護職をやめた方がいい人とやめない方がいい人を6つの観点で比較してみましたが、仕事のスキルだけではなくメンタリティが大きな影響を及ぼしているのがわかるでしょう。
周囲の人からどれだけ介護職をやめとけと言われても、本当に自分が介護職をやめた方がいいかどうかは客観的に自己分析をし、置かれている状況を鑑みて自分で判断しなければなりません。
上記の6つの観点は自己分析をするために役立つので、介護職をやめとけと言われて悩んでいる人は、自分は1つ1つの観点においてどうなのかをメモなどに書き出して整理してみましょう。
介護職をやめるメリットとデメリット
2022年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和4年度介護労働実態調査」で19,890人の介護職を対象に労働条件の悩み、不安、不満についてたずねた所、次のような結果が出ました。
労働条件の悩み、不安、不満の内容 | 割合 |
人手が足りない | 52.1% |
仕事内容のわりに賃金が低い | 41.4% |
身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある) | 29.8% |
健康面(新型コロナウイルスなどの感染症、けが)の不安がある | 29.0% |
業務に対する社会的評価が低い | 27.7% |
精神的にきつい | 26.8% |
1位の人手不足はどの業界でも同じなので解消が難しいですが、その他の悩みは転職すれば解決できる悩みです。
介護職をやめるメリット、やめるデメリットをそれぞれご紹介します。
介護職をやめるメリット
介護職をやめるメリットは次の3つです。
自分の望む給与を得られる業界を目指して転職活動ができる
今の事業所をやめた後も介護業界で働かなければならないわけではないので、心機一転して給与の高い業界を目指せます。
2022年に厚生労働省が行った「令和4年賃金構造基本統計調査」で産業別の賃金(調査を実施した年の6月の所定内給与の平均額)を調べた所、次のような結果が出ました。
産業の種類 | 賃金 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 40万2千円 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 38万5千500円 |
情報通信業 | 37万8千800円 |
教育・学習支援業 | 37万7千700円 |
金融業・保険業 | 37万4千円 |
今まで積んできたキャリアとは異なるので抵抗のある人もいるかもしれませんが、これらの業界で役立つ知識や職業スキルをハロートレーニングなどを活用して身に着けると転職しやすくなるでしょう。 自分の体力に合った働き方を選べる
厚生労働省が毎月「速報」「確報」の2つの形式で発表している「毎月勤労統計調査」を見ると、次のような内容を知ることができます。
- 業種別の月間実労働時間と出勤日数
- 業種別の月間現金給与額
自分が転職したい業界の最新の労働時間や出勤日数、給与額を知ることができるので、自分の体力でどのくらい稼げるのかがわかるのです。
介護職として働くと自分の体力の限界に気づきやすくなるので、やめた後はそれを活かして自分の体力に合った働き方の職場を選べるでしょう。
専門性の高い仕事を選んで転職活動ができる
2022年にHELPMAN JAPANが発表した「介護職未経験者・介護事業者に対する意識調査」で介護業界の事実・就労実態認知状況についてたずねた所、「資格の有無にかかわらず、未経験からでもスタートできる業種であること」という回答が30.3%で1位でした。
介護職は未経験からでもスタートできる職種だというのが広く知られてしまっているため、「令和4年度介護労働実態調査」で「業務に対する社会的評価が低い」という不満を持つ介護職の人が27.7%となるのもうなずける結果だと言えます。
このような思いをしないためにも、介護職をやめる前に資格を取得したり、新たなスキルを身に着けたりして次は専門性の高い仕事に就くとよいでしょう。
介護職をやめるデメリット
介護職をやめるデメリットは次の2つです。
転職先に確実になじめるとはかぎらない
どのような人でも同じですが、転職先の人間関係に確実になじめるとは限りません。
介護業界は転職者の多い業界なのでなじみがない考え方かもしれませんが、転職者がそもそも少ない業界では「転職者」というだけで周囲から浮いてしまう可能性もあります。
2020年に厚生労働省が発表した「雇用の構造に関する実態調査」で転職者の割合を聞いた所一番転職者が多いのはサービス業で11.1%、少ないのは複合サービス事業で1.8%となっており、その差は9.3%もあるのです。
転職先を決める時には、転職者が受け入れられやすい業界かどうかを調べておくのが大切です。
他業種に転職するとキャリアが途切れる
他業種に転職した場合、キャリアが途中で途切れるのもデメリットの1つです。
しかし、人手不足の現在未経験からでも受け入れてくれる企業は多数あるため、少しずつでも次の仕事に向けてスキルアップし、転職活動に自信を持って挑みましょう。
介護職はやめとけと言われないための取り組み
各事業所では、介護職はやめとけと言われないためにどのような取り組みをしているのでしょうか。
「令和4年度介護労働実態調査」で介護職の働く上での悩み、不安、不満を解消するために事業所はどのような取り組みをしているかをたずねたので、その結果を踏まえて3つご紹介します。
労働条件改善のための取り組み
調査結果で多かった労働条件の悩みを解消するため、事業所では次のような取り組みをしています。
悩みの内容 | 取り組み |
人手が足りない | - 福祉機器やロボットの導入(15.6%)
- 勤務体制を決める際の職員の要望を聞く機会の設定(48.7%)
|
仕事内容のわりに賃金が低い | - 能力や資格取得に合わせて賃金が上がる仕組み(37.1%)
- 介護能力を適切に評価する仕組み(26.6%)
|
身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある) | |
健康面(新型コロナウイルスなどの感染症、けが)の不安がある | |
業務に対する社会的評価が低い | - 働き方や仕事内容、キャリアについて上司と相談する機会の設定(45.9%)
|
精神的にきつい | |
労働条件を改善するためにはまだ十分な取り組みとは言えませんが、人事評価制度が導入され相談体制ができるなど、少しずつ介護の現場が変わり始めている様子がうかがえます。
相談窓口の設置
何か悩みがあった時に相談を受ける担当者の存在や窓口があるかたずねた所、次のような結果でした。
回答 | ある | ない | わからない | 無回答 |
割合 | 43.5% | 33.1% | 21.1% | 2.3% |
40%程度の事業所に相談窓口が設置されていることから、今後もこの数が増加すれば介護職の課題解決に速やかに取り組める体制ができてくるでしょう。
雇用管理責任者の設置
雇用管理責任者とは、事業所において介護職の雇用管理への改善の取り組みや相談対応などの管理業務を担当する人のことです。
雇用管理責任者の有無についてたずねた所、次のような結果が出ました。
回答 | いる | いない | わからない | 無回答 |
割合 | 34.9% | 16.6% | 45.6% | 2.9% |
「わからない」という回答が45.6%と半数程度を占めたことから、雇用管理責任者がいても機能していない事業所が一定数あるのが現状ではないでしょうか。
雇用管理責任者の重要性を各事業所が理解し、介護職が気軽に相談できる体制を整えることで、雇用管理が少しずつ変化していくでしょう。
まとめ
介護職はやめとけと周囲の人に言われ、ハラスメントの問題があることや賃金の低さから反論しにくい状態に置かれている人は少なくないでしょう。
この記事を読み、介護職をやめるという選択肢もあることを理解した上で、後悔のない決断をしてみてください。
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