10年後の介護業界はどうなっている?働く場として抱える課題とは?

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10年後の介護業界はどのようになっているのでしょうか。
10年後の介護業界は、未来年表において2035年に、日本の介護技術をアジアに輸出する「アジア健康構想」が実現すると予想されています。
この記事では、働く場として抱える課題からその解決策、それを踏まえてどのような人に向いているのかを解説します。

介護業界が働く場として抱える課題

年収
介護業界が働く場として抱える課題を、解決に近づいている課題と解決がまだ難しい課題の2つにわけてご紹介します。

解決に近づいている課題

介護業界が働く場として抱える課題の中で、解決に近づいている課題は次の3つです。

年収

2022年に厚生労働省が発表した令和4年賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の平均年収は311万8千円でした。

一方2021年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した令和3年度介護労働実態調査の結果によると、月給で勤続年数2年以上の人の平均年収は次のような結果でした。

職種

平均年収

訪問介護員

324万3,882円

介護職員

345万7,919円

サービス提供責任者

389万9,562円

生活相談員

382万3,607円

看護職員

427万7,122円

介護支援専門員

391万2,746円

全体

365万9,292円

一般労働者と介護業界で働く人全体の平均年収を比較すると、介護業界で働く人の年収が54万1,292円多くなっています。

国は介護職員の処遇改善として介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算などを創設して加算額を賃金改善にあてる仕組みを整えてきました。

2022年10月には介護職員処遇改善加算が93.8%、介護職員等特定処遇改善加算が75.9%、介護職員等ベースアップ等支援加算が85.4%という高い取得率となったため、介護職員の年収改善につながったと言えるでしょう。

参考:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査結果について」
参考:厚生労働省「介護職員の処遇改善」

離職率

2021年に厚生労働省が発表した令和3年雇用動向調査の結果によると、一般労働者の離職率は11.1%でした。

一方2021年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した、令和3年度介護労働実態調査の結果によると、1年間の離職率は次のような結果だったのです。

職種

雇用形態

離職率

訪問介護員

無期雇用職員

13.9%

 

有期雇用職員

12.9%

サービス提供責任者

無期雇用職員

10.0%

 

有期雇用職員

10.8%

介護職員

無期雇用職員

13.6%

 

有期雇用職員

17.3%

3職種全体

14.1%

一般労働者と介護業界の3つの職種における平均離職率を比較すると、介護業界の3つの職種における平均離職率の方が3%高くなっていますが、それほど大きな差とは言えないでしょう。

介護労働実態調査で、早期離職防止や定着促進のためにどのような方策を取っているかをたずねたところ次のような結果でした。

早期離職防止や定着促進のための方策

割合

本人の希望に応じた勤務体制にする等の労働条件の改善に取り組んでいる

66.6%

残業を少なくする、有給休暇を取りやすくする等の労働条件の改善に取り組んでいる

62.1%

職場上の仕事上のコミュニケーションの円滑化を図っている

51.3%

能力や仕事ぶりを評価し、賃金などの処遇に反映している

36.8%

業務改善や効率化等による働きやすい職場作りに力を入れている

35.1%

各介護事業所で離職率を減らすための取り組みを積極的に行うことが、一般労働者とあまり変わらない離職率の維持につながっていると言えるでしょう。

参考:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」
参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査結果について」

働き方改革

2019年4月から始まった働き方改革ですが、介護業界でも少しずつ取り組みが進められています。

具体的には福祉機器、ICT機器、介護ロボットの活用で仕事の効率化を進めているのです。

2021年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した令和3年度介護労働実態調査で、介護ロボットの導入についてたずねたところ次のような結果でした。

介護ロボットの導入

割合

見守り・コミュニケーション(施設型)

2.8%

移乗介助(装着型)

1.6%

介護業務支援

1.6%

入浴支援

1.3%

移乗介助(非装着型)

