ミルキングとは、ドレーンや尿道バルーンカテーテル、シャント血管、点滴など、貯留した液体を排液バッグの方向に流す作業のことです。
ミルキングは、医療行為とみなされる工程がありますので、介護職がおこなう場合には、施設や地域の法律や規則、または医師の指示に従う必要があります。
この記事では、法律上のルールから今後の課題までご紹介していきます。
バルーンカテーテルのミルキングとは?
バルーンカテーテルとは別名膀胱留置カテーテルとも言い、尿を出すために尿道から膀胱へ挿入する管のことですが、長い期間挿入していると尿が流れにくくなることがあります。
ミルキングとはこの流れにくさの解消を目的として、バルーンカテーテルを手でもんだり専用のローラーを使ったりして流れやすい状態へと戻す作業を指すのです。
バルーンカテーテルのミルキングをする方法
バルーンカテーテルのミルキング方法を3つご紹介します。
重力の落差を用いる場合
バルーンカテーテルを少し持ち上げて、重力の落差で尿を排尿バッグへと誘導する方法です。
少し尿にねばりがある場合でも、重力がかかるため排尿バッグへと落ちていきやすくなります。
一番簡単なので、バルーンカテーテルのミルキングが必要だと感じたらまずはこの方法を試してみるのがよいでしょう。
ミルキングローラーを使って行う場合
ミルキングローラーを使ってバルーンカテーテルのミルキングを行う手順を、ミルキングローラーのメーカーの説明書を参考にご紹介します。
項目 | 概要 |
①使用前点検をする | - ミルキングローラーの外観にひびや破損、汚れがないか確認する
- ローラー部分に傷や変形がないか確認する
- ローラーがスムーズに回転するか確認する
- ハンドルがスムーズに開閉するか確認する
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②カテーテルを持つ | - バルーンカテーテルのミルキングをする位置よりやや患者側の管を指でつまんで閉鎖して持つ
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③バルーンカテーテルをミルキングローラーではさむ | - ミルキングローラーで、バルーンカテーテルのミルキングをしたい位置をはさむ
- ハンドルを握ってバルーンカテーテルを閉鎖する
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④ミルキングをする | - つまんだ指とミルキングローラーでバルーンカテーテルを閉鎖しながら、ミルキングローラーをバルーンカテーテルに沿って手前にゆっくりとすべらせる
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⑤バルーンカテーテル内に陰圧をかける | - 伸びたバルーンカテーテルを元通りにし、指でつまんで閉鎖していた管の流路を開放する
- バルーンカテーテルの流路を開放すると閉鎖していた管の復元力で管内に陰圧がかかる
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⑥ハンドルをゆるめる | |
⑦繰り返す | |
ミルキングローラーを用いてのミルキングは事前の点検事項や手順も多く、速く正確にできるまでには慣れが必要かもしれませんが、まずは安全にミルキングをするのを目標にして始めてみましょう。
参考:ニプロ株式会社「機械器具 51 医療用嘴管及び体液誘導管 一般医療機器 カテーテル用クランプ 16449000 医療機器届出番号:27B1X00045000118 ミルキングデバイス」
手で行う場合
バルーンカテーテルを圧迫し、その圧迫を少しずつ排尿バッグ側に移動させる方法です。
このやり方だと管内が陰圧になるため、ミルキングローラーを使う時と同じ仕組みでミルキングができるわけです。
しかし、手で行うとミルキングローラーを使った時のようには急激に陰圧がかからないため、尿は少しずつしか誘導できないのを覚えておきましょう。
バルーンカテーテルのミルキングをする上での注意点
バルーンカテーテルのミルキングをする上で、一番気を付けなければならないのは尿の逆流です。
尿が逆流してしまうことで新たな別の病気の原因になる可能性もあることから、ミルキングをする際は十分注意しましょう。
またミルキングローラーを使ってミルキングをする場合に注意しなければならないことがあるので、禁止されていることと使用上の注意点の2つにわけてご紹介します。
項目 | 概要 |
禁止事項 | - ミルキングローラーの再使用は禁止(交差感染の可能性があるため)
- カテーテルを手でつままずにミルキングをするのは禁止
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注意点 | - 使用前点検でミルキングローラーに不具合があれば使用を中止する
