介護施設・事業所における防災対策とは?BCP作成のポイントもご紹介

仮設トイレ
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新しく介護施設の施設長や、介護サービス事業所のサービス提供責任者として働き始めた人の中には、高齢者の方に対する災害時の対応をどのようにすればよいかあまりイメージがわかないという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、介護施設・介護サービス事業所における防災対策の基本からBCP作成のポイントまで詳しく解説します。

介護における防災対策とは?

防災スタッフ
介護施設や介護サービス事業所における防災対策でどのようなことを行えばよいのかをイメージするためには、まず高齢者のための防災とは何かを知ることが大切です。

NHKでは大災害が発生した時、「誰も取り残さない防災」を目指してサポートが必要な高齢者や障がい者向けの情報と、普段からどのように災害に備えればよいかをまとめた「災害時障害者のためのサイト」を公開しています。

このサイトを参考に、高齢者における避難時の持ち物、災害への備え、災害時の対応、支援のポイントを具体的に見ていきましょう。

高齢者における避難時の持ち物

高齢者が避難する際に持ち出したい物は次の通りです。

・普段使用している内服薬と外用薬
・健康保険証、お薬手帳、介護保険被保険者証
・障害者手帳(交付されている人)
・緊急連絡先や必要な支援内容が記載されたヘルプカード
・常備薬
・非常用食料(ゼリードリンク、ミネラルウォーターなど)
・普段使用している杖、眼鏡、コンタクトレンズなど
・歯磨きセットや入れ歯洗浄剤
・下着、紙おむつ、ウェットティッシュなど
・筆記用具やスマホ

ヘルプカードとは高齢者や障がいのある人が災害時や日常生活で困りごとがあった際に、周囲の人にサポートや理解を求めるために使うカードなので、必要な場合は住んでいる市区町村に問い合わせをしましょう。

参考:東京都福祉保険局「ヘルプカード」

高齢者に必要な災害への備え

高齢者に必要な災害への備えは次の通りです。

項目

概要

自宅での準備

・非常持ち出し袋を作る
・出入口付近に倒れそうな家具を置いていないか確認する
・手すりの設置や段差の解消など安全に移動できるようにする

避難への準備

・避難訓練に参加し避難方法を確認する
・避難経路を複数考えておく
・地方自治体が作成する避難行動要支援者名簿に登録する
・ヘルプカードを作成する
・お薬手帳を常に最新の状態にしておく
・近所の人と顔なじみになっておく

周囲の人との相談

・災害時の支援について介護者と相談する
・家族の不在時の行動について相談する
・家族内での連絡手段や集合場所を決める
・外出先で災害となった場合の行動について決める

避難行動要支援者名簿とは、災害対策基本法第49条の10に基づいて市町村に作成が義務付けられている名簿で、災害が発生した際に自分で避難することが困難で支援が必要な人を記載しておくものです。

避難行動要支援者名簿には次の内容が記載されます。
・名前
・生年月日
・性別
・住所
・連絡先
・避難支援が必要な理由
・その他市町村が必要と認める事項

名簿は災害時の安否確認や避難のサポートをする際に使用します。

参考:e-GOV法令検索「災害対策基本法」

高齢者における災害時の対応

高齢者の方本人が意識しておきたい災害時の対応は次の通りです。

・1人で避難しようとせず家族や近所の人にサポートしてもらう
・移動できない場合は助けを呼ぶ
・動けない場合は安全な場所で救助を待つ
・避難所に行かず自宅にとどまる場合はその旨を届け出る
・水分補給を行いトイレを我慢しない
・なるべく普段通り食事を取る
・内服薬や外用薬がなくなった場合避難所の医療スタッフに相談する
・ヘルプカードを活用し周囲に配慮してほしいことを伝える
・清潔を保ち運動不足にならないようにする
・衣服や毛布で体温調節をし風邪を予防する
・睡眠をしっかり取る
・気分がすぐれない時や体調が良くない時は医療スタッフに相談する

普段から家族や介護者が、高齢者の方に災害時の対応について説明しておくことが大切です。

高齢者への支援のポイント

家族や介護者が知っておきたい、高齢者への災害時への支援のポイントは次の通りです。

項目

概要

移動時のサポート

・高齢者の人が自宅に取り残されていないか安否を確認する
・寝たきりの人を移動させる場合はおんぶをするためのひも、シーツ、毛布などを利用する

避難所でのサポート

・高齢者の噛む力や飲み込む力に合わせて柔らかいものや細かく刻んだものを提供する
・仮設トイレは清潔を維持し照明を明るくして使いやすくする
・おむつを交換できるプライベートなスペースを確保する
・感染症の予防に努める
・散歩や体操で身体を動かすよう声がけする

