介護職における手当とは?
介護職における手当の現状はどのようなものなのか、種類と介護職が持つ手当に関する希望の2つの観点からご紹介します。
介護職における手当の種類
2022年に厚生労働省が発表した「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」において、4,781件の介護事業所を対象に2022年2月1日~2022年12月31日の間に引き上げまたは新設した手当は何かをたずねた所、次のような結果でした。
手当の種類 | 割合 |
夜勤手当 | 3.4% |
時間外手当(早朝・深夜・休日手当など) | 2.7% |
家族(扶養)手当 | 1.0% |
通勤手当・ 交通費 | 2.3% |
移動手当 | 0.8% |
職務手当 (役職手当など) | 9.3% |
資格手当 | 6.6% |
研修手当 | 1.1% |
介護職員処遇改善加算に基づく手当 | 21.7% |
介護職員等特定処遇改善加算に基づく手当 | 16.5% |
介護職員処遇改善支援補助金に基づく手当 | 65.8% |
介護職員等ベースアップ等支援加算に基づく手当 | 78.1% |
感染症対応に関わる手当 | 7.7% |
その他 | 3.9% |
介護事業所では主に介護保険サービスで得られる報酬が人件費となるため、介護職は夜勤手当や時間外手当など民間会社にもある手当だけではなく、介護職員処遇改善加算といった介護保険制度の加算を基にした手当の種類も存在するのがわかります。
介護保険制度の見直しが行われ加算内容が変更されると、それに応じて手当の種類や金額も変わっていくことを覚えておきましょう。
介護職が持つ手当に関する希望
2022年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和4年度介護労働実態調査」で19,890人の介護職を対象に賃金や手当などに関する希望をたずねた所、次のような結果が出ました。
希望内容 | 割合 |
基本給の引き上げ | 70.5% |
賞与(ボーナス)の導入・引き上げ | 50.1% |
能力や仕事ぶりに応じた評価の実施 | 40.1% |
勤務年数に応じた評価の実施 | 32.6% |
資格手当の導入・引き上げ | 27.9% |
役職手当の導入・引き上げ | 15.4% |
早朝・夜間勤務手当の導入・引き上げ | 15.3% |
通勤手当の導入・引き上げ | 13.2% |
連絡用の携帯電話の支給・通信費補助 | 9.6% |
移動時間の労働時間への算入や移動手当の導入・引き上げ | 6.8% |
その他 | 3.4% |
賃金や手当等についての希望はない | 9.7% |
無回答 | 2.1% |
手当に関する希望で一番多かったのは資格手当の導入・引き上げですが、賃金に関する希望では基本給の引き上げと回答した人が70%を超えたため、介護保険制度の加算に基づいた手当の引き上げを望む人が多いのが現状だと言えるでしょう。
介護職の今後の賃金アップにつながる手当について
前の項目でご紹介した通り介護職として働く人は介護保険制度の加算に基づいた手当の引き上げを希望しているので、今後の賃金アップにつながる処遇改善の制度を3つご紹介します。
介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算
2022年10月より介護職員の処遇改善を目的として各介護事業所では「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つを請求できるようになりました。
3つの加算それぞれの請求状況は次の通りです。
| 2022年10月 | 2023年4月 |
介護職員処遇改善加算 | 93.8% | 93.8% |
介護職員等特定処遇改善加算 | 75.9% | 77.0% |
介護職員等ベースアップ等支援加算 | 85.4% | 92.1% |
どの加算も100%の介護事業所が請求しているわけではないため、同じ介護職でも「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つに基づく手当を受けられる人と受けられない人がいるのがわかります。
一方この結果を受けて、2023年に令和5年度補正予算案の1つとして「介護職員処遇改善加算等の取得促進支援事業」が1.1億円の予算規模で行われることとなりました。
これは介護職の手当の原資となる3つの加算の取得率の向上が課題となったため、施設や介護事業所が円滑に加算を請求できるように支援を実施することとなったものです。
具体的には施設や介護事業所に対し地方自治体が研修会を行ったり、社会保険労務士などの専門知識を持つ相談員を派遣したりして加算取得のための助言や指導などを行います。
加算を請求しているかどうかをホームページに記載している施設や介護事業所もあるため、介護職の人はできるだけ処遇改善に積極的な事業所で働くことが大切だと言えるでしょう。
介護職員処遇改善支援事業等
2023年に令和5年度補正予算案の1つとして、364億円の予算規模で行われることとなったのが「介護職員処遇改善支援事業等」です。
介護業界での賃上げが低水準であることを踏まえて、必要な介護人材を確保するため2024年の民間における春闘に向けた賃上げの議論より先に、介護職員の処遇改善をするのを目的としています。
具体的には介護職を対象に賃上げ効果が継続させる取り組みを行うのを前提として、介護職員等ベースアップ等支援加算に上乗せする形で賃金を2%(月額6,000円程度)引き上げることとしたのです。
「介護職員処遇改善支援事業等」の対象期間は2024年2月~5月の賃金引き上げ分となっています。
令和6年度の介護報酬改定に先立ってこのような施策が行われるのは、国でも介護職の処遇改善に積極的な姿勢を示しているためだと言えるでしょう。
2024年度の処遇改善
2024年1月22日に行われた第239回社会保障審議会介護給付費分科会において、令和6年度介護報酬改定の主な事項についても話し合われました。
介護職の処遇改善として、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引き上げを行います。
具体的には「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の名称と加算率を次のように変更することとなったのです。
現行 | 改定後 |
介護職員処遇改善加算(Ⅰ)13.7% 介護職員処遇改善加算(Ⅱ)10.0% 介護職員処遇改善加算(Ⅲ)5.5% 介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)6.3% 介護職員等特定処遇改善加算(Ⅱ)4.2% 介護職員等ベースアップ等支援加算 2.4% | 介護職員処遇改善加算(Ⅰ)24.5% 介護職員処遇改善加算(Ⅱ)22.4% 介護職員処遇改善加算(Ⅲ)18.2% 介護職員処遇改善加算(Ⅳ)14.5% |
また人材確保に向けてより効果的な要件とするため、月額賃金の改善に関する要件と職場環境等の要件を見直すとしています。
国では加算取得のための要件を見直し、前の項目でもご紹介した通り加算取得に向けたサポートも行っているため、少しずつでも加算取得率は100%に近づき介護職が手当をもらえる可能性も上がっていくでしょう。
介護職が処遇改善手当をもらえる条件とは?