- 管が破損する可能性があるためアルコール綿を併用してミルキングはしない
- 傷や汚れが付着したミルキングローラーは使わない
- 管をローラー以外の場所ではさまない
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細かいようですが、禁止事項や注意点は全てバルーンカテーテルのミルキングを安全にするために指定されているというのを覚えておきましょう。
参考:ニプロ株式会社「機械器具 51 医療用嘴管及び体液誘導管 一般医療機器 カテーテル用クランプ 16449000 医療機器届出番号:27B1X00045000118 ミルキングデバイス」
バルーンカテーテルのミルキングを介護職が行ってもよいのか
バルーンカテーテルのミルキングを介護職は行ってもよいのでしょうか。
法律と現状、2つの観点からご紹介します。
法律上のルール
2022年12月1日に厚生労働省医政局長が発信した「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)」において、膀胱留置カテーテルについて、医行為とみなされないものは何かが解説されています。
医行為とみなされないもの=介護職が行ってもよい膀胱留置カテーテルのケアは以下の通りです。
- 膀胱留置カテーテルの排尿バッグから尿を捨てること(DIBキャップの開閉を含む)
- 膀胱留置カテーテルなどに接続されているチューブを留めているテープが外れた場合に、 あらかじめ明示された貼付位置に再度テープを貼り付けること
- 専門的な管理が必要無いことを医師または看護師が確認した場合のみ、膀胱留置カテーテルを挿入している患者の陰部洗浄を行うこと
このことから、バルーンカテーテルのミルキングは法律上の解釈では介護職が行ってはいけないこととなります。
現状
バルーンカテーテルのミルキングは法律の解釈上介護職が行ってはいけない行為ですが、現状はどのようなものなのでしょうか。
要介護度が高く、バルーンカテーテルをつけている利用者が多い可能性の高い、特別養護老人ホームにおける医療ニーズについて調査した、日本総研の報告書を基に3つの観点からご紹介します。
医療ニーズがある入居者の人数
そもそも特別養護老人ホームには、バルーンカテーテルの管理以外にも医療ニーズを持つ入居者はどのくらいいるのでしょうか。
2021年に日本総研がまとめた「特別養護老人ホームにおける医療ニーズに関する調査研究事業報告書」において、1,583の特別養護老人ホームに対し医療ニーズのある入居者の割合を種類別にたずねた所、次のような結果が出ました。
医療ニーズの種類 | いる | いない |
摘便 | 89.8% | 5.5% |
⼝腔ケア | 86.7% | 8.2% |
褥瘡・創傷の処置 | 83.3% | 11.6% |
たんの吸引 | 77.0% | 18.0% |
浣腸 | 75.7% | 22.4% |
胃ろう・経⿐経管栄養、腸ろうの管理(留置以降) | 72.4% | 25.1% |
膀胱留置カテーテルの挿⼊・交換(⼥) | 69.5% | 25.1% |
⾎糖測定 | 58.1% | 36.6% |
膀胱留置カテーテルの挿⼊・交換(男) | 57.0% | 37.7% |
インスリン注射 | 47.3% | 47.6% |
酸素療法 | 41.9% | 53.1% |
咀嚼・嚥下機能の訓練 | 40.8% | 53.4% |
静脈点滴の管理(刺⼊) | 40.6% | 54.3% |
ストーマ(⼈⼝膀胱・⼈⼯肛⾨)の管理 | 40.6% | 53.9% |
導尿 | 39.1% | 55.5% |
膀胱留置カテーテルの挿⼊・交換が必要な女性のいる特別養護老人ホームは69.5%、男性のいる特別養護老人ホームは57.0%で、半数以上の特別養護老人ホームにおいて看護師がバルーンカテーテルのケアを行わなければなりません。
特別養護老人ホームでは病院ではないにもかかわらず、これほどまでに多岐に渡る症状への医療ケアが必要なため、看護師にかかる負担が相当大きいものであるのがわかります。
一方、バルーンカテーテルを使用している利用者に対し、医療ケアを行っているのは誰かをたずねた所、以下のような結果となりました。
| 配置医師 | 看護職員 | 研修を受けた介護職員 | 通院 | 往診・訪問診療 | 訪問看護 |
膀胱留置カテーテルの挿⼊・交換(⼥) | 7.5% | 72.1% | 0.0% | 15.6% | 4.6% | 0.1% |
膀胱留置カテーテルの挿⼊・交換(男) | 15.5% | 47.8% | 0.0% | 30.3% | 6.2% | 0.1% |