認知症の人へのサポート

・災害によるストレスや生活環境の急激な変化による症状の悪化が見られる時があるため様子観察を怠らない
・なるべく規則正しい生活を送ってもらうようにする
・家族や近所の人、友人などに側にいてもらうようにする
・家族だけで対応しようとせず介護士など専門職にサポートしてもらうようにする

高齢者は災害時に体調を崩したり、生活にサポートが必要であっても我慢したりしやすいため周囲の人が積極的にニーズを聞く姿勢が大切だと言えるでしょう。

参考:NHK「災害時障害者のためのサイト」

介護施設・事業所における防災対策が注目される背景とは?

BCPアイコン
高齢者に対しては、普段からの災害への備えや避難所での生活も含めて細やかなサポートが必要ですが、介護施設や介護サービス事業所における防災対策が注目される背景にはどのようなことがあるのでしょうか。

2021年に行われた介護報酬改訂においては、介護施設や介護サービス事業所における感染症や災害への対応力を強化することが決まりました。

具体的には、感染症や災害が発生した場合でも必要な介護サービスを継続して提供できる体制を整えるため、全ての介護施設や介護サービス事業所を対象に業務継続計画(Business Continuity Plan=BCP)の作成、研修や訓練の実施を義務づけたのです。

また厚生労働省ではBCPの作成を支援するために、「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」やBCP作成のための研修動画をホームページに掲載しています。

これらのことから、3年間の経過措置期間の間に全ての介護施設や介護サービス事業所においては防災対策について考え、その内容をBCPとして形にしなければなりません。

参考:厚生労働省「令和3年度介護報酬改訂における改訂事項について」
参考:厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」

介護施設・事業所におけるBCP作成のポイント

開いたノートの一ページ
介護施設・介護サービス事業所における防災対策を踏まえたBCP作成のポイントを、厚生労働省の「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」と研修動画の内容を踏まえてご紹介します。

BCPとは?

BCPとはBusiness Continuity Planの頭文字を取った言葉で、業務継続計画のことです。

BCPの中では災害や感染症など、不測の事態が発生しても重要な業務を中断させない、または可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順などが示されています。

介護施設・事業所におけるBCP作成のポイント

介護施設や介護サービス事業所においては、災害が発生した際には次の理由により利用者へのサービス提供が困難となります。

・建物や設備が壊れる可能性があるため
・電気、ガス、水道などのインフラが止まる可能性があるため
・災害時対応をすることで現場での人手不足が発生するため

また要介護者は日常生活のほとんどを介護サービスに依存していることが多いことから、サービス提供が行われなくなると生活、健康、生命の維持に支障が出るでしょう。

介護施設や介護サービス事業所がBCPを作る場合、これらのことを考慮して準備を進める必要があるので、次の4つのポイントに気を付けて作成、運用することをおすすめします。

・正確な情報を収集し、それを基に判断できる体制を作ること
・防災対策を事前の対策と被災時の対策の2種類同時に準備すること
・業務を整理し優先順位をつけること
・作成後は災害発生時にBCPに基づいた行動が取れるよう周知、研修、訓練を行うこと

