介護業界のリスキリングとは?現状から知っておきたい支援制度まで詳しく解説

リスキリングとは?
2021年2月26日に経済産業省で行われた「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」において、リクルートワークス研究所より「リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」というテーマでプレゼンテーションが行われました。
このプレゼンテーションの中でリスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」という意味だとされています。
このことからリスキリングとは転職だけを目的とするものではなく、現職で必要とするスキルの変化に対応するのも目的とされているのがわかります。
介護業界におけるリスキリングの現状
介護業界におけるリスキリングの現状とはどのようなものなのでしょうか。
介護業界でリスキリングを希望する人、リスキリングをして介護業界に転職した人の2つにわけてご紹介します。
介護業界でリスキリングを希望する人の現状
2022年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和4年度介護労働実態調査」において、14,216人の無期雇用職員を対象に職種に関する希望をたずねた所、次のような結果が出ました。
回答 | 割合 |
今の仕事を続けたい | 57.8% |
今の仕事以外で訪問介護員、サービス提供責任者、看護職員、介護職員、生活相談員、介護支援専門員、PT・OT・ST等の仕事をしたい | 19.3% |
訪問介護員、サービス提供責任者、看護職員、介護職員、生活相談員、介護支援専門員、PT・OT・ST等以外の仕事をしたい | 4.7% |
わからない | 14.9% |
働きたくない | 2.5% |
無回答 | 0.8% |
20%以上の人が、今の仕事以外の別の仕事をしたいという意向があるのがわかります。
一方「今の仕事以外で訪問介護員、サービス提供責任者、看護職員、介護職員、生活相談員、介護支援専門員、PT・OT・ST等の仕事をしたい」と回答した3,903人を対象に目指す職種について聞いた所、次のような結果が出ました。
目指す職種 | 割合 |
訪問介護員 | 44.0% |
サービス提供責任者 | 7.4% |
看護職員 | 7.4% |
介護職員 | 11.7% |
生活相談員 | 7.5% |
介護支援専門員 | 14.3% |
PT・OT・ST等 | 0.7% |
その他 | 5.4% |
無回答 | 1.7% |
このことから介護業界内でリスキリングして働き続けたい人は、次に目指す職種を明確に決めている人が大半だとわかります。
リスキリングをして介護業界に転職した人の現状
令和4年度介護労働実態調査」において、介護業界で働く人15,460人を対象に現在の仕事の直前の職業についてたずねた所、次のような結果でした。
直前の職業 | 割合 |
介護関係の仕事 | 38.7% |
介護以外の福祉関係の仕事 | 4.3% |
医療関係の仕事 | 12.0% |
介護・福祉・医療関係以外の仕事 | 31.0% |
無回答 | 14.1% |
直前の職業が「介護・福祉・医療関係以外の仕事」だと回答した人が31%を占めることから、リスキリングして介護業界に転職した人は決して少なくないのが現状だと言えるでしょう。
介護業界のリスキリングにおすすめの資格
介護業界内でリスキリングして働き続けたい人、リスキリングして介護業界へ転職したい人それぞれにおすすめの資格をご紹介します。
介護業界におけるリスキリングにおすすめの資格
介護業界内でのリスキリングにおすすめの資格は次の3つです。
社会福祉士
社会福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」の第2条1において、専門的な知識や技術を持ち、身体や精神の障がいがあったり、環境上の理由があったりして日常生活に支障がある人の相談を受け、関係者との連絡・調整を行う人と定義づけられています。
社会福祉士の資格を取得すると、前の項目で紹介した職種の中では介護施設でサービスの契約手続きをしたり、利用者や家族の相談を受けたりする生活相談員として働けるようになるのです。
社会福祉士国家試験の概要や受験申し込み手続き、出題基準や合格基準などは公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページに記載してあるため、興味のある人は内容を確認してみてください。
介護福祉士
介護福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」の第2条2において専門的な知識や技術を持ち、身体や精神の障がいがあったり、環境上の理由があったりして日常生活に支障がある人の心身の状況に応じて介護サービスを提供する人と定義づけられています。
介護福祉士の資格を取得すると、前の項目でご紹介した職種の中では訪問介護で利用者が質の高いサービスを受けられるよう計画・調整するサービス提供責任者、訪問介護サービスを提供する訪問介護員、施設サービスを提供する介護職員として働けるようになるのです。
介護福祉士国家試験の概要や受験申し込み手続き、出題基準や合格基準などは公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページに記載してあるため、興味のある人は内容を確認してみましょう。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは「介護保険法」第7条5において、要介護者や要支援者からの相談に応じ心身の状態に応じて適切な介護サービスを利用できるよう関係各所と連絡・調整をし、自立した日常生活をするのに必要な援助の専門的な知識と技術があるとして介護支援専門員証の公布を受けた人と定義づけられています。
ケアマネジャーの資格は受験資格を持つ人が、各都道府県によって行われる介護支援専門員実務研修受講試験を受験し合格すると取得できるのです。
ケアマネジャーの資格を取得すると、前の項目でご紹介した職種の中では介護支援専門員として働けるようになります。