0.8%

介護ロボットの導入は、導入コスト以外にも誤作動の不安やケアに介護ロボットを活用するのに違和感があるなどの理由で、なかなか進まないのが現状です。

しかし少しずつ介護ロボットへの理解が深まり導入する事業所が増加すれば、介護業界における働き方改革がより進むでしょう。

参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査結果について」

解決がまだ難しい課題

介護業界において解決するのがまだ難しい課題を3つご紹介します。

高齢者虐待

2021年に厚生労働省が発表した「令和3年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」では次のような調査結果が出ました。

 

2006年度

2013年度

2021年度

相談・通報件数

273件

962件

2,390件

虐待判断件数

54件

221件

739件

2006年から2021年までの15年間で相談・通報件数は約8.8倍、虐待判断件数は約13.7倍に増加しています。

国は調査結果に基づく対応を体制の整備や市町村への支援などで強化していますが、件数の増加をまだ止めることはできていません。

参考:厚生労働省「令和3年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」

人手不足

厚生労働省職業情報提供サイトJobtagが公表している、介護業界における職種別の2021年の有効求人倍率は次の通りです。

職種

2021年の有効求人倍率

介護支援専門員

4.18倍

施設介護員

3.05倍

訪問介護員

12.57倍

老人福祉施設生活相談員

3.6倍

訪問介護員の有効求人倍率が特に高く求職者1人につき12件程度の求人があるということなので、人手不足が大きな課題となっているのがうかがえます。

参考:「厚生労働省職業情報提供サイト Jobtag」

DX推進

2022年、トライトグループが10代~60代の男女介護従事者303名を対象に行った「介護事業所におけるDX実態調査」で、職場においてDXが進んでいる分野について聞いたところ、次のような結果が出ました。

DXが進んでいる分野

割合

介護記録業務

51.8%

介護報酬請求業務

41.1%

身体介護業務

34.5%

人事業務

28.0%

その他、施設利用者の支援業務

27.4%

DXに取り組んではいるものの、まだ完全に介護業界に浸透してはいないのが現状だと言えるでしょう。

一方DXを進める上で課題と感じることについてたずねると、次のような結果が出たのです。

DXを進める上で課題と感じること

割合

知識・ノウハウがない

43.2%

予算がない

40.3%

費用対効果が低い・わかりにくい

31.7%

人的リソースがない

23.8%

適したサービスがない

13.2%

介護業界においてさらにDXを進めるためには、現場に必要な情報提供をわかりやすい形で行って理解を得たり、介護業界で使いやすいサービスを提供したりするのが重要だと言えるでしょう。

参考:AIケアラボ「介護従事者303名の声から判明した介護DXの課題と、解決に向けてできること」

介護業界の課題を踏まえた今後の動向

右肩上がりの棒グラフ
介護業界の課題を踏まえた今後の動向を、市場規模と未来予測の2つの観点からご紹介します。

介護業界の市場規模

2022年に日本経済新聞社が発表した「サービス業調査」によると、2021年の有料老人ホームの売上高は前年比2.6%、在宅福祉サービスの売上高は5.9%増加し、介護サービスへのニーズが増加しているのがわかります。

また厚生労働省によると2021年度の介護費用は11兆29億円で過去最多となりました。

これらのことから日本の高齢化に伴い、介護業界の市場規模はさらに大きくなることが予想されます。

参考:日経コンパス「老人ホーム・介護サービスの業界概要」

介護業界の未来予測

博報堂生活生活総合研究所のホームページでは介護に関する未来年表が公表されているため、その中から10年後、20年後、30年後の介護業界で起こると予想されている内容をご紹介します。

10年後の介護業界

未来年表では2035年に、日本の介護技術をアジアに輸出する「アジア健康構想」が実現すると予想しています。

アジア健康構想では、日本で介護を学ぶアジアの人材を増やすとともに、日本の介護事業者のアジアへの展開や、相手の国が自らおこす介護事業を支援することで、日本で学んだ人材の雇用創出やアジア全体での人材育成や産業振興を好循環させるのを目指します。