バルーンカテーテルの挿入や交換を行っているのは女性利用者の場合主に看護職員、男性利用者の場合も主に看護職員ですが、通院で行うことも多いのが見て取れます。
また介護職がバルーンカテーテルの挿入や交換をしている施設は0%なので、特別養護老人ホームにおけるバルーンカテーテルの管理はミルキングも含めて、現状は法律上のルールを守って行われている可能性が高いと言えるでしょう。
入居の受け入れ判断への影響
「特別養護老人ホームにおける医療ニーズに関する調査研究事業報告書」において、特定の医療処置に関する入居基準や入居者への提供方針についてたずねた所、以下のような結果が出ました。
| ⼊居は断らない | 対応できる⼈数に上限があり、⼊居を断る場合がある | 医療処置が必要な⼊居は断るが、⼊居者に必要な際は対応する | 医療処置が必要な⼊居は断り、⼊居者に必要となった際は退所となる |
摘便 | 89.5% | 3.0% | 4.4% | 0.1% |
浣腸 | 87.9% | 2.8% | 5.8% | 0.4% |
褥瘡・創傷の処置 | 80.3% | 8.1% | 8.0% | 0.3% |
膀胱留置カテーテルの管理 | 68.2% | 17.5% | 9.1% | 2.2% |
⾎糖測定 | 67.7% | 14.5% | 11.2% | 3.4% |
ストーマ(⼈⼯膀胱・⼈⼯肛⾨)の管理 | 61.6% | 17.1% | 12.8% | 5.1% |
導尿 | 59.7% | 12.7% | 17.9% | 6.1% |
ネブライザー(吸⼊器)の管理 | 58.0% | 10.5% | 16.7% | 10.7% |
インスリンの注射(⾃⼰注射できる場合を除く) | 53.4% | 20.3% | 12.0% | 10.8% |
酸素療法 | 46.2% | 15.6% | 18.1% | 16.9% |
胃ろう・腸ろうの管理 | 45.7% | 32.2% | 10.3% | 8.6% |
喀痰吸引 | 43.4% | 21.0% | 23.5% | 8.8% |
医療ニーズのうち、摘便や浣腸といった在宅でも行うこともあるケアについては、それを条件に入居を断られる可能性は10%程度ですが、吸入器の管理や酸素療法といった命にかかわる可能性の高いケアが必要な場合、半数程度の施設で入居を断っています。
バルーンカテーテルの管理が必要な人が入居を断られてしまう可能性は現状30%程度ですが、入居の受け入れ判断への影響は大きい方だと言えるでしょう。
ただし、最近介護職の人でも喀痰吸引が行えるように「喀痰吸引等研修」という資格が新設されたので、バルーンカテーテルのミルキングを含む管理についても、法律の見解が変わる可能性があるでしょう。 今後の課題
「特別養護老人ホームにおける医療ニーズに関する調査研究事業報告書」において、医療ケア提供の課題についてたずねた所、次のような結果がでました。
| とてもあてはまる | ややあてはまる | どちらともいえない | あまりあてはまらない | あてはまらない |
本⼈・家族の施設に期待する医療レベルが⾼く、対応に苦慮する場合がある | 4.7% | 26.2% | 25.0% | 34.3% | 9.8% |
医療ニーズがある⽅へのケアを提供する看護職員の⼈数が不⾜している | 14.0% | 26.6% | 25.6% | 21.9% | 11.9% |
医療ニーズがある⽅へのケアを提供する介護職員の⼈数が不⾜している | 22.7% | 32.7% | 23.1% | 15.6% | 5.9% |
看護職員と介護職員の役割分担が適切でない場合がある | 2.3% | 19.0% | 30.7% | 34.0% | 14.0% |
現場の課題として大きいのは、医療ニーズがある人に対しての看護師・介護士の配置が不十分なことで、それぞれ「とてもあてはまる」「ややあてはまる」と回答した人の合計が40.6%、55.4%でした。
介護業界の人材不足の解消はすぐには解決は難しいかもしれませんが、国としては介護ロボットやICT技術の導入、外国人留学生の受け入れなどさまざまな解決策を模索している途中だと言えるでしょう。
そのため、バルーンカテーテルの管理を含む医療ニーズへの対応も今後看護師と介護職との役割分担を含めて変化していくことが予想されます。
まとめ
バルーンカテーテルのミルキングとは管内の尿の流れにくさの解消を目的として、バルーンカテーテルを手でもんだり専用のローラーを使ったりして流れやすい状態へと戻す作業のことで、法律上のルールでは介護職がしてはいけないこととなっています。
この記事も参考にして、看護師と介護職の適切な連携の下、バルーンカテーテルの管理ができるよう心がけてみてください。
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