災害の時にBCPに基づいた適切な行動を取ることで、利用者への影響を極力少なくすることができます。

BCPに記載する内容

介護施設や介護サービス事業所が適切な防災対策を進めるためには、BCPにどのようなことを記載するのは望ましいのでしょうか。

「総論」「平常時の対応」「緊急時の対応」「他施設との連携」「地域との連携」に分けてご紹介します。

総論

BCPの総論には、次のことを記載しましょう。

項目

概要

基本方針

・介護施設、介護サービス事業所における防災対策の基本方針

推進体制

・平常時の防災対策の推進体制

リスクの把握

・拠点周辺のハザードマップの状況
・地方自治体が公表しているインフラなどの被災想定

優先する事業と業務の選定

・複数の事業を運営している場合どの事業とその中でどの業務を優先して行うか

研修と訓練の実施、BCPの検証と見直し

・BCPの内容について周知するための研修や訓練、その結果を基にした検証や定期的な見直しの内容

介護施設や介護サービス事業所としての防災対策の基本となる部分なので、内容を精査し現状に合わせて定期的に見直しをすることが大切です。

平常時の対応

平常時の対応として、BCPには次のことを記載しましょう。

項目

概要

建物や設備の安全対策

・人が常にいるスぺースにおける耐震措置、設備の耐震措置、水害対策について

送電が止まった場合の対策

・自家発電機の設置がある場合とない場合によって記載内容が異なる

ガスの供給が止まった場合の対策

・都市ガスの場合は復旧に長ければ1か月程度かかることを想定して記載する

水道が止まった場合の対策

・飲料水と生活用水に分けてそれぞれの確保策と削減策

通信ができなくなった際の対策

・被災時に施設内実際に通信が行える手段について使用可能な台数、バッテリー容量や使用方法を記載する

業務に使用するシステムが停止した時の対策

・事務処理を手書きで行うなどの代替手段
・データが失われる場合があることを想定したバックアップの手段

衛生面の対策

・職員と利用者が使用するトイレと汚物処理の方法

備蓄品

・必要な量と在庫の量

災害に備えた資金 

・緊急時のための手元資金や契約している火災保険について

介護施設や介護サービス事業所が災害時もサービスの提供を続けるためには、平常時の対応が大切だということを考慮し、確実に実行できる防災計画を記載することが重要です。

緊急時の対応

緊急時の対応として、BCPには次のことを記載しましょう。

項目

概要

建物や設備の安全対策

・人が常にいるスぺースにおける耐震措置、設備の耐震措置、水害対策について

送電が止まった場合の対策

・自家発電機の設置がある場合とない場合によって記載内容が異なる

ガスの供給が止まった場合の対策

・都市ガスの場合は復旧に長ければ1か月程度かかることを想定して記載する

水道が止まった場合の対策

・飲料水と生活用水に分けてそれぞれの確保策と削減策

通信ができなくなった際の対策

・被災時に施設内実際に通信が行える手段について使用可能な台数、バッテリー容量や使用方法を記載する

業務に使用するシステムが停止した時の対策

・事務処理を手書きで行うなどの代替手段
・データが失われる場合があることを想定したバックアップの手段

衛生面の対策

・職員と利用者が使用するトイレと汚物処理の方法

備蓄品

・必要な量と在庫の量

災害に備えた資金 

・緊急時のための手元資金や契約している火災保険について

介護施設や介護サービス事業所が災害時もサービスの提供を続けるためには、平常時の対応が大切だということを考慮し、確実に実行できる防災計画を記載することが重要です。

緊急時の対応

緊急時の対応として、BCPには次のことを記載しましょう。

項目

概要

BCPの発動基準

・災害の種類別にBCPを発動する基準を記載する

災害時の行動基準

・災害発生時の個人の行動基準

災害対応の体制

・災害対応の体制や各チームの役割

災害対応の拠点

・緊急時の対応の拠点となる安全で機能性の高い場所を選定

安否確認

・利用者と職員の安否確認方法について

職員の参集基準

・災害が起こった際の参集基準

施設内・施設外での避難場所と避難方法

・災害時に一時的に避難できる避難場所とそこへの避難方法

重要な業務の継続

・総論に記載した優先業務の中から特に重要な業務の継続方法

職員の管理

・職員が休憩や宿泊をする場所、勤務シフトについて

復旧への対応

・被害点検シートのテンプレート、業者の連絡先一覧、情報発信について

実際にBCPを運用しなければならなくなった状況での対応を記載するため、さまざまな場合を想定することが大切です。

他施設との連携

他の施設との連携体制については、次のようなことを記載しましょう。

項目

概要

事前準備

・災害時の支援内容や今後準備する必要のある事項について

入所者・利用者情報の整理

・避難先の施設で利用者が適切なケアを受けるために必要な情報の整理について

共同訓練

・連携先と共同で行う訓練の概要について

災害時に近場にある施設や事業所とスムーズに連携を図り利用者の生活を守るためにも、日頃から良好な関係を維持しておくことが大切です。

地域との連携

地域との連携については、次のようなことを記載しましょう。

項目

概要

被災時の職員派遣

・官民協働による災害福祉支援ネットワークへの参加や災害福祉派遣チームへのチーム員登録について

福祉避難所の運営

・福祉避難所の指定を受けた場合の対応と開設のための事前準備について

福祉避難所について詳細を知りたい場合は、内閣府の防災情報のページから内容を確認しておきましょう。

参考:厚生労働省老健局「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」
参考:内閣府 防災情報のページ「避難所の生活環境対策」

まとめ

手をつないでいる二人
介護施設や介護サービス事業所における防災対策を適切に行うためには、まず高齢者のための防災とは何かを知り、厚生労働省のBCPガイドラインを参考にして自分の施設や事業所の実態に則したBCPを作成することが大切です。

この記事も参考に、ぜひ介護における防災対策への理解を深めてみてください。
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