現在アジア健康構想の実現のために行っている取り組みは次の5つです。
・アジアに紹介する「日本的介護」の整理
・人材還流、教育関連の整理
・介護事業者の海外展開支援に関するワーキンググループを設置
・ASEANやAPECなど、外交機会におけるアジア諸国への対外発信
・高齢化関連シンポジウムの開催など

実現すれば日本とアジアで質の高い介護人材が行き来するだけではなく、ICTや介護ロボットの技術も広まりアジアの高齢者のQOL(生活の質)を上げることができるでしょう。

参考:内閣官房健康・医療戦略室「『アジア健康構想』について」

20年後の介護業界

2023年5月現在、ドクターメイトがお役立ち資料ダウンロードのページで公開している「2023最新データで徹底解説 介護業界×人材確保未来予想図」では、2040年には国民の3人に1人が高齢者になると予想しています。

2040年には第2次ベビーブーム時代に生まれた「団塊ジュニア世代」が全員65歳以上の高齢者となる時期に重なるためです。

社会インフラを支える労働者世代が減少することで、介護業界も含めて人材不足となります。

また納税額は減りますが、国の社会保障費は加速度的に増加するでしょう。

参考:ドクターメイト「2023最新データで徹底解説 介護業界×人材確保未来予測図」

30年後の介護業界

未来年表では、東北大学大学院工学研究科平田泰久教授が掲げた目標として、2050年には誰もが介護ロボットの支援を受けられる社会になると紹介しています。

平田泰久教授が所属する平田・翁・サラザル研究室/田村研究室では、次のような研究開発を行っています。
・非駆動型ロボットの運動制御技術を用いた移動台車システムの研究開発
・リハビリテーションなどに活用できる力覚提示システムの研究開発
・利用者の動作を実時間で計測することで、利用者の状態や意図した運動を推定する研究開発

これらの研究が実用化されれば、介護の現場への介護ロボットの導入がさらに加速化するでしょう。

参考:博報堂生活総合研究所 未来年表「介護の未来」
参考:東北大学 知能機械デザイン学分野 平田・翁・サラザル研究室/田村研究室「高齢者・障がい者支援システム」

介護業界で今後働いた方がよい人とは?

指をさす車椅子の男性と女性スタッフ
介護業界で今後働いた方がよいのはどのような人でしょうか。

3つご紹介します。

介護業界の課題解決に取り組みたい人

介護業界で解決がまだ難しい課題はたくさんありますが、これらの課題に果敢に取り組み、解決へ導きたい人は介護業界で仕事をするのが望ましいでしょう。

また未来年表で予想されている課題の解決に力を注ぎたい人も、早いうちから介護業界でさまざまな経験を積んでおくことをおすすめします。

新しい技術の導入に抵抗がない人

介護業界では働き方改革やDX推進のため、今後多岐に渡る新技術が導入されていくと予想されます。

今までの介護のやり方にとらわれすぎず、柔軟に新しい技術を使いこなして介護に取り組みたい人は、介護業界で仕事をするのがよいでしょう。

日本の介護を海外展開したい人

日本の介護技術をアジアに輸出する「アジア健康構想」を実現し、アジアに住む高齢者の皆さんに日本の介護の良さを広く知ってほしいと考える人は、介護業界で働くことをおすすめします。

日本的介護とICTや介護ロボットを柔軟に組み合わせることで、アジア全体の高齢者のQOLが向上するでしょう。

まとめ

手を上にあげる女性スタッフ
介護業界が働く場として抱える課題は、解決に近づいているものも解決にまだ時間がかかるものもありますが、未来を予測し働き方改革やDXを推進することで少しずつ改善が進むでしょう。

介護業界での課題解決に力を発揮したい人は、ぜひ介護業界へと足を踏み入れてみてください。
※掲載情報は公開日あるいは2023年08月31日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。
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