介護職の給料が上がる仕組みとは?
介護職の給料が上がる仕組みとはどのようなものなのでしょうか。
介護業界の給料が上がる要因と、介護職の給料が上がる要因の2つにわけてご紹介します。
介護業界の給料が上がる要因
介護業界の給料が上がる要因は次の2つです。
事業所の経営状態が良くなった時
介護業界の給料が上がるのは、各介護サービスにおける介護事業所の経営状態が良くなった時です。
厚生労働省の「介護事業経営実態調査」では、介護サービス別の収支差率と収入に対する給与費の割合が公表されています。
収支差率とは介護事業所の売上に対する利益率を表す数値で、次の公式で求めることができます。
収支差率 =(介護サービスの収入額 - 介護サービスの支出額)/ 介護サービスの収入額
収支差率の値が高いほど利益率が高いので、経営状態は良いことになるのです。
2023年度の実態調査でわかった主な介護サービスにおける収支差率と、収入に対する給与費の割合は次の通りです。
介護サービスの種類 | 収支差率 | 収入に対する給与費の割合 |
介護老人福祉施設 | -1.0% | 65.2% |
介護老人保健施設 | -1.1% | 64.2% |
訪問介護 | 7.8% | 72.2% |
通所介護 | 1.5% | 63.8% |
短期入所生活介護 | 2.6% | 62.5% |
福祉用具貸与 | 6.4% | 35.3% |
認知症対応型共同生活介護 | 3.5% | 64.0% |
2023年度は介護老人福祉施設、介護老人保健施設などの収支差率がわずかながらマイナスになってしまいあまり良くなかったため、収支差率がプラスになっている訪問介護や福祉貸与などと比較すると給料を上げにくいのがわかります。
介護保険で介護職員の処遇改善が行われた時
介護業界の給料が上がるのは、介護保険における介護報酬の改定で介護職員の処遇改善が行われた時です。
例として2022年10月から介護事業所では介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の3つが取得できるようになりました。
そのため介護事業所がこれらの加算を取得し、それを介護職の処遇改善に充てれば介護業界全体として給料が上がる仕組みとなっているのです。
しかし実際の取得状況は次のような結果でした。
| 2022年10月 | 2023年4月 |
介護職員処遇改善加算 | 93.8% | 93.8% |
介護職員等特定処遇改善加算 | 75.9% | 77.0% |
介護職員等ベースアップ等支援加算 | 85.4% | 92.1% |
取得した事業所が100%ではないので、介護業界全体として給料が上がる傾向にはなっても必ずしも上がるわけではないのが現状だとわかります。
介護職の給料が上がる要因
2022年に行われた「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」において1,283件の事業所・施設を対象に給与等の引き上げの要件についてたずねた所、次のような結果でした。
項目 | 割合 |
勤続年数 | 24.4% |
経験年数 | 14.3% |
資格の保有 | 24.8% |
サービス提供責任者 | 3.9% |
主任介護支援専門員 | 1.0% |
勤務形態(常勤・非常勤) | 27.9% |
雇用形態(正規・非正規) | 20.2% |
勤務時間 | 11.9% |
管理職(ユニットリーダーを除く) | 7.1% |
管理職以外 | 10.3% |
人事評価 | 37.9% |
要件にかかわらず | 6.9% |
その他 | 13.8% |
人事評価に基づいて給料を上げる事業所や施設が37.9%と多めではあるものの、意外とさまざまな要件に分かれているので、介護職は給料を上げたければ自分の働く事業所や施設がどのような要件で給料を上げるのか把握しておくことが大切です。
なぜ介護職は給料が安いのか
どうして介護職は給料が安すぎると言われているのでしょうか。
3つの観点からご紹介します。
介護保険に依存したビジネスモデルのため
介護事業所の売上の多くを占めるのは介護保険サービスにおける介護報酬です。
介護報酬は対象者の要介護度と適用される介護サービスごとに、決められた単位数に応じて介護事業所に支払われる仕組みになっています。
介護報酬から運営費を差し引いた分が介護事業所の利益ですが、単位数は同じ介護保険サービスであればどの介護事業所でも一緒であるため、介護保険サービスにおいて介護事業所は運営費を節約し利用者の数を増やすことでしか利益を増やせないのです。
介護事業所の運営は介護保険に依存したビジネスモデルのため大きく利益を増やすのは難しく、介護職は給料が安すぎると言われてしまうのです。
一般企業と比較すると昇給の回数が少ない
2022年に厚生労働省が発表した「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」において、介護職員は2022年12月と2021年12月では平均給与額が17,720円上がったことがわかりました。
一方2023年に厚生労働省が発表した「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、一般労働者の1人平均賃金の改定額は9,437円でした。
これらの金額だけを見ると、一見介護職の方が平均給与額が多く上がっているように見えます。
しかし「賃金引上げ等の実態に関する調査」において賃金の改定の実施時期について聞いた所、次のような結果だったのです。
回答 | 割合 |
1月~8月のみ | 79.1% |
9月~12月のみ | 5.1% |
1月~8月および9月~12月 | 5.0% |
介護職の場合3年ごとに行われる介護報酬の改定に介護職員の処遇改善が盛り込まれたり、補正予算で処遇改善がされたりしないと給料が上がる可能性は低いのですが、一般企業では毎年1回、多ければ2回は昇給するということです。
これらのことから、長期で考えると介護職は一般労働者と比較すると昇給の回数が少ないと言えるでしょう。
慢性的な人手不足により業務量に給料が見合っていないと感じやすい
2022年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和4年度 介護労働実態調査」において労働条件の悩みについてたずねた所、次のような結果が出ました。
項目 | 割合 |
人手が足りない | 52.1% |
仕事内容のわりに賃金が低い | 41.4% |
身体的負担が大きい | 29.8% |
精神的にきつい | 26.8% |
休憩が取りにくい | 22.6% |
有給休暇が取りにくい | 26.2% |
慢性的な人手不足により、労働の内容と対価である給料が見合っていないと感じる人が多いため、介護職は給料が安すぎると言われてしまうのが現状だとわかります。
介護職の給料が上がるタイミングとは?