介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格、試験の詳細な内容は都道府県によって異なるため公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページのリンクから詳細を確認してみましょう。
リスキリングをして介護業界に転職したい人におすすめの資格
株式会社リクルートが運営するHELPMAN JAPANが2022年に発表した「介護職未経験者・介護事業者に対する意識調査」において、介護事業者857件に対し無資格者を正規職員として採用する可能性についてたずねた所、次のような結果が出ました。
回答 | 割合 |
積極的に行いたい | 38.2% |
場合によっては行いたい | 46.9% |
資格を持っていない未経験者採用は行いたくない | 14.9% |
このことから介護事業者は介護未経験の無資格者に対し比較的門戸が広いのがわかります。
一方令和3年度の介護報酬改定では介護に関わる人全ての認知症対応力向上を目的として、無資格者への認知症介護基礎研修受講が義務付けられました。
3年間の経過措置があるものの、今後介護業界で働くなら有資格者の方が有利なのは間違いないでしょう。
これらを踏まえて、リスキリングをして介護業界に転職したい人におすすめの資格は次の2つです。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、厚生労働省のホームページで介護に携わる人が業務をする上で最低限の知識・技術と実践する際の考え方のプロセスを身に着け、基本的な介護業務ができるようになるのを目的として行われるとされています。
研修科目と研修時間数は次の通りです。
研修科目 | 研修時間数 |
1.職務の理解 | 6時間 |
2.介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 |
3.介護の基本 | 6時間 |
4.介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 9時間 |
5.介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
6.老化の理解 | 6時間 |
7.認知症の理解 | 6時間 |
8.障がいの理解 | 3時間 |
9.こころとからだの仕組みと生活援助技術 | 75時間 |
10.振り返り | 4時間 |
合計 | 130時間 |
介護職員初任者研修を取得すると、前の項目でご紹介した職種の中では訪問介護員や介護職員として働けるようになります。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修とは介護職員初任者研修の上位資格で、国家資格である介護福祉士を受験するために必要な資格の1つです。
具体的には幅広い利用者に対する基本的な介護能力の習得を目的として、次のような内容で450時間の研修が行われます。
- 社会福祉制度(介護保険など)
- 認知症の理解
- 医療の知識
- 障害の理解
- 介護技術
- 介護過程
- たんの吸引、経管栄養など
介護福祉士実務者研修を取得すると、訪問介護員、介護職員、サービス提供責任者として働けるようになります。
リスキリングをしたい人が知っておきたい支援制度
介護業界でリスキリングをしたい人、リスキリングをして介護業界で働きたい人が知っておきたい支援制度をそれぞれご紹介します。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度とは働く人たちの主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を目的として厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了すると受講費用の一部が支給される制度です。
働きながら訓練を受けることができ、福祉関係では次のような資格が対象となっています。
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- 介護支援専門員実務研修
- 福祉用具専門相談員
- 主任介護支援専門員研修
支給の申請は住んでいる場所を管轄するハローワークで受付してもらえ、2024年2月1日以降の「支給申請」と「受給資格確認」は電子申請も可能となりました。
介護業界でリスキリングをし、今とは別の職種で働きたい人は厚生労働省のホームページから詳細を確認してみるのがおすすめです。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
2020年に厚生労働省が行った転職者実態調査で、転職準備活動でどのようなことをしたかたずねた所、「特に何もしていない」と回答した人が66.1%で一番多いという結果でした。
これを踏まえて在職者のキャリア相談、リスキリング、転職までを一体的に支援するのを目的として創設された制度が、令和4年度補正予算で753億円が計上されている「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」です。
具体的には、上記のような支援を行う事業者に対して補助金を交付することでリスキリングをして転職したい人をサポートするのです。
また「介護ワーカー」を運営し「医療福祉業界を中心とするエッセンシャル産業が抱える課題の解決に挑み、誰もが幸せに暮らせる未来を創造する」をパーパスに掲げる株式会社トライトのグループ企業、株式会社トライトキャリアも「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に採択されました。
リスキリングをして介護業界で働きたい人は、介護ワーカーカレッジでぜひそのきっかけをつかんでみてください。
まとめ
リスキリングとは転職だけを目的とするものではなく、現職で必要とするスキルの変化に対応するのも目的とされているため、介護業界においてリスキリングしたい人、リスキリングして介護業界で働きたい人がどちらも一定数存在するのが現状です。
この記事も参考にして、国の支援制度も活用しながらぜひ自分に合った形でのリスキリングを進めてみてください。