介護職が処遇改善手当をもらえる条件とはどのようなものなのでしょうか。
2022年に厚生労働省が行った「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」において、1,283件の施設・介護事業所を対象に給与等の引き上げの条件についてたずねた所、次のような結果が出ました。
給与等の引き上げの条件 | 割合 |
勤続年数を条件として引き上げ | 24.4% |
経験年数を要件として引き上げ | 14.3% |
資格の保有を要件として引き上げ | 24.8% |
サービス提供責任者を要件として引き上げ | 3.9% |
主任介護支援専門員を要件として引き上げ | 1.0% |
勤務形態(常勤・非常勤)を要件として引き上げ | 27.9% |
雇用形態(正規・非正規)を要件として引き上げ | 20.2% |
勤務時間を要件として引き上げ | 11.9% |
管理職について引き上げ(ユ ニットリーダーを除く) | 7.1% |
管理職以外の者について引き上げ | 10.3% |
人事評価に基づいて引き上 げ | 37.9% |
要件にかかわらず引き上げ | 6.9% |
その他 | 13.8% |
要件にかかわらず引き上げをするという施設や介護事業所はわずか6.9%で、介護職の中でも何かしらの条件を満たした人でなければ手当を受け取って昇給することができないのがわかります。
介護職が処遇改善手当をもらえる条件として多かった「人事評価」「勤務形態」「資格の保有」について、具体的にどのようなことをすればよいのかをご紹介します。
人事評価
介護職が処遇改善手当を基に昇給する条件として一番多かったのは人事評価です。
各施設や介護事業所ごとに人事評価制度は内容が異なるため、手当を基に昇給したいならまずは自分の働く施設や介護事業所ではどのような人や働き方が評価されるのかを把握する必要があります。
施設や介護事業所の人事評価制度によく取り入れられているのが「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」で、2023年12月22日現在レベル認定を受けた人が8,891人となっています。
介護の仕事が持つ、知識を仕事で実践できなければならないという特徴を踏まえ、「実践的スキル(できる)」と「知識(わかる)」の2つの観点で評価されるので、介護業界でどのような人が人事評価において高く評価されるのかを知る上で役立つでしょう。
勤務形態
「令和4年度介護労働実態調査」で勤務形態別の所定内賃金について調べた所、次のような結果でした。
勤務形態 | 平均賃金 |
無期雇用職員 | 255,310円 |
有期雇用職員 | 227,627円 |
無期雇用職員と有期雇用職員では平均賃金において27,000円程度の差があることから、手当の有無もこの差の一因になっていると考えられます。
もし介護職として昇給の対象になりたいと考えているなら、無期雇用職員として働く方がよいでしょう。
資格の保有
「令和4年度介護労働実態調査」で保有している資格別の所定内賃金について調べた所、次のような結果でした。
資格の種類 | 平均賃金 |
介護福祉士 | 247,290円 |
介護職員初任者研修 | 226,390円 |
介護福祉士実務者研修 | 236,280円 |
社会福祉士 | 267,196円 |
その他の資格 | 255,494円 |
無資格 | 209,100円 |
一番平均賃金が高いのが社会福祉士の資格を取得している人で、一番平均賃金が低いのが無資格の人ですが、その差は58,096円でした。
資格手当だけがこの差を生み出しているわけではありませんが、年収に換算してみると差額は697,152円となるので、もし取得できるなら資格を取得した方が収入アップできます。
勉強に充てられる時間が少ない中資格を取得するのはなかなか難しいかもしれませんが、処遇改善のための手当を支給する対象になりやすかったり、資格手当をもらえたりするので挑戦してみる価値はあるでしょう。
まとめ
介護職における手当は、夜勤手当や時間外手当など民間会社にもある手当だけではなく、介護職員処遇改善加算といった介護保険制度の加算を基にした手当の種類も存在するのが特徴的です。
そのため、介護職の処遇改善に直接つながる介護保険制度の加算を基にした手当の有無や金額を把握し、どのような基準で処遇改善のための手当がもらえるのかを知っておくのが大切です。
人事評価制度に合わせて働き方を変えたり、資格を取得したりするのには時間がかかりますが、国は介護職員の確保のためにも処遇改善に力を入れて取り組んでいるため、今から少しずつでも取り組んでおくのが望ましいでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ介護職における手当について理解を深め、自分がその対象になるよう工夫してみてください。