前の項目でもご紹介した通り、一般労働者と比較すると介護職は給料が上がるタイミングが少ないのですが、今後給料が上がるタイミングはいつになるのでしょうか。
2024年1月現在わかっている、2023年と2024年の介護職員の処遇改善の内容についてご紹介します。
2023年
2023年度の補正予算案において、介護業界の賃上げが低水準であることを踏まえて必要な介護人材の確保と2024年の春闘に向けた賃上げの議論に先んじて、介護職員の処遇改善をするのを目的に、「介護職員処遇改善支援事業等」が行われることとなりました。
「介護職員処遇改善支援事業等」に充てられる補正予算額は364億円となっており、介護職員を対象に賃上げ効果が継続される取り組みをするのを前提として、介護職員等ベースアップ等支援加算に上乗せする形で収入を2%(月額6,000円相当)引き上げるとしています。
対象期間は2024年の2月~5月の賃金引上げ分となっています。
まずは上記の期間内に自分の介護事業所で昇給の話があるかどうかを確認することが大切です。
2024年
2024年1月22日に行われた第239回社会保障審議会介護給付費分科会で、2024年6月に行われる予定の介護職員の処遇改善について話し合われました。
処遇改善の内容は介護の現場で働く人に対し2024年度は2.5%、2025年度は2.0%のベースアップにつながるよう加算率の引上げを行うというものです。
また、前の項目でもご紹介した通り介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の取得率は100%ではなかったことから、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化することとしました。
具体的な変更内容は次の通りです。
現行の加算 | 改定後の加算 |
介護職員処遇改善加算(Ⅰ) 介護職員処遇改善加算(Ⅱ) 介護職員処遇改善加算(Ⅲ) 介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ) 介護職員等特定処遇改善加算(Ⅱ) 介護職員等ベースアップ等支援加算 | 介護職員処遇改善加算(Ⅰ) 介護職員処遇改善加算(Ⅱ) 介護職員処遇改善加算(Ⅲ) 介護職員処遇改善加算(Ⅳ) |
自分の働く介護事業所においても、今年度と来年度のベースアップがあるかどうかを注視するのが大切です。
介護職が給料を今後も上げるためには
介護職が給料を今後も上げるためには、どのような働き方をするのが望ましいのでしょうか。
2つの観点からご紹介します。
事業所の人事評価制度に基づいて成果を挙げる
前の項目でご紹介した通り、「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」において、給与等の引き上げの条件を人事評価制度としている事業所が37.9%で一番多いという結果でした。
このことから、まずは自分が働いている介護事業所の人事評価制度を確認し、どのような働き方が昇給の条件になっているのかを確認するのが望ましいでしょう。
例として介護職員を評価する仕組みの1つに、「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」があります。
この制度の場合、介護サービスの従事者に対してエントリーレベルからプロレベルまで7段階でレベル認定を行い、これをキャリア段位として職業能力を評価します。
レベル認定は「できる(実践的スキル)の評価基準と「わかる(知識)」の評価基準の2つの面から行い、1事業所に対して複数のアセッサー(評価者)の配置を推奨しているので、客観的に仕事のレベルを評価してもらえるというわけです。
人事評価制度の内容を理解したら、それに基づいて成果を少しずつ積み重ねていく姿勢が大切です。
資格を取得する
「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」において、持っている資格別に平均給与額をたずねた所、次のような結果が出ました。
資格の種類 | 平均給与額(単位:円) |
介護福祉士 | 331,080 |
社会福祉士 | 350,120 |
介護支援専門員 | 376,770 |
介護福祉士実務者研修 | 302,430 |
介護職員初任者研修 | 300,240 |
保有資格なし | 268,680 |
同じ介護職でも資格の有無で平均給与額が変わるのはもちろんですが、持っている資格によっても金額には差があるのが見て取れます。
例えば介護支援専門員の資格を持つ人と資格なしの人では、月収で108,090円、年収で1,297,080円もの収入差ができてしまうこととなるのです。
このことから、介護職で給料を上げるならやみくもに資格を取得するのではなく、平均給与額が高い資格を選んで取得するのが望ましいと言えるでしょう。
費用対効果の高い資格を事前に調べて選び、効率的に稼ぐことをおすすめします。
まとめ
介護職の給料が上がるのは3年に1度行われる介護報酬の改定や介護事業所の経営状態が良い時ですが、タイミングを逃さず昇給するためにも日頃から自分の事業所の人事評価制度で評価される働き方をするのが大切です。
また資格を取得するなら、費用対効果を考えて平均給与額の高い資格を選んで取得するのが望ましいでしょう。
この記事も参考にして、自分の働きがきちんと給与面でも評価されるよう働き方や資格の取り方を見直してみてください。